きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.5.3 前橋文学館




2008.7.19(土)


 夕方から自治会の組長会議でした。自治会費の徴収や日赤募金などが議題に出て、いずれも例年通りということになりました。組長会議は議決機関ではありませんから、執行部提案を淡々と受け入れるだけです。考えてみれば議決もしないで会議が進んでいくというのは可笑しなことなんですけど、要は行政の下請け。言われたお金を集めて、期日までに納入するのが組長の仕事で、戦前からの隣組制度、もっと言えば江戸時代からの五人組などの制度がそのまま遺っているということなんでしょうね。いざという時はそれが住民同士で助け合うという基礎にもなりますから、目くじらを立てるつもりはありません。でも、なんか楽しくないなぁ。輪番制の執行部、輪番制の組長というのが楽しくない原因なんでしょう。かと言って、楽しくするために工夫を考えようなんてこともさらさら思っていません。無事に1年の任期を終えたいというのが本音です。その根性が楽しくない最大の原因かもしれません(^^;



松沢桃氏詩集『青惑星』
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2008.8.8 東京都千代田区 砂子屋書房刊
2500円+税

<目次>
ひいないろ 12    痙攣する朝 14    青感星
(ぶるーぷらねっと) 16
プリズム 18     柳 20        出奔 22
二重らせん 24    秋林 26       冬薔薇 28
瑠璃色の風 30    旧友 32       プールサイド 34
午後十一時 36    かぜの棲むまち 38  氷嚢 40
卒業 42       告 44        かわかぜ 46
消えた水族館 48   廻り灯籠 50     貝殻草紙 52
到来もの 54     みずうみ 56     かげろ・う 58
たなばた 60     文 62        ひなまつり 64
朝餉まで 66     父の壮年期 68    しろい午後 70
原稿用紙 72     透明列車がゆく 74  午前零時 76
ベランダ育ち 78   カミナリ 80     二十六時 82
ナイトコール 84   草原 86       思春期  88
プラットホーム 90  無明 92       八重山 94
テオティワカン 96  吹雪 98
あとがき 100
装本・倉本 修



 
ぶるーぷらねっと
 青 惑 星

闇の闇をめぐるかがやく生命体 リューバが発見された永久凍土北
極圏 いつの日かそうとおくない日に南風が席捲する 草原となれ
ば酷暑の血を吐く花たち 海岸線が後退島が沈む 両極地の天空を
焦がす暗黒の亀裂は成長をやめず死の宇宙線をたえまなく放射 殖
えすぎた傲慢な舌ととどまることをしらない欲望のボタンスイッチ
地表のせいぶつの滅亡がいっそ唯一の美しい未来像 氷期も間氷期
もスタンスのながい季節のうつろい 摂理のまま変容をくりかえす
太陽との運命共同体ゆえの終末思想 ノアの箱舟のゆめさがし 五
十億光年もねむればいずれ帰還できるのだろうか 超新星の故郷(わがや)
天変地異にのみこまれる暮らし 傾く岸辺にたつ人々はみなし児だ
はるか月とかぐやがみつめた 大気バリアにまもられたあおい孤独

 4年ぶりの第4詩集です。ここではタイトルポエムの「青惑星」を紹介してみましたが、ご覧のように〈ぶるーぷらねっと〉とルビが振られています。これはよく判る詩で、〈両極地の天空を/焦がす暗黒の亀裂〉はオゾンホールのことでしょう。〈地表のせいぶつの滅亡がいっそ唯一の美しい未来像〉とは怖ろしい言葉ですが、このまま何もしなければ現実となる日も遠くはありません。〈大気バリアにまもられたあおい孤独〉をいつまでも遺したいと思った作品です。



詩誌『1/2』27号
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2008.8.1 東京都中央区 近野十志夫氏発行
400円

<目次>
キャンベラまわり/芝 憲子 2       半分泣き顔 笑い顔/宮川 守 4
名と戦争・屋根/野川ありき 6       できない相談・風は女のように/呉屋比呂志 9
夢?のかたち/館林明子 12         風景/佐伯けんいち 14
地球の復讐・思い出/薄葉久子 16      悪夢/枕木一平 19
二〇三高地/西條スミエ 22         昼休みの会話/黒 鉄太郎 24
ドクダミの花・桐の木/宮本勝夫 27     桜ねじれる/近野十志夫 30
三宅島のウグイス・夜の海猫/都月次郎 32  携帯電車/藻利佳彦 35
テレビで「父とチャコとボコ」を見て/薄葉久子…38 同人の動向…42



 名と戦争/野川ありき

名前を変えろといわれた。
お前はアリモトだから
Arthur Thomas
ともかくアメリカ人になれと。
パートナーじゃないか
ついて来いよ。

友達で兵隊やってるバートに誘われた。
日本人がみんなアメリカ人になったら手間がいらない。
兵隊がたくさんできる。
いっしょに戦争しようぜ。

 どうしてるかなあ

俺はキム(金)のことを思い出した。
キムの親は田んぼの畦道にとぼとぼとつくられたバラックに住んでいた。
水の狭間に土を盛り上げて
家のようなものをつくった朝鮮人の部落だったので
風や雨がくるたびに屋根があぶなくなる。
そんなふうにキムの家族は
暮らすというよりも生きていた。

八月十五日の「解放」の日
キムの家は「金本」の名を捨てた。
創氏改名させられて日本名で暮らしてきたが
キムの名に還った。

戦争のときも朝鮮人に
日本人になれといった。
名を変えて日本人にさせられたら
戦地に行かされたり
日本に連れてこられて炭鉱や鉱山で
食うや食わずでこき使われた。
キムの祖父もそうだった。

在日への差別はつづいたので
ほとんどは朝鮮人を隠して暮らした。
金本を捨ててもキムの家は金(きん)と呼ばれた。

キム・キョンファン
キムの名を教えられたとき
その美しい響きに朝鮮の誇りを感じた。
名は国のことなんだ。

改名させた日本の国は憎んだけれど
自分の名は大切にしたくなった。
それで
俺はバートに
サヨウナラを言った。

 日本が過去に〈創氏改名〉を朝鮮半島の人々に強要したとき、その人たちはどういう気持ちだったかが端的に理解できる作品です。第1連が見事です。〈ともかくアメリカ人になれ〉と言われて、今の若い人なら喜んでなるかもしれませんけど、中国人になれ、朝鮮人になれと言われたらどうでしょう。それを私たちの父親世代は強要したのです。〈日本人がみんなアメリカ人になったら手間がいらない。/兵隊がたくさんできる。/いっしょに戦争しようぜ。〉というアメリカの思惑も見事に看破しました。〈名は国のことなんだ。〉というフレーズが光る作品だと思いました。



詩とエッセイ『イリヤ』3号
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2008.7.14 大阪府羽曳野市 尾崎まこと氏発行
300円

<目次>
暑中お見舞い 3
 *
ゲスト 以倉紘平 5
 雨晴
(あまはらし)という駅/マイトリー・カルナーの歌
 *
左子真由美 13
 詩・イリヤ/コップ/塔/思い出/整列/便り
 マイ・フェバリット・ポエム「バルバラ」
 *
佐古祐二 23
 詩・秘密/春/丈高い赤いカンナの花よ/空を飛ぶ
 エッセイ・笑いと微笑について/静けさを愛することについて
 *
尾崎まこと 33
 童話詩・鬼婆棟と河童の子
 詩・林檎ランプ/点灯夫
 *
編集後記 43



 点灯夫/尾崎まこと

わたしだけが住んでいる
この小さな天体

暗いと思えば
夜より暗くなる
明るいと思えば
真昼より明るい

わたしが灯す
わたしが消す
わたしという天体
そのミステリアス

 〈点灯夫〉というのは街灯に火を点けてまわる人のことだったと思いますが、〈わたしだけが住んでいる〉〈わたしという天体〉を街灯と見立てた内省的な作品と思ってよいでしょう。〈この小さな天体〉の街灯に〈わたしが灯〉し、〈わたしが消す〉という行為は、まさに〈ミステリアス〉であると同時に、人生そのものでもあるように思います。短い詩ですが内在するものの深さを感じ取れる作品だと思いました。



   
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