きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.4.28 富士・芝桜 |
2008.5.15(木)
その1
地元の西さがみ文芸愛好会で刊行予定の『文芸作品に描かれた西さがみ』の編集委員会に出席してきました。私の宿題は専用原稿用紙の作成と、広告依頼先への宣伝リーフレットの作成です。原稿用紙は難なく作って持って行きましたが、問題は宣伝リーフレットです。委員長の希望は言葉の羅列ではなくビジュアルなもの。私はそういうセンスがありませんから、センスのある会員の女性に頼んで作ってもらいました。その女性は4種類のカラフルなリーフレットを作ってくれましたので、それを提出しました。その出来映えに委員長以下、出席した委員の皆さんが驚いてくれて、私も鼻が高かったですね。そのうちの1枚がすぐに選ばれて、カラーコピーは同席した委員のひとりがやってくれることになりました。
私には奇麗な宣伝リーフレットを作るというようなセンスはありませんが、誰なら出来るかを嗅ぎつけるセンスがあります。それが当たったわけで、とても嬉しいです。適材適所という言葉がありますけど、会社でそれを実践するのは結構難しいことです。それは文芸団体でも同じことでしょう。自分が出来なくても誰なら出来るかを日頃から注視しておくことも大事なことのように思います。ある面では仕事を押し付けるということなんですが、それも組織運営、出来る人にはこれからも押し付けていこうと思っています(^^;
今回の本作りで、やはりネックは著作権をいかにクリアしていくかになりそうです。日本文藝著作権センター会員としては、どうしてもなおざりにする訳にはいきません。たかが1000冊の極少出版でも、100万部売れる本でも著作権クリアの負荷は同じなので、その辺はもう少し改善の余地があるかもしれませんが…。今回の経験を生かして、必要なら日本文藝家協会にも働きかけていこうかなと考えいます。その面でも私にとっては大事な本作りになりそうです。
○方喰あい子氏詩集 『キャヴェンディッシュの海』 |
2008.5.15 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税 |
<目次>
T
浸食の時 8 盆の砂浜 12
カシマナダ 16 帰省 18
朝焼けの海 20 原風景へ 24
夏の日に 28 晩秋の人 32
U
湯 36 田圃道 38
大晦日 40 石持 44
越前水仙 46 七夕 50
トミさんと二枚のハンカチーフ 54 便り 58
花桃 62
V
ラッパ水仙 66 アルバムより 68
蝶 70 キャヴェンディッシュの海 72
ヴェルニー公園にて 76 前夜 80
春の人 84 赤い砂 88
W
春の嵐 92 晩秋 94
白い袋 96 木枯らし 100
雨の歌 102
病める人へ 106
雨にうたれる花 108
解説 112
あとがき 126
キャヴェンディッシュの海
灯台への細い砂の道を駆け上る
あたり一面 ハマナスの花に似た
薄桃色のバラが咲き
その匂いに咽せかえる
小さな灯台のある砂丘は
遥かに連なり
真っ青なセントローレンス湾が横たわる
キャヴェンディッシュの砂浜は左手の方向に
夏休みになると
赤毛のアンは
あのキャヴェンディッシュの浜辺で遊んだ
教科書はカバンに詰めて 鍵を掛けた
砂浜は
海水浴で賑わい
子どもたちも泳いでいた
ああ
ざぶざぶと海に入りたい
波打ち際で手を浸し 目を閉じると
故郷の海と連なっている不思議に
胸が熱くなった
さよなら キャヴェンディッシュの海よ
レンガ色の石を拾い
さらさらと零れる赤い砂を
白い紙に包んだ
18年ぶりの第3詩集です。故郷の鹿島灘をうたったTやUに佳品が多いのですが、ここではタイトルポエムを紹介してみました。第5連の「故郷の海と連なっている不思議に」というフレーズはその鹿島灘とのつながりを言っていると思います。
「キャヴェンディッシュの海」は「赤毛のアン」の舞台だそうで、そこを訪れたときの作品です。やはり「故郷の海と連なっている不思議に」というフレーズがよく効いていますね。最終連の「レンガ色の石を拾い/さらさらと零れる赤い砂を/白い紙に包んだ」という情景も美しく読者に迫る作品だと思いました。
○小野幸子氏詩集『海抜八百米』 |
2008.1.13
東京都板橋区 小野プロデュース刊 1500円 |
<目次>
海が凪ぐ章
黄昏白書 7 世界が綴化する 10 燐が燃える 12
波止場 16 満ちてくる潮 19 魚を捌く 23
街の残照 25 プリズム 30 きょうを食べる 35
彼岸花 38 不眠地帯 42 持久走 44
指貫 48 「まさか」という坂 51
風が泣く章
学校へ行こう 59 そばがき 61 一九四五年八月の記録 65
霧の中 70 別れ道 74 おばあ様の歓迎会 78
増えた同居人 82 出しそびれた母への手紙 86
向三軒両隣 90
践文…丸山勝久 95
あとがき 101 扉絵 小野幸子
霧の中
縮められた時間に乗って
私はふるさとに滑り降りた
海抜八百米にある屋敷も
白壁の蔵も
塀のように植えてある林檎の木も
その大きな実さえも
霧にかすんで見えないけれど
足元だけは確かに見える
私の足は
野沢菜を洗ったり
大根を洗ったり
時には
さめざめと涙を流して
心を癒したあの溜池の方へ
霧の中を
昭和から大正へ
大正から明治へと
朧げに見える坂道を下れば
小さな集落での
大きな家族等と
ひとつ屋根の下で暮らした女性達が
ひび割れた手と心に
溜池の水を
膏薬のように塗り
天からの露のように注いでいた
この霧が
氷雨になり
氷雨がみぞれになり
みぞれが雪になり
海抜八百米の集落の扉が締まる
12年ぶりの第4詩集です。タイトルの「海抜八百米」という詩はありませんが、故郷から離れた都市での生活を主に描いた「海が凪ぐ章」の中の「『まさか』という坂」と、主に故郷の長野県を描いた「風が泣く章」の「霧の中」に出てきます。ここでは後出の「霧の中」を紹介してみましたが冒頭の「縮められた時間に乗って」というフレーズから良いですね。もちろん電車やクルマに乗って移動時間を縮めたという意味ですけど、改めてこう書かれると実に新鮮に写ります。最終連の「霧」以下の畳み掛けと「海抜八百米の集落の扉が締まる」という締めも見事に決まった作品だと思いました。
○新延拳氏訳しかけ絵本 『どうぶつれっしゃ しゅっぱつしんこう!』 |
2007.12.1 東京都千代田区 交通新聞社刊 1314円+税 |
アンドレア・ペドック作、ジム・ムントン絵という絵本ですが英仏伊米で話題になったそうで、その翻訳版です。各頁がトンネル状に刳り貫かれていて、そこに汽車の絵が描かれたビニールの帯があって、頁を繰るたびに汽車の窓に動物たちが登場するというしかけ絵本です。1頁目を開くと列車の窓には馬が1頭、2頁目では牛が2頭という具合に動物が増えていき、10頁目では10個の窓に10羽のメンドリという具合で、なかなか楽しいですよ。対象年齢3歳以上とありますが、拙HPをご覧いただいている皆さまにはそんな幼い子がいる人は少ないでしょうから、お孫さんにどうぞ!(失礼)というところでしょうか。喜ばれること請け合いです。
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