きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.5.3 前橋文学館




2008.7.24(木)


 茨城県久慈郡太子町まで足を延ばして「袋田の滝」を見てきました。日本3名瀑の一つだそうですが、300m近いトンネルを抜けると目の前に現れます。観瀑台も整備されていて見応えのある滝に圧倒されました。

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 写真の左上に突き出ているのが観瀑台です。この写真は下流の吊り橋から撮ったものですが、周囲の岩山も迫ってなかなかの迫力でした。この時期は渇水期らしく、観光写真で見る水量の1割ほどでしょうか、それでも雄大な雰囲気を醸し出してくれます。冬には凍るそうですから、それもまた見事な眺めなんでしょうね。
 退職してから関東近縁の観光地に行く機会が増えましたけど、日本はまだまだ観るべき処が多いのだなとつくづく思います。現職の間は休日の移動が主でしたから有名な観光地を避けていたのですが、今なら平日に行けます。今日も人影はまばら。数人と行き違うだけでした。有名な観光地は老後のためにある!なんて思いましたよ(^^;



季刊『詩とファンタジー』4号
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2008.9.1 神奈川県鎌倉市 かまくら春秋社発行
838円+税

<目次>
●表紙絵・やなせたかし
やなせたかしの詩と絵−ぜいたく−2      中也のマリヤ−4
●詩とイラストレーション
距離−山口理々子 絵・宇野亜喜良−6     人肌−たなかひとみ 絵・松永禎郎−8
はじめの日−篠原実乃里 絵・味戸ケイコ−10  ずるい−高浜陽南子 絵・松尾たいこ−12
モラトリアム−松本尚樹 絵・高田美苗−14   ゆで卵−棚田悦子 絵・おぐらひろかず−16
かえる−のぶながはるこ 絵・下谷二助−18   せもたれ−夜神楽 絵・山口はるみ−20
風景ひとつ−蜻蛉 絵・高橋幸子−22      再会−柴田健一 絵・北見隆−24
水きりカゴ−こぬれ梢 絵・東逸子−26     へくそかずら−水無月ようこ 絵・梅川紀美子−28
現住所−中川龍太郎 絵・内田新哉−44     刺のある言葉−中島真悠子 絵・山田緑−46
ルールブック−三木裕 絵・小谷智子−48    おばあさんの独言−さんぽや 絵・水上多摩江−50
さよなら傘−荒井薫 絵・牧野鈴子−52     ボールペン画−くりのいが 絵・飯野和好−54
夫婦喧嘩−たけだあきこ 絵・渡辺リリコ−56  鰻−アベナギサ 絵・国井節−58
もとはサル−ヤブウチハル 絵・大友ヨーコ−60
特集・愛の唄 しずくT/U/V−吉田加南子  絵・葉祥明−76
●ファンタジー
ステッキ−巖谷國士 絵・奥原しんこ−30    水ヒヤシンス−高橋順子 絵・瓜南直子−62
アカマリのパイパティローマ物語−うえま・つねみち 絵・後藤貴志−80
●特集・野口雨情の詩と人生 詩・野口雨情 解説・青木健 絵・安藤早紀
(1)七つの子−34               (2)四丁目の犬−37
(3)青い眼の人形−39             (4)しゃぼん玉−41
(5)証城寺の狸噺子−43            (6)赤い靴−70
(7)雨降りお月さん−73            (8)船頭小唄−74
●歯とファンタジー
歯みがき讃歌−やなせたかし−66        あの夏の祭り−村松友視 絵・中島梨絵−68
●エッセイ
宮沢賢治が詩で書いたファンタジー 天沢退二郎 絵・矢吹申彦−84
●シリーズ 少女だったとき少年だったとき
あいつとのタタカイ−与那原恵 絵・雨宮尚子−88 美しき誤解−川村二郎 絵・ささめやゆき−90
●月のかけら 作品集−絵・吉野晃希男−92
●お便りのコーナー/執筆者・画家プロフィール−94
●表詩記/編集後詩−やなせたかし−96



 へくそかずら/水無月ようこ

迷惑なこの名前
返上しましょうよ
通り掛かりの優しい方が
名づけてくれたの
さっき「早乙女花」と
呼んだのよ

う ふ ふ
生きるって
うん、うん、
捨てたもんじゃない

白い小花に
口紅
(べに)さえつけて
へくそかずらたちの
真昼のおしゃべり

 たしかに〈へくそかずら〉にとっては〈迷惑なこの名前〉なんでしょうね。似たようなことでは、私はウスバカゲロウもひどい名前だなと思っています。薄馬鹿下郎…。これは漢字を間違えていますね(^^;
 本当に「早乙女花」と呼ばれたら〈生きるって〉〈捨てたもんじゃない〉と思うことでしょう。この詩では名前ひとつで人生も豊かになることを教えてくれているように思います。ウスバカゲロウは薄羽蜻蛉。相手のことを思いやる〈通り掛かりの優しい方〉になりたいものです。



詩誌『プラットホーム』5番線
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2008.7.10 東京都世田谷区
宮本智子氏他・プラットホーム舎編集 300円

<目次>
《詩》
growing/宮本智子 4        蕾/宮本智子 6
母の潮/田中聖子 10            ザルツブルグの木/田中聖子 12
いい日/近藤明理 16            命/近藤明理 20
風のかなた/高梨早苗 24          砂の足/高梨早苗 28
《エッセイ》
灰とキャベツ/宮本智子 32         武と言葉/田中聖子 34
「かぐや」/近藤明理 36           窓をあけて/高梨早苗 38



 growing/宮本智子

かえるは たぶん
草の芽が
土を かきわける音を
きくのだろう

こうもりは たぶん
夕やけ雲が
燃えはじめる音を
きくのだろう

なにかに 呼ばれたような気がして
ふり返った
うららかな 午後の道

せかいは まだ
わたしに
隠していることがある

 第1連、第2連が繊細で佳いですね。特に〈草の芽が/土を かきわける音〉というフレーズが生きていると思います。そして最終連。隠し事をしている〈せかい〉という発想が新鮮です。タイトルの〈growing〉は、直接的には〈草の芽〉に掛かっていますが、それだけではなく隠し事をしている〈せかい〉にも掛かっていて、〈せかい〉が隠し事などせずに成長≠キることまでを想起させます。起承転結もきれいに決まった佳品だと思いました。



詩誌『衣』14号
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2008.7.20 栃木県下都賀郡壬生町  700円
森田海径子氏方「衣の会」・山本十四尾氏発行

<目次>
田/村永美和子 2             花ふきん/うおずみ千尋 3
待つ/小森利子 4             少年/佐藤史子
(あやこ) 5
春の歌/大磯瑞己 6            雛
(ひいな)を飾る/石川早苗 7
御業
(みわざ)/星野典比古 8         迷い道/鶴田加奈美 9
光のもとで/山下貴実代 10         通らない橋/上原季絵 11
素数蝉/豊福みどり 12           無月 その三/岡山晴彦
(はるよし) 13
霊蝶/喜多美子 14             変態/青柳俊哉 15
風の龍/山田篤朗 16            口は歌うよ/千本 勳 17
一人ぼっち/高畠 恵 18          焼く/佐々木春美 19
衣替え/相場栄子 20            八重桜/江口智代 21
雲にたなびく都/大原勝人 22        たりない三グラム/月燈ナユタ 23
夕陽に向って/須永敏也 24         窓を閉めて(訳詩)/大山真善美
(ますみ) 25
普通の愛/葛原りょう 26          精霊棚
(しょうりょうだな)/森田海径子(かつこ) 27
木槿考/山本十四尾 28
同人近況 29                同人詩集紹介 32
後記 33                  住所録 34
表紙「衣」書 川又南岳



 少年/佐藤史子

出遭ったことはないか
夕暮れ時
ひそやかに降りしきる雨の中
傘を差した幼い少年が
真っ直ぐな黒い瞳でこちらを見上げて
待ち伏せているのに

息を呑み 私は少年と見つめ合う
少年の瞳の奥には
いつか歩いた道端の
白つめ草が揺れている 緑の風の音ばかり

空は今より青かったっけ
注がれる若い母の眼差しも
明るい日の光を思わせ
私の足取りも軽かったっけ

みぞおちに やにわに水鳥が飛び立ったような痛み
行き着いてしまったのだ
記憶に

ある時はグラウンドの片隅
別の日には「不採用通知」のハガキと共に
捨てたはずの夢の迷い子が
ふいに目の前に現れた

少年の差し出す傘を受け取ろうか
受け取るまいか
それを頭上にかざせば
息の詰まるような灰色の空を遮り
別の世界が見えるだろうか
私は立ち尽くす

冷たく頬に当たる雨粒もそのままに
点り始めた街灯の鈍い明るさを受けて
私の顔は ぼんやりと光を放っている

 〈真っ直ぐな黒い瞳でこちらを見上げて/待ち伏せている〉〈傘を差した幼い少年〉が象徴的に遣われている作品だと思います。少年は〈捨てたはずの夢の迷い子〉とあり、〈別の世界が見える〉象徴と採っても良いでしょう。〈私〉を照らし出し〈私の足取りも軽かった〉時代を見てきた少年とも捉えました。最終連の〈私の顔は ぼんやりと光を放っている〉というフレーズも印象的です。年を重ねただろう〈私〉と〈少年〉との対比に人生を考えさせられた作品です。



   
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