きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.3.12 湯河原町・幕山公園 |
2008.4.7(月)
午後から小田原の「銀の椅子」という喫茶店で開かれた、西さがみ文芸愛好会の運営委員会に出席してきました。愛好会には総会がありませんから、運営委員会が最高議決機関になります。2007年度の事業報告、会計報告、2008年度の事業計画、予算がいずれも承認されました。
2008年度の事業計画でトピックとなるのは『文芸作品に描かれた西さがみ』という本の刊行です。この2月初旬に愛好会の展覧会が開かれましたが、特別展は同名のものでした。小田原地方を訪れたり居住した文人が、作品で扱っている地が意外に多いのです。例えば永井荷風が『地獄の花』で国府津から小田原を描いたり、島崎藤村が『熱海土産』で小田原・早川を描いたりしています。特別展ではそれらの箇所を抜き出して楽しんでもらったのですが、今度はそれを本にしようというものです。
私はもちろん賛成しましたけど、播摩代表の企画書の緻密さには驚いてしまいましたね。本の体裁や執筆者を念入りにするというのは当然としても、費用の徴収方法、回収方法まで綿密に書かれていて、その無理のなさに納得しました。本の出版にあたっては費用をどうするかが一番のネックになります。それをサラリと書いていて、私とは違う才能を感じてしまいました。
今年11月を目標に出版する予定です。その推進委員に私も任命されましたから、微力ながら力を尽くしたいと思っています。自費出版は何度もやってきましたが、こういう企画本に携わることは、実は初めてなんです。その面でも興味津々です。出来上がったら拙HPでも宣伝しますが、どうぞお買い求めください。本を片手に、描かれた地元の場所を訪れる、文芸愛好者としてはこれ以上の楽しみはありません。
○中村不二夫氏・川中子義勝氏編『詩学入門』 |
2008.3.30 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 3800円+税 |
<目次>
まえがき 中村不二夫 1
第一部 21世紀 詩の可能性
マイノリティの詩 石原 武 講師 10
伊東静雄――詩法と課題 溝口 章 講師 25
グローバリズムと現代詩 筧 槇二 講師 46
パネルディスカッション 米澤順子・慶光院芙沙子・滝口雅子をめぐって パネリスト 北岡淳子・白井知子・原田道子 60
衰微する言葉と生命感 塩原経央 講師 93
詩人・島崎藤村――春の行方 橋浦洋志 講師 110
第二部 根源への遡行・詩生成の場へ
シュルレアリスムと詩学 松浦寿輝 講師 128
能の詩学 松岡心平 講師 150
フィンチの嘴――さすらいの遺伝子言語論 森 常治 講師 171
季賀の詩を読みながら、現代の詩の方向を探る 比留間一成 講師 188
意味創発の機制 藤井貞和 講師 212
ポール・ヴァレリーの詩の源泉 山田 直 講師 248
芭蕉と現代詩の間(あわい) 新延 拳・鳥居真里子 講師 259
詩界フォーラム[補] 日本詩人クラブの存在理由――創立五十周年の記録 中村不二夫 296
第三部 抒情・造形・批評――詩的現実を目指して
抒情、あるいは存在の震えについて 小林康夫 講師 306
先達詩人に学ぶ 西岡光秋 講師 349
私(わたくし)離れの詩とことば 原 子朗 講師 374
詩と音楽の関わりについて――バッハ・カンタータ第一〇六番の示唆するもの 川中子義勝 講演 388
エルヴィス/詩/場所(トポス) 中上哲夫・水野るり子 講師 416
あとがき 川中子義勝 446
講演一覧 450
まえがき
日本詩人クラブは、詩人や詩の研究者、音楽家などが集う詩的文化サロンとして一九五〇年五月に設立されました。それ以降、現在まで欠かさず続いているのが、各界で活躍する人たちを招いての月例の講演会、研究会です。本著は、近年に行われた研究会の講演記録を一冊にまとめたものです。すでに内容は日本詩人クラブの機関誌『詩界』に掲載されておりますが、ここに装いも新たに一般読者に向け『詩学入門』として世に送り出すことになりました。
詩は読むにしろ、書くにしろ、「真・善・美」を尊ぶ素朴な人間感情が核になっていなければなりません。すなわち大切なのは書き手、読み手を問わず互いの独善を排し、そこに在るポエジーを共有しようとする無垢の心です。本著は一般の入門書にありがちな、読者にある種の文学的な予備知識を要求することは一切ありません。能や俳句など日本の古典から、ヴァレリー、シュルレアリスムなどの海外詩の受容、あるいは世界のマイノリティの詩の紹介、さらに日本の女性詩の系譜が自由な発想で縦横無尽に語り尽くされています。
ここにわれわれは、〈平易〉にして〈深遠〉、〈前衛〉にして〈不易〉の内容を持った、これまでにはないユニークな『詩学入門』を世に送り出すことができたと自負しています。すべてが閉塞したこの時代状況にあって、本著が真の詩の愛好者に読まれることを願ってやみません。
二〇〇八年一月 編者 中村不二夫
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うれしい本が届きました。もちろん私はこの本が土曜美術社出版販売の企画本として刊行されることを事前に知っていましたが、税込みで3990円という値段に躊躇していたのです。内容は日本詩人クラブの機関誌『詩界』に掲載されたものですから、判っていますし『詩界』を引っぱり出せば読むことができます。それなのに4000円近い出費をしなければならない…。と、若干悩んでいたところに贈られてきました。私も執筆者の一員ということで1冊贈呈と書かれていました。「第一部 21世紀 詩の可能性」の「衰微する言葉と生命感 塩原経央 講師」のコーディネーターとして発言したことが活字になっていた、というわけでした。
そんな個人的なことはさて措くとして、ここでは中村不二夫さんの「まえがき」を紹介してみました。日本詩人クラブの歴史、この本の刊行意図が端的に示されています。たしかに、研究会講演は「ある種の文学的な予備知識を要求する」ものではありませんでした。私はこの本の範囲、2001年9月から2006年11月までの講演の半分以上を聴いていますが、そう断言できます。「これまでにはないユニークな『詩学入門』」です。詩が好きな全ての人にお薦めの1冊です。
○みんなの詩集『夢ぽけっと』 2008年春 |
2008.4.1 名古屋市名東区 ポエム・ライブラリー 夢ポケット刊 非売品 |
<目次>
【自然】
自然の中で 花田みのる 10 春のつの 坂本のこ 12
待ち遠しい春−梅の花− ささきみちこ 14 雲雀 むかいちよ 16
白い花 伊藤公也 18 樹 小山千秋 20
自然 井上良子 22 花粉の 困惑 植木容子 24
色 三島慶子 26 雑草 下村美子 28
山は 坂本京子 30 休止符 江口あけみ 32
風のほうき 藤本美智子 34 子ネコ 高丸もと子 36
キス 安川登紀子 38 どこまでも 村松良美 40
雪の技 大熊義和 42 湖の一瞬をデジタルカメラで 小林しんじ 44
記憶 磯純子 46 犬とカラスのひとりごと 中東ゆうき 48
ひなたぼっこ たきかずこ 50 穏やかな風 塗田としお 52
水仙 さとうじゅんこ 54 桃園 南郷芳明 56
梅の畑 金親尚子 58 菜の花 鰐渕欣子 60
きゅうりのまきひげ 柘植愛子 62 ブロッコリースケール あわやまり 64
連銭草(れんせんそう) 言寺はる 66
【人間】
ほほえみ 南郷芳明 72 不思議 塗田としお 74
いちばん会いたいもの 磯純子 76 自分と自分らしさ あわやまり 78
ゼロからのスタート 愛原麗子 80 ワタシって裁判官? 宇部京子 82
わたしが 笑うと 村松良美 84 にんげんに 井上良子 86
ママとあかちゃん 大熊義和 88 あいさつ 鈴木初江 90
朝の風景 金親尚子 92 ふぅむ 三島慶子 94
遠い日々 むかいちよ 96 一人旅 伊藤公也 98
いのち 下村美子 100
欣二さん 藤村旬 102
車椅子を離れた時 田中たみ子 104
失恋 安川登紀子 106
ひともじ 植木容子 108
棚田を 新井竹子 110
ほこり違い ささきみちこ 112
朝 高丸もと子 114
悪戯 西本みさこ 116
人と人の間に 中東ゆうき 118
強くて弱い人間 川嶋政枝 120
蒼い地球 花田みのる 122
雨音 宇部京子 124
【それぞれ】
春のはじまりの日 小山千秋 128
四月 藤村旬 130
かおり 藤本美智子 132
とんとん あしぶみ 鈴木初江 134
ま、いいか 西きくこ 136
ねこがきた 石川孝子 138
ぼくはふみきりをわたって 川越文子 140
ギラギラ夕日は 西本みさこ 142
タペストリー 新井竹子 144
ありがとう たきかずこ 146
とんでいった凧 石川孝子 148
小児病棟・注射 坂本のこ 150
好き さとうじゅんこ 152
いろとりどり 川越文子 154
おじぎ 坂本京子 156
あいさつ 清水とし子 158
黒猫 江本あきこ 160
ししおどし 柘植愛子 162
私は 太陽に―― 愛原麗子 164
平和とは 小林しんじ 166
時間(とき) 江口あけみ 168 十五夜 清水とし子 170
携帯電話 川嶋政枝 172
花と妙薬 田中たみ子 174
黒いブーツ 鰐渕欣子 176
表紙絵 伊藤香澄
編集 水内喜久雄
キス/安川登紀子
心を
じかに
なめられて
いるような
唇から「心」へ。「キス」とはそういうものかもしれませんね。短い詩ですがキスの本質を捉えていると思いました。
○合同句集『零』4集 |
2008.4 神奈川県小田原市 木村和彦氏発行 非売品 |
<目次>
無神論・・・・・・・木材 和彦 2 夏椿・・・・・・・・青木たけを 4
おらが街・・・・・・伊藤 道郎 6 猫柳・・・・・・・・片岡 進 8
夏野・・・・・・・・川合 亨 10 春の雨・・・・・・・川合 昌子 12
十五夜・・・・・・・鈴木 百代 14 一人旅・・・・・・・簑島 春男 16
エッセイ
井上篤氏のこと・・・青木たけを 18 俳句と写真・・・・・伊藤 道郎 19
古稀・・・・・・・・片岡 進 20 電車の中で・・・・・川合 昌子 21
ジグソーパズル・・・鈴木 百代 22 石畳探訪吟行めぐり・簑島 春男 23
あとがき・・・・・・木村 和彦 24
題字・・・・・・・・川合 昌子
無神論 木村和彦
初日浴び無神論ではいられない
寒椿いつからか人住まぬ家
思春期のふくらみほどの猫柳
花曇り心どこかに置き忘れ
玉葱は原始地球の重さかな
行先を教えてくださいかたつむり
捻花の拗ねてるつもりもないらしい
夏野ゆくあれはたしかに猿田彦
あの日大人が泣いた八月十五日
秋の夜のどこかでアルゼンチンタンゴ
椋の木に椋鳥群れる不思議かな
秋力魚焼く俺の自由はこんなもの
ハンガーに十六夜月を掛けておく
落葉掃く七十五年を生きて来て
め
水仙は親のない子の瞳のような
西さがみ文芸愛好会でご一緒させていただいている木村さんより頂戴しました。
俳句は門外漢で、紹介の任ではありませんが、「初日浴び…」は素人の私にもよく伝わってきます。日頃は無神論を任じていても、初日の出を見ると神を信じたくなる…、という解釈で良いかと思います。「思春期の…」は、猫柳のふっくらふくらんだ様子を、思春期の女の子の胸になぞらえているのでしょう。「秋力魚焼く…」も<俺の自由>と好対照で、これは詩でも使えそうです。
当たり前ですけど、俳句もポエジーが大事なんでしょう。それを学ばせていただきました。ありがとうございました。
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