きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.7.11 玉原高原 |
2008.8.3(日)
日本詩人クラブ詩書画展の最終日。今日の展示は14時までで、それ以降は作品の撤収をしました。私の作品は持ち運びを考えて(^^;
縦が44cm、横が33cmでしたからラクチン。梱包もすぐに終わって、他の人の手伝いをしたほどです。
来場者は最終的に250名ほどだったようです。意外に少なかったなという印象です。前回、一昨年は350名ほどでしたので、100名は減ったことになります。その原因のひとつには、出品者が一昨年より少なかったことがあげられるでしょう。出品者数と来場者数はリンクしていると言えそうです。反省点として挙げておきますが、それはそれとして暑い中、近くから遠くからおいで下さった皆さまには、主催者側の一員として心より御礼申し上げます。また再来年も銀座・地球堂ギャラリーで開催しますので、どうぞお楽しみに!
夕方からは銀座から四谷に回って、四谷コタンの奥野佑子さんのライヴを観てきました。埼玉の詩友が、たまには奥野さんのライヴに行きたい! 今日は都合が良い! というのでご一緒しました。私としては女性からそのように言われたら嬉しかったのですが、男じゃなあ…。ウソウソ、二人で楽しく鑑賞させていただきました。
相変わらずストロボ・フラッシュ禁止なんですが、30枚ほど撮って、なんとか使える写真が1枚だけありました。本当はもっと美人なんですけど、撮り方が悪くてゴメンナサイ。
聴きたいと思っていた「ふるさと」も「スマイル」も唄ってくれて、大満足。一所懸命うたっているのに、アルコールとタバコを楽しんで、なんか申し訳ない気になっていましたが、それも酔いが回るにつれ、忘れて……(^^;
佳い夜でした。奥野さん、埼玉のSさん、ありがとうございました!
○個人詩誌『Quake』32号 |
2008.7.31
川崎市麻生区 奥野祐子氏発行 非売品 |
<目次>
シスター・スパイダーのスキャットより
絆 一
Dormir(眠る) 四
咀嚼(そしゃく)という行為 七
婆 九
おわかれのバラード 十二
おわかれのベラード
捨ててしまった
手紙も本も洋服も
大切に書きためていたはずの詩のノートも
捨ててしまった
ゴミ収集日の蒸し暑い朝
両手に大きな袋を抱えて
ふらふらしながら 歩いてゆく
ゴミ置き場のビニルシートをあげると
つやつや光る大きなムカデ
無敵のフルメタルジャケット
しなやかに体をくねらせ
くたびれたスーパーの袋の陰に
そそくさと 消えてしまう
ドスンドスンと無造作に投げ出す
ノートの山
この紙の上に突っ伏して
朝を迎え
息も絶え絶え 世界にぶら下がり
生き延びた そんな日もあったのに
ああ さようなら
ほんとうに さようなら
空っぽの私のページは
今
たよりなく
無色
だけど 今度こそ
世界をしっかり捕まえたら
たっぷりと噛み砕き
味わうことも出来るだろう
ビニルシートを静かにおろして
私は私の時間に
きっぱりと 幕を引く
過去は戦場に転がる屍(しかばね)のように
ゴミ収集場で 折り重なって
焼かれるまでの そのときを
不安げに 待っている
自らの腐臭に むせながら
電信柱のてっぺんで叫ぶ
カラスの声に
小刻みに体を震わせながら
上述のライヴでいただきました。作品は謂わば身辺整理と採って良いでしょうが、これがなかなか難しい。この詩でも名残惜しい気持ちがよく出ています。〈無敵のフルメタルジャケット〉の〈つやつや光る大きなムカデ〉は、そんな人間のヤワな気分を断ち切ってくれる使者なのかもしれませんね。そして〈きっぱりと 幕を引〉いて、〈今度こそ/世界をしっかり捕まえ〉たいものです。
○個人詩誌『SUKANPO』創刊号 |
2008.8.11 群馬県高崎市 田口三舩氏発行 非売品 |
<目次>
<詩>
おまけみたいな朝がきて・・・・・2
日向ぼっこクラブ・・・・・・・・4
本当に泣いていたんだもん・・・・6
<あとがき>
おまけみたいな朝がきて
がん患者の五年生存率が大分上がったと
新聞が報じていたその朝のこと
するとあとは儲けものってことかしら と
家人がこともなげに俺の顔をのぞき込んだ
ところで最近のミカン
少々太り過ぎなのである
ミカンとは我が家の同居犬
ヨークシャーテリアの雌である
人間にしてみれば後期高齢の老女といったところ
老女老女って言っちゃあ
そりゃあミカンちゃんが可哀そうよ
と他人ごとではない顔つきの家人
ミカンはよそ見をしながら二人の話を聞いている
緑化ボランティアで出かけるというその朝のこと
今日は庭の草とりしてちょうだい
雑草が大威張りだわよ
俺なりに緑化に協力しているつもりなんだがなあ
と少々ふてくされ気味
どこか少しピントがずれていて
どこか少し憎ったらしくて
どこか少し間が抜けているそんな朝のこと
最近よく夢をみるのよ
今朝がたはあなたが迷子になった夢
俺もとうとうイカレタか それでどうした
目を醒ましたら 何てことないの
ちゃっかり目の前にいるじゃあない
あなたが
どこか少し可笑しくって
どこか少し歪んでいて
それでどこか少し悲しくって
二人一匹
特に変わった風もなく
まるでおまけみたいな朝がきて
ぼんやり口を開けた昼の中に
今日もぼんやり溶けこんでいく
新しい個人詩誌の出発です。
創刊号巻頭の詩は、〈二人一匹〉の〈どこか少しピントがずれていて〉〈どこか少し可笑しくって〉微笑ましくなる作品でした。〈あとは儲けもの〉に対応していると思ってよいでしょう、〈まるでおまけみたいな朝がきて〉というフレーズが佳いですね。人生を達観した詩人の余裕さえ感じられました。今後も長く愉しませていただけることを祈念しています。
○隔月刊詩誌『叢生』157号 |
2008.8.1 大阪府豊中市 叢生詩社・島田陽子氏発行 400円 |
<目次>
詩
もういちど 山本 衞 1 忘れてなかった痛みの心 由良 恵介 2
鏡の中の面影 吉川 朔子 3 乾杯 竜崎富次郎 4
育む 秋野 光子 5 雨季 江口 節 6
モンスター 姨嶋とし子 7 夏の昼下がり 他 木下 幸三 8
最後のわら 佐山 啓 9 魔睡 島田 陽子 10
藍のある暮らし 下村 和子 11 インディアン スライド 曽我部昭美 12
時間よ 藤谷恵一郎 13 踏切 他 原 和子 14
ドア 福岡 公子 16 じっといてなあかん 麦 朝夫 17
大大変な鳴咽と平板よみの「なく」毛利真佐樹 18 ふるさと 八ッ口生子 19
本の時間 20
小 径 21
編集後記 22 表紙・題字 前原孝治
同人住所録・例会案内 23 絵 森本良成
もういちど/山本 衞
町中がお祭りにごった返している日
2ばんめのねえちゃんと
サーカス小屋へいった
木戸の前は何重にも荒縄が張りめぐらされ
観客の無制限な入場を
怖い目のにいちゃんたちが拒んでいた
ぼくらはその目を盗んでは
なんども綱を潜って前に出た
さいごの砦をぼくはすばやくくぐる
ねえちゃんはまだぐずぐずする
はよ 早う
目配せに
手招きに
なんどもなんどもためらった後
ねえちゃんと手が繋げた
あのあと
ふたりはもちろんサーカスを見た
人一倍小さくスリムなからだで綱をくぐった
ぼくとねえちゃん
頭の上を巧みに飛び交う空中ブランコの女の子
「酢をのんだらね
あんな細い体になって空をとべるんだって……」
真顔でいうねえちゃんのほうが
よっぽどスリムだった
ねえちゃんはいくつになったかしらん
屋島水族館のトドみたいな体型で
病院のベッドを軋ませながら
どんな呼び掛けにも応答しなくなってしまって
越えてはならない網を潜ろうとしている
ネエチャン
こんどこそ酢を飲んで
もう一度サーカス見に行こうよう
〈2ばんめのねえちゃん〉は実の姉上と採ってよいかと思います。もちろん詩作品ですから実話と思う必要はありませんけど…。〈人一倍小さくスリムなからだ〉だった〈ねえちゃん〉が〈屋島水族館のトドみたいな体型で/病院のベッドを軋ませながら/どんな呼び掛けにも応答しなくなってしまっ〉た現実を〈越えてはならない網を潜ろうとしている〉と表現したところに作者の力量を知らされました。最終連も佳いですね。〈ネエチャン〉と片仮名に変えたところも成功していると思いました。
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