きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
080711.JPG
2008.7.11 玉原高原




2008.8.2(土)


 日本詩人クラブの第14回詩書画展6日目の今日は、会場の地球堂ギャラリーで、午後から朗読会が開かれました。恒例の朗読会ですが、今回の朗読者は13人、いつもより少なかったかもしれません。しかし、ネパールの「ウペンドラ and フレンズ」というフュージョン・バンドの特別参加もあって、いつもとは一味違った朗読会でした。

080802.JPG

 写真はそのバンドと聴衆の一部です。画廊での朗読会というのも良いものですが、生の演奏というのもなかなか良いものですね。
 本日の私の役割は、朗読者の写真を撮ることだったのですが、ついでに全作品の撮影も行いました。日本詩人クラブHPに載せるためのもので、重たい1眼レフを持って行った日に撮ろうと決めていましたから、今日はその二つとも達成したことになります。

 ところで、芳名録を見ると、私の関係で来てくれた人が何人もいらっしゃることが判りました。遠くは、拙宅のある南足柄から、今日は湯河原からおいで下さった方があり、感謝感激です。都内在住の方も3人ほどいらっしゃって、本当にありがたいことです。御礼申し上げます。



壷阪輝代氏詩集『探り箸』
saguribashi.JPG
2008.8.5 東京都板橋区 コールサック社刊
2000円+税

<目次>
第T章 探り箸
探り箸 10      迷い箸 13      指し箸 16
空著
(そらばし) 19    すかし箸 22     なみだ箸 24
落とし箸 27     箸なまり 30
第U章 ふるさとの背中
ふるさとの背中 34  母の皿 37      ほどかれる 40
鶴 43        うしろ姿 46     土笛 48
すべり台 51     ねがい石 54     鬼の行方は 57
一輪車 60      約束 63       影 踏みかさなる 66
その香りを 69
第V章 菰巻き
(こも)巻き 74    おすそわけ 77    みどりの訪問者 80
おかげさまで 82   居留守 85      森のレクイエム 88
左胸の神様 91    もうひとつの道 94  旅をしてきた水 97
水の庭 100      傷口 103       忘れがたみ 106
婆羅よ婆羅 109    流れ星の時間 112   細胞 115
縁があったら 118
あとがき 123



 探り箸

さぐらなくても
小さな器のなか
何から食べようと同じこと
それでも選り好みするいじましさ

四人の子供の箸が
いっせいに伸びた
家族の真ん中に盛られた揚げ物
あとのわずかを
口に入れていた父と母

あの日のわたしは
どこへ行った
まっすぐに
目的を掴んでいた眼の輝きは

人ひとり
生きる場所をさぐったとき
他人の器にまどわされ
果てがみえはじめたとき
そして
職を辞したとき

そのあいだも
離さずにいたこの箸
これからも
明日をさぐりつづけるための箸
――探り箸

 6年ぶりの第6詩集です。第T章からは、これだけの〈箸〉があるのかと改めて驚かされました。ここではタイトルポエムでもあり巻頭詩の「探り箸」を紹介してみましたが、子どもの頃の〈それでも選り好みするいじましさ〉を思い出しました。生きることは食べること。その道具の〈明日をさぐりつづけるための箸〉に導かれた作品と云えましょう。
 本詩集中の
「落とし箸」はすでに拙HPで紹介しています。こちらも佳い詩です。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて壷阪輝代詩の世界をご鑑賞ください。
 なお、第3連の〈掴〉は本字ですが、きれいに表現できないので略字を使っています。ご了承ください。



詩誌『黒豹』118号
kurohyo 118.JPG
2008.7.30 千葉県館山市
黒豹社・諫川正臣氏発行 非売品

<目次>
諫川 正臣  螺旋 2         当今稲刈り風景 3
西田  繁  梅雨どきに 4      生まれて 5
よしだおさむ 懐に 6         つばき花 7
前原  武  五十五匹の龍 8     落日 9
山口 静雄  皐月 10
富田 和夫  蜃気楼−サハラ砂漠をゆく 11
杉浦 将江  こぐ 12         母の日 13
本間 義人  言葉なき歌 14      絶唱 15
庄司  進  龍之介 16        赤い車椅子 17
編集後記 18



 赤い車椅子/庄司 進

五月の雨が降る
花水木の葉の上に

赤い車椅子の女子高生が通る
同級生の二人が
後ろから傘を差してあげている
二人は話に夢中だ

交差点の青の信号がチカチカし始めた
赤い車椅子の女子高生が走り出した
同級生の二人が後を追いかける
水色の傘がゆれゆられ

信号を渡り終えると
赤い車椅子の女子高生が
振り返り微笑む

喫茶店の店員が
野外のテーブルを片付け始めた

五月の雨が降る
花水木の葉の上に

 〈五月の雨〉のような爽やかさを感じさせる作品です。〈赤い車椅子の女子高生が走り出し〉て、〈信号を渡り終え〉て〈振り返り微笑〉んでいる姿が目に見えるようですね。〈花水木〉、〈野外のテーブル〉という舞台設定も奏功していると言えるでしょう。若い〈女子高生〉たちの未来を祝福したくなり、人生の素晴らしさをも感じました。



季刊・詩とエッセイ『焔』79号
honoho 79.JPG
2008.7.15 横浜市西区 福田正夫詩の会発行
1000円

<目次>

繁栄の都市…古田豊治 4          『防災船希望』…小長谷源治 8
産業革命…阿部忠俊 9           北へ/満ちて退いて…黒田佳子 10
蚊取線香のアトリエ…保坂登志子 12     カラスの話…平出鏡子 14
薄墨桜…伊東二美江 16           ふたたびこころよ…瀬戸口宣司 17
文鎮…地 隆 18             「蟹工船」の告知…布野栄一 20
窓辺…古田康二 21             ある 愛…山崎豊彦 22
薔薇染めのブラウス…濱本久子 23      山と海…錦 連 24
記憶の断片…上林忠夫 25          戦友(とも)よ…許 育誠 26
一枚の絵…新井翠翹 28           朝のウォーキング…森やすこ 30
冬の日の別れ/鎌倉八幡宮へ…金子秀夫 32  時よ!そのように急がないでおくれ/桐の木公園通り…工藤 茂 34
真っ青な空…福田美鈴 36          福田正夫の詩・冬晴の空…阿部忠俊 38
<追悼>
姉美弥子の父に寄せた追悼文…福田美鈴 40  父を語る…矢部美弥子 42
<紹介>
平出鏡子著「おんぼろ路」を読んで…黒田佳子 46
<連載>
風の系譜…地 隆 50           戦時の思い出(2)志願兵訓練所…許 育誠 54
海南島帰りの小林伍長…錦 連 56
<小特集>
保坂登志子さんの詩…濱本久子 64      奇想天外…亀川省吾 66
古田さんについて…阿部忠俊 68       古田豊治さんの詩…金子秀夫 69
<同人の窓>
灰地順さん…福田美鈴 74          平出鏡子詩集の内祝い…金子秀夫 75
<散文>
思い出の記…福田美鈴 76
<詩集紹介> 金子秀夫 90
山佐木進/田中郁子/松下のりを/嶋岡晨/溝口章/岡隆夫/南川隆雄/山本萠/小松郁子
<編集後記>
表紙 福田達夫               目次カット 湯沢悦木



 鎌倉八幡宮へ/金子秀夫

鎌倉八幡宮へ通じる大鳥居から桜並木の参詣道へ入り、
歩いていった。桜の芽吹きが枝々にわびしさをつけて
いる。曇天の下に。夢見心地に歩き、親しい人にしき
りと語り続けたい衝動に突き動かされる。詩人が死ん
だことが悲しいのではない。悲しみはあっても死者に
なってしまったから、きみはもう在世を語らない。い
まは自分しかいないから、もっぱら独言のつぶやきだ。

電気屋が歳末のイルミネーションの豆電球をつなげる
作業中。あと数日で新年が来るのだ。お正月の準備に
余念がない、商店街。大鳥居の道で外国人観光客とす
れちがう。
石橋は渡れなくて、源氏池、平家池のまわりのハス、
スイレンの葉が青々としげり、鯉が群泳してのどか。
渡り鳥のカモ類がかたまって池の岸辺で陽なたぼっこ。

近づくとあわてて水音をたてるものもいるが、目をあ
けないのもいるから、おもしろくて、立ちどまって、
こころひかれた。
一千年の大イチョウの樹の生命を考え、詩人は死んで
何が残るのか、残せるのかを考えたが、答えは出せな
かった。妻なら、さしずめ、なんにも残せないわね、
と軽く言うかもしれない。なんにも残らないと思うと、
さっぱりするが、ちょっぴりさびしい気にもなる。み
んな詩作に自分の熱量を注いできたから。葬式会場で
不意に声をかけられるが、目をこらさないと誰か、わ
からなかった。
帰路の車中、生涯の詩集をひらいた。

 私も多くの近しい詩人の死を見てきましたが、この詩のような深さがないことに気づきました。おそらく見送った詩人は先輩詩人ばかりだったからかなと思います。同年輩の仲間が死んだら、今までとは違う感慨になるのかもしれません。〈在世を語らない〉〈悲しみ〉は訪れてほしくありませんけど、いずれ我が身でしょう。〈詩人は死んで/何が残るのか、残せるのか〉も大きな命題だと思います。確かに〈なんにも残せない〉かもしれませんが、それでも詩と関わる生活を止めるのは想像できません。つくづく因果な道に入ったものだなと考えさせられました。



   
前の頁  次の頁

   back(8月の部屋へ戻る)

   
home