きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.2.26 河津町・河津桜




2008.3.5(水)


 昨日から1泊で箱根に行ってきました。先妻の娘とはたまに呑むのですが、今回は1泊でゆっくり呑みたいという希望で、しかも箱根の温泉でと、若い奥様とは思えないジジむさい要望でした。さらに洋室は味気ない、和室は嫌、和洋室がいいというワガママ。ネットで調べて仙石原温泉のホテルを予約しました。箱根は雪が降るという生憎の天気でしたが、スタッドレスタイヤに履き替えていましたから、雪道もどきの国道1号線のドライブも楽しみました。

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 写真はホテルの部屋から箱根外輪山・明神、明星の雪景色です。3月に入っての雪は、箱根でも珍しいかもしれませんね。
 何をするというでもなく、酒屋でドッサリ酒を買い込んで、酒浸りの一夜でした。私は思った以上に呑めませんでした。久しぶりの娘との酒盛りに少々緊張気味だったのかもしれません。しかし、娘とはいえ若い女性と二人きりの酒は、いいもんですなあ(^^;

 ホテルをあとにして風祭の「神奈川県立生命の星・地球博物館」に行きました。こういう処がお互いに好きなのは、やはり親子だなぁと思います。じっくり観ていたら結局、閉館まで居てしまい、私たちが最後でした。この博物館は3度目だろうと思いますが、時間に余裕を持って観ると、なかなか良い処です。
 小田原駅まで送って、再会を約束して別れました。娘も結婚して4年ほど、たまには息抜きもしたいのでしょう。しかし、それにしても酒が強いや。



高橋重義氏詩集『秋のぴあの』
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2005.6 福島県福島市 私家版 非売品

<目次>
序の歌
秋の譜
海市 4       泣き濡れて 7    トレモロの夕 10
水上楽の夕べ 13   夕べの諧調 16    秋のぴあの 18
冬の譜
歌の器 22      冬桜の賦 24     星祭 26
冬の夫婦
(ふたり) 28  リラの冬 30     雪の墓標 32
さよなら 34
春の譜
萌 38        音楽 40       桜・幻想 42
薔薇への回帰 44   五月の盟約 46    風の譜面 49
知りたい 52     雨かもしれぬ 54   愛猫記 56
夏の譜
さるすべりの樹の下で 60          アンダルシアのひまわり 63
朝の眠り 66     青い帽子 68     憧憬 71
ダリアの庭 73    草原 75       海の微風 77
蝉しぐれ 80     ほおずき 83
ふたたびの秋
秋 はるかな出雲 86 玻璃の舟 88     ささやき橋の秋 90
黎明調 92      琥珀の秋 94     秋桜の賦 96
歌いつつ歌いやまぬもののあわれ 98
後書・五線譜に綴りて 102



 秋のぴあの

秋のぴあのを弾きやめたのはだれですか
こうして青い譜面に落葉が限りなく降っているのに

白い霧のような指づかいが鍵盤をわずかに離れたのはどうしてですか
それとも まだかすかにうすくふれのこっているとでも

ずっと続く並木道に陽が交互に影を縫いあげるのはなぜですか
峯のはるかから曲想さえも追憶のようにとどいてきて

本のページのなかほどに置いた柿色の莱が翳るのはどうしてですか
ひそやかな音楽のふた文字を読みとってしまうそのことさえも

青い部屋の内側にひっそりと狭霧
(さぎ)っているのは雨なのですか
もしかすると峡谷のほうで朝の反響があったとでも

爪色に曇るわずかな憂愁の影絵が奏でるのですか
もういちど もうひとたび 指を重ねてほしいと

ふたたびの秋
みずいろのこころの緑がおさえようもなく

ぴあののうえを舞いはじめるのはどうしてですか
赤や黄の落葉が空から数限りなく降ってくるこの季
(とき)

 普通は四季を春から呼ぶことが多いように思いますが、ここでは秋から始まっています。後書では「万物の凋落を意味する秋の季を偏愛しつつ」とありますから、それで「秋の譜」が最初になったのでしょう。ここではタイトルポエムでもあり、「秋の譜」の最後を飾る「秋のぴあの」を紹介してみました。各連2行の抒情豊かな作品です。ピアノ演奏には本来、季節は関係ないのでしょうが、やはり秋が一番似合っているのかもしれませんね。この作品を読むと特にそれを感じます。



詩とエッセイ『ガーネット』54号
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2008.3.1 神戸市北区
空とぶキリン社・高階杞一氏発行 600円

<目次>

神尾和寿 あの頃/フィリップ君 4
高階紀一 日曜日、夕焼けを見た 8
大橋政人 チューリップ壊れた/水の先頭が走ってきた 12
嵯峨恵子 お金をください/くたばれ!いかにも詩人/裸体の林を抜けて 32
廿楽順治 病院/うえをむく/新大津歩道橋 42
阿瀧 康 ちゃんと、話そう 48
追悼 寺西幹仁
略歴 17
追悼 18
 土手には菜の花 神尾和寿/寺西幹仁さんを綽む 大橋政人/寺西さん 阿瀧 康
 さようなら、幹ちゃん 高階紀一
寺西幹仁 作品抄 25
寺西幹仁 遺稿 27
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.54 28
 村山精二/水嶋きょうこ/小笠原鳥類/田中郁子
1編の詩から(25) 金子みすゞ 嵯峨恵子 30
詩集から NO.52 高階杞一 54
●詩片
受贈図書一覧
ガーネット・タイム 62
 馬鹿だから 神尾和寿/注目を浴びる? 高階紀一/行分け詩の会葬礼状と宮沢賢治 大橋政人
 お店 廿楽順治/人類の果てにあるもの 嵯峨恵子/秋から冬へ 阿瀧 康
同人著書リスト 67
あとがき 68



 ちゃんと、話そう/阿瀧 康 Adaki Yasushi

  0 紐(reprise)

部屋の 蛍光灯からぶら下がっているスイッチの紐、
四十年ちかくそのまま下がっていて
とくに痛んだ様子もない

四十年というと かなりこちらと重なる時間だ
「こちら」って何か、といえば この部屋の中で「ちょっと暖かくて」
あまり角がないもの。

驚きがないのは ほとんどそれが予想の内だったからで
そんなことにいちいち驚いているやつはいない、というところまでも
予想のうち。

  幸福だね。しかし、すこしは変化したかな?

変化といったって 出ていくものばかり
取り込むことはあっても時間が経つと出ていってしまう 傷が治るみたいに
その繰り返しの果ての なんだか重くるしい影の出どころ

――今も紐を引っ張った
紐の
影は? この部屋のどこかに落ちている。

痛むことのなかった紐の 影が、
この部屋のどこかに必ず ほそく
落ちている。

 今号は、昨年11月に亡くなった詩学社・寺西幹仁社主の追悼号になっていました。享年47歳。私は原稿のことで一度だけ連絡をとりあったことがあった程度の付き合いでしたが、その若さと詩に殉じた最期に今も胸が痛みます。ご冥福をお祈りいたします。
 また、今号では「シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.54」で拙文も載せていただいきました。御礼申し上げます。

 紹介した作品は「ちゃんと、話そう」という総題のもとに0〜6の章立てになっています。ここでは冒頭の「0 紐(reprise)」を紹介してみましたが「四十年ちかくそのまま下がってい」る「スイッチの紐」という視点が新鮮です。最終連の「紐の 影が、/この部屋のどこかに必ず ほそく/落ちている」という発想にも驚かされました。とても私の「予想の内」ではない作品です。




詩誌『烈風圏』第二期13号
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2008.1.15 栃木県下都賀郡藤岡町
本郷武夫氏方・烈風圏の会発行 非売品

<目次>
本郷 武夫 旅にて…越後妻有 2      山形 照美 天王山の夏 6
山形 照美 天王山の秋 9         小久保吉雄 コップの中の嵐 12
坂本 久子 事務所からの風景1 14     坂本 久子 事務所からの風景2 15
白沢 英子 「こうせん駅」のむこう 16    松本ミチ子 オフィスの番人 18
たのしずえ おばあさんの畑 20       都留さちこ 線路の向こう 22
高澤 朝子 シルクロード 25        金子一癖斎 呼吸する 28
石神かよ子 密通 32            金敷 善由 薔薇のけものみち 34
菊池 礼子 定め 36            柳沢 幸雄 部屋の中は宇宙だった 38
深津 朝雄 臼(五) いすすの目 40



 「こうせん駅」のむこう/白沢英子

この道が
やがて行止りになることは
予想していた
いや はっきり判っていた
いや もう見えはじめているのだ
誰もが行き着く終点の
こうせん駅
そこからは 別の道が待っているのだ

肉体を脱ぎ落とすから
美醜もないさ
お金の持ち込みも ご法度だから
富豪も貧困もないさ
地位も半分もふっ飛んで
肩書きの名刺が水底に沈んでいくだけ
だから
誰もが平等で
自由な道なのさ

いつの間にか乗り換えてしまった私は
天高く飛翔していた
軽がると
いそいそと
水平線を掠め
地平線を越え
雲集線を突き破り
星たちと乱舞し
悠遠の太陽を真近に捉え
宇宙の果てを見ようとしたら目が覚めた

眼下の豆粒のような衆落の中に
私はストンと落ちていた

「黄泉駅」の駅長さんらしい人が
手を振っていた

 「こうせん駅」とは何処の駅かと思いましたら「黄泉駅」だったのですね。たしかにそこでは「美醜もない」し、「富豪も貧困もない」ですね。発想としておもしろかったのは「誰もが平等で/自由な道なのさ」というフレーズです。ちょっと考えれば判りそうなことですが、盲点でした。改めて死後の平等と自由を期待してしまいます。そう考えると「軽がると/いそいそと」逝くのも悪くはないなと思えてきます。死も前向きに捉えた佳品だと思いました。



   
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