きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.7.11 玉原高原 |
2008.8.8(金)
明日は日本詩人クラブの事務所で9月例会・研究会の案内状発送作業を行います。今日はその準備として宛名シールをパソコンショップに買いに行って、そのあと作成を行いました。約1000人分のシールですが、プリントアウトはものの15分ぐらいです。しかし、これを封筒に貼るという作業が意外にシンドイのです。一人では3〜4時間かかってしまうでしょう。でも、明日は数人で作業しますから大丈夫。みんなで話しをしながらの時間は早く過ぎてしまいます。
それ以外はいただいた本を読んで過ごしました。
○詩誌『流』29号 |
2008.9.9
川崎市宮前区 非売品 西村啓子氏方事務局・宮前詩の会発行 |
<目次>
詩作品
山崎 夏代 風 蝶 落日 微生物 五月 2
山本 聖子 朝の色彩 二百二十日 全力坂 8
麻生 直子 ひらめ 14
林 洋子 こならの木 17
島田万里子 未必の故意 晩秋の約束 歯の歯無し 20
杉森 ミチ 消える植木鉢 ピロリ菌 26
竹野 京子 テーブル・フォー・スリー 「低炭素」社会 ウナギ事情 32
中田 紀子 喉仏 漂流そして 38
西村 啓子 サボテンとマーガレット 錠剤 来ないバス 44
ばばゆきこ 幕間 お届けもの ながーい影 50
福島 純子 残欠塑像 写経勧進 限界集落 56
エッセイ
山本 聖子 奔流−現代詩の行方10 不可能性の現在から 62
西村 啓子 最近の詩集から 64
島田万里子 最近の詩集から 65
林 洋子 最近の詩誌から 66
会員住所録 編集後記
歯の歯無し/島田万里子
右に三本
左に二本
インプラント治療されている私の顎
レントゲンで鮮明に映されている金属はチタン
原子番号22だ
誕生日が22日のわたしが
不測の事態のなかに見つけた
むりやり楽しい符号
永久に使用する事を拒否した(された)脱落者になりかわり
生態組織との融合に優れた原子22号が埋め込まれた
2ケ月ほどの折り合い期間が必要だという
受けて立つ下顎の骨は
にび色の闖入者と友好的に密着した
いつの間にか
生来の永久歯と遜色ない働きをしてくれる
再びの食への道が繋がる
咀嚼力復活に人馬一体ならぬ人歯一体で
人生後半レース
永久歯が伸び続ける馬は歯を食いしばり走る
伸びた歯は削られるという
わたしはもう走らない
食いしばらない
最終直線コースを自分の歩幅でゴールに向かう
口元にシワを作らず
ガムだって噛み
前歯をニンマリ出して
笑って過ごす
チタンでも金でも偽りでも埋め込む
骨に匹敵する堅い頑固さに折り合いつけるのは得意
22は夫婦の日という符号も見つけた
インプラント賞レース
目の前の餌は
〈健康的に老いる〉
〈歯無し〉はもちろん話し=B〈人馬一体ならぬ人歯一体〉では思わず〈笑って〉しまいましたが、笑い事では済まされないという思いが、欠けた歯を放置している私にはあります。〈最終直線コース〉に向かおうという私にも、他人事ではないのです。〈チタンでも金でも偽りでも埋め込む〉という覚悟が必要なのだなと、つくづく思いました。最終連の〈健康的に老いる〉という言葉も良いですね。同年代の詩に親近感を感じた作品です。
○詩誌『りんごの木』19号 |
2008.8.1 東京都目黒区 荒木寧子氏方・「りんごの木」発行 500円 |
<目次>
弔辞 荒木寧子
扉詩 武田隆子
部屋時間 さごうえみ 6 サン・ジミーニャーノ 田代芙美子 8
君は私である 山本英子 10 自画像 夏 荒木寧子 12
鏡のなかから 宮島智子 14 花の命は短くて 小野支津子 16
ある日突然 横山富久子 18 時計草 藤原有紀 20
雲の流れる 青野 忍 22 地球は本当は丸いの 東 延江 24
木霊のように 峰岸了子 26 雨上がりの 栗島佳織 28
二〇〇八年五月 川又侑子 30 一本の木 高尾容子 32
表紙写真 大和田久
詩人/荒木寧子
武田隆子さんが亡くなられました
緑陰の五月に
九十九歳の静かな旅立ちでした
武田さんの「幻視者」は百号
ああ 武田隆子さんだと納得しました
四十年の長き日々に感謝します
ありがとうございました
武田隆子さん あなたの空ろ舟の旅は
武田隆子さん 楽しい旅を
毎号、扉詩を提供していた武田隆子さんが5月に99歳で亡くなり、今号はその追悼特集のような形になっていました。武田さんは日本詩人クラブの理事も務められ、日本現代詩人会の先達詩人としても顕彰された方です。ここでは巻頭の「弔辞」を紹介してみましたが、〈四十年の長き〉に渡るおつき合いがあったようで、その長さに驚きます。〈楽しい旅を〉というフレーズにも納得しています。ご冥福をお祈りいたします。
○詩誌『Griffon』22号 |
2008.6.30 広島県呉市 川野圭子氏他発行 300円 |
<目次>
詩
淋しい牛/川野圭子 葱坊主/吉田隶平
まもなく/吉田隶平 猟師カウコ・ニスカネンから ヒグマに/横山 昭
エッセイ
花卉草木類/川野圭子 オイディプスの謎/横山 昭
詩を問い直したい/吉田隶平
葱坊主/吉田隶平
夢の世に葱を作りてさびしさよ 永田耕衣
畑に 収穫されずに花をつけた
葱坊主がゆれている
忘れたわけではないけれど
時間からこぼれていった
今はもう会うこともかなわない
ぼくは
現れないほうがよかったのではないか
あなたの一生の中に
陽が傾いて
葱坊主は
背を向け
涙を隠す人のような
影を造る
〈畑に 収穫されずに花をつけた/葱坊主〉と〈あなた〉との造形が見事な作品だと思います。特に最終連の〈背を向け〉た〈葱坊主〉が印象的ですね。詩に句を持ってくるのは意外に難しいものなのですが、永田耕衣の句は邪魔にはならず勝ちすぎてもいず、上手い収め方だと云えましょう。短い作品ですけど詩の真髄を具現させていると思いました。
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