きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.3.12 湯河原町・幕山公園




2008.4.29(火)


 午後から日本詩人クラブ事務所で理事会が開かれました。5月10日に総会が予定されていますので、その打ち合わせが主な議題でした。総会は毎年のことで、先月あたりから準備も進んでいますから、特に大きな問題点もなく終了、そのあとは法人名称変更についての説明を行政書士のA氏から受けました。

 A氏は任意団体の日本詩人クラブが法人化したときにお世話になった方で、学生時代に詩も書いていたということから会友になってもらいました。そのA氏に再度ご登壇願って、今回の政府の思惑をお尋ねしたという格好です。
 結論から言いますと、現在の有限責任中間法人日本詩人クラブは、一般法人日本詩人クラブとなりそうです。法改正で従来の中間法人は一般社団法人か一般公益法人になりますが、公益法人格を取得するのはほとんど無理で、一般社団法人が現実的です。基本的には名称変更だけです。しかし総会の議決が必要と法的に求められていますから、5月の総会に諮る必要があります。おそらく執行部原案通りに可決されるでしょうが、それにしても度々の法改正だなと思います。

 朝令暮改とまでは言いませんけど、名称変更ひとつだけでもクラブにとっては大きな損害です。印刷物やゴム印など全て変更しなければなりません。そんなところも立法府・行政は考えてほしいものですね。
 この12月から名称変更される予定です。これまでの任意団体・日本詩人クラブ、有限責任中間法人日本詩人クラブ同様、一般社団法人日本詩人クラブもどうぞよろしくお願いいたします。



山佐木進氏詩集『絵馬』
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2008.4.25 茨城県龍ヶ崎市
ワニ・プロダクション刊 1200円+税

<目次>
T
駿河 8       藍染川 11      同行二人 14
おとずれ 16     まわり道 20     まひるざかり 23
絵馬 26
U
湾岸にて 30     おいてけ街道 33   慰霊堂 36
声 39        新年 42       六月 44
V
泪橋 46       待つ 49       雨あがり 53
いわい橋 54     牡丹町 56      夏の終り 60
あおぞら 61     香取の海 62
あとがき 66



 絵馬

立飲み処で
ほろ酔いぎみになり
ガード下のせまい商店街を行く

常に酔っていなさい 詩に酒に
誰かのそんな言葉にいきおいづいて
もみじどきの
しなやかなおかみさんのいる食堂で
にこごり飯 をつくってもらう

いきあたりばったりに宝くじを買い
ひとしきり
当った気分になって歩く
どこを向いても他人の肩
 あなたのことは一生忘れません
そんな出会いを
わたしはいくつ持っているのだろう

神宮橋の森の入口で
三枚の絵馬がすれちがった

I wish I will get
all kind of toys
生気興隆
全家平安

先生が どうかいいひととめぐりあいをして
どうぞ幸せになれますように

 2年ぶりの第5詩集のようです。ここではタイトルポエムを紹介してみましたが、「常に酔っていなさい 詩に酒に」というフレーズが良いですね。「いきあたりばったりに宝くじを買い/ひとしきり/当った気分になって歩く」というのも庶民感情として分かるように思います。英文と四文字熟語の対応もおもしろく、最終連はそれを噛み砕いたフレーズと受け止めました。言葉は適切がどうか分かりませんが、高踏派の作品を読んでいるような気になった詩集です。



隔月刊会誌Scramble93号
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2008.4.27 群馬県高崎市 平方秀夫氏発行 非売品

<目次>
○濁りなく淀みなく…志村喜代子 1
○会員の詩…2
 福田 誠/横山慎一/遠藤草人/武井幸子/吉田幸恵/金井裕美子/渡辺慧介
○私の好きな詩 北川冬彦 〜その反骨精神〜 …遠藤草人 7
○群馬詩人クラブ詩画展/まほろばPステージ 6
○第36回朔太郎忌/大手拓次薔薇忌案内 8
○総会・現代詩ゼミ開催/あすなろ忌案内 8
○編集後紀…8



 月夜/金井裕美子

よい月夜ですね
ええ とても
よい月夜です

三人は
月を眺めた

わたしは 二重に
ぼくは 四つに
ぼくは 肥大して
見える 見える
と言いながら

近眼と
乱視と
老眼と

作りかけの詩集に
目を細め
手元を離し
眼鏡を上げて
小ささや
遠さや
月日のことを
少しばかり話した

月は
黙って
空にある
二重に
四つに
肥大して

 「二重に/四つに/肥大して」というのが、実は「近眼と/乱視と/老眼」であることに思わず笑みがこぼれる作品です。私もド近眼の上に乱視なので分かるのですが、日常生活に少なからず不便を来たしています。それにも関わらず、この詩には暗さを微塵も感じません。むしろ不便を楽しんでいるようにさえ見えますね。達観した「三人」に好感を持った作品です。



詩誌『弦』41号
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2008.5.1 札幌市白石区
渡辺宗子氏発行 非売品

<目次>
論理と情緒7−いかたべたかい−/畑野信太郎
火だるまの地平線/渡辺宗子
鍵老人のマザーグース(十六)/渡辺宗子
童話のほとりX/渡辺宗子



 火だるまの地平線/渡辺宗子

豪雪の列島を転がる
圧えられた季節の沸騰
水の巡りがこんなにも灼
(あつ)
脈搏ち血へ注ぐのだから
捨てきれない残骸の
ひとつ ひとつの木霊
 おおうー おおー う−
山鳴りの応答
炎焔(かえん)不動の丘士
雪中に統率された聯隊の
氷結した焔の灼熱なのだから
敗走する火の幻影

雪原を転がる火だるま
厳寒の吹雪く視界を
じりじりと焦がす
白樺 ナラ 夷松 アカシアの裸木
 おおうー おおー うー
確かな応答
森は抵抗に生きているのだから
燃えさかり命へ浄化する
切り断崖
(ぎし)に立つ
拒絶と渇望のはざま
下草の芽吹きを抱いて
火だるまが転がっていく
水の巡りがこんなにも灼く

雪中の兵士不動明の忿怒
地霊の煙硝となったのだから
国境のない雪
世界のスカイラインに
緊迫した世態へ
火だるまが はしる
火薬に点火された
バトンのように
未来へ木霊する
レバノン杉 糸杉 オークの雑木
 おおうー おおー うー
故郷の異うものたちの
さまざまな方位の呼応
冬の星座ラインに響く天啓
鳥獣座にも告げよ
不動尊の審判

地平の脈搏つ血
春を巡る乞食なのだから

 雪と火との対照がおもしろい作品です。「聯隊」という言葉からは旧日本軍を、「レバノン杉」からは現在の中東の紛争を連想させます。最終連にまとめられた「地平の脈搏つ血/春を巡る乞食なのだから」というフレーズで、過去から現在への歴史をイメージできます。地球は「脈搏つ血」であふれ、人間は「春を巡る乞食」にすぎないと読み取りました。



   
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