きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.8.28 松島 |
2008.9.26(金)
今日はちょっと良い話を。
拙宅には毎日のように郵便物が届くのですが、配達をしてくれている人は毎回同じです。私と同年輩の方のようで、以前、暑中見舞い葉書を買ってくれと頼まれたことがありました。暑中見舞いを出す習慣はないのですが、いつも配達してくれているし、タイミングが合えば手紙も受け取って郵便局まで持って行ってくれています。世話になっているからなぁ、と20枚ほどを求めました。
それが縁でときどき会話するようになりました。その郵便屋さんが、先ほど、「今月いっぱいで退職することになりました。長い間ありがとうございました」と言うのです。続けて「45年働きました」と言われたときはちょっと胸が熱くなりましたね。
中学を卒業してからずっと郵便配達をやっていたのでしょう。それこそ雨の日も風の日も拙宅のような片田舎まで来てくれて、郵政民営化の荒波も被って定年の日を迎えるのです。この9月で定年ということは私の1年先輩になりますが、私でさえ38年でリタイヤしたのに、45年も働き続けたとは! 決して高みに立って言うつもりはありませんけど、こういう人たちが日本の郵便を支えて来たのかと思うと感無量でした。今は民営化され、宅配便にも押されて、これからますます郵政事業の未来は混沌としていくと思います。しかし、それは施政者の責任の結果であって、末端の労働者は脇目もふらず働いてきたのだと云えましょう。
急にそんなことを言われて、私もドギマギしてしまって、おめでとうございますの言葉が出ず、つい「お疲れさまでした!」と言ってしまいましたが、今ごろになって、やっぱり「おめでとうございます!」なんだろうなと反省しています。これからの長い人生、どうぞお健やかに。いずれ市内の呑み屋さんででもバッタリ逢って、やあやあ、その節は! なんて話ができるといいなと思います、、、って、酒呑む人がどうか分かりませんけどね(^^;
○武西良和氏著 『ぼくとわたしの詩の学校』 |
2008.9.30 広島市中区 溪水社刊 3000円+税 |
<目次>
まえがき…広島大学名誉教授 鳴門教育大学名誉教授 野地潤家…1
T 春の詩
1 四月の詩…3
(1)四月の詩@「春の畑」(三田小学校)…3 子どもたちの感想 5
(2)四月の詩A「春」(三田小学校)…12. 子どもたちの感想 14
(3)四月の詩B「新学期」(有功東小学校)…19. 子どもの感想 20
(4)四月の詩C「春」(有功東小学校)…22. 子どもたちの感想 24
2 五月の詩…25
(1)五月の詩@「友だち」(三田小学校)…25. 子どもたちの感想 27
(2)五月の詩A「池」(三田小学校)…34. 子どもたちの感想 35
(3)五月の詩B「虹」(有功東小学校)…42
(4)五月の詩C「畑」(有功東小学校)…43. 子どもたちの感想 46
U 夏の詩
1 六月の詩…51
(1)六月の詩@「雨」(三田小学枚)…51. 子どもたちの感想 53
(2)六月の詩A「雨」(三田小学校)…67. 子どもたちの感想 69
(3)六月の詩B「霧」(有功東小学校)…76. 子どもたちの感想 78
(4)六月の詩C「川」(有功東小学校)…80. 子どもたちの感想 82
2 七月の詩…83
(1)七月の詩@「夏」(三田小学校)…83. 子どもたちの感想 85
(2)七月の詩A「プール」(三田小学校)…90. 子どもたちの感想 92
(3)七月の詩B「夏の太陽」(有功東小学校)…101 子どもたちの感想 103
(4)七月の詩C「夏」(有功東小学校)…103 子どもたちの感想 105
V 秋の詩
1 九月の詩…111
(1)九月の詩@「九月」(三田小学校)…111 子どもたちの感想 113
(2)九月の詩A「秋の庭」(三田小学校)…116 子どもたちの感想 118
(3)九月の詩B「門」(有功東小学校)…124 子どもたちの感想 126
(4)九月の詩C「しんがっき」(有功東小学校)…128 子どもたちの感想 130
2 十月の詩…132
(1)十月の詩@「みのり」(三田小学校)…132 子どもたちの感想 134
(2)十月の詩A「深呼吸」(三田小学校)…139 子どもたちの感想 141
(3)十月の詩B「かけっこ」(有功東小学枚)…146 子どもたちの感想 147
(4)十月の詩C「秋」(有功東小学校)…149 子どもたちの感想 151
3 十一月の詩…155
(1)十一月の詩@「トイレ」(三田小学校)…155 子どもたちの感想 157
(2)十一月の詩A「秋」(三田小学校)…164 子どもたちの感想 166
(3)十一月の詩B「秋」(有功東小学校)…169
(4)十一月の詩C「ボール」(有功東小学枚)…171 子どもたちの感想 173
W 冬の詩
1 十二月の詩…183
(1)十二月の詩@「冬」(三田小学枚)…183 子どもたちの感想 185
(2)十二月の詩A「冬」(三田小学校)…186 子どもたちの感想 188
(3)十二月の詩B「冬」(有功東小学校)…190 子どもたちの感想 192
(4)十二月の詩C「冬」(有功東小学校)…193 子どもたちの感想 195
2 一月の詩…197
(1)一月の詩@「新年」(三田小学校)…197 子どもたちの感想 199
(2)一月の詩A「新年」(三田小学校)…202 子どもたちの感想 204
(3)一月の詩B「二〇〇六年」(有功東小学校)…207
(4)一月の詩C「初夢」(有功東小学校)…209 子どもたちの感想 211
3 二月の詩…212
(1)二月の詩@「梅」(三田小学校)…212 子どもたちの感想 214
(2)二月の詩A「梅」(三田小学校)…218 子どもたちの感想 220
(3)二月の詩B「二月」(有功東小学校)…224 子どもの感想 226
(4)二月の詩C「なわとび」有功東小学校)…226 子どもの感想 228
V 別れの詩
1 卒業生に贈ることば…231
2 三月の詩…235
(1)三月の詩@「窓」(三田小学校)…235 子どもたちの感想 237
(2)三月の詩A「なわとび」(三田小学校)…242 子どもたちの感想 244
(3)三月の詩B「シロの三月」(有功東小学校)…246
3 詩はそれぞれの場所へ…249
(1)広報原稿の詩@…249
(2)広報原稿の詩A…252
(3)地域新聞の詩…254
(4)文集の詩…257
(5)祝詞としての詩@…258
(6)祝詞としての詩A…260
(7)祝詞としての詩B…262
あとがき 265
1 四月の詩
(1)四月の詩@「春の畑」(三田小学校)
二〇〇六年四月、三田小学校に赴任して初めての掲示の詩です。自作の詩を墨と筆で模造紙に大きく次のように書きました。
春の畑 武西良和
ほりおこされた
土たちが
空をゆっくり流れていく
雲を
ながめている
そして
静かに呼吸して
耳
をそばだてている
子どもたちの声が聞きたくて
また
もうすぐ芽生え
育ってくる草の生長の
音
が聞きたくて
土たちの頭を春の
風が
さわやかになでていく
子どもたちの感想
子どもたちの感想は校長室前の「感想箱」に入れられます。記名については自由ですから、記名の子もいますが、無記名の子やイニシャル、学年だけなどさまざまです。
@感動を書く子
○この詩は、とてもいい詩だと思います。こうちょうせんせいが、書いた詩は(ママ)見て、書かれた事が、本当に目にうかびます。こうちょう先生は、詩人ではないのに、こんな、すばらしい詩を書くとは、本当に、いいと思いました。わたしも、こうちょう先生のようになれたら、うれしいです。(5年1組 ****)
○この詩は、とてもいい詩だと思います。この詩を読んでいると、本当にその場所にいるような気がします。詩人ではないのに、こんなすごい詩を書けるなんて良いと思います。本当の詩人のようで、そして、きれいな字で、毛筆なんてすごいです。私も、校長先生のようになれたらと思います。(五年一組 ****)
○私は詩が大好きだけど、校長先生の詩が、一番きにいってます。どこがきにいったかというと、土が空をながめたり、呼吸したりしているのが、私はすごく感どうしました。(5年1組 * **)
○武西良和様へ 校長先生の詩を読んで、詩を書くなんて……やっぱりすごい!私には、こんな詩かけませんよ〜。でも、先生みたいになれるように、私も、がんばります!もし、できたらでよろしいですけど、お返事くれませんか?これからも、よろしくお願いします〜!(5−2 ****より)
○校長先生へ。こんなにいい詩を作れましたね。私たちはいろいろ、詩を書いているけど、こんなに、いい詩は、作ったことはないな〜。まるで、毎日、空で、ずっと見ている太陽や、雲みたい!そんなことまで分かるなんて……。もしかしたら、校長先生って、天才かも。(5−2 ** **)
○校長先生の詩をよんで日ごろ何も思わないで上を歩いてる土が生き物のように感じられました。また五月の詩をかいて下さい。(**)
○音楽でうたをうたったとき、「〜いく」や「〜て」という言葉が多いなあと思いました。「さわやかになでていく」という言葉などは、私はゆっくりした感じの春だなと思いました。春の感じが出ている曲だなあと思いました。
○この詩は、すごく春の、かんじがして、とても、あたたかい、かんじが、しました。春はいろいろな生物たちや、植物たちがいるんだと思いました。
○校長先生の詩は、とってもいい詩で、何かを思い出すような感じがします。たとえば「空」を思い出します。この詩にもでてくる「畑」も思い出します。これからもいい詩を作ってください。
A感動を端的に書く子
○校長先生の詩はとても美味しかった(うまかった)です。(6−2 **、**、**)
○詩がうまいと思った。(6−3)
○本物のように、(風景がよみがえるように)見えてくるよう。すごくすてきな詩です。(****)
○とてもたのしい詩でした。
○自然の風景がよくわかりますね。こんどからもこんな詩かいてください。(*** **)
○この詩かっこいいです。
○けっこういなかのような風けいがうかんでくるとってもいいしですね。
○校長先生がしがじょうずだったことは、はじめてしりました。こんな校長先生をそんけいします。
○春の畑の様子が良く分かりました。一つ一つがいい言葉でした。
○この詩は、いい詩だと思います。
○校長先生 歌も作ってすごい。
○おっとりした感じで、なんだかやさしいイメージだ。読んだだけで「春だ!」って思います。
○とっても土のかおりがしていいしだとおもいます。そして、はるらしいです。
○校長先生が書いた詩は、とても春らしいと思います。
○いい詩ですね!
○自ぜんがこきゅうしているみたいでとても美しいしだと思います。(5−1 ****)
○いい音だと思いました。この詩はすごいなあと思いました。(**)
○この詩はやさしそうです。上手な詩でした。また、いっぱいよみたいです。(****)
○カッコイー。
○きれいな詩がいいです。
○この詩はうつくしくてきれいなあと思いました。
○この詩は上手やしすごいな。
B質問や疑問を書く子
○校長先生は詩の作者でだれが好きですか?返事下さい。(6−2)
○育ってくる草の生長の音がききたくて、どんな音?(5−1 ** **)
○そばだてているってどういういみですか?
○いつから詩を書くようになりましたか。(6−2)
○なぜ校長先生はしをかくようになったのですか。じょうずだと思いました。(6−2)
○校長先生へ。(**)校長先生の書いた詩は、とてもうつくしい詩ですね!(*)この詩をなぜ書こうとしたんですか?とてもいい詩ですね。(5年2組 *と**より)
○校長先生はどうして詩を書こうと思ったんですか?(6−2 ** **)
○みてもみてもきれいな詩でした。こうちょう先生がかいたの?上手だね〜。
C希望や願いを書く子
○「子どもたちの声が聞きたくて」というところが私はとっても好きです。(急いでいるので字はきたないですが、そこはゆるして下さいね)まだ校長先生と話をしたことはないけど、またこれから話をしましょうよ!
〇あんまり意味が分からなかったけど、なんとなく分かるような気がしました。もしよかったらサッカーの詩も書いて下さい。(6−2 ***** 24番)
○校長せんせいてんさい。こんどもかいてくださいね。(6−3 ** *)
○土たちが生きているような気がしました。これからもすてきな詩をよろしくおねがいします。(****)
○校長先生へ。自分で詩が作った事がすごいです。私は詩を作る校長先生がいることがおどろきました。この詩のようにいっぱい詩をかいて下さい。
○すてきな詩をありがとうございました。私は詩が大好きなので またあれば書いて下さい。(6−2 ** **)
○校長先生へ。校長先生の詩 春ってかんじがすごくでていました。私もこんな詩かけたらいいなと思いました。次回もたのしみにしています。(5−5 ** **)
○この詩はいい詩だと思いました。わたしもつくりたいなあと。
D卒業生が感想を書く
○私は、この詩をよんで、春らしさが伝わってきました。この詩を冬でも夏によんでも春の詩だとみんなが思うと思います。これからも、詩をけい示して下さい。また、見に来ます。(楽しみにして)(BY新中1より)
わたしはこの子を知りません。初めて出会う子どもです。初めて赴任した学校で、書いた詩に、このような感想が入ることに感動します。子どもたちは、何かを「求めている」と感じました。そして、何かを「言いたがっている」とも感じました。
なお、この私の自作の詩を「視写している」子もいました。
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〈校長先生〉として勤務した小学校で、毎月〈自作の詩を墨と筆で模造紙に大きく〉掲示したところ、〈子どもたちの感想〉が寄せられたので、掲示した詩と感想を1冊の本にしたというユニークなものです。おそらく全国的にも初めての試みではないでしょうか。ここでは冒頭の「1 四月の詩(1)四月の詩@」のみを紹介してみましたが、子どもたちの感想も生き生きとして、何枚かは手書きの感想も載せられていました。きっと素晴らしい学校だったのでしょうね。こういう校長先生に恵まれた子どもたちは幸せで、将来、ここから大詩人が輩出されるかもしれないと期待しました。
なお、〈子どもたちの感想〉では実名が記載されていましたが、ネットでの危険性を考慮して伏字としてあります。また、@〜Cのように丸囲み数字は機種依存文字のため、本来は使いたくなかったのですが止むを得ず使用しています。マックでは●となっているかもしれません。マル1〜マル4と読み替えてください。以上2点、ご了承のほどをお願いいたします。
○文芸同人誌『暖流』復刊12号 |
2008.9.15 静岡市駿河区 苫米地康文氏方事務局 江馬知夫氏代表・暖流文学会発行 700円 |
<目次> ◇目次カット 中藤文彦
高杉一郎先生 追悼
高杉一郎先生にお別れしてきました…編集同人 1 高杉一郎・主要な著作と翻訳(単行本になったもののみ) 2
■追悼■
高杉先生からの私信と追悼短歌…苫米地和江 6 遠くて近い近くて遠い存在だった…江馬知夫 9
「古井戸」を掘ったお二人…斗真康文 11 高杉一郎先生と私の青春…石井敏之 14
□詩□
「ひなげしの咲く朝」他六編…吉塚はつ枝 24 冬の日に…江馬知夫 48
「岬の春」他五編…吉田直行 61
■創作■
青春慙慚愧録…斗真康文 28 命ありて−伊豆国巡察先導隊長牧野右馬介−…佐藤 隆 71
★ 暖流サロン
教職=聖職?汚職・無慚…斗真康文 42 売国奴 * この星は…江馬知夫 43
□記録風回想□
わが青春に悔いはあるのか(3)…佐藤 隆 45
■エッセイ■
視る者−隅田川界隈−…安田萱子 50 自分探しの旅(1)…江馬知夫 66
◆訃報 13 ◇名簿・規約(抄) ◇編集後記
冬の日に/江馬知夫
巡ってきた冬の日
この湾を隔てた半島は雪雲の下だ
斜陽に染まり 白い船が行く
手を振って別れた人たちを乗せて
きまって月に一度 僕の家の扉を叩き
神様の偉大さを語った
あの三人と二人のグループも
夏を最後に来なくなった
何気なく口に出た僕の言葉が
彼らにはどのように響いたのか
「永遠とか無限を実感できなければ
神様のことだって解らないよ」
赤子はたぶん 母の乳房が唯一の世界だ
少年は見える世界から夢を描いていく
そして 僕らは
何処まで自分たちの世界を広げただろうか
今年は雪が多いとラジオは告げているが
北極の氷は急速に融けはじめ
太陽の黒点活動も極大化するという
その行き着く先を知っている者達がいる
民衆の金と叡知で知り得た未来を隠し
ひそかに生き延びようとしている
それは 永遠が解らなくても
身近な未来を手の内に隠した者達だ
今日も冬の街には 冬の人々が溢れ
冬の空の下を彷徨っている
ただ 生きるために働き
生きるために食べ そして 眠りに就く
それを繰り返すことだけに
人は創られたのかもしれない けれど
そのように人を創ったのは誰か と
問う勇気を持つ者はいないのか
夏の日 僕の家の扉を叩き
神様の偉大さを説いたあの人たちは
今は何処で 何をしているだろう
それも 遠い日になってしまった
過ぎ去った日は みんな遠い日だ
外洋に向かった白い船も
遠い日のことのように思える
そして今は 僕の視界にはない
僕の知らない海の上を
僕の知らない国に向かっているだろう
港で待っている人々もいるだろう
ふと《待つということは》と考える
人は生きて 何を待つのだろう
ただ それだけのために
人は創られたとはとても思えぬ
待つという習性を いつ何で覚えたのか
しかし 僕らはこの星で
いつまでも待たねばならない
黒い手の内に隠された みんなの未来が
鮮やかに現れ始める日まで……
〈2008.2.10〉
非常に哲学的な詩ですが、分かりやすく描かれていると思います。〈神様の偉大さを説いたあの人たち〉と〈見える世界から夢を描いていく〉私たちと、そして〈行き着く先を知っている者達〉の3者の構造ですが、〈僕〉の位置が微妙で、そこにこの詩のおもしろ味があると言ってよいでしょう。〈僕〉は〈身近な未来を手の内に隠した者達〉を糾弾しようとしています。それが具体的に何を指すのかは難しいところですが、〈民衆の金と叡知で知り得た未来を隠し〉ていることから、国家権力と採ってもよいかもしれません。
〈何気なく口に出た僕の言葉〉も重要で、「永遠とか無限を実感できなければ/神様のことだって解らないよ」というフレーズには魅了されます。私の処にも〈神様の偉大さを語〉る〈グループ〉がたまに訪れますので、今度、このフレーズを使って議論してみようかと思いました。
○季刊詩誌『竜骨』70号 |
2008.9.25 さいたま市桜区 高橋次夫氏方・竜骨の会発行 600円 |
<目次>
<作品>
香ばしいきょう 今川 洋 4 欠落したもの 森 清 6
冬の入口 篠崎道子 8 落日をうたう 木暮克彦 10
口遊(くちすさび). 松本建彦 12 叶わないけど 内藤喜美子 14
それでも生きる 松崎 粲 16 ほのかにゆめに 島崎文緒 18
夏の夜 庭野富吉 20 慈味 横田恵津 22
揚げ雲雀 上田由美子 24 花 対馬正子 26
気になる一軒の家 河越潤子 28 雷雨 長津功三良 30
ぐい呑の 高橋次夫 32 魔弾の射手 高野保治 34
鮫のでる日 友枝 力 36
羅針儀
宮澤賢治探訪 今川 洋 38 黒い鼻緒の下駄 他一編 上田由美子 40
本所・深川、隅田川(三) 高野保治 43 秘すれば花か喋(ヂョウ)ぜぬが花か.木暮克彦 47
書窓
方喰あい子詩集『キャヴェンディッシュの海』 内藤喜美子 50
草間眞一著『魚(水の見る夢)』 友杖 力 51
海嘯 無人の島 友枝 力 1
編集後記 52 題字 野島祥亭
落日をうたう/木暮克彦
幼い こころ を
いだいて
落日を うたう
ギン ギン ギラ ギラ※1
なみだ が おちた
一筋 に
抱え きれない ほど の
おもい 荷物 は
すてて
マッカッカ ソラ ノ イロ
はら かかえ
哄笑 す
そこは 山河
ありき の ねがい
とおく
オウチ モ マッカッカ
齢(よわい) あかあか と※2
かさなる
※1 カナ文字は古い童謡から……
※2 ――あかあかと日はつれなくも秋の風 芭蕉
私も歌ったことのある、なつかしい〈古い童謡〉が出てきましたので、ネットで調べてみました。曲名は「夕日」、作詞は広島県福山市名誉市民となった葛原しげる(1886−1961)、作曲は富山県高岡市出身の室崎琴月(1891−1977)で、1921(大正10)年にレコード発売されたようです。
紹介した作品は〈幼い こころ を/いだいて/落日を うた〉ったものですが、芭蕉の句がうまく使われていると思います。〈齢〉という言葉から、〈落日〉に入ろうとしている人生を〈かさなる〉ように構成しているのかもしれません。短い作品ですが〈抱え きれない ほど の/おもい 荷物 は/すてて〉〈哄笑 す〉る佳品だと思いました。
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