きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.7.11 玉原高原 |
2008.8.23(土)
午前中に新婚夫婦が挨拶に来てくれました。現職の頃の部下になりますけど、最近、結婚したものです。仕事上、二人とは毎日顔を合わせていましたが、その当時からつき合っていたとは知らなかったなあ。二人とも仕事熱心で、遅くまで居残っていたのを覚えています。性格も良く、誰からも好かれる二人なので、これから良い家庭を気づいていくでしょう。陰ながら応援しましょう。
それにしても、若い男女というのは見ているだけで楽しいですね。そういう姿を見て、初めて自分はトシを取ったのだと気づきます。迂闊と言えば迂闊ですけどね(^^;
○2008年版『生活語詩二七六人集』山河編 有馬敲・山本十四尾・鈴木比佐雄=編 |
2008.9.27 東京都板橋区 コールサック社刊 2000円+税 |
<目次>
序文 故郷を守り変形させないという思いの結果の開示 山本十四尾…14
北海道
森竹竹市 イオマンテしたく…18
更科源蔵 チャチャはこうして話してくれた…19
小熊秀雄 乳しぼりの歌…20
武田隆子 冬の思想…22
八森虎太郎 コタン落陽…23
原子 修 勝納川(かつないがわ)…24
木村淳子 知床番屋の父さんと山のおやじ…26
高橋絹代 カムイミンクラ(神々の庭)…27
麻生直子 よみがえる故郷・奥尻島…28
麻生直子 遠い海鳴り…29
葵生川玲 一行目に〈川〉と書いた…30
ききき ひろし 昆布原(こんぶはら)…32
日高のぼる 海霧(がす)のむこうに…33 港 敦子 守り神の物語…34
後藤美和子 雪山…36
東北
宮沢賢治 永訣の朝…40 岩手山…41 高原…41 稲作挿話…41
草野心平 生活…43 氷雨…43
白鳥省吾 殺戮の殿堂…44 峠…45
高木恭造 詩集「まるめろ」より 冬の月…46
夜明げ…46 百姓…46 生活(クラシ)…47 生(ナマ)だハマナスの実…47
真壁 仁 日本の農のアジヤ的様式について…48
大関松三郎 みみず…49 虫けら…49
三谷晃一 河口まで…50
村上昭夫 秋田街道…52 岩手山…52
畠山義郎 北極星慕情…53
川村慶子 日高山脈…54 逝きし人へ…55
鎗田清太郎 捏造(ねつぞう)…56 和田文雄 言依(ことよ)さし…59 土用布子(どようぬのこ)…60 寒帷子(かんかたびら)…61
亀谷健樹 さんだわら…62
矢口以文 女川町のおばあちゃんの話…64 一本杉(えつぽんすぎ)…64
斉藤彰吾 萬蔵寺(ばんぞうじ)・阿古耶(あこや)の峰にて…66
未津きみ 十二本のヤス…66 州(デルタ)…69
芳賀章内 父よ…70
堀内利美 渚の砂の声…72
吉田博哉 会津古道…73
佐佐木匡 アテの貌…74
工藤優子 春宵…75
結域 文 石巻の声…76
道後国民小学枚四年松組…77
若松丈太郎 みなみ風吹く日…78
山形一至 港・セリオンタワーにて…80 きりたんぽの詩(うた)…81
朝倉宏哉 勝山号…82
原田勇男 広瀬川幻景…84
前原正治 橋上の産毛…85
斎藤和子 末の森字末の森…86
吉田慶子 山のカミが おじまげる…88
森 三妙 妹背山の鶴折る人へ…89
後藤基宗子 水の十字路…90 恥かきっ子…91
石村柳三 鶴の舞橋…93
うおずみ千尋 道燈り…94
北畑光男 指の火…95
遠藤一夫 阿武隈川…96 磐梯山…96
三浦幹夫 水の慕情…97
佐々木洋一 キムラ…98 ほたるるい…98
斗沢テルオ 一等先の水…99
新井豊吉 浮き球…100
関東
萩原朔太郎 帰郷…104 監獄裏の林…104
伊藤信吉 上州らーめん…105
菅原克己 西巣鴨の記憶…106 関根 弘 泪橋…107
鳴海英吉 鶴…108 横浜・六月は雨…108 寺門 仁 白骨遊女…110 わたしの谷中、千住界隈…110
山田今次 あめ…112 呉 美代 蝉の声(一九八五年八月ジェット機墜落事故)…113
新川和江『火へのオード18』より4火の父…114 西村啓子 高砂橋の欄干…115
大岡 信 地名論…116 中原道夫 自転車…117
黒羽英二 今は亡き下総語を話す老人と若者の亡霊が二〇〇一年九月十一日の出来事を連日テレビを見ながら語るの図…118
塚本月江 銚子市 犬若(いぬわか)…120 市川つた 牛久沼…122
久保田穣 新里村奥沢…123 曽根ヨシ 呼び名…124
菊田 守 妙正寺川…125 山本十四尾 馬酔木考…126
國井世津子 宇都宮物語…127 富田和夫 北西風(なれえ)に揉(も)まれて−南房総海岸にて…128
野仲美弥子 守護草…129 馬場晴世 由比ケ浜を歩く…130
相良蒼生夫 ある日のミナトみらい…131 川奈 静 館山湾のかもめ…132
岡田優子 呼びかける樹…133 池のほとりを…133
金子以左生 原点…134
香野広一 荒廃した風景…136 末原正彦 何かがどこかで――…137
内藤紀久枝 石名坂(いしなざか)…138
大掛史子 呑川…139
米川 征 水郡線…140 鈴木文子 浦じまい…142 街の顔…143
堀江泰壽 坂がおもてぇ…145 青柳晶子 半月峠…146 なびく髪…147
山佐木進 香取の海…148 和田正子 五行川にて…149
越路美代子 垣根ごしにそそがれる水が…150 飯嶋武太郎 成田空港…152
奥津さちよ 地図から森が…153 都月次郎 神津島のおやじ…154
三浦健治 夜の環八を走りつつ…156 水崎野里子 蘇った海−船橋駅前・浅蜊売りのおばさん…158 ベらんめえ・その2…159
五島節子 鵜の岬…160 相沢正一郎 水道料金領収書、暮しの道具カタログ…161
ごしまたま おねいちゃんの川(横浜、滝の川)…162
豊岡史朗 バスの窓から…163 倉田良成 国府津まで…164
森田海径子 地球の臍の緒…166 山本聖子 並走…167
片岡 伸 彼岸念仏…168 綿入れ…169
鈴木比佐雄 大樹がささやいた…170 二十世紀のみどりご…171
石下典子 しもつかれ…172 星 清彦 山寺にて…173
塚本敏雄 クラック…174 房内はるみ 座繰りをまわす女…176
金井雄二 釣りに行こう…177 佐柏憲一 雨上がりの夕焼けの風の水分…178
武藤ゆかり 恋歌…180 星野典比古 万物の霊長…181
葛原りょう ウエノヤマ…182 リア……183
亜久津あゆむ 今日が生まれる瞬間、東京は墓標になる…184 神の玩具…185
中部
浜田知章 黒い螢…188 閉された海…188
浜口國雄 便所掃除…190 貨車押…191
宮本善一 阿呆六太鼓…192 小島禄琅 火の川とわが泥の川の歴史 −火の川−…194 −わが泥の川−…195
栗和 美 ひきさく…196 岡崎 純 川ど…198
深沢弘信 鏡よ…199 埋田昇二 沖の鳥島…200
千葉 籠 能登・ヤセの断崖…201 安永圭子 四方を山にかこまれて…202
稲木信夫 いつもかあも…204 揺れに…204 宮田登美子 帰郷…206
徳沢愛子 加賀友禅流し…207 池田瑛子 大欅の樹に…208
秋山泰則 竹林…210 せえちゃの山羊…210 山崎佐喜治 信濃のアイヌコタン…212
八木忠栄 母を洗う…214 忍域春宣 信玄の隠れ里を謳う…215
近岡 礼 熊とバッハ…216 岡村直子 タロッコ…218
和田 攻 ミニファーマー…219 阿部堅磐 故郷の土手にて…220
酒井 力 自然の領域…222 吉村伊紅美 わたしはつくし…224
こまつかん 帰郷…225
関西
河上 肇 味噌…228 村山槐多 京都人の夜景色…229
小野十三郎 葦の地方…230 渺かに遠く…230 錦米次郎 日々…231
福中都生子 浪速男のプロポーズ…232 東淵修 いち の へや…233
木島 始 森の足音−幼時という太古…234 青空と汚穢スキップ…234
志村ふくみ 裂によせて…236 天青の実…237
老化学者の言葉…237
長谷川龍生 水鳥の翔び立つとき…238 夜の甘藍(キャベツ)…239
坂上 清 教練…240 村田辰夫 近江のうみ…242
丸本明子 大阪湾…243 島田陽子 坊やはよい子だ…244 おおきな木…245
直原弘道 滅びの村…246 鳥巣郁美 疎水の響きが−御影−…247 雨後の仁川に…247
津坂治男 眠るなら…248 曽我部昭美 水源林…249
有馬 敲 広島のクスノキ…250 晴れ間…251 山本倫子 山の辺の道…252 佐韋…253
原 圭治海 の舌(ベろ)は…254
下村和子 藍のつつしみ…255
川原よしひさ 円山川の凪と時化…256 香山雄代 山腹に棲む巨大な魚…257
名古きよえ 芦生(あしゆう)の山に守られて…258 青木はるみ 砂嘴…259
日高 滋 洛中流浪…260 外村文象 通天閣の見える街…261
井上哲士 嵯峨野スケッチ…262 中岡淳一 望郷の富士…263
横田英子 だんじり祭り−行基参り−…264 根来眞知子 虫養(むしやしな)い…265
伊藤眞司 芦浜…266 飛翔…267 母の川…267 平原比呂子 神崎(かんざき)川…268
奥村和子 新百鬼夜行…269 瀬野とし 第一日…270
司 由衣 捻挫してしもて…271 後山光行 木苺…272
永井ますみ 船上山にて…273 桃谷容子 平城宮跡のトランペット…274
小川聖子 海に近い日々−阿品から坂へ…276 淺山泰美 火と水と…277
真田かずこ ぎっとまって ききやんせ…278 北原千代 ひそみの森へ…280
北村 真 山ノ神さん…281 若松千恵子 寝屋川…282
中国
中原中也 サーカス…286 桑名の駅…287 永瀬清子 熊山橋を渡る−一九四八年一月十四日−…288
米田栄作 釈哲道童子…289 峠 三吉 夜…290
坂本明子 吉備野…292 御庄博実 猿猴橋…293 元安橋…294
大原勝人 大陽に向って走れ…296 水谷なりこ 記憶の中の広島…297
皆木信昭 キャンプ日本原…298 山下静男 京山物語…300
田村のり子 松江大橋 水の都を…302 福谷昭二 海へむかう冬の塔−向上寺三重塔−…303
松田研之 どけえ行きょうるん?…304 杉本知政 父の仕種で…305
くにきだきみ 梶草樋之尻「嫁いらず観音」…306 灰俵霊…307
西岡光秋 木下闇…308 なんば・みちこ ひょんの木…309
白河左江子 作務衣(さむえ)ではなくもんペを…310
長津功三良 鴉と葬式 山峡過疎村残録…312
岡 隆夫 二億年のイネ…313 上田由美子 海軍兵学校…316
伊藤眞理子 イエローリスト…318 今井文世 机の上に…319
松尾静明 生きる…320 くぼみ…320 日笠芙美子 汐入川…321
吉田博子 地球の悲鳴…322 壷阪輝代 古墳…324
井野口慧子 氷解−父に…325 北村 均 海が優しいとき…326
高田千尋 城跡…327 重光はるみ 海とぼく…328
田尻文子 泣く…330 藤原由紀子 しんどいなあ…331
一瀉千里 憂い…332 大山真善美 選択…333
小坂顕太郎 あたたかな狼煙…334 林 木林 防府春宵…336
四国
岡本彌太 瀧(其の貳)…340 扶川 茂 ままごと…341
大崎二郎 汁粉…342 西岡寿美子 紙漉きのうた…344
山本 衞 誕生(讃河Tより)…346 青海苔のうた(讃河Tより)…347
片岡文雄 山鬼 土佐国本川郷「寺川郷談」による…348
小松弘愛 てんぽうな…350 図子英雄 山鳴り…352
山本泰生 今切川、溶ける月…353 堀内統義 由利島…354
大西久代 仙境の釣り橋…356 森原直子 唐川…357
玉井江吏春 秋祭り…358 辻町…359 キム・チャンヒ マイ・ホーム・タウン…360
九州
北原白秋 BAN-BAN…364 AIYAN(アイヤン)の春…364
嵯峨信之 帰郷1…366 入江…366 大淀川…366 渡辺修三 樹木367 椎葉ダム…367
富松良夫 五月の樹木…368 秋と霧島…369 上田幸法 水車(みずくるま)…370
金丸桝一 冠毛…371 福田万里子 柿若葉のころ…372
山田かん 浦上へ…374 杉谷昭人 霊山(おやま)…375
倉岡俊子 山の来歴…376 中原澄子 うらかみ ん いえに かえり たか…378
田中詮三 白檀…382 葡萄樹…383 丸山勝久 国東半島…384 吉野川幻想…385
石川逸子 ガダル・カナル・1943…386 地図…387 岡山晴彦 石橋の声…388
岡 耕秋 むつごろどん…390 富永たか子 友は春に語り出す…391
南浜伊作 くるたくる母…392 門田照子 二十一世紀の紐…393
池山吾彬 夕魚(ゆうざかな)…394 宮内洋子 噴火…395
柳生じゅん子 千の耳 ひとつの耳…396 交信…397
丸山由美子 菊池川…398 豊福みどり 会話…399
龍 秀美 結界…400 堀田孝一 コンクラアイ−これ位の愛…402
吉田美和子 秋風に誘われて…403 崔 龍源 ノクターン…404
宇宿一成 みずむし…406 青柳俊哉 飯盛(いいもり)神社に寄せて…408
田中洋子 稲佐山…409
沖縄・南西諸島
山之口貘 弾を浴びた島…412 沖縄風景…412 郡山 直 奄美の喜界島…413
田上悦子 女性力(うなぐぢきゃら)…414 岸本マチ子 りゅうきゅうあゆ…415
高良留美子 海底市民(琉球・沖縄の海)…416 水源地(釧路湿原冬物語)…416 いのちの種子(たね)…416 土の力−田んぼみどりの小宇宙…416
飽浦 敏 綾鼓(あやちぢん)…417
坂木玄理 徳之島…418
宮城松隆 ジュゴン…419 真久田正 北(にし)の渡中(となか)…420 風まち島…420 七島灘(しちとうなだ)…421
解説・編者あとがき
解説1「生活語詩」運動とは何か 鈴木比佐雄…424
解説2『生活語詩二七六人集・山河編』覚書 有馬 敲…428
編者あとがき…431
しちとうなだ
七島灘/真久田 正(まくた ただし)
1949年、沖縄県生れ。詩集『幻の沖縄大陸』『真帆船のうむい』。詩誌「KANA」。沖縄県那覇市に暮す。
いちどん いちどん
なみ また なみぬ
しちとうなだに はりぬれば
あんしん かんしん まっとうばあ
ちゃあ いきわるやんどうやあ
(意訳)
行けども、行けども
波また波の
七島灘を航海すれば
どうでもこうでも、まっしぐらに
どんどん行くしかないんだよねえ
*七島灘…トカラ列島近海約二〇〇キロの海域。
〈生活語とは、私の考えでは日常の話しことば、具体的には共通語もあれば、地域・年代で異なることばなどである。後者には方言、俗語、芸者語、外来語などが含まれている。したがって詩の世界で生活語という場合は共通語と方言という学問的研究の区分を取りはらって、日常の話しことばやふだんのことば、生の口語ということになる。しかも生活語の変化は、時代の流ればかりでなく、使用する個人の地域や年齢などと密接に結びついている。〉「解説2『生活語詩二七六人集・山河編』覚書 有馬 敲」という自覚のもとに集成された画期的な詩集です。北から南まで日本列島を網羅した〈二七六人〉の作品群には圧倒されます。それだけ日本語が豊かであるという証でもありましょう。
ここでは集の一番最後に置かれて、唯一(意訳)のある作品を紹介してみました。(意訳)がなければ何のことか分からない詩ですが、(意訳)の助けを借りると広大な海原が浮かんできます。どちらが先か判りませんが、〈行けども〉が〈いちどん〉に、〈まっしぐらに〉が〈まっとうばあ〉に変化した過程を探ると、日本語の変遷が理解できるのかもしれません。その意味でも面白く貴重な詩集成と云えましょう。お薦めの1冊です。
○石川逸子氏著『オサヒト覚え書き』 ――亡霊が語る明治維新の影 |
2008.8.15 東京都北区 一葉社刊 3800円+税 |
<目次>
一、南北朝騒動のこと 5 二、ミソサザイのあやまち 58
三、陰謀渦巻く京 133 四、ミカドのクーデター 191
五、攘夷から征長へ 231 六、アルミニョンの見た日本 255
七、亡霊になるまで 297 八、父子相克 343
九、大政奉還 381 十、王政復古のクーデター 409
十一、官と賊 442 十二、叔父と甥 481
十三、東北・北越戦争 521 十四、ムツヒト東幸 592
十五、東京遷都 639 十六、「台湾処分」 674
十七、江華島事件 731 十八、不穏の政情 757
十九、ヤスクニに祭られなかった兵士たち 795
二十、三椀の茶 835
小さなあとがき 921
参考文献 922
装画/関谷興仁「マスク〈悼〉7」2002年制作(『悼−関谷興仁作品集』朝露館・03年発行より)
装丁/桂川 潤
2
列藩の会議中、同盟にとってまことに芳しくない出来事が起きた。
五月一日、列藩がわの喉首(のどくび)にもあたる白河城が、伊地知正治(いぢちまさはる)ひきいる、決死の西軍に占領されてしまうのよ。
白河領はそのとき幕府の直轄地になっておったのだが、西軍が入れ替わり、守っておったところを、だいじな要地とみた会津軍が、四月十九日、攻めていって占領してしもうた。
さあ西軍とすれば大失態ということで、かねて巻き返しを慎重にはかっておったわけだ。
しかるにあっけなく会津はその城を奪われてしまうのだな。
会津の大総督は、恭順論者の西郷頼母だった。
彼は、白河戦に勝利したさいには、和議を提案することを承知されたし、と申出、承諾をとってから出陣するのだが、戦争の采配はうまくなかった。なぜ、その西郷を指揮官にしたのかもふしぎだが。
すでに幾たびも実戦をしてきている新撰組の山口次郎や純義隊の宮川六郎らが、勝利するには、城をただ守っていても負ける、ずっと先の堺明神へ外張りをもうけ、そこで相手を防がねばもちこたえられぬ、と進言するのをにべもなく斥けてしもうたのが致命傷となった。
会津軍だけでなく、伊達藩など列藩が参加しており、命令系統もばらばら、しかも多勢ゆえ相手を甘く見たところもあったろう。
「ふいに大砲を撃ちかけ、ついで小銃うちかけ、進みくること電光のごとく」、あれよあれよというまに、東軍は逃げ腰になり、右往左往するばかりになってしもうた。そこへ副総督の横山主税(よこやまちから)や大砲方の日向茂太郎(ひなたしげたろう)が討死したから総崩れとなった。
東軍はこののち、白河奪還をはかるが、ついに失敗におわる。五月二十六日から二十七日、一万有余人の東軍が奪還をはかったものの、結局、人数からすればほんの一握りにすぎない西軍が「あたかも韋駄天の荒れたるごとき」活躍をして、城をまもった。東軍の死者は九百二十七名にもおよんだ。
会津藩の秋月悌次郎(あきづきていじろう)は、若松落城後、捕虜として東京へ護送されるとき、白河城を通るにさいし、この地で戦死していった友人たちをおもい、詩を詠んでおる。
落木悲風、暗キ月光、
中宵(ちゅうしょう)涙ヲフルッテ起チ、彷復ス、
生キテ降虜(こうりょ)トナリ、アニ過ギルニ堪エンヤ。
スナワチコレ、親シキ朋(とも)、戦死ノ地。
どうも、東軍には詩人が多いようだ。詩人が多いようでは戦は勝てぬのかもしれぬな。
だが、実際をいえば、もっとも割に合わぬ目におうたは、白河領民よ。どっちの味方でもないものを、いくどもいくども戦場にされ、家を焼かれ、死傷者をあまた出さねばならなんだ。
戊辰戦争がおわったあと、西軍は官費で墓地を建てる。感心なことは、白河領民が、有志で、打ち捨てられたままの東軍の遺体を、ねんごろに埋葬し、墓地にほうむっておること。会津もまた西軍と同じく怨まれても仕方なかろうに、遺棄された遺体があまりに痛ましく、不憫におもえたのであろう。
時たって一九九三年、白河市は東西両軍合同慰霊祭を、会津若松市、鹿児島市の両市長を呼んで、とりおこなう。
それぞれの市長が挨拶したのち、白河市長はいうたそうな。
両軍にかかわりないのに、もっとも被害を受けたのは白河市民です。殺され、焼かれ、財産を奪われました、と。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「亡霊が語る明治維新の影」と副題のある900頁を越える大作です。「一、南北朝騒動のこと」から「十一、官と賊」までは高知の同人詩誌『兆』に載せたものと「小さなあとがき」にはありました。
亡霊〈オサヒト〉と〈私〉との対話というユニークな手法で明治維新を分析します。〈オサヒト〉は明治維新直前に亡くなった(一説には毒殺)孝明天皇で、その子〈ムツヒト〉が明治天皇です。〈オサヒト〉と、現代に生きる〈私〉が、過去の文献にあたりながら、なぜ〈オサヒト〉は殺されなければならなかったのか、その下手人は? それによって明治維新がどのような性格を帯び、どのように21世紀の現代に影響を与えているのかという検証は画期的なものでしょう。著者の視点は私とほとんど同じであり、ひとつ一つ納得しながら読み進めることができました。
紹介したい部分が多くあって困ったのですが、ここでは「十三、東北・北越戦争」から「2」の冒頭を紹介してみました。私の先祖は会津藩支藩・平藩の下級武士ですから、戊辰戦争はそれなりに興味を持って読んできました。そこで得た知識と同一の主張がなされています。しかし、私の得た知識と大きく違うのは、〈両軍にかかわりないのに、もっとも被害を受けたのは白河市民です〉という視点です。この本の巻末には「参考文献」があり、150冊ほどの本が記載されています。おそらく、そのほとんどの本にもこの視点は欠けているのではないかと思います。そういう意味でも画期的な本と云えましょう。現代を生きる私たちの苦しみの根源が、実は明治維新にあった! と云っても過言ではないでしょう。お薦めです。
○詩誌『みえ現代詩』76号 |
2008.9.1 三重県鈴鹿市 津坂治男氏方・みえ現代詩の会発行 非売品 |
<目次>
人生時計………………………矢野 陽子 1 夢の続き………………………岡本 妙子 2
歓 び…………………………鬼頭 和美 4 渋 柿…………………………堀川 孝子 6
はるび…………………………谷 流水 8 弧………………………………梅山 憲三 10
老 夢…………………………森田 茂治 11 トランペット吹き……………田中 明誠 12
母の次郎柿作り………………海野美光栄 13 介護する前のこと 2………村山砂由美 14
人魚の信者……………………佐藤 貴宜 16 感性のいたずら………………伊藤 善一 18
過渡期…………………………清水 弘子 24 みしらぬ国で……………今唯ケンタロウ 26
歩道橋…………………………村上 基子 27 グレープフルーツ……………津坂 治男 28
白 蛇…………………………秋野 信子 29
語りぶ詩………………………伊藤 善一 19 連載一滴小説(14) O兵曹…奈良 光男 20
<詩誌管見(4)>「山脈」「日本未来派」「花」「PO」「ZO」…津坂 治男 22
表紙絵 村上基子
はるび/谷 流水
ふかすぎるそらのあお
ほしたちのねむり
つきのうたたね
たいようのほほえみ
つちにねむる
ちいさないきものたちのめざめ
ろうばいのあくび
こいにやぶれたもんしろちょうのたび
ひばりのくうちゅうあいびき
はるかぜが
たびのつかれでつばさをやすめている
ひるさがりの
さんろくのちいさなむらへつづく
しろくながいいなかみちを
あかいおおとばいが
ひとのこころを
ちいさなはこにつめてはこんでいく
くちぶえを
ふこうとしたぼくに
そらのふかみから
かみさまがかおをだされて
くちびるに
ひとさしゆびをあてられた
深い造形の作品だと思います。〈はるかぜが〉〈つばさをやすめている〉、郵便配達でしょうか〈あかいおおとばいが/ひとのこころを/ちいさなはこにつめてはこんでいく〉などのフレーズが特に佳いと思いました。最終連は、この〈ひるさがり〉に〈くちぶえ〉など吹かずに、静かにしていなさいという〈かみさま〉の所作でしょうが、ここもイメージ豊かに伝わってきました。ひらがなという構成も成功していると思った作品です。
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