きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.4.28 富士・芝桜




2008.5.9(金)


 退職後、健康保険は2年間、以前の会社の健康保険組合のものが使えたのですが、その期限が来てきょう返納しました。国民健康保険に切り替わるのは返納証明書が到着してからですから、来週になるでしょう。つまり、この1週間は無保険状態です。まあ、仮に病気になって実費で支払ったとしても、後から清算されるようですから実害はないものの、なんか不安ですね。生まれてからこの方、無保険状態を経験していませんので特にそう思うのかもしれません。
 それにしても健康保険は国保がいいのか、日本文藝家協会の健保がいいのか迷うところです。文藝家協会の保険料は分かっていますから、結論は国保にいくら払うかで決まります。とうぜん安い方にします(^^; いちおう選択肢が二つあるということで安心していますけど、さあ、どっちかな!?



個人誌Moderato29号
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2008.5.25 和歌山県和歌山市
岡崎葉氏発行  年間購読料1000円

<目次>
●特集「往復書簡 命のメッセージを」 井野口慧子+岡崎葉
●詩作品 石下典子 いちかわかずみ 吉川彩子 羽室よし子 大原勝人 岡崎葉
●気になる詩人・気になる仕事 20+5 岡野絵里子
●詩合わせ 槇さわ子 岡崎葉
●連載エッセイ28 山田博
●カンタータ19 山本十四尾
●本自慢



 未来/岡崎 葉

そうして人は行ってしまった
一冊の美術書を手渡したまま
暗がりの坂道を上って
やわらかい言葉をつれて
しみのついた
pageの文字をたどれば
消え去った夜のあとには何もなく
わたしたちのつながりは
あのとき 終っていたのだった

ひびの入った断面を
見ようともせず
薄い紙の栞を抜き取るみたいに
人はいつもさりげなく
去っていくのだと

のこされたものだけが知る
青春の彷復の日々に
いまようやく未来の光が射しはじめて

 「詩合わせ」というコーナーに置かれた作品で、槇さわ子氏の作品を受けているのかもしれず、本当は対で紹介すべきなのでしょうが、単独の作品としても十分通用する詩だと思います。「そうして人は行ってしまった」という書き出しが良いですね。第2連の「薄い紙の栞を抜き取るみたいに/人はいつもさりげなく/去っていくのだ」というフレーズも秀逸です。そして最終連で「未来」をきちんと押さえた佳品だと思いました。



詩誌『韻』14号
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2006.10.1 北海道岩見沢市
グループ韻・菅原みえ子氏発行 非売品

<目次>
ふじさわあい 夏…1  千の風…2  画布 …3
齋藤 たえ  某日…4  座席…6  青凾連絡船…7
菅原みえ子  櫻橋…8  たびたび吉原さん…9  珠…13
会員名簿
あとがき
●表紙題字 平田愛子



 座席/齋藤たえ

列車が停車する
乗り込んでくる人たち
相席を探す
合コンの中から選ぶような目つきで
気が張らない人がいいという思いで
私は
まるで避けられていた
となりの席を
すっかり片付けて
いつでもどうぞと待っていたのに
空いた席のまま
列車は 発車する
わたし、どんなふうに見えているのだろう
悲しそうに、おこっているように
なさけなさそうに、急いでいるように
だろうか
そう、私は
悲しくて おこって 急いでいた
「一人の子供も産まないで
   ほとんど みんな とっちゃった」
あっけらかんと
電話をして来た その人のお見舞に
私の大切な その人のため
駅は とぶように
通過していって欲しい

だけど
沿線の景色はどうだ
こんなに さくら色なのだ

 「乗り込んでくる人たち/相席を探す」というのはよくある光景ですが、これを詩にした人はおそらく初めてではないかと思います。「合コンの中から選ぶような目つきで/気が張らない人がいいという思い」というフレーズが良いですね。
 しかし作品の主眼はそんなところにはありません。「私の大切な その人のため/駅は とぶように/通過していって欲しい」という思いなのです。「その人」はたぶん母上でしょう。最終連の視線の転回もおもしろいと思った作品です。



詩誌『韻』15号
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2007.10.1 北海道岩見沢市
グループ韻・菅原みえ子氏発行 非売品

<目次>
菅原みえ子  睡り人形…1  深深男…2  ミズ…3  トトント トン ゴーロゴロ…5
ふじさわあい 人形…7  ラビリンス…8  美術村…9  お友だちの家…11
齋藤 たえ  お雛さま…12  野外ステージ…14  このごろあった事…15  新築…19
会員名簿
あとがき
●表紙題字 平田愛子



 睡り人形/菅原みえ子

「お前の寝顔 人形さんのようだね」と 母
色黒の とんがり口
そんな めんこくない子が?

(自分のお人形を見てみたい)

「お母さん ほほえんで眠ってたよ
日本人形みたい」と 娘
鬼 と呼ばれ始めた
そんな中年女が?
三十年振りの 亡き母
春風のマントになって 母娘をくるむ

ある時 知った
寝床で お行儀よく 寝乱れないのは
棺おけ近い と

(そうか 棺おけだったのか)

六十年 棺に身をひそめ
うねうねと 夜毎 夢をあやつる
腕のいい 夢見使いは ワタクシ
今夜も お見せしましょ お望み通り
劇場は 夢見函
観客は 睡り人形 お一人様

 「寝床で お行儀よく 寝乱れないのは/棺おけ近い」というフレーズには思わずドキリとさせられ、次には笑ってしまいましたが、けだし名言だと思います。そういえば私も寝相が悪くて、気がつくとベッドから半分落ちかかっていたなんてことがありましたけど、いまはそれほど「寝乱れ」ていないようです。やっぱり、生きて「六十年」近くなると「棺おけ近い」ということなんでしょうね。作者のように「日本人形みたい」とはいきませんが「(そうか 棺おけだったのか)」と納得させられた作品です。



   
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