きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.3.12 湯河原町・幕山公園




2008.4.6(日)


 午前中は地区内のお宮さんで神事。本当なら毎年祭典ということなんですが、数年前から2年に一度に変わりました。今年は祭典がない年になり、神事だけを行うというものです。私は今期は自治会の組長の順番で、神事に参加せよとのことで行ってきました。2礼2拍してオシマイ。あとは境内にテーブルを出して懇親会となりました。神社の桜は満開を過ぎましたが、それでも充分に楽しめます。口元に持っていった杯に花弁が一枚ホロリと…。
 というわけにはいきませんでした。午後からクルマで駅まで出かけるので、お酒はやめて烏龍茶。みんなからはなぜ呑まないんだと責められましたけど、理由を言って勘弁してもらいました。なかには私の酒好きを知っている人もいます。「すみません、嫌いではないので、辛いンです」、と謝りながら、ホント、ツラカッタですね(^^;


 というわけで午後からは昨日に引き続いて新宿・天神町の日本詩人クラブ事務所に向かいました。理事会です。今度の土曜日に開催される3賞贈呈式の準備状況を中心とした議題でした。出欠の葉書は私のところに戻ってきますから、その報告をしましたけど、120名を越える勢いです。内心では100名を越えればいいなと思っていました。それを軽く越えているので、主催者側としては嬉しい限りです。ご出席くださる皆さん、ありがとうございました。ご都合で欠席の皆さんも次回はぜひおいでください。呑みながら懇親できればと思っています。

 その他の議題としては、会計担当から2007年度の会費納入状況が報告されました。意外に未納者が多かったので驚いています。2007年度は初の試みとして、宛名シールに会費納入年度を記載するということをやってみました。いつまで収めているか判らなくなった、という人がけっこう多いためです。それで気付いて納入してくれる方が多かったので、すっかり安心していましたけど、蓋を開けると例年よりも未納者が多い…。もちろん、会計担当はこれから督促状を出すと思いますので、途中経過で一喜一憂することはないでしょうが、ちょっとショックだったのは事実です。小手先の改良ではなく、会員の皆さまへの意識改革が必要なのかもしれません。

 それで思い出すのは、亡くなった先輩詩人の言葉です。組織に加わったからには義務が3つある、というものです。
 会費を納めること、会議に出席すること、作品を出すこと。
 その先輩は同人誌についての発言でしたから、全国組織に全てが直接あてはまるわけではありませんが、会議はイベント、作品はクラブからの依頼原稿と読み替えることができると思います。読み替えの必要がないのがズバリ、会費です。詩人クラブも今は法人化になって、政府から多少の補助金がでるようになりましたが、それはイベント毎で、金額も数十万という僅かなものです。基本はやはり会員・会友による浄財。政府や大きな出版社の丸抱えではありません。だから自由に発言でき、自由に活動できています。それをお含みおきの上、どうぞよろしくお願いいたします。



詩誌ONL96号
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2008.3.30 高知県四万十市
山本衞氏発行  350円

<目次>
現代詩作品
西森  茂 白秋先生の枳殻の木 2     宮崎真理子 春の足下      3
小松二三子 おもてなし     4     文月 奈津 アート       6
柳原 省三 君の使う言葉    8     徳廣 早苗 バランスシート   10
岩合  秋 涼しい夢      12     土居 廣之 初立っち      14
河内 良澄 春の日に      15     土志田英介 かわはら      16
浜田  啓 一時退院      18     福本 明美 しばらくはいかない 19
大森ちさと 空転        20     森崎 昭生 貧しき川      21
山本 歳巳 さくらさく/他   22     丸山 全友 K・Y       26
北代 佳子 友の病気      27     山本  衛 倚りかかる/他   28
大山 喬二 橡の木の森へ(11)/他31     下田 千平 夏の甲子園に舞う蝶 36
山本 歳巳 手の記憶(再録作品)38
俳句作品
瀬戸谷はるか 古き町名     40     文月 奈津 冬木の芽      41
寄稿評論
村上 利雄 ONL九十五号に思うこと 42
随想作品
秋山田鶴子 読みかじりの記   46     芝野 晴男 フレキシビリティー 47
評論
谷口平八郎 幸徳秋水事件と         柳原 省三 林嗣夫詩集
         文学者たち(9)44            『花ものがたり』 45
後書き             50     執筆者名簿           51
表紙 田辺陶豊《鳥Z》



 ていねん/山本 衞

停年−
めしのたねが停まりました
ぼくの生涯は
ひとさまの子どもを刻んでは喰ってきました

定年−
制度が出来たのは明治34年
全国の平均寿命四二、八歳の時代五十歳とした
死んでも働かねばならぬということのようでした

諦念−
あきらめるとはなにか
生まれ落ちてからずっとあきらめなかったことは
ありませんでした

丁年−
強壮の、一人前の年齢。現今満二〇歳をいう。
と広辞苑はいいます
いまだかつていちどもこの年にならずにきています

 定年を迎えた作者の感慨が、少し早めに定年を迎えた私にも伝わってきます。「明治34年/全国の平均寿命四二、八歳の時代五十歳とした」というのは知りませんでしたが、その頃は平均寿命を越えて定年を考えていたのですね。現在とは違う発想に驚きます。最終連の「丁年」を「いまだかつていちどもこの年にならずにきています」というのは作者の謙遜でしょうが、「強壮」を考えると、そんなに遮二無二やったことはなかった、と採ってもよいかもしれません。あるいはこれから迎える…。それもまた楽しいことだなぁ、と思った作品です。



詩誌『展』71号
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2008.3 東京都杉並区 菊池敏子氏発行
非売品

<目次>
●不機嫌な恋人:菊池敏子          ●口:山田隆昭
●ひらがな文字:河野明子          ●丘の上:名木田恵子
●日常:五十嵐順子             ●みんなで後記



 不機嫌な恋人/菊池敏子

ねぇ まだ私のものになるのはいや?
けっして急がせたりはしなかったわ
けっこう時間かけたんだもの
そろそろ私をよろこばせて

あの時のきっかけ
いまさら手放すわけにはいかないの
そもそも 私の気をひいて
その気にさせたのは そっちよ

さあ いいかげん私の手に落ちなさい
もやもやしたのっぺらぼうのままでいないで
私のありったけを総動員させて
きっと もっとよくしてあげる だから……

どこを どんなふうにしたらいい?
あまりに構い過ぎていた?
少し力を抜いてみようか
強引なやり方で よかった試しないもの

ああでもない こうでもない
押したり 引いたり
宥めたり すかしたり
あげく 情けなくなってきて ……

で どうにかこんなふうに折り合って
ため息まじりに思うこと
ほんと 不機嫌な若い恋人みたいね
詩の“ネタ”って

 前号に引き続いて主宰者の作品を紹介することになり、ちょっと恐縮ですが、しかし、この作品を紹介しないわけにはいかないでしょう。ヤラレタ! というのが正直な感想です。最終連までは本当の「恋人」同士の話として読んできて、最後にどう締めくくるのか興味津々でしたが、まさか「詩の“ネタ”」とは思いもしませんでしたね。作者のほくそえみが見えるようで、ちょっと悔しいです(^^;



詩誌『視力』5号
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2008.4.4 宮崎県宮崎市
亀澤克憲氏発行  500円

<目次>
■詩
本多 寿−ゆびがはしゃいでいる 2     幻耳物語 4
     草葬譜 7
外村京子−結(ゆい)10           誘惑 13
     この世知らず 15
亀澤克憲−池袋駅 17            屋敷跡 19
     庭 21
●魚眼  本多 寿 23  外村京子 24   亀澤克憲 26
表紙絵*ほんだひさし



 ゆびがはしゃいでいる/本多 寿

にぎやかな喫茶店のなか
あかるい窓ぎわのテーブルで
おしゃべりが弾んでいる
身をのりだした三人の女性たちの
くしゃくしゃの顔から
声のない笑い声がこぼれている

はなびらのように
ひらいたりとじたりする手から
花粉のようにこぼれ
とびかっているもの
眼を凝らし、耳を凝らしても
ききとれない会話

しずかだが、はげしく
うずまきはじめる吃音
ゆらぐ手のひらが
波がしらのよう
ゆびさきから
しぶきがとびちっている

こわだかな者たちの会話は
遠く、タバコの煙にかすんで
ひとところ、そこだけが
麦畑のようにかがやいているテーブル
ゆびがヒバリとなって囀っている

あゝ僕なんか、まるで眼中にない

 聾唖者同士の手話なのでしょう。「はなびらのように/ひらいたりとじたりする手から/花粉のようにこぼれ/とびかっているもの」、「ゆらぐ手のひらが/波がしらのよう/ゆびさきから/しぶきがとびちっている」「おしゃべり」の前では、「こわだかな者たちの会話は/遠く、タバコの煙にかすんで」いくしかないでしょうね。最終連も見事に決まった、さわやかな作品だと思いました。



   
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