きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.4.25 柿田川 |
2008.6.24(火)
午前中は所要で小田原市内まで出掛けましたが、それ以外は終日いただいた本を読んで過ごしました。
○詩とエッセイ『樹音』58号 |
2008.6.1 奈良県奈良市 樹音詩社・森ちふく氏発行 400円 |
<目次>
特集 生
耳障りな言葉/結崎めい 2 生と死/中谷あつ子 3
いちご/かりたれいこ 4 宇宙の中で/寺西宏之 5
君へ/安田風人 6 夜が半分/汀さらら 7
夢中と一生懸命/森ちふく 8
生きることは儚いのか/板垣史郎 9 生/大西利文 10
生の授業/結崎めい 11 目/中谷あつ子 12
春雷/かりたれいこ 13 素知らぬ振りして/寺西宏之 14
うつろい/安田風人 15 雛まつりの回旋曲(ロンド)/汀さらら 16
樹のこえ 17 編集後記 18 樹音・会員名簿 19
表紙題字・大西利文
いちご/かりた れいこ
パックの中で
お行儀よく並んで
甘く香る四月のいちご
ルビー色の赤は
旬の輝き
人を誉めたことのなかった人が
屈託なく人を誉めた日に
おみやげにくれたいちご
その人も長いときを生きて
旬をむかえたのか
こうありたいと夢を抱える今の私も
旬をむかえたのか
いちごの輝きも香りもないが
確かで
豊かな
心の中の旬
特集「生」の中の1編です。「いちご」の生と「その人」と「私」の生が見事に組み合わされていると思います。いちごの「旬の輝き」と「長いときを生きて/旬をむかえ」る人間、そして「心の中の旬」は、やがてこの世の「生」を終えるものの最後の耀きなのかもしれません。そのときまで「いちごの輝きも香りもな」くても「確かで/豊かな」ものを持ち続けたいものだなぁと思った作品です。
○『群馬詩人クラブ会報』257号 |
2008.6.25 群馬県北群馬郡榛東村 群馬詩人クラブ幹事会編集・富沢智氏代表 非売品 |
<主な記事>
●「薔薇忌」を振り返って 真下宏子 2 ●温故詩人 夜どおしいっぱい…島田利夫 3
●あすなろ忌…新井啓子 4 ●ポエトリーステージ…村山精二 4
●朔太郎忌…関根由美子 5 ●投稿 梁瀬和男氏の「詩人クラブ創立五十年」を読む…鈴木喜久司 6
●詩の広場(投稿)木村和夫/いまいるか
7 ●詩書・詩誌受贈御礼…8
●各種案内…8 ●編集後記…8
ポイズン/いまいるか
泉の中に毒がある
そこが毒の池なら
誰も近づかないけど
清らかな泉の中にあるから
わからない
無防備に
うっかりと
例えば油断していると
一撃で殺られてしまう
強烈な毒ほど
親しげに
ことさら清らかそうに
誘うのだ
なぜそんなところに
フツフツと湧いてるのだろう
さんざん殺して於いてなお
毒は毒なりに
何かを生かすために
存在するのだろうか
投稿作品から紹介してみました。タイトルの「ポイズン」は1980年代に活躍したロックバンドの名でもありますが、ここでは辞書通りの「毒」という意味で良さそうです。「強烈な毒ほど/親しげに/ことさら清らかそうに/誘う」というフレーズには「毒」の持つ本質が書かれていると云えるでしょう。最終連の、毒はなぜ存在するか、「何かを生かすために/存在するのだろうか」という設問は哲学的でおもしろいですね。
なお、今号では拙文も載せていただいております。ありがとうございました。
○隔月刊会誌『Scramble』94号 |
2008.6.22 群馬県高崎市 高崎現代詩の会・平方秀夫氏発行 非売品 |
<おもな記事>
○空気が読めない/漢字も読めない…原田 鰐 1
○現代詩ゼミ講演要旨(記録)江黒幸枝/志村喜代子 演題「私にとって、いま詩は」講師 佐藤正子さん…2
○会員の詩 吉田幸恵/遠藤草人/渡辺慧介/横山愼一/芝 基紘/原田 鰐…4
○総会・現代詩ゼミ報告/出かけてみませんか 8
○編集後記…8
晴れなれど/原田 鰐
てんきが
いいというだけで
朝から元気が湧いてくる
世界がまるで
ちがってみえる
まったく同じはずなのに
重さがちがう
鮮やかさがちがう
見上げる目線と
俯瞰する目線とでは
心が佇む場所が違う
明るい陽射しが
みんなに等しくそそがれる民主的な朝
非正規雇用労働者も
ロッポンギの空中庭園に生息するベンチャービジネスの
超富裕階層とかもみんな
せいぜい軽やかに体を動かして
清々しい空気を
いっぱいに呼吸する
酸素を満たして心昂らせて生きる
そのほうがあきらかにしあわせに見える
たぶんスナップ写真のように一瞬が切り取られたその光景は
しあわせというやつに
かぎりなく似ている
「重さがちがう/鮮やかさがちがう」、「明るい陽射しが/みんなに等しくそそがれる民主的な朝」などのフレーズに魅了されます。日常を切り取りながら「非正規雇用労働者も/ロッポンギの空中庭園に生息するベンチャービジネスの/超富裕階層とかも」と、現代の格差社会への告発も行っています。さり気なく書かれたところに作者の深い思いを読み取ることができます。最後の「しあわせというやつに/かぎりなく似ている」というフレーズも佳いですね。詩を読む楽しさを感じさせてくれる作品だと思いました。
なお、後から8行目の「せいぜい軽やかに体を動かして」は、「せいぜい軽やかの体を動かして」となっていましたが、誤植と思って訂正してあります。ご了承ください。
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