きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.4.28 富士・芝桜




2008.5.10(土)


 日本詩人クラブの第59回総会が、東大駒場キャンパスで開催されました。議題の全ては理事会提案通りに可決され、理事会の一員としては一安心と言ったところです。ご参集いただいた会員の皆さん、懇親会においで下さった会友の皆さん、一般参加の皆さんありがとうございました。
 総会で議決されたことのトピックスは、クラブの名称変更です。法改正により有限責任中間法人・日本詩人クラブが、一般社団法人・日本詩人クラブとなります。法が総会での議決を求めていますので、それに従った名称変更ですが、この12月から使われるようになると思います。冠が変わっても本体の日本詩人クラブはそのままですから、特に混乱もないと思いますけど、ご承知おきください。
 なお、総会で私は司会を務めさせていただきました。ご参加の皆様のご協力に改めて感謝いたします。

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 写真は懇親会での一齣、静岡県詩人会の皆さまです。今年の国民文化祭の開催県は茨城ですが、来年は静岡。その宣伝を兼ねて総会にお見えになったものです。国民文化祭は日本詩人クラブも主催の一団体になっていますので、どうぞ皆さまもご参加ください。
 発言している男性は、私の40年来の詩友です。10代からの付き合いですから、長いわなぁ。彼とはこのあと新宿・歌舞伎町のスナックまでご一緒し、なんと朝7時まで呑むことに…。彼はホテルを予約してあったそうですが、とうとう泊まらずに、朝7時に風呂に入るためだけ帰って行きました(^^; 責任の一端は引き止めた私にもあるかな。

 理事会としては1年で一番緊張する総会も終わって、また新たに2008年度の出発です。行き届かない点も多々あると思いますので、どうぞご指摘ください。これからも会員・会友に親しまれるクラブにしていくのはもちろん、日本の詩および詩学の興隆、国語の醇化に努め、日本文化の進歩に寄与するとともに、詩の国際的交流を促して、世界平和の確立に貢献(規約第3条)していきたいと希っております。ご支援、ご鞭撻をいただければ幸いです。



詩とエッセイ『海嶺』30号
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2008.4.30 さいたま市南区
海嶺の会・杜みち子氏発行 非売品

<目次>
扉詩 植村秋江/木 1

杜 みち子/河 4             杜 みち子/寒中記 6
桜井さざえ/夢を売る男 8         桜井さざえ/ありがとうと言って 12
河村 靖子/冬野原 14           河村 靖子/大正生まれ 16
植村 秋江/時計 18            植村 秋江/坂道 20
散歩道〈詩人について〉
植村 秋江/黒田三郎メモ 22        河村 靖子/私の好きな詩人 25
桜井さざえ/私の「新川和江」 27      杜 みち子/田中冬二のこと 29
雑記帳 32
編集後記 34                表紙絵・カット 杜みち子



 時計/植村秋江

夫の書斎の柱時計が 止まっている
気がつけば 愛用の腕時計も止まっていた

永遠の世界に行った人が
もう要らない と 止めていったのかもしれない

ものにはひとの魂が栖むと 何かの本で読んだ
時計にも 魂が栖むのだろうか

わたしには
主の帰りを待つ時計の忠誠に思えてくる

あちらの世界には
どんな時間が流れているのだろう

誰もいない部屋の 真ん中で
聞こえるはずのない音に 耳をすます

 第2連の「永遠の世界に行った人が/もう要らない と 止めていったのかもしれない」というフレーズがよく効いている作品だと思います。「ものにはひとの魂が栖む」かどうかは分かりませんけど、「主の帰りを待つ時計の忠誠」という詩語は納得できます。その「忠誠」が「魂」なのかもしれません。最終連の「聞こえるはずのない音に 耳をすます」というフレーズに作者の抑えられた心情がよく出ているとも思いました。



詩とエッセイ『さやえんどう』31号
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2008.4.15 川崎市多摩区
詩の会さやえんどう・堀口精一郎氏発行 500円

<目次>
齋藤さんを偲ぶ会−詩全集刊行記念−・1  記録 高村昌憲・2
哀悼 高橋芳子
さよなら またね 前田美智子・4      高橋芳子さんを偲んで 堀口精一郎・5

徳丸 邦子 
色・8            和田 文雄 光背・10 茶の花・11
袋江 敏子 
盆も終わり・12 秋の野良猫・13 吉田 定一 ●反響・14 動詞の活用・15
前田嘉代子 
天使・16 ヴィクトル・ユゴー・17 崎岡 恵子 佳き日に・18 ルミナよ・19
大貫 裕司 
石を焼く村・20        なべくらますみクモの子・21 スズメバチ・22 カマキリ・23
平野 春雄 
武蔵野自然林・30       田代  卓 明日の森・32 皆既月蝕の夜・33
高村 昌憲 
再会(T)・34 再会(U)・35  北川理音子 徹さん(亡弟)に・36
長尾 雅樹 
伽羅・38 都市の貌・39    堀口精一郎 さくら・40 赤松の家・40 仁王さま・41 老いの今昔・41
詩論 書評
なべくらますみ
韓国詩紹介 柳岸津(ユアンジン)・24
山川 久三 
詩と科学の融合−田代卓詩集『晩鳥の森から』を読む・26
堀田精一郎 
第十四回風狂の会川柳忘年会覚え書き・28
エッセイ
徳丸 邦子 
太陽のてりつける日・42    長尾 雅樹 友達がいない・43
同人消息・44
編集後記に代えて 詩と死−生身の怖しさを書く(堀口精一郎)・46
詩集詩誌等受贈御礼・29 同人住所録・47
表紙デザイン 吉田定一



 都市の貌/長尾雅樹

翡翠の影が地下道を翳け抜けて行く
林立するビルの大群が川と流れる
天を望む高層の階上から
遥かに俯瞰する蜂雀の誕生日
這う高窓に蟻地獄を見失しなって
地球の色は確かに青かったが
石の塔は夢の時刻に冬眠する
誰が名づけた訳でもないのに滝の塔≠ニは
高配当の酸性雨が降る巷に
赤子が狼として登録される
電子が地下室を突破して雷鳴に抜け
罅割れた壁面が太い楔を浮き上がらせて
昇降機が透明なビルの峰を徘徊する
空は映写幕を何枚も畳んで萎れ
青い気流に飲まれてしまった蝋人形
地下深く刺し込まれた櫛の歯が雰れて
夕陽は影をなくして天空に逆まく
言葉は信号塔の配線を噛みながら
朝日はまだかいと警笛を鳴らし続け
灰色の花が落下傘となって給水槽で溺れる
腐った蛤が舗装道路を珠数繋ぎになって
蛙の足が電線で短絡して鉄骨を鞣す
軽音楽が電車の尻から霧雨を呼び
突き立ったビルの抱腹から血が乾いて行く
涙は電脳の文字板から滲み出て
永遠と言う悪罵を投げつけて路上で唸る
車は地獄の三丁目で破壊されて雲に消え
禍事を並べ立てる配電盤から螢光灯が飛翔し
地下道を廻る獅子頭は神を偽証し
電波の谷間は無印の連絡便を素通りさせる

 まさに全行が現代の「都市の貌」の喩だと思います。第1行目から「翳け抜けて行く」という、「翳」のおもしろい使い方が出てきて魅了されました。「翳」はもちろんかげ∞かげり≠ニ読みますけど、このように「翳け抜けて行く」と使われると、「翡翠の影」が駆け抜けて行く状況にピッタリだと思います。「遥かに俯瞰する蜂雀の誕生日」、「高配当の酸性雨が降る巷」なども良いですね。数多い都市の詩の中でも、別格の佳品だと思いました。



個人詩誌『魚信旗』47号
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2008.5.15 埼玉県入間市 平野敏氏発行
非売品

<目次>
雨 1        マンモス 4
夜景 5       今日という新たな空白 6
耀く茶圃 8
後書きエッセー 10



 マンモス

ところどころでマンモスの骨がみつかっている
消えた大過去がビックバンしたか
骨のない亡霊よりも
確かな希望をつなぐぼくらの先祖が
いま骨の形で高揚している
見落としてならないのは
その骨の分身がぼくらの血の中を流れているということだ
どんなにその骨を組み立てても
いまのぼくらにはならないのだが
ぼくらをはみ出している部分だけは
確かに偉大な創造力であるに違いないのだから
静かな夜は酒など浸して
夢よもう一度この地上に羽ばたけと
吼えと足音で人類を覚醒させる
そして深い迷妄の森から人類を追放し
天下大将軍・地下女将軍の神神をも震撼させ
この地上の行き来し証を
痛快に再現して
のんびりと過去をあざ笑った者を
巨牙で転がし
(くすぐ)りを入れ
マンモスは大きな寝息のなかへまた戻っていく
それを繰り返しながら騒がしい今時の人類の現世
(うつしよ)に活を入れる
心地よい秋の朽葉の奥深くで横になる
暖冬の凍土にも春が来て
人類の悲鳴が上がるまで
骨の形で仮寝する

 「マンモス」は人類の先祖になるわけですけど、それを「その骨の分身がぼくらの血の中を流れているということだ」というフレーズで現していると思います。その上で「ぼくらをはみ出している部分だけは/確かに偉大な創造力であるに違いない」としていまして、この見方は面白いと云えるでしょう。そして最後では「人類の悲鳴が上がるまで/骨の形で仮寝する」と収斂させて、「マンモス」はあくまでも「仮寝」なんだと規定します。個の生死ではなく遺伝子という観点からはそれが成り立ちます。すでに絶滅したマンモスという視点ではなく、ここは生物一般と採ってみました。おもしろく、考えさせられる作品です。



   
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