きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.3.12 湯河原町・幕山公園 |
2008.4.26(土)
特に予定のない日。終日いただいた本を読んで過ごしました。
○アンソロジー『丹の山』9集 |
2008.4 神奈川県伊勢原市 1000円 中平征夫氏方連絡先・丹沢大山詩の会編 |
<目次>
新たな挑戦/丹沢・大山詩の会代表 岡本湧水
「丹の山」第九集発刊に寄せて/古郡陽一
上村邦子/刀 他 10〜11 高林智恵子/郭公 鳴いて 他 12〜14
きなこ/芋ほり 15 福原夏海/世の中で一番怖い物 他 16〜17
大橋ヒメ/夏に思う 他 18〜20 松田勇樹/こころ 21
中平土天/覚醒 他 22〜26 山口良子/風物詩 他 27
土 百/ベトナムの旅 他 28〜29 川口征廣/思い出 他 30〜31
神谷禧子/ある夜のこと 他 32〜33 小倉克允/いま仙人 他 34〜37
早川綾香/夢見る稲田 他 38〜41 こころ/ある朝 42
松田太智/秋 43 芝山ISAO/流れ 他 44〜47
岡本湧水/収穫祭序曲 他 48〜51 今井公絵/六地蔵 他 52〜56
麻生任子/ひとり静かに 57 川堺としあき/命づかい綴れ織り 58〜62
松田政子/校歌 他 63 沙謝幸音/家族 64〜65
あかしけい子/友よ 66〜67 ゆ き/験雨の後に 他 68〜69
古郡陽一/美ら海 他 70〜74 松本せつ/七変化 75
瀬戸恵津子/ある日(秋) 76 鈴木定雄/梅雨の花 77
吉田涼子/蜘蛛の巣 他 78〜79
あとがき 80〜81
アスファルト/上村邦子
おやおや?
灰色の路面が
太陽に灼かれて
こい影 うすい影
道路工事の跡の
四角い線が
あちらにも こちらにも
ひと気のない
住宅街の裏通り
ふまれたり
けずられたりして
いつのまにか
一枚のアート
長方形の枠の中
石ころがひとつ おちていて
おやおや?
こんなところに
どこでも ドアー
この作品を拝読して、やられた!というのが正直な感想でした。実は私も「道路工事の跡の/四角い線が/あちらにも こちらにも」あるのを見ていて、「一枚のアート」だなぁと思っていたのです。それを書かれてしまいましたから、悔しがって拝読していくうちに最終連では「どこでも ドアー」が出てきました。これは私も考えが及ばなかったところですから、思わず手を打ってしまいましたね。作者の柔軟な思考と感覚に敬服です!
○詩誌『やまどり』44号 |
2008.3.20 神奈川県伊勢原市 丹沢大山詩の会発行 非売品 |
<目次>
収穫の秋に/岡本湧水 1
作品ノート
心の旅/芝山ISAO 2 ひとり語(ご)と/芝山ISAO 2
思いは叶う/こころ 2 心はいつも青春/小野秀行 3
梅が咲く/早川綾香 3 山を見つめて/早川綾香 4
つばめ/ゆき 4 あにいもうと/ゆき 5
瞑想/赤司けい子 5 幸せって・・/赤司けい子 5
命/山口良子 6 焦げつき/山口良子 6
モネか 千代か/松本せつ 6 生(殖)老病死/川堺としゆき 6
春よ来い/大橋ヒメ 7 古くなったアルバム/大橋ヒメ 7
キューリ/神谷禮子 8 手紙/吉田涼子 8
心の灯(ひ)/吉田涼子 8 わらびーちゃん/沙謝幸音 9
私のアート/今井公絵 9 小学校のケヤキ/福原洋子 9
「冬の窓」/高林智恵子 10 「真珠色の花」/高林智恵子 10
旅の誘い/小倉克允 11 ささやかな旅/中平土天 11
こころざし/中平土天 11 老いる/古郡陽一 12
天道虫(てんとうむし)/岡本湧水 14 暴走族/岡本湧水 14
歴史の皮肉/岡本湧水 15
ほっと(hot)新年会/吉田涼子 15
手紙/吉田涼子
きょうの風は強い
はやく書かないと
雲の便箋が
どんどん流されて
飛んでいってしまう
なのに終日
峰に寝ころんで
雲を遣り過ごした
西の空に
光り始めた夕星
あれは
はなから書くはずもなかった
手紙の
終止符か
「雲の便箋」という詩語が良いと思いました。第2連の、早く書かなければいけない手紙や仕事があっても、「なのに終日/峰に寝ころんで/雲を遣り過ごした」という経験を持つのは私だけではないでしょう。そこも上手く捉えていると思います。そして何より最終連が佳いですね。「西の空に/光り始めた夕星」を「手紙の/終止符か」としたところが見事です。短い詩ですがポイントを押さえた佳品だと思いました。
○詩誌『青衣』126号 |
2008.4.20 東京都練馬区 青衣社・比留間一成氏発行 非売品 |
目次
<表紙>…伊勢山峻
月影と…比留間一成 2 白い途上…井上喜美子 6
時の層…上平紗恵子 10 ていちゃん…伊勢山峻 12
そのまま…表 孝子 14 聞こえているのです…表 孝子 16
水音…河合智恵子 18
「日塔聰」(3)…布川 鴇 22
河童の煙管によせて…26
伊藤桂一 菊地貞三 川田靖子 来楢美津子 春木節子 同人
平灰…34
<あとがき> 目次…26
月影と/比留間一成
−清光奈何愁
川に脛まで入って
少年が漣(さざなみ)を立てている
――お月様洗っているの
兎さんがよく見えるように
誘発され 空に向って
皓(こう) 皓 皓 と叫ぶ
塒の烏が飛び立ち
くゎあ くゎあと鳴く
木の葉が散る
少年は迎えに来た母親に連れられていった
お使いの帰り道か 道草は叱られたろう
手をとられて嬉しそうな
見上げる月は 心なしか微笑み
かがやかに照らす
今宵 満月
今号は比留間一成氏の譚詩集『河童の煙管』特集号で、所縁の詩人たちがあたたかい評を寄せていました。だからというわけではありませんけど、今号では比留間一成氏の作品を紹介してみました。「兎さんがよく見えるように」「お月様洗っている」という「少年」の感性には瑞々しさを感じさせられますが、それ以上に、「道草」を「叱られ」るかもしれない「母親」に、「手をとられて嬉しそうな」少年の姿に「微笑」ましさを感じます。それが最終連の「見上げる月は 心なしか微笑み」に出ているのでしょう。童話の1頁を開いているような印象を受けた佳品です。
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