きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.3.12 湯河原町・幕山公園




2008.4.22(火)


 山梨県の富士五湖周辺には多くの洞窟があります。風穴とも呼ばれていますが、富士山の噴火の際にできた洞窟で、その数知れず、と言ってよいでしょうね。拙宅からはクルマで1時間ほどと、意外に近いのです。今日はそんな洞窟巡りをしてきました。30年ほどの昔、真夏に涼を求めて行ったことがある程度で、春先の今頃は寒いかなと思いましたがそうでもありませんでした。洞窟内部は一定温度と言われていて、それも実感しました。

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 写真は「天然記念物富岳風穴」から外を見たものです。普段はなかなか見られない風景で、光と闇のコントラストが詩的といえば詩的でしょうか。竹の手摺りも風情があって、俳人や歌人なら2ッ3ッの作品が出来上がるところかもしれません。詩らしきものを書いている身は、ただ記憶にとどめておくだけです。いずれ記憶の底から湧き上がってきたものを、、、と思うだけで、そんなにうまい具合に出てきてくれないところが凡才の悲しさ、ま、久しぶりの洞窟探検≠楽しんだということにしておきましょう(^^;



季刊『詩とファンタジー』3号
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2008.6.1 神奈川県鎌倉市 かまくら春秋社発行
838円+税

<目次> ●表紙絵・やなせたかし
やなせたかしの詩と絵−ホオノキ−2 賢治の含羞−4
●詩とイラストレーション
そうしていつも…−きういじゅーす 絵・木内達朗 6
バカ−高浜陽南子 絵・由沢春美 8     音のない海−羽風俊治 絵・雨宮尚子 10
小さな夜−アベナギサ 絵・山口はるみ 12  手−岩永優美 絵・梅川紀美子 14
こころ夢−君島七樹 絵・渡辺 宏 16    奥の細道−小林俊英 絵・水上多摩江 18
万華鏡−杉山磨哉 絵・スズキコージ 20   さくらのころ−高塚鎭昭 絵・大西秀美 22
ひととき−中島真悠子 絵・鍋倉孝二郎 24  春風−棚田悦子 絵・味戸ケイコ 26
珍客騒動記−春風小石 絵・倉部今日子 28  技−えむなお 絵・宇野亜喜良 44
北高街道−村田茂郎 絵・黒井 健 46    春日−重成九里 絵・高橋幸子 48
旅立ち−織紙千鶴 絵・金沢まりこ 50    いつもすり抜ける君−いまいずみしんのすけ 絵・ささめやゆき 52
電話の扉−磯 純子 絵・北見 隆 54    永遠の夏休み−坂井 蓉 絵・メグホソキ 56
イチゴとハチミツ−さんぽや 絵・杉浦範茂 58  放課後の黒板−みやもとおとめ 絵・はせがわゆうじ 60
特集・愛の唄 好きリスト/雲の歌−谷川俊太郎 絵・松永禎郎 76
●ファンタジー
座敷わらし−山崎洋子 絵・山田 緑 30   世界の果て博物館−高橋順子 絵・瓜南直子 62
蛇に嫁がされた娘の物語−うえま・つねみち 絵・後藤貴志 80
●特集・竹久夢二の愛と詩
詩・竹久夢二 解説・井上明久 絵・安藤早紀
(1)宵待草 34               (2)紡車 37
(3)絵草紙店 39              (4)川 41
(5)たそがれ 43              (6)かへらぬひと 70
(7)最初のキッス 73            (8)わすれな草 74
(9)古里の海 75
●歯とファンタジー
歯の幸福−やなせたかし 66         うちの連中ったら……−三木 卓 絵・小谷智子 68
●エッセイ
「銀河鉄道の夜」は、なぜ<本当の>ファンタジーか? 天沢退二郎 絵・矢吹申彦 84
●シリーズ 少女だったとき 少年だったとき
花と犬−大田治子 絵・朝倉めぐみ 88    赤いリンゴ−嵐山光三郎 絵・飯野和好 90
●月のかけら 作品集 絵・吉野晃希男 92
●お便りのコーナー/執筆者・画家プロフィール 94
●表詩記/編集後詩−やなせたかし 96



音のない海/羽風俊治  
絵 雨宮尚子

「親友だよね」って言われて
悲しくなった
あらためて口に出されたことに
寂しくなった

でもね
あとでわかった
確認しないと
安心できない人がいるってこと

声が与えてくれる
心地よい安らぎ
音のない海は
たしかに気味が悪かったよ

 珊瑚礁を泳ぐたくさんの魚の絵が添えられている詩です。私もよくやってしまうのですが、「あらためて口に出されたことに/寂しくなった」り憤ったりします。それをこの作品は「確認しないと/安心できない人がいるってこと」だと理論付けているように思います。さらに素晴らしいのは最終連の「声が与えてくれる/心地よい安らぎ」というフレーズです。「あらためて口に出」す効用は「声が与えてくれる/心地よい安らぎ」なんですね。むかしスキンダイビングをやっていた頃に「音のない海は/たしかに気味が悪かった」ことも思い出しながら鑑賞した作品です。



詩誌『鳥』50号
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2008.4.10 京都市右京区
洛西書院・土田英雄氏発行 500円

<目次>
なす・こういち/寺の庭 2         なす・こういち/照っている 4
岩田福次郎/道行 
Camino          中東ゆうき/輪廻 14
中東ゆうき/鬼は内か外か 16        元原孝司/蘇生 18
元原孝司/こころ 20

やっぱり、与謝野晶子みたいに……/内部恵子 22
作家の自殺を考える−川端康成(後編)/鬼頭陞明 26

植木容子/この先 30            植木容子/それから 32
榎本三知子/何かおかしい 34        榎本三知子/砂の像 36
佐倉義信/高木敏子『ラストメッセージ』に寄せて 38
流れゆく−朝−/竹山 香 44
孤高の漢字学者 白川静先生略史(メモ)/土田英雄 47
<特別寄稿> 神保町裏/新井正一郎 50
立花隆氏と香月泰男/なす・こういち 53
読み解く詩−河野仁昭『小庭記』/土田英雄 54
表紙・カット/田辺守人



 鬼は内か外か/中東ゆうき

鬼は外
鬼は外と
鬼を追い払いすぎて

何もこわいモノがなくなった

人のために生きていた鬼は逝った
そして今
人の中に鬼が生まれた
豆が撒けないところに生まれた
隠れ鬼
こわいモノがなくなった隠れ鬼は
金棒集めに熱中している

鬼が島に住まないで
神の面をつけ
角は両手の中に隠し持つ

現代に桃太郎は
あらわれない
だから
人が鬼になるしかない
隠れ鬼を倒す鬼に

現代こそ
鬼は内
鬼は外
福は内
福は外
しっかり見極め
豆を撒かねばならない

 「鬼を追い払いすぎて/今/何もこわいモノがなくなった」というフレーズにハッとします。鬼を追放したあとに生まれたのは「人の中」の鬼。汚いもの、気に入らないものを追い払ったあとには、追い払われたものが追い払った者に住むという痛烈な逆説は、現代社会への警告であると云えるでしょう。「人のために生きていた鬼」を復活させなければ「豆が撒けないところに生まれた/隠れ鬼」を暗躍させるばかりです。「現代に桃太郎は/あらわれない/だから」「隠れ鬼を倒す鬼に」「人が鬼になるしかない」という連には現代の不幸の根源を見る思いです。「鬼は内か外か」、考えさせられた作品です。



季刊詩誌『天山牧歌』79号
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2008.4.1 北九州市八幡西区
天山牧歌社・秋吉久紀夫氏発行 非売品

<目次>
中東イスラム圏の詩(11) 現代イランの詩 二篇…秋吉久紀夫訳
 エムラン・サラシーの詩 飢蛾の饗宴…2 願をかける…2
(詩篇) 先島の結線文字…秋吉久紀夫 4
    巣立ち行くあなたへ…稲田美穂 7
    現代ベトナムの詩二篇…秋吉久紀夫訳 6
(評論) 知られざるミャンマー――その暗闇の正体とは―― 秋吉久紀夫 8
身辺往来…27
受贈書誌…27
編集後記…28



 飢餓の饗宴/エムラン・サラシー 秋吉久紀夫訳

彼女は心と花瓶を
窓辺に置いている
王子の誰かが道を通り過ぎる時
彼女を飾り立てた真新しい馬車に引き上げ
彼と一緒に夢幻の宴に連れて行くのに都合がよいから

ひとりの可哀相な子供が
値段の安い靴に乗ってやって来て
彼女をひき連れ
彼と一緒に
飢蛾の饗宴に連れ立って行く (1968)

 エムラン・サラシー(1947〜2006)。テヘランに生れる。現代イランの代表的な詩人。詩集に『水の中で泣き叫ぶ』『霧の中の列車』『途中の駅』『一七番目』『一〇〇一個の鏡』『夜明けの風に吹かれる』『突然の一瞥』『子供の頃の名前でわたしを呼んでおくれ』などがある。テヘランにて心筋梗塞で逝去。

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 エムラン・サラシーの詩2編のうちの1編を紹介してみました。「王子」と「一緒に夢幻の宴に連れて行」ってもらおうとしながら、実際には「ひとりの可哀相な子供」によって「飢蛾の饗宴に連れ立って」しまったと解釈できますが、イランの現実をうたった作品なのかもしれません。「可哀相な子供」の形容に「値段の安い靴に乗ってやって来」たという言い回しもおもしろく鑑賞しました。しかし、「夢幻の宴」に対する「飢蛾の饗宴」は、まだ王政であった1968年当時のイランの現実として考えると、そうおもしろがってばかりもいられないな、という思いを強くした作品でもあります。



   
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