きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.2.26 河津町・河津桜




2008.3.12(水)


 詩部OB会2日目・最終日の今日は、幕山公園の梅林を散策しました。湯河原駅で本日のみ参加の男を待ち、定期バスで公園に向かいましたけど、平日というのにずいぶん混んでいました。満員でバスを1本遅らせたほどです。
 きょう来た彼とも30年ぶりでしょうか、昔から老けた感じでしたから、まったく変わっていないように見えました(失礼!)。

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 写真は散策路にて。ほとんどの梅が満開で、紅白が競い合っていました。幕山は柱状の奇岩で有名なのですが、その岩を背景にした梅林は何時間見ていても飽きないほどでしたね。
 昼食は近くの蕎麦屋に入ったのですが、どうせ観光地の蕎麦屋だからと期待していませんでした。しかしすぐに丁寧な蕎麦作りが窺えて、ちょっとびっくりしました。混んでいたにも関わらず応対も親切で、まったく意外でした。店の名は「しとど庵」と言います。あとで聞いたらけっこう有名な店だそうです。有名になった店というのは横柄になり勝ちで、私は敬遠するのですが、この店は違いました。幕山に行ったら寄ってみてください。お薦めします。

 と、こんなところでお店の宣伝をしてもしょうがないんですけど、OB会の方は小田原で流れ解散。何人かは喫茶店に行くということでしたが、私は早く帰れるものなら帰って、いただいた本を読みたかったので、そこで別れました。
 思いがけず楽しい2日間でした。正直なところ、昔の会社の人と一泊するというのは気が進みませんでした。詩を書いていたと言っても、半数は今は書いていません。現役でない詩人と呑んでもなあ、という気持だったのです。しかし、今は皆さんに再会できて良かったと思っています。詩は書いていなくてもポエジーがあることは、話の端々から判ります。面と向かって大上段で詩の話をするより、話の端々からポエジーを感じる相手が私には好ましいのです。そういう人たちでした。
 幹事さん、最後までお世話さま、お疲れさまでした。ありがとうございました。また来年も誘ってください!



小沢千恵氏詩集『ちりん』
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2008.3.10 東京都千代田区 花神社刊 2300円+税

<目次>
 T
言葉あそび
 一 ちりん 8   二 はな 10
↑矢印マーク 12   太陽と動物たち 16  水琴窟 20
水の記憶24
 U
船底 30       黒いリンゴ 34    烙印 38
空色の貨車 42    三月の戻り橋 46   餃子 50
楽山大仏 54     九塞溝  58     里人?(あなたは どこの人ですか?) 62
 V
おトラさん 66    着物 70       哲学の道 74
富士アザミ 78    蝶 82        苔売り男 86
山王祭 90      ローマの幽霊へ 94  雷 98
鳥魂 102       人・ひと・ひとが 106  雨あがりの空の下で 108
寒い朝 112
あとがき 114     装画 中島由夫



 言葉あそび

  一 ちりん

よなかにろうかのすみでふうりんがちりん
よなかにほしがひとつちりんとながれ
よなかにぼくのむねのなかでちりんとちい
さなさけびだれもしらないところでひるま
はみえないものがちりんちりんとじぶんの
ちからだけでうたってる
かあさんすきだよとうさんすきだよゆうこ
ちゃんもだいすき
だれでもだれでもこころのなかでよなかに
そっとねがってる
よなかにちりんちりんとうたってる


  二 はな

あかしろももいろうめのはな あかいみし
ろいみさんごのみかきねにそろってさきそ
ろう まんりょうせんりょうきみのまんり
ょうとやぶこうじ はるなつあきににわの
にんじゃがとんできて あかいみだいすき
たべほうだい あっというまにあかいみみ
えなくなって ひよどりとんでらいねんの
はるむこうのはやしで まんりょうせんり
ょうきみのまんりょうやぶこうじのはなが
いちめんにさくだろか

 エッセイ集や共著も多く出している著者ですが、詩集としては3冊目になるようです。ここでは詩集タイトルが含まれている冒頭の「言葉あそび」を紹介してみましたけれど、この作品は本詩集の中ではむしろ異質な部類になります。太平洋戦争直前に中国黒龍江省に生を受けた著者は、敗戦により家族とともに中国を脱出し、悲惨な状況に遭遇します。それらを元にしたUがこの詩集の中核を成していると思います。そして著者の詩作の原点とも考えられます。しかし、ここではあえて「言葉あそび」を紹介した次第です。

 著者はあとがきの中で「ちりん」とは私の心の中の祈りの言葉である≠ニも書いています。わずか5歳や6歳で体験した戦争の傷跡への慰撫の気持がこの言葉にはあるように思います。その具現化が「一 ちりん」であり「二 はな」だと云えましょう。「かあさんすきだよとうさんすきだよゆうこ/ちゃんもだいすき」とうたう「ふうりん」へ重ねる著者の思いが痛いほど伝わってきます。「きみのまんりょうやぶこうじのはな」とうたう「はな」も、平和な時代から見た戦争犠牲者への鎮魂歌のように感じられました。決して「言葉あそび」だけではない、この詩集を象徴する巻頭詩です。この時代だからこそ多くの人に読んでもらいたい詩集です。



詩誌『北の詩人』63号
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2008.3.10 札幌市豊平区  100円
日下新介氏方・北の詩人会議発行

<目次>
札幌雪祭り 写真・詩/佐藤 武 1     「北の詩人」60号を祝う/松元幸一郎 2
夜明け前−戦争前夜−/松元幸一郎 3    美しい国 日本/松元幸一郎 4
夜襲とだんご虫/松元幸一郎 5       優しさ/内山秋香 6
卒業式/内山秋香 6            雑巾如来/釋 光信 7
寺院での一駒/釋 光信 8         ふろ/高柳卓美 9
真実を求めて/岡本マヤ 9         平和な土地を求めて/たかはたしげる 10
横っ飛び マダガスカル/たかはたしげる 11  兄よ/佐藤 武 11
君なら頑強れる/八木由美 12        反戦を主張した僧侶達/大竹秀子 12
護憲/たかはしちさと 14          教育現場は危機/たかはしちさと 14
短歌 原子力発電所を詠う/濱村 彰 15   短歌二題/幸坂美代子 16
ひま人のしごと/かながせ弥生 18      ひっそりと抱く心/かながせ弥生 18
師が逝った/かながせ弥生 19        牛が偉いのは/倉臼ヒロ 20
茂子 22 雛かざり/阿部星道 21      本音の証言/もりたとしはる 22
なぜ詩を書くのか/日下新介 22
盗作かパロディか(永井浩氏への返信)/日下新介 25
村山精二の「北の詩人」60号からの紹介・読者から 24
「北の詩人」六二号感想 大竹秀子 27
「北の詩人」六二号感想 倉臼ヒロ 31
受贈詩誌寸感 日下新介 28
「ごまめのはぎしり」から 村山精二 30
「北の詩人」No.63 もくじ・あとがき 32



 反戦を主張した僧侶達/大竹秀子

第二次世界大戦中
岐阜県真宗大谷派明泉寺で
「戦争は罪悪」といったかどで
禁固刑になった彰元は
宗門の布教師資格を剥奪され
僧侶資格を最下位にされたことを
〇七年十月十九日に宗務総長が正式に謝罪された
同派の大垣教区は
「平和憲法」を改編しようとしている最中
「師の名誉を回復し復権と顕彰していかなければ」
と 決議している

彰元師は一八六七年明泉寺に生まれ
一七才で住職となり
東洋大学 大谷大学に学び
三十代後半から特命布教師として
全国的に活動し 慈元という名前だったが
五十代で大谷派門主として彰元と名のった

日本の中国侵略が全面戦争になり
一九三七年九月十五日出征兵士を見送りのさい
十月十日近隣寺院での法要のさい
「この度の事変について自分は侵略のように考える
戦争は沢山の彼我の人命を損し
悲惨の極みであり罪悪である」と話した
この言動により逮捕され 陸軍刑法の流言蜚語罪で
禁固四月の刑をうけ

この裁判中南京大虐殺がおきる
面会者に
「私はあくまで真の仏教の精神で行っている
決して頭を下げる気持ちはない」
この態度をつらぬき敗戦の年十月二十一日没す
死の直前孫から
「戦争が負けておじいさんの云う通りになったね」
といわれ にっこりうなずいたという

当時の内務省刑保局のほとんど全部
教義教理中に反国体思想の訴因を内包している
と 宗教者をとりしまり
キリスト教諸系統各種宗教へ弾圧した

伝統仏教僧侶では
三重県 真宗大谷派三宝寺住職 植木徹誠
東京 法華寺僧侶 猪俣秀道
名古屋 天台宗観音寺住職 日置即全
東京 日蓮正宗僧侶 藤本秀之助
豊橋市 真宗大谷派浄園寺住職 藤井静宣
名古屋市 真宗系僧侶 山本妙善
鹿児島 臨済宗僧侶 三浦聖典
反軍的反政府的言動により逮捕 送検されている
私は父の「殺生するな」の口癖が思い出される
(明石博隆 松浦聡三編「昭和特高弾圧史 宗教人に対する弾圧」より)

 「第二次世界大戦中」に「反戦を主張した僧侶達」がいたらしいことは知っていましたが、この作品のように具体的な名前を見たのは初めてです。不勉強で『
昭和特高弾圧史 宗教人に対する弾圧』を読んでいませんでしたので、大いに参考になりました。本来の宗教は人間の幸せを求めるものでしょうから、反戦であることは当然なことだろうと思います。しかし現実には宗教人が率先して戦争協力したのもまた、歴史が教えるところです。その中で「真の仏教の精神で行っている」と「決して頭を下げ」なかった彰元師には敬服しました。また最終連の僧侶名の列挙には驚かされました。これだけ多くの人たちが「反軍的反政府的言動」を行っていたわけです。その意味でも歴史的価値の高い作品と云えましょう。事実を記載するだけで反戦詩になるという見本でもあります。

 なお第3連の「人名」、「流言飛語」、第5連の「系等」は誤字と思って訂正してあります。ご了承ください。
 今号でも拙HPについて多くの頁を費やして紹介してくださっていました。御礼申し上げます。



個人詩誌『餐』30号
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2008.3.10 千葉県流山市 上野菊江氏発行 非売品

<目次>
*詩
巷の時間…2     ライフ・ライン…4  東京の雨傘…5
ヨルダン川…7    村…8        黄金の日…14
ちいさなうた…15   ロボット一座…16
*エッセイ
新しい年に…1    現代詩のまわりで…10
あとがき…17



 ライフ・ライン

手続きを待って並ぶこと三時間あまり
いかめしい制服には不似合いな
バラック建の国境事務所

手荷物を解き パスポートを開け
財布を浚ってお札をならべる
ジロリ睨まれてやがてOK

鉄柵がゆくてを阻み そのむこう
鎖をぶらさげた鉄柵が かさねて更に
そのもっと先には その国の観光バスが
旅人の乗り継ぎをまちくたびれているだろう

アレ!片側の柴折戸を抜け
ぞろぞろ行き来するおばさんたち
やさしい計らいのライフ・ラインだ
国を跨いであちらの町のスーパーヘ……

 おそらく中東あたりの「国境事務所」でのことでしょう。ものものしい検査の横を「ぞろぞろ行き来するおばさんたち」。それは「やさしい計らいのライフ・ライン」で、なんと「国を跨いであちらの町のスーパーヘ」行くとのこと。「旅人の乗り継ぎ」には厳重を極めても「ライフ・ライン」は緩やかであった、ということですが、人間の生活の偉大さには国境警備など吹き飛んでしまうというわけですね。もちろん旧東西ドイツの壁のような国境もありましたが、中東の人たちの意外な面も見せているのかもしれません。ただの旅行者とは違う、作者の視線を感じた作品です。



   
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