きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.4.28 富士・芝桜




2008.5.28(水)


 特に予定のない日。終日いただいた本を読んで過ごしました。



詩マガジン『PO』129号
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2008.5.20 大阪市北区
竹林館・水口洋治氏発行 840円

<目次>
特集 星
三島 祐一 星と無次元世界…9       池田  清 星(宇宙)と宮沢賢治と金子みすゞ―文明と文化のはざまで―14
宮内 征人 詩人たちにとっての「星」…21  大賀 二郎 沈黙の交響楽…31
梶谷 忠大 
よだかの星は賢治星…33     佐古 祐二 草野心平における蛙と星…40
藤原 節子 
星のファンタジー童話…46    寺沢 京子 地球に住む私たち――星の詩から…51
左子真由美 『星の王子さま』―サン・テグジュペリの残したことば―…56
藤谷恵一郎 星のことば…63         蔭山 辰子 キラキラ星 変奏曲…65
中野 忠和 星に見られて…67        尾崎まこと 
ミニ詩集★「カシオペアでブランコ!」…68
清沢桂太郎 星々の子孫として
―生命の糸…72 北山 りら ねがい…74
三方  克 ヒラヒラぼしの唄…78      日野 友子 星…79
詩作品
原子  修 日本国憲法…80         鈴木  漠 喫茶去――紹輿・杭州紀行…82
高橋玖末子 流星群の夜…84         佐藤 勝太 父の微笑み…85
宇宿 一成 十字架…86           晴   静 カウンター…88
根本 昌幸 その道を歩いて…94       山崎 広光 その音…96
牛島富美二 宝紙−モノものがたり(1)…98  神田 好能 老いたればこそ…100
加納 由将 秘密…102            梶谷 忠大 ことばの流れのほとり…108
野 信也 悲劇のなかの悲劇に/風の豚…110 堀   諭 早春スケッチブック…114
川中 實人 (その時)を捜す…115      佐古 祐二 空は青く…116
松田 理治 彼女の知らないところで…128   星乃 絵里 焼きうどん…129
清沢桂太郎 捨てる(一)/捨てる(二)/スイートピー…130
おれんじゆう お菓子のお家…137       中野 忠和 魚つり…144
関  中子 はかない罪/記憶の中の君…146  長谷川嘉江 時間…150
瑞木 よう 禍つ火…151           藤谷恵一郎 陸へ 空ヘ どこへ…152

扉詩 サザンクロス 瑞木よう…1
ピロティ 紡がれる言葉があって 橋本啓一…7
舞台・演劇・シアター 危機的な大阪のホール事情 河内厚郎…90
ギャラリー探訪 ニースからパリへの道で 佐藤勝太…
92
ビデオ・映像・ぶっちぎり 
「恋するトマト」 藤原節子…93
一冊の詩集
 袋江敏子詩集『スクランブル交差点』 モリグチタカミ…104
一編の小説
 蝶と大砲―芥川龍之介「軍艦金剛航海記」 中野忠和…106
韓国現代詩の今 李時英・金正煥・郭孝桓/韓成禮 訳…118
エッセイ 平和とモナコ 神田好能…126
この詩大好き うるわしい思い―古事記から― 関 中子…138
エッセイ 脳死、悼みと畏れ―そして多能性幹細胞のこと 川中實人
140
詩誌寸感 詩は・・・今、 根本昌幸
154

◎受領誌一覧…156
◎執筆者住所一覧…157
◎編集後記…158
◎お知らせ
 会員・誌友・定期購読者募集/投稿案内/ホームページ/「PO」例会/広告掲載案内/「PO」育成基金…159
 詩を朗読する詩人の会「風」例会…160
編集長 佐古祐二
編集部 左子真由美・寺沢京子・中野忠和・藤谷恵一郎・藤原節子・水口洋治



 捨てる(一)/清沢桂太郎

にぎにぎを握っている幼子に
おしゃぶりを差し出す

そのおしゃぶりが欲しいときは
幼子は握っていたにぎにぎをポトッと落として
おしゃぶりだけを取る

幼子にとって欲しいものは
一つだけだ

しかし せんべいを食べている
幼推園に通うようになった幼児に
まんじゅうをあげようとすると
せんべいを左手に持ち替えて
まんじゅうをも取ろうとする

せんべいを左手に持ち
右手でまんじゅうを食べている幼児は
次に ようかんを出そうとすると
まんじゅうをも左手に持ち替えて
ようかんを取ろうとする

このように欲しがるものを
次々に出してゆくと
両手に一杯になって
何も取れなくなる

大きくなると
欲が出てきていて
欲しいものは全部取ろうとするのだ

本当にあげたいものは
まだ出していないのに

捨てることをしないと
本当に欲しいものは手に入らない

しかし
現在にしか生きられない私たちには
未来にしかない
本当に欲しいものが何であるかは
不確定だ

欲で一杯の私たちには

確実に自分のものになったものを
捨てるには 非常に大きな
精神的プレッシャーがかかる

それでも なお
よきひとはやさしく
さとされる

 握ったらすぐに放しなさい
 握ったらすぐに捨てなさい
 そうすれば
 欲しいもので手の中が
 一杯になる

 「幼子」から始まって「幼児」、「私たち」の「欲が出てきてい」く過程を描いたおもしろい作品です。「捨てることをしないと/本当に欲しいものは手に入らない//しかし/現在にしか生きられない私たちには/未来にしかない/本当に欲しいものが何であるかは/不確定だ」というのは本当にその通りだと思いますが、ここには妙な説教臭さは感じられません。「確実に自分のものになったものを/捨てるには 非常に大きな/精神的プレッシャーがかかる」というフレーズが効いていて、視線があくまでも「私たち」に寄り添っているからだろうと思います。こういう作品を書く場合の、ひとつのポイントだろうと感じました。



個人詩誌『伏流水通信』27号
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2008.5.25 横浜市磯子区 うめだけんさく氏発行
非売品

<目次>

卒寿を過ぎて…長島三芳 4
暴力的な女のサンダル…うめだけんさく 6
古代の響き…うめだけんさく 7
 *
フリー・スペース(26) 父の涙…今村信夫 1
 *
〈特別寄稿〉残念、無念、九十年…神谷量平 2
〈エッセイ〉「獣」にいた左和伸介のこと…うめだけんさく 8
 *
後記…10
深謝受贈詩誌・詩集等…10



 暴力的な女のサンダル/うめだ けんさく


ペタン。ペタン。ペタン。
タン。タン。
夜のプラットホームを叩きつけて歩く女。
ペタン。ペタン。ペタン。
タン。タン。
いかった肩を揺らし長い髪を撥ね上げて
ペタン。ペタン。ペタン。
タン。タン。
寝惚けた駅員を一瞥改札を抜けて階段へ
階段から舗道へ
ペタン。ペタン。ペタン。
タン。タン。
月の夜空も瞬くオリオンもおかまいなく
ペタン。ペタン。ペタン。
眠りに就こうとする町を
叩き起こすといわんばかり
ペタン。ペタン。ペタン。
タン。タン。
情緒の欠片もあらばこそ
文句があるなら出て来いという歩調

体の隅まで暴力的な音響に支配される
若い女のサンダルは凄い
なんであんな音が出せるのか
何もかも奪っていく
おれのエネルギーさえ奪っていく
ああサンダル
ダル。ダル。
暴力的なあれはバケモノの音だ
耳を破壊し情緒を退ける音だ
タン。タン。
ペタン。ペタン。ペタン。

 これも詩になるのかと驚きましたが、実は私も最近の「若い女のサンダルは凄い」と思っていたのです。びっくりするぐらいの大きな音です。「夜のプラットホーム」から「階段から舗道へ」、まったく気にもしないで歩いている姿は、まさに「文句があるなら出て来いという歩調」です。サンダルは若い女性だけが履くものではありませんが、ヒールがあるとか、何か特徴があって「眠りに就こうとする町を/叩き起こすといわんばかり」の音になるのかもしれません。まあ、流行が変わればそんなサンダルも無くなるのかもしれませんから、それまでもうちょっとの我慢、ですかね。



詩誌『石の詩』70号
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2008.5.20 三重県伊勢市
渡辺正也氏方・石の詩会発行 1000円

<目次>
日常 濱條智里 1
小詩集 真岡太朗 2
都会のねずみと田舎のねずみ 西出新三郎 8 鈴の音/直線 橋本和彦 9
記号譚 V 米倉雅久 12          魔女宣言 XXXXW 濱條智里 14
キミに 加藤眞妙 15
三度のめしより(二十四) 覚えないからくり返すのだが 北川朱実 16
紅葉の夢 浜口 拓 20           朝熊の小菜 奥田守四郎 21
秋刀魚の干物 坂本幸子 22         午後の光の中で 澤山すみへ 23
編む 落合花子 24             永遠のコドモ会 ]T 高澤靜香 26
チューリップ 谷本州子 29         電話ボックスに降る雨 北川朱実 29
木 渡辺正也 30
■石の詩会CORNER 23         題字・渡辺正也



 チューリップ/谷本州子

初めて本物のチューリップを見たのは
高校生になって町への通学の途中だった
戦後すでに七年経っていた
国民学校低学年の図画の時間に描いた
鋸形の三つの山の下に
半円をくっつけたようなチューリップは
咲いてなかった
まっ赤には違いなかったが
誰もが描いたアップリケのような
チューリップは咲いてなかった
今までの山里での知ったか振りは
何も通用しないのではないかと
自信を失った

翌年はわが家の庭にも
赤いチューリップを数本咲かせた
運動場に護国芋を作った記憶は
とうに逆転しているのに
村人には花作りは贅沢と見られた
自由な考えには罪悪感がよぎったが
チューリップを作って写生して
吹っ切ろうとした

チューリップは日本中の花畑に
年々殖え続けた
さまざまな色や形 数えきれない本数の
チューリップが咲く日本の春
花は
衣食住が足りて
争いごとがない国に
咲く

 ああ、そういえば「誰もが描いたアップリケ」は「鋸形の三つの山の下に/半円をくっつけたようなチューリップ」だったなと思い出しました。たしかに「本物のチューリップ」とは違う姿かたちですが、それを「今までの山里での知ったか振り」と表現したところに、この作品の深い味わいを感じます。
 作品としては最終連がよく効いていると思いす。「花は/衣食住が足りて/争いごとがない国に/咲く」。まさにその通りで、色紙にでも遣いたい言葉だと思いました。



   
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