きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2007.12.11 浜離宮・中島の御茶屋




2008.1.23(水)


 日本詩人クラブ理事仲間の水島さんの個人誌『波』18号の合評会兼新年会が、夕方から池袋で開かれました。遠隔地の人を除いた執筆者12名が集まって、なかなか賑やかでした。東京芸術劇場そばの「北海道」という居酒屋で合評会をやりながら呑んで、なごやかな中にもキビシイ批評も出ていました。同人誌ではありませんから、その面では少し甘めになったかもしれませんけど、大人の集まりですからね、紳士的だったと思います。

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 こちらは恒例のカラオケ。詩も好きで唄も好きという人たちばっかりです。私には団塊の世代を中心に、東京圏の中堅どころが集まったという観がありました。みんな終電まで呑んで唄って、楽しい時間でした。ありがとうございました。



月刊詩誌『柵』254号
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2008.1.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 詩集賞の季節雑感−詩集賞のもたらす功罪…中村不二夫 68
沖縄文学ノート(3) 沖縄島…森 徳治 72
流動する今日の世界の中で日本の詩とは38『続日本生活語詩集』について…水埼野里子 76
風見鶏 河野正彦 吉川伸幸 日笠芙美子 井奥行彦 谷本州子 80
現代情況論ノート21 今日の奴隷売買事件…石原 武 82

中原 道夫 鼠 1             小沢 千恵 烙印 6
山口 格郎 白く光る海 8         江良亜来子 早春 10
前田 孝一 営み 花火 12         大貫 裕司 不安 14
北村 愛子 安藤さんの水中ウォーキング 16  忍城 春宣 須走素描 18
進  一男 うずくまる壺 20        肌勢とみ子 やさしく やさしく 22
山崎  森 誇りたかく 24         柳原 省三 緑神社 26
織田美沙子 イルミネーションの街で 28   南  邦和 子歳の寓話 30
小城江壮智 冬のなごりに 32        松田 悦子 色塗りをする少年 34
佐藤 勝太 なんにもはいってないうどん 36  月谷小夜子 少女はどこに行ったのだろう 38
八幡 堅造 品格のない人は 40       門林 岩雄 秋 夢幻境 42
秋本カズ子 残花 44            宇井  一 若い時 46
西森美智子 幸福 48            三木 英治 ブルガンディ 50
安森ソノ子 野菜の至福 52         鈴木 一成 今日明日 54
名古きよえ サントリーニ島のお婆さん 56  北野 明治 不思議なもの 58
今泉 協子 百合一輪 60          若狭 雅裕 春色 62
野老比左子 だるまの芽 64         徐 柄 鎮 虎落笛 66

世界文学の詩的悦楽−ディレッタント的随想20 ガルシア=ロルカについての断章2 殉教の詩…小川聖子 84
世界の裏窓から−カリブ篇(6) フランス語圏カリブとの出会い…谷口ちかえ 88
現代ベトナムの詩 レ・パム・レ『風はどこから吹く』(9)…水崎野里子訳 92
コクトオ覚書229 コクトオの詩想(断章/風聞)9…三木英治 94
下村和子詩集『弱さという特性』 個の詩想…佐租憲一 96
東日本・三冊の詩集 鈴木哲雄『神様だって』 富田和夫『アウシュヴイッツの雨』 吉田義昭『北半球』…中原道夫 98
西日本・三冊の詩集 尾崎まこと『カメラ・オブスキュラ』 杉谷昭人『霊山』 門田照子『終わりのない夏』…佐藤勝太 102
受贈図書 108  受贈詩誌 105  柵通信 106  身辺雑記 109
表紙絵 中島由夫/扉絵 申錫弼/カット 野口晋・中島由夫・申錫弼



 少女はどこに行ったのだろう/月谷小夜子

中二の頃
家中で酒と云う名の付く壜の中身を
流しに捨てた少女
泣きながら
これがあるから母が狂うと思い込み

頬をぶたれた少女
親の気持も知らないでと罵られ
あんたのために離婚しないで我慢しているのにと

「警官の父殺害 京都の少女」
計画性と残忍性のゆえ刑事処分相当と鑑別所入りの記事
動機は
「父の浮気が許せなかった」
新聞に数行の記事でしかない

母は狂ったまま言ったのだと思うことにした
あんたが男の子だったらと言った
あんたが男の子だったら
お父さんを殺してくれるのにと

数十年後の父の葬儀の場で
あんたのために子供を堕胎
(おろ)させられた
兄弟を複雑にしたくないと言われた
あんたに私の苦しみが分かるかと
女は大人になった少女に罵った

斧をふるった少女は残忍だったのか
自分の父親を殺した少女は人の道に悖るのか
自分の血に半分も流れるものを呪いながら
心の中で斧をふるったあの少女はどこにも行けないで
ここにいる

 詩作品ですから、書かれたことが現実と採る必要はありませんけど、そう思わせる力がこの詩にはあります。私の持論に詩人や作家は生い立ちを一度は書くべき、というものがあります。触れたくないものを書くことによって、その事実を客観的に見られるようになり、一歩進むことができると思うのです。自分の中では大変なことでも、書くことによって、世の中では数多くあることの一つなんだと認識できるようになるとも思っています。作者の詩はこれまでかなり拝読したつもりでいましたが、今回のような作品は初めてように思います。最終連の「心の中で斧をふるったあの少女はどこにも行けないで/ここにいる」というフレーズが見事です。



季刊『詩とファンタジー』2号
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2008.3.1 神奈川県鎌倉市 かまくら春秋社発行
800円+税

<目次> ●表紙絵・やなせたかし
やなせたかしの詩と絵-6センチのたましい-2 ミッちゃんとケンちゃん−4
●詩とイラストレーション
線のひきかた−君島七樹 絵・葉祥明−6   この先行き止まり−松山日々 絵・磯貝裕美−8
さよならの風景−なお 絵・宇野亜喜良−10  くるくる−兎座直子 絵・横田稔−12
寒夜−高塚鎭昭 絵・ささめやゆき−14    ひみつのアンテナ−JUNC 絵・スズキコージ−16
マフラー−水波めのう 絵・小谷智子−18   雨の日−坂入富三郎 絵・大友ヨーコ−20
ふゆのひざし−木末梢 絵・岩崎千夏−22   一〇八粒の煩悩−宮地由美 絵・雨宮尚子−24
Lover the Rubber−北川拓磨 絵・渡辺宏−26 月の道−山口あい 絵・おぐらひろかず−28
ひとり−平岡あみ 絵・味戸ケイコ−44    日記−カンノナツミ 絵・内田新哉−46
楽しい気持ち−相原迷吾 絵・伊藤正道−48  そっとそっと−小川さざれ 絵・東逸子−50
海鳴りの町−福本畷夫 絵・黒井健−52    そのまま−優花 絵・広瀬弦−54
席を譲る−アマリロ・ナオ 絵・大西秀美−56 さようならのリズム−由花 絵・山口マオ−58
水族館−みやもとおとめ 絵・北見隆−60   いつか言ってみたい−山下文子 絵・山口はるみ−62
特集・愛の唄 クリステイーナ・ロゼッティ、サーラ・ティーズデイル 訳・三村美智子 絵・松永禎郎−76
●ファンタジー
春生の家−小池昌代 絵・樋上公実子−30   龍宮の門−高橋順子 絵・瓜南直子−64
もうひとつの竜宮物語−うえま・つねみち 絵・後藤貴志−80
●特集・北原白秋の童謡
詩・北原白秋 解説・青木健 絵・安藤早紀
(1)あわて床屋−34             (2)赤い鳥小鳥−37
(3)雨−39                 (4)今夜のお月さま−41
(5)揺籃のうた−43             (6)待ちぼうけ−69
(7)ペチカ−71               (8)五十音−73
(9)アメフリ−75
●エッセイ
「わけがわからない」ことこそ面白い!−宮沢賢治ファンタジーの秘密−天沢退二郎 絵・藤田夏代子−84
●シリーズ 少女だったとき少年だったとき
ゆきちゃん−蜂飼耳 絵・しみずやすこ−88  ライトブルーのボタン−村松友視 絵・田沢春美−90
●月のかけら 作品集−絵・倉部今日子−92
●お便りのコーナー/執筆者・画家プロフィール−94
●表詩記/編集後詩−やなせたかし−96



線のひきかた/君島七樹

誰かが線をひきました
大地の上に
海原の上に
青空の中に
ここからここがわたしのです
ここからそっちがあなたのです
そう言って線をひきました

誰かが線をひきました
人の心の中に
人と人との間に
神様と神様の間に
線をひきました
ここからこっちがわたしたち
ここからそっちがあなたたち
そう言って線をひきました

それからというもの
線がいつでも大問題
線を越えるたびに
誰かの許可が必要だったり
線を書き直すたびに
大層な儀式が必要だったり
ああ もう やんなっちゃう!

しかたないので
僕も真似して線をひいてみます
僕からあなたに向かって 一本
あなたから僕に向かって 一本
僕=あなた あなた=僕
僕たち=あなたたち あなたたち=僕たち
僕のもの=あなたのもの あなたのもの=僕のもの
これなら
わかりやすいでしょ?

 昨年刊行された、やなせたかしさん責任編集の『詩とファンタジー』も2号になりました。やなせさんの「編集後詩」によれば、月刊『詩とメルヘン』の編集を30年やって疲れたのでやめたけど、また始めてしまったということのようです。『詩とメルヘン』の廃刊を惜しむ声も大きかったので、『詩とファンタジー』に期待を寄せる読者も多いのではないかと思います。

 紹介した作品は実質的な巻頭詩です。領土問題、宗教間闘争を判りやすく書いていて見事です。さらに素晴らしいのは最終連で、同じ線の引き方でも「=」ならば何の問題もないことを教えてくれます。多少のいざこざはあるものの、EUの発展がそれを具体的に証明しているように思います。甘い抒情詩だけではない、『詩とファンタジー』の気骨を示す作品と受け止めました。



個人誌『Q通信』57号
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2007.12 福岡県行橋市 麻生久氏発行
非売品

<目次>
電機連合歴代役員懇親会第31回総会 Q氏米寿にて祝福さる 1
電機連合歴代役員OB会 2
Q氏のことば 2
枝見静人さんのこと/松永伍一 3
枝見静人・詩集
雪炎 4       誕生日に寄せて 4  予告の海(出奔) 4
汽車ポッポ 5    天使たち 5     ある老人像 5
一本のローソク 6  原爆の日に 6    詩行動 6
炎立つ 6      いのちの薔薇 6   がんを愛しつつ生きる 6
鯉幟り 6
波乱万丈の枝見!/麻生 久 7

別冊 麻生久作品特集(戦前、戦中作品より)
造花 1       街燈 1       雪 1
独楽 2       廃坑の町 2     峠 6
海峡 3       白鳥 3       風紋 3
花火 3
作品について 4



 造花

透明な樹木だから
僕は仮に運命と言ってみたんだ

試みにパラフィン紙をまるめてみ給へ
造花ともなるだらう
香水をふりかけて
ピンでもいい それに止めておいては
さうしたら
風が手際よく揉み消してくれる手筈になってる
さうだ 幾度もだ
そのやうにして
僕は希望に出し抜かれたんだ
悲しい悲しい別離もなく
ひそかに遁れてゆった女房の様にね
こうして僕は自分を宥める台詞って奴を憶えたんだ

土砂降りの雨が降ってる宵
街灯の下に立ってみた事があるかい
それは隋分いい気持ちだ
ずぶ濡れになってるとね
あの知性っていふ奴が目に見えて
昇華するんだ
誰も闇に盲ひて僕の存在に気付かずにゐるので
そんな時に思ひ切って自分に甘えてみるんだ
きっと自分の確かさにはぞっとするよ

そんなものだ
びっしょり濡れたらこれ以上は濡れて
るんぢゃないってね
僕はそう心に言ひ何かせてゐる男を
見た事があるんだ

 紹介した作品は別冊の「麻生久作品特集(戦前、戦中作品より)」に収録されていました。1940年の同人誌『裸群像』創刊号に載せたものとのことです。米寿を迎えたという作者の20歳ごろの作品です。20歳でこれだけのことが書けるのかと驚きました。「僕は希望に出し抜かれた」「僕は自分を宥める台詞って奴を憶えた」「あの知性っていふ奴が目に見えて/昇華する」「そんな時に思ひ切って自分に甘えてみる」「きっと自分の確かさにはぞっとするよ」などなどの詩語、フレーズは、現代でも書ける詩人はいないのではないかと思います。最終連の「僕はそう心に言ひ何かせてゐる男を/見た事があるんだ」というフレーズも見事です。この「男」はもちろん「僕」のことですが、ここまで自分を突き放せることが20歳で出来るとは! 「造花」というタイトルも青春の象徴として適切だったと思います。

 作者は、拙HPでも何度も紹介させていただいている詩誌『沙漠』の代表者です。詩誌名は『荒地』に倣ったことを今回初めて知りました。作者の作品にはこれまでも教えられることが多かったのですが、戦前の1940年に20歳の若さでこんな秀作を書いた詩人とは思いもしませんでした。こうやって昔の作品を公表することに異論もあるようですが、私はそうは思いません。こんな風に公表してもらわないと、私たちには知る機会が少ないのです。その意味でも年配の詩人にはぜひ若い頃の作品も発表していただきたいものだと、今回改めて感じました。



   
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