きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.4.28 富士・芝桜




2008.5.19(月)


 西さがみ文芸愛好会の女性会員お二人と打ち合わせをさせていただきました。
 西さがみ文芸愛好会では、この秋に『文芸作品に描かれた西さがみ』という本を出版しようとしています。小田原地方を訪れたり住んだ文学者は多く、西相模地方が文学作品には度々採り上げられています。それらのさわりを紹介した本を造って、この地を訪れる人たちの便に供そう、そこから実際の作品を手にとってもらって、文学に親しんでもらおうというような趣旨のものです。
 40人を超える作家を採り上げる予定ですが、各作家たちの略歴はネットで公表されているものが多いので、若手会員の協力を仰いで調べてもらおう、ということでお集まりいただきました。快諾を得て、分担も決めて一安心しているところです。もちろんネット情報が100%信頼できるという保証はありませんから、最終的には文学辞典などで確認する必要はありますけど、仕事としては飛躍的に早く済みます。なにより年配の幹部会員の諸侯には、若手もこんなに働けるよ、というデモンストレーションにもなると思っています。文学の世界はいかに多くの本を読んできたかが勝負のようなところもありますが、それはそれで大事なことですが、ネットが普及した現在、こういうアプローチもあるよということも示したい、とも思っています。
 そんなわけでご年配も若手も総力を挙げて取り組んでいます。出版の暁には拙HPでも宣伝させていただきますので、どうぞお求めください。予定では1000部ほどの刊行ですから、早くしないと売り切れるかも(^^;



詩誌『饗宴』52号
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2008.5.1 札幌市中央区 林檎屋発行 500円

<目次>
詩論 レクイエムの詩学(1) 瀬戸正昭…4
作品
狂人/露草/雀 山内みゆき…6       地下鉄・霞ケ関がためおとした海内 尾形俊雄…8
春の靴 木村淳子…10            かみすながわ−不思議ふしぎの二条通り25 嘉藤師穂子…12
ウパスの樹/UPAS TREE 吉村伊紅美…14   転身譚8 塩田涼子…16
屋島寺にて 瀬戸正昭…18          巨大な橋のたもと/花のころ 新妻 博…20
旅立ち/願いごと 村田 譲…22
特集 花の歳時記
序詩−あざみ野へ 渡会やよひ…24      花はどこからくるのでしょう 塩田涼子…26
三月の桃花、ミモザ、百合 工藤知子…28   思い出の花 そして描くこと 牧野邦子…30
苧環(おだまき) 木村淳子…32        パティオ、私の小さな中庭 吉村伊紅美…34
花、花、花… 山内みゆき…36
連載エッセイ 林檎屋主人日録(抄)(13)(2007・11〜2008・4) 瀬戸正昭…39
●受贈詩集・詩誌…35
●夏季詩話会のご案内…21
饗宴ギャラリー 植田 莫「ひと山越えて」…2



 屋島寺にて/瀬戸正昭

背広を着た平賀源内が
えれきてるで髪をさかだて
瓦町からことでんに乗り込んできた
うすめをあけてヤツの姿を観察すれば
疲労のあまり しばしの瞑黙…
春日川をこえ屋島駅でおりて
お遍路さんとともにシャトルバス
にのる…魂げたことにヤツも一緒に
乗りこんできた…山頂着…
第八十四番札所・南面山千光院
真言宗御室派の古刹 屋島寺…
鈴の音…胸をつく ご詠歌…
千手観音菩薩像に見とれてゐると
ヤツは二体のさぬきの狸と談合中…
顔は蒼ざめてゐるがあんがい元気だ
あゝ またも五蘊のとき…
赤い鳥居の上を鶴がまふ…
盛りをすぎたる 山桜花…
獅子… 春なのに雪の庭…
世に悩みの種は尽きず げに
こヽろは苦を生みたる泉のごとし
気がつくとヤツの姿は消えた…
おおかた俗世の背広を白衣に着がへ
金剛杖と頭陀袋を手に 菅笠姿で
たぬき高松の空港から
羽田乗り継ぎで涅槃
(ニルヴァナ)まで飛んだか
苦悩深きダライラマのおつさんに
面会にでも行つたのだらう…

 最初にお詫びを…。2行目の「えれきてる」には傍点が振ってありますが、HTMLでは綺麗に表現できないので割愛してあります。ご了承ください。
 この詩誌を頂戴して真っ先に拝読する「林檎屋主人日録」によれば、作者は4月に四国に行ったようで、そのときのことを作品化したと思います。「平賀源内」は讃岐の出身。その源内を登場させ、「屋島」の歴史を現代に蘇らせた作品と採りました。「羽田乗り継ぎで涅槃まで飛んだ」のは源内になっていますが、もちろん実際に羽田乗り継ぎで千歳に帰ったのは作者自身。そのダブらせ方がおもしろい作品だと思いました。



隔月刊詩誌RIVIERE98号
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2008.5.15 堺市南区 横田英子氏発行 500円

<目次>
初夏の名残草…釣部与志(4)        連凧の風景…永井ますみ(6)
雪の日の想い…後 恵子(8)        夜…小野田重子(10)
桜の咲く頃…泉本真里(12)         棚田暮色…戸田和樹(14)
つれづれなるまま…ますおかやよい(16)   見え隠れするのは…平野裕子(18)
霧の中/花筏…横田英子(20)
RIVERE/せせらぎ 横田英子/河井洋/平野裕子/永井ますみ/石村勇二 (23)〜(27)
五月になれば…石村勇二(28)        蹴っぱれ、イッちゃん(3)…清水一郎(30)
ひとりの春を…松本 映(32)        野次…蘆野つづみ(34)
ある寺にて/秋の日に…藤本 肇(36)    結婚せんの…内藤文雄(38)
すずめ…山下俊子(40)           愛と希望の国『少年』(3)…河井 洋(42)
受贈誌一覧(44)
同人住所録(45)
編集ノート 河井 洋            表紙写真・詩/泉本真里



 桜の咲く頃/泉本真里

この頃
思うのです
ひとは
独りぼっちなものだから
さみしいなんて
言わないでおこうと

桜が散る中を
あなたは逝って
振り向いてもくれない

ひとりで暮らす家には
昨日の思い
一年前の思い
五年前の思い
どれだけの量を
眠る前に処理して
朝を迎えてきたか

強いのです なんて
言ったこともないが
しなやかに とは
望んできた

今年も
桜が咲く季節がきて
着物を出して
眺めている

どこへ
行くわけでもないが
せめて
華やぐものを身に纏い
優雅に
振舞っていたいのです

 「ひとは」もともと「独りぼっちなものだから/さみしいなんて/言わないでおこう」とした第1連、「どれだけの量を/眠る前に処理して/朝を迎えてきたか」という第3連、「強い」ではなく「しなやかに」と「望んできた」第4連、それぞれにやさしい言葉遣いの中に秘めたもののしなやかさ≠ェ伝わってくる作品です。最終連の「せめて/華やぐものを身に纏い/優雅に/振舞っていたい」という締めも見事です。女性の心理が綺麗に浮き上がった作品だと思いました。



月刊詩誌『柵』258号
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2008.5.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 スペイン語圏文学の衝撃 鼓直、細野豊編訳『ロルカと二七年世代の詩人たち』…中村不二夫
沖縄文学ノート(7) 島口説…森 徳治
流動する今日の世界の中で日本の詩とは(42) イタリアからの平和のメッセージ・「ビルマの竪琴」…水崎野里子
風見鶏 佐合五十鈴 藤富保男 三井葉子 井奥行彦 植村秋江
現代情況論ノート(25) コミュニズムとコンピューター…石原 武

北村 愛子 住宅街の路地 4        忍城 春宣 須走の夕日 V 6
松田 悦子 三月のカラス 8        柳原 省三 温暖化の冬 10
肌勢とみ子 風景 12            南  邦和 江原道アリラン 14
小沢 千恵 芙蓉の花 16          平野 秀哉 指示 18
今泉 協子 埴輪 20            佐藤 勝太 自由主義の時代 22
松井 郁子 開桜期 24           小城江壮智 「死にとうない」 26
川端 律子 改めて 戦死した夫に 28    山崎  森 尻取り遊び唄 30
織田美沙子 あの窓から 32         進  一男 骨を洗う 35
中原 道夫 空席 38            三木 英治 宙に浮いた都市 41
江良亜来子 朝靄 44            小野  肇 岸辺の囁き 46
月谷小夜子 花育て 48           山口 格郎 わくわくしている 50
名古きよえ 天道花 52           門林 岩雄 春の雪 林道 他 54
秋本カズ子 道しるべ 56          北野 明治 近況 58
八幡 堅造 喜びの写真 悲しみの映像 60  西森美智子 先日 62
宇井  一 ムカデ 64           安森ソノ子 九十七歳の意欲 66
鈴木 一成 時は過ぎ行く 68        水崎野里子 ヒロシマ連歌 1 70
若狭 雅裕 初夏 72            野老比左子 夢と戦争 −父の伝言 74
前田 孝一 沢蟹の願い 76         徐 柄 鎮 鳴呼六・二五(韓国戦争) 78

世界文学の詩的悦楽−ディレッタント的随想(24) ニュージーランド詩選集より −R・A・K・メイソン詩小論…小川聖子
世界の裏窓から −カリブ篇(10) 挿話・私流 読書のルーツ…谷口ちかえ
コクトオ覚書233 コクトオの詩想(断章/風聞)13…三木英治
北野明治詩集『サンシャイン国際水族館』を読む…平野秀哉
東日本・三冊の詩集 坂井一則『坂の道』 佐々木久春『羽州朔方』 土井敦夫『真夜中の自画像』…中原道夫
西日本・三冊の詩集 石井久美子『幸せのありか』 はるのとおる『レモンしぼり』 村永美和子『半なまの顔』…佐藤勝太
受贈図書 受贈詩誌 柵通信 身辺雑記
表紙絵 申錫弼/扉絵 中島由夫/カット 野口晋・中島由夫・申錫弼



 温暖化の冬/柳原省三

温暖化だと呆れていたら
正月につくしが芽を出した
ぼくらが子供の時代には
水溜りに厚く張り詰める
氷を割って遊んだものだ
昨今は薄氷さえも決して見ない
へんちくりんな冬になった

冬はやはり
冬らしい冬が良いようだが
老いゆくわが身に照らしてみれば
こんな暖冬続きがありがたい
心配は急激な環境変化で
動植物に異変が生じ
有害なアメーバーやウィルスが
大発生したりすることだ

ぼくの二男は二十三歳の若さで
得体の知れないアメーバーに
あっという間に殺された
猛暑だ暖冬だと呆れていたら
利権も宗教も政治も及ばぬ
予想もしなかった小さな奴に
地球全体文明全体
あっという間にやられるのかも

 たしかに「ぼくらが子供の時代には/水溜りに厚く張り詰める/氷を割って遊んだもの」でした。近くに山中湖という湖があり、冬には結氷してスケート遊びをしたものでしたが、そんなことはいまでは想像も出来ないことでしょう。
 最終連の「利権も宗教も政治も及ばぬ/予想もしなかった小さな奴に/地球全体文明全体/あっという間にやられるのかも」という危惧には現実感があります。「急激な環境変化で/動植物に異変が生じ/有害なアメーバーやウィルスが/大発生したりすること」はあり得ない話ではないと感じた作品です。



   
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