きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.9.27 栃木・和紙の里 |
2008.10.5(日)
午後からは百姓の真似事です。近くの田圃に行って稲藁をドッサリ、軽トラック1台分もらってきました。義兄の農業倉庫に積み上げてオシマイでしたが、義母が畑に敷いたりするようです。詳しいことは分かりません(^^;
それが終って拙宅のヨシズの撤去をしました。拙宅ではエアコンがなく、夏は南面に12mに渡ってヨシズを張り、それで暑さ凌ぎをしています。その撤去が終ると夏も終りです。いよいよ秋。15年も続く拙宅の風物詩です。
○松山妙子氏詩集『この坂』 |
2008.9.25 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税 |
<目次>
T
綿毛 8 そらまめいろのそら 11 もうひとつの花言葉 14
隠しポケット 17 約束 20 もう一度 23
浮標 26 きっさてん 29 踊る 32
カレンダー 35 魚 38 闇 41
ナビゲーション 44 棄てる 46 島 48
比丘尼寺 50 掬う 53 パズル 56
U
帽子 62 黒い種 64 櫛 66
幻影 70 腹の虫 72 風の譜 75
波の花 80 帆曳船 84 清雲寺 87
耳を広げて 90 ブルカ 92 大地 95
カブールの祈り 98 ママン 100. 砂 102
裸木 104. この坂 106
あとがき 110
パズル
先程からにらめっこしているのは
空いているマスに
1から9までの数字のどれかを当てはめるというルール
タテ9列
ヨコ9列
本線で囲まれている3×3のブロック
が9つある
パズル
ヒントを頼りに
素直な心のときは面白いように解ける
無理な仮定を立てると
ヨコ列は揃っても
タテ列がちぐはぐになり
ひとつのブロックが完成しても
他所で矛盾が生じる
たとえば
ヨコ1列に並んだ1から9
ぐんとはなれたマスから
こうだからこうという具合に
ときには消去法を駆使し
回りを眺めると隠された数字が
あぶり出しのように浮き上がってくる
生き方の下手な娘が悩んでいたとき
このパズルのように
ぴたぴたとそこに入るべき数字の指定席
言葉や解決策が見つけられなかったのか
わたしは
こんなときはこのようにして切り抜けた
と云々してみても
そんなに器用に
鯵の干物のようには開き直れないと宣う
人生たしかに一+一=二でないこともあるけれど
このパズルのように
スパッとタテ列 ヨコ列
どのブロックも辻褄合わせて生きたいね
さて これまでの自分はどうだったのか
娘への熱い祈願を込めて
今夜も四角いマスとにらめっこ
娘への祈りを込めて四角いマスとにらめっこ
7年ぶりの第4詩集です。紹介した作品はこの詩集の中では異色ですが、私にも思い入れの強い「パズル」です。数独(ニコリ社の登録商標)やナンバープレイス(ナンプレ)と呼ばれるもので、世界的にも流行しているようです。実は私も数年前からハマッていて、パズルだけの本を何冊も買ってしまいました。詩や散文などを読んでいると、無性にやりたくなってしまいます。たぶん、脳の回路が文字とは違う刺激を求めるのでしょうね。
紹介した作品の凄いところは〈生き方の下手な娘が悩んでいたとき〉に当てはめたことです。この発想は私にはありませんでした。 本当に〈このパズルのように〉〈どのブロックも辻褄合わせて生きたい〉ものですね。
○詩と批評『幻竜』8号 |
2008.10.20 埼玉県川口市 幻竜舎・清水正吾氏発行 1000円 |
目次
<作品> 平野 充 祈祷書(烏)…2
山本楡美子 小石となって…4
村川 逸司 聖マルコ広場へ…7
清水 正吾 パピルスの証書…10 S氏の標本…12 泡沫…14
<エッセイ>こたきこなみ
『蟹工船』のことなど…16
<作品> 弓田 弓子 ヒステリー−回復室−…18
斎藤 充江 朦(鯰と呼ばれた男)…21
いわたにあきら シャガールブルーの少女…24 竜は夜明けになっても眠れない…26
<コラム> 清水 正吾 G茶房・ゲノムにて[…29
<作品> こたきこなみ 眼…30
梅沢 啓 即興詩篇…32
館内 尚子 藍の霊鬼…38 シャーマンのチーズ…40 桐生川…42
<イラスト>梅沢 啓 「涙」…45
<評論> 村川 逸司 吉岡実の詩の批評について(1)…46
加藤 忠哉 平野充の詩と絵について…48
編集手帳
表紙デザイン・本文レイアウト/ネオクリエーション
小石となって/山本楡美子
利き足を桟に掛け
体をぐいっと上げ
もう一方の足から塀の上に立つ
ゆえのない震えがくる
声も震える
肺腑も震える
それを何年もやってきた
(震えになれ
と
あの時の柿の木は二年目
実が二つなり
わたしたちは背伸びしてもぎ取ろうとした
空しく袖がずり落ちて
(来年にしましょう
と言った
スカートの時代だった
塀に上るなんて考えもしなかった
(あの柿の木は?
とうにいない母はハタと自分に返る
あのときの手がまだあることを確かめる
立ち上がる動きの刹那が
冥く浮き彫りされる
(塀に上りましょうよ
冬ま近
朱色の葉が落ち
高い陽だまりに実が集中するとき
利き足からぐいっと塀に上り
木の幹に足を掛ける
いわれない震えになる
下では小鳥が羽ばたく
冷気が漂う
(武者震い
(枝を伐りましょう
曲り枝がある
(真っ直ぐな枝のなかで
(それこそ
(わたしたちの言葉の占い棒です
その治療の物語をなお語り継ぐと
柿の木は細く高く伸び
わたしは投げられた小石となって
遠く飛び
遥かな人よ
石から見れば
柿は
丈だかい老いたポプラとなっています
最終連の〈石から見れば/柿は/丈だかい老いたポプラとなっています〉というフレーズでハッとしました。子ども時代の思い出や〈とうにいない母〉が出てきますが、この詩は視点の違いによるモノの見え方を謂っているように思います。〈わたしは投げられた小石となって/遠く飛〉ぶことは時間の経過を指しているのかもしれません。〈曲り枝〉が〈言葉の占い棒〉だという喩もおもしろいですね。生きていくことは〈治療の物語〉だとも受け止められます。時間と視点の処理に優れた作品だと思いました。
○詩誌『ONL』99号 |
2008.9.30 高知県四万十市 山本衞氏発行 350円 |
<目次>
現代詩作品
大山 喬二 橡の木の森へ/他 1 岡村 久泰 糸電話 4
河内 良澄 海を恋う歌 6 北代 佳子 遺灰とダイヤモンド8
土志田英介 ゆうぶつおんじ 9 土居 廣之 秋の空 12
浜田 啓 トンボ 13 徳廣 早苗 金魚の夢 14
西森 茂 女のエキス 16 文月 奈津 ファンタジー 18
福本 明美 花の咲くころ 20 丸山 全友 孤独 21
水口 里子 冬瓜 22 宮崎真理子 老顔 23
森崎 昭生 観業 24 柳原 省三 銅像 26
山本 衞 新星おるき 28 山本 歳巳 深夜の電話 30
大森ちさと オリーブの木の向こうから 32
短歌・俳句作品
岩合 秋 蔓陀羅の空 33 瀬戸谷はるか かき氷 34
寄稿評論
村上 利雄 ONLと中国四国詩人賞 36
随想作品
秋山田鶴子 湖底の村から 38 小松二三子 走馬灯 39
芝野 晴男 とけた(上) 40
評論
谷口平八郎 幸徳秋水事件と文学者たち(十二)35
後書き 43 執筆者名簿
表紙 田辺陶豊《群像》
遺灰とダイヤモンド/北代佳子
此の世をばどりやお暇だ
線香の煙となりて灰さようなら*
人は皆いつか煙となり灰になる ところが
噂に聞いた話だけど
無常の風に散らされた故人の灰を
高温、高圧で処理し人造ダイヤモンドを
造っているスイスの企業がある
一人分の遺灰から一カラットのダイヤモンドが完成し
最低価格八十万円ほどと言う
日本を含む国内外から月に約六十件程の
注文があるそうな
故人の魂のあかしとして遺灰の奥深くから
燦々と輝くダイヤモンドを入手出来たら
片時も離れたくない先立たれた夫や子供の
魂を肌身離さず共に生きてゆける
両手の中に包んでは冥利につきる事だろう
*十返舎一九の歌より拝借
ポーランドの往年の名映画「灰とダイヤモンド」ならぬ「遺灰とダイヤモンド」というのですから驚きましたが、ネットで調べると、たしかに〈無常の風に散らされた故人の灰を/高温、高圧で処理し人造ダイヤモンドを/造っているスイスの企業がある〉ことが判りました。ダイヤモンドは炭素の結晶ですから、原料として人骨が使われ〈一人分の遺灰から一カラットのダイヤモンドが完成〉することも可能なんでしょうね。いずれ多くの人が〈片時も離れたくない先立たれた夫や子供の/魂を肌身離さず共に生きてゆける〉時代になるのかもしれません。〈十返舎一九の歌〉とともにおもしろいところに着目した作品だと思いました。
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