きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.4.28 富士・芝桜




2008.5.1(木)


 昨日に引き続いて清里のギャラリー開館準備のお手伝い。版画を300枚も飾って、ちょっと疲れました。300枚とは言ってもA2版ほどの台紙に5〜6枚入っていますから、実質は50〜60枚というところでしょうか。美術品ですから傷つけないように、汚さないように、慎重に慎重に。ガサツな私としてはよく出来たなと思います。
 予定より早く終わって、帰りは一般道を走ってきました。141号線→20号線→137号線→138号線→246号線と、昔、スキーやハンググライダーでよく使っていたルートです。所要時間は3時間半ほど。30分ほど予定オーバーしたのは、甲府で夕方の渋滞に捉まったから。まあ、誤差範囲でしょう。2日続けてのドライブを楽しみました。



西岡光秋氏句集『歌留多の恋』
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2008.4.20 群馬県伊勢崎市 紙鳶社刊 1800円+税

<目次>
無冠――新年…7   陽炎――春…37    心太――夏…83
林檎――秋…101    寒鴉――冬…129
 

あとがき…156     略歴…158       装幀 高島鯉水子



生涯を無冠の門の松飾り

去年今年犬の背に在るわが孤独

遠き世の歌留多の恋を拾ひをり

初明り反骨の日の透けて見ゆ

人が好き人が嫌ひで去年今年

数の子や箸ゆっくりと夫婦老い

六十路超ゆ遥かはるかの初明り

裏白や祖父母の齢迫りきぬ

初夢や夢見ることを夢に見る

かなしみはかなしみとして福寿草

 詩人・西岡光秋氏の、16年ぶりの第2句集です。私は俳句に門外漢で、紹介の任ではありませんけど「無冠――新年」から冒頭の10句を転載させていただきました。句集タイトルは3句目の「歌留多の恋」から採っていると思います。
 西岡光秋氏とは日常的に薫陶を受けていますので、第1句、第5句などはいかにも西岡さんらしいなと感じます。特に「人が好き人が嫌ひで」には打たれます。9句目の「夢見ることを夢に見る」も西岡詩のおもしろ味の根源かな、などと感じ入った句集です。



詩誌COAL SACK60号
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2008.4.25 東京都板橋区
コールサック社・鈴木比佐雄氏発行 1000円

<目次>
〈詩篇〉
制服 大掛史子 1             鴨方六条院の春 御庄博実 4
きみと樹とぼくと鳥のオマージュ 崔龍源 6  氷水/あしたもしも 林 木林 8
ランナー 新井豊吉 10           加賀友禅流し 徳沢愛子 12
「二度と」考 山本十四尾 13         青を着て/月ごよみ 下村和子 14
木霊 安永圭子 16             変身
(ヒト) 佐相憲一 18
不連続線 山本聖子 19           ずいぶん遠くまで 新延 拳 20
蜻蛉
(トンボ)玉 淺山泰美 22          たとえば 山本泰生 23
誘蛾燈 うおずみ千尋 24          振り子 星野典比古 25
指し箸/すかし箸 壷阪輝代 26       憂愁の窓 加藤 礁 28
からめて通り 森田海径子 29        初冬のいちょう並木 西村啓子 30
とやまの霞 倉田良成 31          雪女考 未津きみ 32
線引きの道 山本倫子 33          無念無想 酒井 力 34
暁に祈る/雨の日 秋山泰則 35       おはなし(一)/なきがら 平原比呂子 36
思えてくる 石川和広 38          帰りなん いざ 遠藤一夫 40
すこしずれた所から 杉本知政 41      刻み残して/樹影 鳥巣郁美 42
海流/空を開く 横田英子 44        タッカアサンガ シンダ 岡村直子 46
News くりはらすなを 47        石の郷愁  石村柳三 48
認知症 皆木信昭 49            写真 田部武光 50
遺書 宇宿一成 52             荒川びじたあーせんたあー 李 美子 54
ハイエナ 河野俊一 55           あなたの雨に向かって/人質 葛原りょう 58
カタカタ 豊福みどり 60          神よ、どうか許したまえ/秘密は鏡座する ロバート・フロスト 大山真善美訳 60
花のある教室(二) 七月 大山真善美 61   アジア詩行 高 炯烈・李 美子訳 62
泥 鳴海英吉・水崎野里子訳 66       浜田知章の眼光と勿忘草
(わすれなぐさ) 鈴木比佐雄 68
マンセーの雪/ヒロシマ・再訪 水崎野里子 71 赤いパラソル 上田由美子 74
四千度/世界で一番(ソネット)結城 文 75

『原爆詩一八一人集』英語版書評特集
ペンの力・詩のちから・言語の力 掘内利美 77
ヒロシマ・ナガサキを風化させない 平和への願いを世界に発信する 大生二郎 80
「悲痛と告発」を「平和を創る力」に 三浦安子 84
もしもこの地上に 木村淳子 87
The sounds of logos 尾内達也 90
『原爆詩一八一人集』英語版の意義と課題 小川聖子 95
テレシンカ女史からの手紙と詩−『原爆詩一八一人集』英語版の反響 水崎野里子 98
一翻訳者の思い 郡山 直 102
外国の小、中、高枚の教科書に載ったわたしの詩 郡山直(花 良治) 108
『原爆詩集』の「ミニ逆転ホームラン」 大山真善美 115

〈エッセイ・詩論など〉
久世さんと神戸で 淺山泰美 118
わが内景詩集『晩秋雨』を出版して 石村柳三 120
戦後詩と生活語詩 有馬 敲 125
「生活語詩」運動とは何か 鈴木比佐雄 137
『福田万里子全詩集』編集のためのお願い 福田万里子作品年譜 142
大掛史子詩集『桜鬼』日本詩人クラブ賞受賞を祝って 山本十四尾 163
石炭袋通信 165
浜田知章新詩集『海のスフィンクス』ご案内 168



 神よ、どうか許したまえ/ロバート・フロスト 大山真善美訳

神様、あなたに小さな冗談をたわむれにしてしまったことをお
許しください。
あなたが私にされている大きな冗談を許しますから。


 秘密は鎮座する

我々は輪になって踊り、知っているふりをする。
が、秘密は輪の真ん中に鎮座し、本当に知っている。

 宗教心を持っている人には叱られるかもしれませんが、「あなたが私にされている大きな冗談」は名言ですね。私は信仰心がありませんけど、人類の基礎知識だと思って聖書や仏教関係の書籍を多少読んでいます。そこでは先人や聖職者の智恵に感心するばかりですが、なるほど、「大きな冗談」と読むこともできるのだなと感心しました。
 「輪の真ん中に鎮座し、本当に知っている」「秘密」も名言でしょう。これは科学の真理とも考えられますね。
 いずれも小品ながら奥の深い詩だと思いました。



詩誌『みえ現代詩』75号
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2008.5.1 三重県鈴鹿市
津坂治男氏方・みえ現代詩の会発行 非売品

<目次>
冬のタンポポ…梅山憲三 1         何かが…桐山 勧 2
みどりの想い…松並久美 4         みなし児たちの小島…今唯ケンタロウ 6
休日の病院にて…森田茂治 7        雪夜…谷 流水 8
合歓の花…堀川孝子 10           旅の途中…岡本妙子 12
「お先にどうぞ」…田中彼方 14        胸さわぎ…矢野陽子 15
介護する前のこと1…村山砂由美 16     オオタカ…清水弘子 18
行くとし来るとし…伊藤善一 20       六十歳…海野美光栄 26
たましい…村上基子 27           階段…津坂治男 28

語りぶ詩…伊藤善一 21
連載一滴小説(13) サバン島…奈良光男 22
<詩誌管見(3)>「詩区」「かもめ」「葡萄」「笛」「天秤宮」…津坂治男 24
表紙絵 村上基子



 階段/津坂治男

あそこから射してる、
と孫
曇っているのにどうして暗くならないの、と訊いたすぐ後
西の峰から雪崩れのように注ぐ光の束
雲の隙間から…という説明はもう聞かない小一
「光の階段」と言いかけて 一瞬ぼくは戸惑う
実はあれはまた命を掬い取る上向きベクトルかも?
招き遺した誰か誰かを丹念に掌に拾いとる弥陀のまなざしかも…
東の首都では 63年前の空襲焼死者十万の
何千人かの霊が浄土の人別帳にまだ記されないでいる
あるいは故郷の家の隣で直撃弾を受けて微塵になった
ぼくらの身代り母子三人の魂も身体ごと繕われないでいる?
喜寿だと言って半ば浮かれているこの老人の丸ごと摂取も危なかしくて……

ロケットは こんな雲の中でも飛んで行くの、
と明日にでも宇宙に自分も行くつもりか 七歳
あっという間だからな、とは自分の旅立ちと重ね合わせて
いつか近づいているお迎えの 光の階段――

 高名な詩誌を初めて頂戴しました。ありがとうございました。紹介した作品は「光の階段」に対する過去の、「63年前の空襲焼死者十万の/何千人かの霊」、「故郷の家の隣で直撃弾を受けて微塵になった/ぼくらの身代り母子三人の魂」と、現在の「明日にでも宇宙に自分も行くつもり」の「孫」との対比を考えさせられます。そして「弥陀のまなざし」であり、「いつか近づいているお迎えの 光の階段」なんですね。「喜寿」の「ぼく」と「小一」「七歳」のお孫さんとの脈々と続く血の流れも表出させた作品だと思いました。



   
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