きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
080428.JPG
2008.4.28 富士・芝桜




2008.5.17(土)


 夕方から自治会の組長会議が開かれました。毎年この時期は自治会費等の徴収があるのですが、案の定、自治会費・日赤社費・自治会会館新設準備資金の徴収を命ぜられました。今月中に集めなければなりませんが、私の担当戸数は拙宅も入れて9軒。まあ、多くはないわな。しかし、集めるお金は組費も入れると9千円になります。自治会会館新設準備資金なんてのもありますから高額なんです。老朽化した自治会会館の新設には半分が地元負担ということで、これは結構キツイ。でも、新設なった暁には、半分はオレたちが金を出したという言い分が出来、市には文句を言わせないという態度がとれるかもしれませんね。本当は全額、市や県、国が出してもおかしくないのですが、この国は自国民には出さない代わりに米軍に思いやり予算を立てるような国。期待薄ですなぁ。ま、私たちが選んだ政府ですから、それも甘んじて受けるしかないでしょう。ということで、足柄山の麓の戸数250軒の小さな自治体から見た日本国の話でした(^^;



築山多門氏詩集『龍の末裔』
ryu no matsuei.JPG
2008.5.15 東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊 2000円+税

<目次>
序文に代えて 目
第一部 龍の誕生
お手伝い 12                みつばち ぶんぶん 14
鬼っ子 16                 春のめざめ 19
孤児院の夢 23               みの虫 25
河童
(かっぱ)の友だち 28           昔 むかし あるところに―― 32
ヒミツ 35                 みんな どこへいったの 38
希望 40
第二部 龍の王国
うわさ 44                 少女とキャラメル 48
貧しい時代の少年の夢 52          おわかれ 57
テディベア 60               風の物語 64
少年の王国 68               ボクの四季 76
キリギリス 84               導火線 89
雀と青空 92                君と一緒なら 95
伝説 98
第三部 龍の末裔
いいな いいな 102             ゴン 104
島 107                   F1レーサー 110
孤猿 113                  春の電車 116
こうのとり 119               この小さくてこわれやすいもの 122
写真 127                  泣かされる妻 131
花と妻と少年と 134             留守番電話 138
老女のひとりごと 140            子どもと大人とジジババと 142
あとがき 146



 
ゴン

むかし 町内にひとりはいたもんさ
親も生きるのに精一杯の時代だった

その名はゴン
由来はわからない

よだれをながし
いつもへらへら笑ってる
三べんまわってワンと言え
十円やるからとからかうと
三べんまわってワンと言う
子どもは笑ってお金はやらない
それでもへらへら笑ってる

みなりは貧しく
だらしがない
丸顔 垂れ目で
しまりがない
駄菓子屋の店さきで
おくれ≠ニ言うと
おばあさんがあめを一つくれていた
ゴンはペコリと頭を下げ
いっそう垂れ目になった

みんなが笑うと
ゴンもへらへら笑ってた
泣いてる子がいると
ゴンもいっしょに泣いていた
ゴンはいつも仲間はずれ
それでもゴンがほかの町の子に
からかわれたりいじめられたりすると
子どもたちはむきになって
おっぱらったもんさ

ある日 ゴンは川に浮かんでた
天使はいつの世も長生きできない

 2年ぶりの第2詩集です。「子供から大人のための童話詩」と副題が付けられています。タイトルポエムの「龍の末裔」という作品はなく、第3部の作品全体がそれを指すと思います。ここでは第3部から「ゴン」を紹介してみましたが、たしかに「むかし 町内にひとりはいたもん」ですね。そして「三べんまわってワンと言え」とか言っていじめたものですが、不思議なことに「ほかの町の子に/からかわれたりいじめられたりすると/子どもたちはむきになって/おっぱらったもん」なんです。今といじめの質が違っていたように思います。
 最終連が佳いですね。「天使はいつの世も長生きできない」というフレーズには、思わずホロリとした作品です。



香山雅代氏詩集『粒子空間』
ryushi kukan.JPG
2008.6.1 大阪市北区 編集工房ノア刊 2000円+税

<目次>
 
木洩日――位相あるいは可視のヴェール
 挨拶 10                  光の橋となって 12
 非在の羽音 16
空邃
(おくぶか)く消えるところ 18       無辺光を翔ぶ十六分()休符 22
鐘の音
() 26
粒子空間
 銀河階段 30                アンパッサン(en passant) 34
胡蝶蘭 requiem(彼らに憩いを) 36      河 38
 
(かぜ)と息のあわいに 42          極夜がくる 46
峠の廃屋 50                草原をよぎる韻
(ひびき) 52
風の青い手 56               仮死考 60
サンセット 62               息
(かぜ)と化す祈り 64
 
ふるさとの囁き 70             木の葉は散りながらぼくらに触れる 72
無言頌 74                 窓の月 78
夢の断崖 80
透視図から
 ――cubicな展開としての試み 樹木と蝶と 84  ――symboricな試み 非在 あるいは 胡蝶の嘆息 88
風をうつす鏡 90              二羽の黄鶲
(きびたき)と少女 92
厳に花の 96                遠日点にみる幻 98
淵のむこうヘ――小面の内より 102
あとがき 108



 
粒子空間

  銀河階段

俯瞰する
地上絵

俯瞰する
万里の長城

俯瞰する
いつかきた道

肋骨に抱かれ やわらかに脈持つものの
みあげる
十五夜の お月さま

お月さまは
なにを みまもっていらっしゃる
語りつくせぬ 人間の闇

ピラミッドの 下方
砂に埋もれる岩盤の 襞ふかく
貫流する ひかりに
うつしだされ 匿された 不可能性への 挑み
叢雲に 遮られる その跫
(あしおと)

一瞬 さし入る かぐや
の影に 魘(うな)される
粒子空間

うつつでない 慕わしいひとに 呼びかける ように
現われる

銀河階段

     *かぐやは、月の探査機。

 詩集としては7年ぶりの第9詩集です。タイトルポエムの「粒子空間」は「銀河階段」と「アンパッサン(en passant)」の2部構成になっていますが、ここでは前者を紹介してみました。「粒子空間」は「かぐやの影に 魘される」と、「うつつでない 慕わしいひとに 呼びかける ように/現われる」の両方に掛かっていると読み取りました。最初の3連で繰り返される「俯瞰する」というフレーズもおもしろいと思った作品です。
 本詩集中の
「無辺光を翔ぶ十六分休符」と「息(かぜ)と息のあわいに」はすでに拙HPで紹介しています。「息(かぜ)と息のあわいに」は初出では「零秒の息(かぜ)というタイトルで、今回、一部改定されていますが、いずれもハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて香山雅代詩の世界をご鑑賞ください。



詩と散文『多島海』13号
tatokai 13.JPG
2008.5.20 神戸市北区 江口節氏発行
非売品

<目次>
Poem
   昭和に、ご機嫌! * 松本衆司…2          ジョウビタキの声 * 彼未れい子‥・6
         前線 * 江口 節…8             鍋と洗面器 * 江口 節…12
         稜線 * 森原直子…14
Prose
      桜の頃には * 森原直子…18  オッチャンとオバチャンが足らんU * 松本衆司…22
ひょうたん笛の練習メモ * 彼末れい子…29         追悼 田辺保先生 * 江口 節…34
同人名簿…17
入り江で…40        カット 彼末れい子



 
稜線/森原直子

どれくらい走らせただろう
不案内な山の道を
突き切って
たどり着いた

あれが いま下りて来た歯長峠
空とのあわいに延びる 北山
大きな窓のある部屋から
小高い山々の連なりを
視界の中に
繰り返し 引きながら
心の稜線はうまく引けない

この盆地に住む人は
峠道の見える方向からは
身体を少しずらすと
静かに言った
こんど 貫通する
高速道路のトンネルです

山裾の左側を遮るように
新しく積み上げられた盛り土の山が見える
大型クレーンの濃い緑色のアームが
冬の空に殴り描きする軌跡を
目で追い
突然 崩れるかもしれない左半身を
確かめるように
右の手で受けとめた

(夏の日の早朝 脳梗塞で倒れた義姉は
 マヒの残る左半身のリハビリを続ける)

拭っても拭ってもくぐもる
私の中の見えない部分
いつも どこかが歪で
冬の夕暮れは早く
私たちは
壊れゆくものについては
語らなかった

 「この盆地に住む人」とは「脳梗塞で倒れた義姉」なのでしょう。「心の稜線はうまく引けない」のは「私」であると同時に「義姉」でもあるように、最終連の「私たちは/壊れゆくものについては/語らなかった」というフレーズから連想され、詩としてはおもしろい点だと感じます。「大型クレーンの濃い緑色のアームが/冬の空に殴り描きする軌跡」という表現にも惹かれた作品です。



   
前の頁  次の頁

   back(5月の部屋へ戻る)

   
home