きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.2.26 河津町・河津桜 |
2008.3.24(月)
市役所に行って、市県民税の申告をしてきました。結局、市県民税は納めなくて良いことになりました。38年間払い続けた住民税から解放されたわけで、感無量…、とまではいきませんでしたね。所得税も払わなくても済むでしょうが、自動車税や僅かばかりの原稿料源泉徴収、そして消費税、果ては入湯税と、生きている限りは税金、税金、さらに税金、です。サラリーマンの頃は気にもしていませんでしたが、本当に税金が多いなと実感します。それが国民のために適正に使われていれば文句はないのですが、大企業のためであったり、米国のためであったりすると、誰のための税金だと言いたくなりますね。税金の使われ方にもっと関心を持つ必要があるなと考えた、市役所訪問でした。
○詩誌『ERA』10号 |
2008.3.31 埼玉県入間郡茂呂山町 北岡淳子氏方・ERAの会発行 500円 |
<目次>
詩
清岳こう 目をさまし/汽車に揺られて 4 北岡淳子 木漏れ陽 8
瀬崎 祐 水鏡についての断片 10 佐々木朝子 それでも私達は手を振り―― 12
日原正彦 捜風悲歌 16 吉野令子 書簡 19
畑田恵利子 永遠 22 中村洋子 零下の散歩道 24
田村雅之 和布刈(めかり)神事を遡行する 26 田中眞由美 トウキョウ「]」――果てしない欲望のゆくえ 29
エビキタス
小川聖子 戦争詩の抒情――自然の作用について 32
小島きみ子 「放棄の美学」と林に降る霜の音 35
清岳こう 恰爾濱(はるぴん)だより 詩の授業・住宅事情 36
瀬崎 祐 火星人の形 38
佐々木朝子 抒情でもなく 40
竹内美智代 マンモス「リューバ」 41
田中眞由美 共生という方位 42
中村洋子 もったいない読み方 43
畑田恵利子 ERA合評会に参加する 44
藤井雅人 詩――ことばならざるものへの接近 45
詩
藤井雅人 珊瑚礁 46 川中子義勝 ユディト/エステル 48
大瀬孝和 奇妙な審理 52 小島きみ子 v 光の帯 54
竹内美智代 ある日 56 小川聖子 予見 58
橋浦洋志 虹の地殻 60 岡野絵里子 聖夜 66
中村不二夫 T家の写真 69
連載 橋浦洋志 詩と小説と 72
1〜9号 掲載作品一覧 75
編集後記 80
T家の写真/中村不二夫
かつて私の住んだ家の向かいにT家はあり
一家は母親と子供六人の大家族だった
幼い頃から私は毎日のようにその家に出入りし
長男のEからは大好きな野球を教えてもらい
初めて後楽園球場にも連れていってもらった
(まだ金田正一が国鉄で剛速球を投げていた)
長女のKは銀行に勤めながら 夜学に通い
「若者たち」の佐藤オリエに風貌が似ていた
体のでかい次男Sは 中学を出て自衛隊に入り
その後消息不明 家には戻ってこなかった
その家の居間には死んだ父親の写真に加え
見知らぬ異国の英雄の写真が飾ってあった
T一家にそれがだれだと聞いたことはなかった
後で知ったが 韓国大統領Rの写真だった
ある時 長女Kの縁談が壊れたことを知った
(T家に興信所の調べも入ったという)
数年後 長女はひっそり見知らぬ町に嫁いだが
聡明で美しいその人とは不釣合な相手だった
町内全員 道端で集まってはそのことを悲しんだ
ぼくが横浜の実家を去る少し前のことだった
(ぼくは東京に住む女性と結婚することになり)
皆と駅で別れ 夜の伊勢佐木町通りを歩いていた
(その日 K大の学友たちが歓送会を開いてくれた)
ほくの視界に入ったのは T家の長男Eの姿だった
泥酔し 路上で目を釣り上げ 奇声を発していた
「何でもないよ いいからお前は自分の家に帰れ」
それがEとの最後の別れの言葉となった
それきり ぼくはT家を訪ねたことはない
もうそれはとうに記憶の彼方に消えていたことだ
ぼくの日常にT家の人々が現れることはなかった
いったい ぼくはだれに何を書いてきたのだろうか
それはだれも傷つくことのない寓話の羅列で
ぼくの言葉は だれ一人救うことができなかった
人の差別という貧しい抽象の前でぼくは無力だった
あの頃は みんなが無言で一つの丸い食卓を囲んだ
あれほど 美しい暮らしの形を他には知らない
もう一度 ぼくはT一家の人たちに会いたい
ぼくもそんなT家の一員であったことを誇りに
「T一家」は在日韓国人の家庭だったのでしょう。今でもあるのかどうか分かりませんが「長女Kの縁談が壊れた」という話は、私も子どもの頃に聞いたことがあります。私事で恐縮ですが、私が在日韓国人と始めて接したのは高校2年のときです。文芸部の後輩がそうでした。それを知っても特に違和感を持つことはなく、正月には彼の自宅に呼ばれて、姉上のチマチョゴリに感嘆したことを覚えています。そこで詩人だという彼の父親の第1詩集を頂戴したのが、生れて初めて詩集をもらったことになります。ちなみに詩集名は『記憶の空』、詩人は日本現代詩人会会員の李沂東氏です。
幸いにして私は在日韓国人・朝鮮人に対する不当な扱いを見聞きすることなく現在に至りましたが、「T家の長男Eの姿」は日常的なことだったのだろうと思います。それを直接体験してきた「ぼく」の、「だれに何を書いてきたのだろうか」という問い、「それはだれも傷つくことのない寓話の羅列で/ぼくの言葉は だれ一人救うことができなかった/人の差別という貧しい抽象の前でぼくは無力だった」という自省の思いに共感します。そして「ぼくもそんなT家の一員であったことを誇りに」思う姿に、民族の違いを越えた人間のあり方を考えさせられました。
○詩とエッセイ『槐』6号 |
2008.3.1 栃木県宇都宮市 矢口志津江氏他発行 非売品 |
<目次>
詩 矢口志津江/愚問…2 憧れ…4
峯尾玲子 /只見線…6 法被…8
詩を読む 矢口志津江/石棺…10 峯尾玲子/池・雪…14
エッセイ 矢口志津江/捨てると拾う…16 峯尾玲子/舘岩の家(三)…18
編集後記 20
表紙 空木 海 題字 栗原都子
愚問/矢口志津江
古今東西
とかく女は訊きたがる
「私とお母さんと
どちらが大切なの?」
右手と左手 いらない方は?
と 訊くのと同じ
女たちは知っている
血にはかなわないことを
男たちも知っている
女の父や兄弟にかなわないことを
それでも 訊く
「私と妹さんとどちらが大切なの?」
男は面倒くさいことが嫌い
ずっと聞こえないふりしている
黙ったままで確かめ合えるのに
すっかり怠けて
つまらないことばを投げかける
「どちらが大切? ねえ」
男が夕刊をめくっている寒い夜だ
たしかに「愚問」ですが、その反論≠ニして「右手と左手 いらない方は?」としたところが秀逸だと思います。順接で考えれば右手と左手 大切な方は?≠ニなるのでしょうが、それを逆接としたことで、より強調されたと云えましょう。「男は面倒くさいことが嫌い」というのも、その通りですね。そして最後が見事に決まりました。「男が夕刊をめくっている」だけでも成り立ちますが、「寒い夜だ」が付いたことで、より深い作品になったと思いました。
○詩とエッセイ『沙漠』250号 |
2008.3.20 福岡県行橋市 沙漠詩人集団・麻生久氏発行 450円 |
<目次> ■詩■
いる、いらない/犬童かつよ 24 4 枝見靜人/雪炎
ちょっと違うだけで(14)たくあん/宍戸節子 25 5 中原歓子/鏡の前で
よいどれ/織田修二 26 6 河野正彦/雄のかまきり
風紋/麻生 久 26 7 柳生じゅん子/白菜
8 坪井勝男/ジャンクフード
■エッセイ■ 9 平田真寿/ネクロフィリア萌え
沙漠創刊のころ/河野正彦 28 10 河上 鴨/疾走
“沙漠”草創期の頃/中原澄子 30 11 千々和久幸/無呼吸症候群
あの頃、そして今/塚田照代 31 13 原田暎子/月子
夢の後始末/千々和久幸 33 13 木村千恵子/白い山茶花
ボランティア・ポエトリー/藤川裕子 36 14 菅沼一夫/人よ 罪多き
創成期の沙漠/麻生 久 39 15 坂本梧朗/犬魂昇天
「沙漠」の眼力/各務 章 43 17 福田良子/てまりうた
私が“沙漠”に撒いた種/枝見静樹 44 18 おだじろう/分身
「沙漠」によせることば/板橋謙吉 45 20 椎名美知子/夢の架け橋
戦後詩の一角を形成していた/高橋喜久晴 46 20 藤川裕子/黄昏どきに
21 光井玄吉/蹌踉と
■書評■ 22 風間美樹/卒寿
おだじろう詩集/坂本梧朗 47 22 秋田文子/伝令
水平になってきた時間/柳生じゅん子 48 23 柴田康弘/帰途
蹌踉と/光井玄吉
一人の友は
ベットの上で
上も下(しも)も管(くだ)に繋がれ
鳴呼 俺は生き過ぎたよと
呻吟している
もう一人の友は
アルツハイマーになって
俺はアルツハイマーではないと
言い張って
断呼として病院に行く事を
拒否している
そして病身だった俺だけが
今では何とか元気に過している
人生僅かに二十年
皆人若きは戦火に散ったのに
不思議にあの戦争を潜り抜けて
八十迄も生きて来た
美しく生き美しく死ぬ
美辞麗句などお断り
いよ\/人生もどんづまり
恥を重ねて 蹌踉と
鳴呼 俺達は生きてゆく
立てばシャックリ
座ればバタン
「八十迄も生きて来た」というのですから、私の父親と同じぐらいの年代でしょうか。「人生僅かに二十年=vというフレーズを見ると、改めてすごい時代だったのだなと思います。その年代の「友」たちを語った作品ですが、最後の「立てばシャックリ/座ればバタン=vがよく効いています。もちろん、立てば芍薬座れば牡丹、のパクリですけど、このくらい開き直ってくださると爽快感さえ感じますね。お元気に書き続けてください。
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