きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.5.3 前橋文学館




2008.7.15(火)


 話題の映画「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」を観てきました。1950年代後半の米国核実験を素材にしていますけど、もちろん反戦・反核などというものは無し。娯楽映画ですから期待はしていませんでしたが、それでもマッカーシズムの米国が舞台で、それはそれなりに描けているのかなと思いました。ま、娯楽は娯楽として目くじら立てるつもりはありません。私でもそういう時間を採りますよ、ということですね。



詩誌『孔雀船』72号
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2008.7.15 東京都国分寺市
孔雀船詩社・望月苑巳氏発行 700円

<目次>
林永澤のボールペン画と文貞姫の詩鑑賞/韓成禮
 白動記述で書いた詩のような絵――6/文貞姫の詩五編――9
*詩
ハト/甲田四郎――13            足の糖質なんて/福原恒雄――16
青嵐/高島清子――19            鹿しかとその道中の/福間明子――22
夜の絵/岩佐なを――25           二〇〇八年/尾世川正明――28
ぼくの大好きなバーバー/掘内統義――31   ある日春めいて/小林あき――35
卯の花月/川上明日夫――38         無言歌/文屋 順――40
幻花/大塚欽一――42            朝が用意するもの/望月苑巳――44
*連載 絵に住む日々《第十八回》そこにカップが 小柳玲子 46
*試写室――同窓会/コレラの時代の愛/スカイ・クロラ/おくりびと/わが教え子、ヒトラー/言えない秘密/コッポラの胡蝶の夢/コドモのコドモ 赤神信&桜町耀・選+国弘よう子 50
*吃水線・孔雀船書架/竹内貴久雄――54
*リスニング・ルーム/竹内貴久雄――56
*孔雀船画廊(21) 岩佐なを――58
*エッセイ 「淋代」、「淋代」ふたたび 堀内統義 60
*連載エッセイ 眠れぬ夜の百歌仙夢語り《第五十八夜》 望月苑巳 64
*詩
定家卿の忘れ物/望月苑巳――71       林へ/間瀬義春――74
光る肉体/間瀬義春――75          シンプル ライフ(3)/小紋章子――77
師走の猫/松井久子――80          集合へと/新倉葉音――82
母よ/藤田晴央――85            緑の穴/紫 圭子――88
ほこりたかき魚たち/
洋子――91     シベリアの夏/脇川郁也――94
花暦/朝倉四郎――97
*連載 アパショナータ PARTU(36) 三好達治〜抒情の源流を訪ねて 藤田晴央 100
*航海ランプ――110 *執筆者住所録――109



 母よ/藤田晴央

こどもの頃
二階に家族の居間があり
わたしはしばしば階段の上にすわり
一階の教室で働く母が
様子を見に来るのを待っていた
すわっていたそばの板壁に
「おかちゃのばか」
と、書いたのは何歳のことだったろうか
母はその落書きを消さなかった
やや長じても
「おかちゃのばか」はそこにあった

階段の上で
こどもは泣きながら
洟をすすりながら
書いたのか
宝物のクレヨンで

母は生徒たちに
編物を教えることに忙しかった
階段の上のこどもに
話しかける人間はいなかった
時が、大きな柱時計の時が
止まっているように動いていた
こどもは
「おかちゃ」
と、かん高く叫んだに違いない
しかし叫びは
編機の音にかき消されて聴こえない

母よ
あなたが教えた女たちの手先から
何千枚のセーターが
この世に生みだされたのだろうか
ザーザーという編機の音は
女たちが
家族のためにセーターを編む
波のような音だった
教室は女の海であった
わたしもまた
あなたの編んだセーターを着て
しゃくりあげていたにちがいない

こどもは階段の上から
降りていかなかった
ただ
「おかちゃのばか」
と、書いたのであった

 昭和の何年ごろのことだったでしょうか、そういえば〈編機〉で〈女たちが/家族のためにセーターを編む〉ということが流行したことがありました。あの頃は衣類も高くて、手編みのセーターもよく編まれていました。
 〈その落書きを消さなかった〉ところに〈おかちゃ〉の深い愛情が感じられます。昔の母親たちはこういう形で愛情を示していたのかもしれません。おかあちゃん≠ナはなく〈おかちゃ〉であるところに〈わたし〉の年齢もしのばれて、いい言葉です。過ぎ去った時代と、その時代の家族を感じさせる佳品です。



詩誌『礁』7号
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2008.7.31 埼玉県富士見市
礁詩社・穂高夕子氏発行 非売品

<目次>
詩作品
嵯峨の風/濱 泰雄 2           安曇野/濱 泰雄 4
再び始まりの一歩/近村沙耶 6
俳句 目刺の貌 川端 実 10
エッセイ
軍国日本と北朝鮮/川端 実 10       平家物語の世界(2)/川端 実 12
金子みすゞの詩を読む(7)/穂高夕子 18    退職始末記/秦健一郎 22
花傷こぼれてにほふ花桜かな(3)/中谷 周 26
詩作品
耳をすませば/佐藤 尚 32         光にじむ・街/佐藤 尚 34
あなたはどこで/穂高夕子 36        風がつれてくる/穂高夕子 38
編集後記…40                表紙デザイン 佐藤 尚



 嵯峨の風/濱 泰雄

石仏たちは語り合っている
雑草は昔からそこに生え
石は無音のまま苔むして
ひっそりと時間が過ぎ
風は笹の葉をゆすり
さざ波のように
老松の緑に波紋をひろげていく
限りなく静寂は
茅葺きの屋根にきらきら透明に
風がしみていく
流れ過ぎる雲は
山も地も水も
いきをひそめるように
いのちはまたかたちをかえて
きづかぬままにもえている

 新同人の作品として巻頭を飾っていました。私の父親と同年代の方のようですが、老いさらばえた私の父と比較して、その明晰さに驚きます。紹介した作品には何とも言えない風格を感じ、特に最終部の「いのちはまたかたちをかえて/きづかぬままにもえている」というフレーズには、自然も人生も達観したものがあるように思いました。今後のご活躍を祈念しています。



季刊・詩と童謡『ぎんなん』65号
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2008.7.1 大阪府豊中市
ぎんなんの会・島田陽子氏発行 400円

<目次>
くぬぎの葉っぱ ゆうきあい 1       おまつり ふうせん 池田直恵 2
いきをひそめて/ぎゅっと いたいせいいち 3 まっしろなノートを 井上良子 4
花まつり/もしも 井村育子 5       よるの底/緑のふね/わたし 柿本香苗 6
れいぞうこ/すいそう かわぞええいいち 7 こっきり歌/おっと 小林育子 8
たいそう 島田陽子 9           春 春 夏 秋 冬/つぶやき すぎもとれいこ 10
まいご/夕暮れ 滝澤えつこ 11       赤ちゃんのおとうと/うつったよ 富岡みち 12
子どもの日/さくら 富田栄子 13      ヒョウジュンゴ/なんだか… 中島和子 14
こっせつ 中野たき子 15          野のなか空に/蛇/スギナ 名古きよえ 16
六角堂の お地蔵さん/じゅくすいタイプ 畑中圭一 17
フウさん/カチャッカチャッ/朝の風 藤本美智子 18
せめて今からでも/ムクドリソング 前山敬子 19
くろまめえだまめ/きみにおねがい 松本純子 20
波 萬里小路和美 21            リュックサック/青空 むらせともこ 22
ふんふん家族 もり・けん 23        バレエをしてるの? 森山久美子 24
本の散歩道 畑中圭一・島田陽子 25     かふぇてらす すぎもとれいこ ゆつきあい むらせともこ 27
INFORMATION 28         あとがき 29
表紙デザイン 卯月まお



 まいご/滝澤えつこ

どうしてボクのことを
「まいご」っていうの?

まいごになっているのは
ママのほうだよ

泣いてないかなぁ
ちゃんとお名前いえるかなあ

早くママをさがしてあげて

これからはボクがママのこと
ちゃんと見ていてあげなくちゃ

 失礼ながら思わず笑ってしまいました。立場が変わればたしかに「まいごになっているのは/ママのほう」ですね。「泣いてないかなぁ/ちゃんとお名前いえるかなあ」には爆笑。発想を逆転させた見事な詩だと思いました。



   
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