きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.8.28 松島




2008.9.15(月)


 敬老の日。だからというわけではないでしょうが、姪が遊びに来てくれました。これでプレゼントでも貰ったらそのものズバリだったんでしょうけど、そんなこともなくホッとしました(^^; とりとめもない話をして帰っていきました。
 午後からは自治会の集金に走り回りました。公民館の立替を計画していて、建設資金の半分は地元負担です。数年前から集めています。年間に1戸あたり12,000円。戸数が少ない地域ですので、総額では年間に300万円ほど。10年でやっと3000万ですから、実際に出来上がるのはあと10年ぐらいかかるかもしれませんね。長生きしなきゃ(^^;



小関守氏詩集『谺の旋律』
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2008.9.15 千葉県茂原市 草原舎刊 2000円

<目次>
谺の旋律《序文にかえて》 6
 I 青春挽歌
過去の旋律 10    寒風の音階 15    過去の語らい 18
霜月賛歌 20     風土の接待 24    青春挽歌 27
諍いの風 31     一陣の突風 34    旋律の交差 38
旅愁の五線紙 42   赤城の夜風 45
 U モンゴル模様
諍い賛歌 50     安らぎの瀬音 54   半音セレナーデ 57
今昔街道 60     えにしの途 64    ローズの薫風 68
絆の畦道 72     モンゴル模様 75   上州の突風 79
青春賛歌 84     別離の道標 89
 V 房総紀行
房総紀行 92     帰路の音律 95    桜花の陽光 98
観光の穏想 101    万天の語り 104    送別の残薫 107
えにしの落日 109   放浪の追風 112    湖畔の波紋 116
谺の旋律 120     遥かなる展望 123
 あとがき 128



 過去の旋律

あれは昭和二十一年の晩夏
ジョークの国 アメリカが名付けた
キャサリーン台風 あれ女プロレスか

アルバイトにと努めたJ畜産
資料小屋を寝床にして一年
(ひととせ)
出入りの畜産業のおっさんやら 農家のおっさん
なにやかやと相手している内
一人前の畜産業になっちまって

台風避難と夫人も 資料小屋へ
当時所長に 妾が二人で 険悪な仲だった

午後十時頃 小屋の雨戸に
しっかり つっかい棒を添えたが
あの女性台風 豪雨と共に体当たり
風速四十米 つっかい棒は蹴飛ばされ
雨戸はぐいぃーと 弓成りになる

飛ばされてたまるかと渾身込めて押し返す
突如 風速が力を抜く
雨戸諸共 戸外にばったり
立て直す暇も有ればこそ 又ぐつぐつとやってくる
戸が飛ばされれば屋根も吹っ飛ぶ

格闘七度ほどで 風は去ったが
全身 三度入水に失敗した
太宰治の有り様だった

「ヤレヤレ」雨戸をしっかり閉めて
拭って着替えて 夫人の横の布団に横たわる
背を向けて横たわっている夫人に
格闘の余燼の残る 若き細胞の誘いが始まった

そうっと夫人の 躰をなぞる
夫人は寝入った振りしてびくともしない
やがて 背を抱くようして垣根を超えた

身体を仰向けにして しばらく思案の姿形
の ようだったが意を決したように
私に向いてしっかりと 掌を握る

あれから 映画へ
そして瞬きの 河辺の散策
所長が 妾の所の不在の夜
部屋のソファーで 時を忘れる

夫人四十二才 私二十二才 あれから二年
(ふたとせ)
そんなことを脳裏に描いていると

「高橋さん ご飯ですよ」
「おっ今日から 活牛の仕入れだ」
がばっと 跳ね起きた。
                 ※J畜産所長…高橋 貢

 3年ぶりの第4詩集です。まるで1編の小説を読んでいるような錯覚に捉われました。〈一人前の畜産業になっちまっ〉た青年の青春譜と云えましょう。ここでは巻頭の「過去の旋律」を紹介してみました。ここから物語は始まります。〈ジョークの国 アメリカが名付けた/キャサリーン台風〉に翻弄された一夜は、そのまま青春の荒海を象徴するようです。詩語としては〈全身 三度入水に失敗した/太宰治の有り様だった〉などがおもしろいと思いました。



椿原頌子氏詩集『聖夢』
第6次ネプチューンシリーズXU
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2008.9.15 横浜市西区
油本氏方・横浜詩人会刊 1200円

<目次>
第T章 橋のたもとで
真夜中 海 朝 8  リラの花 10     真実をさがして 12
待合室で 14     夏祭の夕ベに 18   橋のたもとで 20
水車小屋の朝 22   夕餉に 24
第U章 一回も会えなかった
一回も会えなかった28 座礁した船 30    甦った夢 34
犬の死 36      ともだちへのソネット 38
アトリエの時間 40  天使に誘われて 42
第V章 聖夢
(せいむ) 古い家の中で
聖夢 46       聖地ルルド 48    古い家の中で 52
オトナと魔女 56   巡礼の闇へ 58    魚の跳ねる音 62
夢から覚めて 64   独りでいるときも 68
あとがき 70



 
せいむ
 聖夢 ロカマドールにて

村でみつけた
聖ヤコブの道
黒い聖母の面影を求めて
とがった坂を 登ってくる
謎につつまれた 無傷の屍
幻影のように 消えていく
ふかしぎな 物語

息をつぎ 息を止めて
わたしは 遠くにけずられた崖をみる
ノートル ダム 聖母像の奇蹟
求める者は 弱く そして老いると
安らぎを祈り 苦しみをしのぎ
千日夜をかけて 辿りついた
巡礼者たち

ふいに わたしはみつけた
巡礼堂の入口にさしかかったとき
愛は城跡の洞窟の中に
ロカマドールに赴く約束のとばり
痛みをとり去っていく 使者たち
巡礼者の魂の中に
奇蹟の鐘が 鳴り響く
聖母マリアの栄光の祈り

 8年ぶりの第5詩集です。ここではタイトルポエムを紹介してみました。副題の〈
ロカマドール〉はフランス屈指の観光地で、キリスト教の巡礼地の1つでもあるようです。12世紀に腐敗していない隠遁者の遺体が発見されて以来、多くの人が訪れるようになったそうです。〈謎につつまれた 無傷の屍〉とは、それを言っているのでしょう。タイトルの〈聖夢〉は、その隠遁者の夢と採りました。敬虔なキリスト教徒の祈りに満ちた作品だと思いました。



詩誌『砕氷船』17号
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2008.9.15 滋賀県栗東市
苗村吉昭氏発行 非売品

<目次>
 あまりに小説的な
   1 魚臭    森 哲弥…2       4 石榴 森 哲弥…6
   5 鯱     森 哲弥…8
  リュウ      苗村吉昭…12
小説 薬司の森(1)  森 哲弥…22
随想 プレヴェールの詩をどうぞ(最終回)          苗村吉昭…28
ソネット
 耳         森 哲弥…34       ソネット 苗村吉昭…36
エッセイ
 スランプ      森 哲弥…38       愛国の花 苗村吉昭…39
表紙・フロッタージュ 森 哲弥



 ソネット/苗村吉昭

鈴木漠氏から親切な手紙をいただいた
ソネットは押韻してはどうかと
九鬼周造に倣ってはどうかと
難しいアドバイスをいただいた

九鬼周造の「日本詩の押韻」を読む
平坦韻 交叉韻 抱擁韻
難しい日本詩の押韻
これでは言葉選びに悩む

ところが誌面の都合で
ソネットが載せられなくなった
十二号から十六号までソネットがなかった

けれど今号は誌面があるので
やらねばならぬソネットの押韻
今回の作品 かなり強引。

        *ソネット抱擁韻=abba/cddc/eff/egg

 
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、〈ソネット(十四行詩、Sonnet)は14行から成るヨーロッパの定型詩。ルネサンス期にイタリアで創始され、英語詩にも取り入れられ、代表的な詩形のひとつとなった〉ということだそうです。苗村さんの作品「ソネット」は、確かに14行になっていますが、〈言葉選びに悩〉んだ様子がありありと見えますね。最終連の〈今回の作品 かなり強引。〉というフレーズには、失礼ながら思わず笑ってしまいました。しかし、この笑いが必要なことのようにも思います。これからどんなソネットを読ませてもらえるか楽しみです。



   
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