きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.2.26 河津町・河津桜 |
2008.3.28(金)
午後から表参道の「NHK青山荘」で、小沢千恵さんの新詩集『ちりん』の出版記念会が開かれました。70人近い人が集まって、盛会でした。私はカメラマンを頼まれましたので、勇んで愛用のデジタル1眼レフと交換レンズも2本持って行きましたけど、なんと故障!
あとで判ったことで、カメラ本体の故障ではなく、記憶媒体のコンパクトフラッシュ(CF)がダメになっていました。初めての経験です。今後はCFも予備を持つことにします。肝心の撮影は、予備に持って行った小型のデジカメでなんとか凌ぎまして事なきを得ましたが、癖で持ち歩くデジカメが役立った格好です。それでダメなら携帯がありますけど、携帯で、はいカメラマンでございますとは言えませんからね(^^;
そのカメラで撮ったのが上の写真です。まあ何とかサマになっているかな。スピーチしているのはご主人。奥さんの出版記念会にご主人が現れるというのは、私のこの20年ほどの経験で3度目です。どうも理系のお仕事をなさっていたようで、お話しもおもしろかったです。
2次会は近くのお洒落な喫茶店。アルコールはビールしかないというのでそれにしましたが、女性のほとんどはコーヒー・紅茶にケーキ。呑み仲間がいなくて、珍しくそこで解散となりました。私も酔うこともなく帰還。詩集も良かったし、集まった人たちは詩人ばかりでなく画家も多かったようですから、それなりに高級感はあったのですが、やっぱり適度にお酒がないとね。目的の半分がお酒という私にはちょっと辛いものがありましたけど、私が異常なのかもしれません(^^;
○詩誌『馬車』38号 |
2008.4.5 千葉市美浜区 久宗睦子氏発行 非売品 |
<目次>
扉詩…白梅 田中順三 九輪草・冬の祭り…丸山乃里子 4
あそび夢…小丸由紀子 8 猫の名前・雪… 洋子 10
M海岸駅…春木節子 14 池に向かって歩いていくと・青い水蓮…馬場晴世 16
はまなし摘み・からっぽ…山本みち子 20 果樹園日乗・抄([)…本多 寿 24
招待席 陽を浴びている庭…野木京子 28 D51の汽笛…新延 拳 30
〔詩集評〕馬場晴世詩集に…中上哲夫 34 田中順三詩集に…若狭雅裕 36
山茶花・冬薔薇…久宗睦子 38 鷺娘・通夜…ついきひろこ 42
祭り囃子・行列…田中順三 46
〔評論〕生物文学…堀田のぞみ 50
座標軸…堀田のぞみ 54
MEETING ROOM 55 後記・同人名簿
猫の名前/ 洋子
生まれたばかりの捨て猫を飼ったことがある
名前はつけなかった
生き物を飼えないアパートだったから
里親を探していたから
なんていう名前? と聞かれ
つけていない と答える
「かわいそうに」
今日まで呼ばれていた名前が
いつか別の名前に変わるかも知れないのに?
母猫は声の調子で
仔猫を呼び分けたりするのだろうか
それでも何気なく〈ニャン〉と呼ぶと
振り向くようにはなっていた
彼女はそれなりに戸惑っただろうか
仔猫に名前はつけなかった
けれどあの時
どんな性格? と聞かれていたら
相手がげんなりするほどに
猫なで声で答えただろう
始まろうとする秋の空
飛行機に乗って北へ向かった猫
「生まれたばかりの捨て猫を」一時的に「飼ったことがある」という作品ですが、本当は飼いたかったんだなということがよく伝わってきます。主はタイトル通り「猫の名前」をつけなかったことですが、その理由を様々に述べているところに作者の猫好きぶりが覗えます。それが端的に出ているのが「どんな性格? と聞かれていたら//相手がげんなりするほどに/猫なで声で答えただろう」というフレーズです。ここは巧いですね。最終連もきれいに決まりました。名前をつけてもらえなかった捨て猫ですが、作中人物の愛情が猫には伝わったなと思った作品です。
○文芸誌『彗星』3号 |
2008.3.20 静岡県掛川市 土屋智宏氏編集・彗星の会発行 500円 |
<目次>
靴下/石岡 雲 04
わたしのシネフィルム・イマジカ/美濃和哥 10
空駅/井村たづ子 14
高千穂神楽 神いますなら神いませども/美濃和哥 16
バルボン/土屋智宏 18
編集後記 130
題 字 鈴木蝶光
表紙絵 斎藤永良
写 真 掛川市仁藤町 大獅子 *「バルボン」の舞台、掛川市の祭りで行われる、獅子舞(昭和三十年代)。
返信/井村たづ子
寂しさがはらりはらりと落ちていきます
この世の暗がりに
月も星も別の空に帰っていきました
あなたに焦がれては流れていく
うすい女の水血
昔、魂の近所に住んでいる人が言いました
旅の切符をひっそりと改札しながら
風の青い文庫の裏には
密書が
花開いています
目次には書かれていませんが、扉詩です。「この世の暗がりに」愛想をつかして(?)「月も星も別の空に帰っていき」、「あなたに焦がれては流れていく」のは「うすい女の水血」。この「水血」という詩語は良いと思います。そして「昔、魂の近所に住んでいる人が」「旅の切符をひっそりと改札しながら」言ったのは、「風の青い文庫の裏には」「花開いてい」る「密書」があるよ、ということ。それが「返信」されてくる、と採ってよいでしょう。「寂しさがはらりはらりと落ちてい」っても、いつかは「返信」がある、と読み取りましたが、形而上詩の典型のような佳品だと思いました。
○詩誌『青い階段』86号 |
2008.3.25
横浜市西区 浅野章子氏発行 500円 |
<目次>
春の雨/荒船健次 2 Long long time ago/浅野章子 6
携帯電話/鈴木どるかす 8 噂の話/森口祥子 10
ごたごた/坂多瑩子 12 かけぬけた風/福井すみ代 14
わたしの秘密/小沢千恵 16 記憶/廣野弘子 18
ピロティ 福井すみ代・鈴木どるかす・小沢千恵
編集後記
表紙/水橋 晋
かけぬけた風/福井すみ代
台風が去って
太陽がのぞき始めた
か細い松の枝に居を構えたクモ
丸い背に小さな日差し
さっきから余念がない巣作り
こちらから向こうへ
向こうからこちらへ
雨に濡れたできかけの糸に結んだビーズが
一粒一粒球になって光ってる
くもに与えられた自然の摂理のみごとさ
時を忘れて佇む
そんなわたしの存在など目もくれずに
ひたすら城を作り上げる沈黙の行動
獲物を物にしようなんて蔭すらみせず
神秘の営みを見せるだけ
やがて できた城は
不等辺五角形
いびつであろうと…
命を捧げる見事さ
突かれたわたしの体の中を
風が走る
糸にしたたる露のなか
一城の主眠る
「台風が去って/太陽がのぞき始めた」ときに「か細い松の枝に居を構えたクモ」のことを書いているだけの詩ですが、なんとも温かみのある作品だと思います。もちろん蜘蛛は「獲物を物にしようなんて蔭すらみせず/神秘の営みを見せるだけ」ではありません。しかし、それをそのように見る「わたし」の心境が読者には納得できるでしょう。「突かれたわたしの体の中を/風が走る」というフレーズに、「わたし」のハッとした思いが表出され、そこに読者は安心もし、胸の中に温かい風が走る≠フを感じるのです。最終連も安堵感を与える佳品と云えましょう。
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