きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.9.27 栃木・和紙の里 |
2008.10.15(水)
父親を病院に見舞ってきました。誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しています。86歳。なにがあってもおかしくない年齢ですけど、できるならもう少し長生きしてもらいたいと思っています。父親としては問題の多い男ですが、そこはやはり肉親なんでしょうか、そう思う自分に驚きます。それに私も問題の多い男ですから、父親のことを言えた筋ではありませんけどね。
○季刊詩誌『詩と創造』65号 |
2008.10.20 埼玉県所沢市 書肆青樹社・丸地守氏発行 750円 |
<目次>
巻頭言
詩と体制――パレスチナ詩人の死に触れて 石原 武 4
詩篇
世界の外で 平林敏彦 6 子犬 原子 修 8
地霊頌(ゲニウス・ロキしょう)−memoria.内海康也.10 地下水 嶋岡 晨 12
バジルの香り 清水 茂 15 咳/落葉 山本沖子 18
凉 北川朱実 21. 問わず語り 尾花仙朔 24
コルニション 橋本征子 26 おばけ 岡崎康一 29
冬至 岡島弘子 32 ポートレート 北岡淳子 34
もうひとつのドア 宇佐美孝二 36 土橋遊所 渡辺みえこ 38
隠沼 岡山晴彦 40 薄い風 長瀬一夫 42
詩は咲くか 眠らない途へ 福士一男 44 ガレの蜻蛉 黒羽英二 46
仕事に逃げる 古賀博文 49 僕の分身の分身に 丸地 守 52
エッセイ
高慢な偏見者に捧げる言葉のコラージュ 嶋岡 晨 56
感想的エセー「海の風景−南島の地 沖縄へ」V−(3) 岡本勝人 59
えー、というようなわけでございます−往生際の時間(二) 北川朱実 68
雪の回廊から−敗者の側から炙りだされた女たちと、その悲劇的群像 森田 薫 74
美術館の椅子 対決 巨匠たちの日本美術を見て 牧田久未 83
プロムナード パンダとメタミドホス こたきこなみ 90
.国境 黒羽英二 91
現代詩時評 女性として、マイノリティとして、被爆の民として 古賀博文 92
海外の詩
地平線についての考察(一) イヴ・ボヌフォワ 清水茂訳 98
詩集『ぼくは書きたいのに、出てくるのは泡ばかり』(一九七二)より ペドロ・シモセ 細野豊訳 102
器/湾岸戦争他 オ・セヨン(呉世栄) 韓成禮訳 106
禁書、レールに沿って流れた朝顔の話 他 オ・ジョングク(呉廷国)
歳寒国/ああ、冷たい、世界をなめる舌 他 パク・ヒョンジュ(朴賢洙)
新鋭推薦作品「詩と創造」2007新鋭推薦作品 118
トロンプ・ルフ(だまし卵)金屋敷文代/夏の犬 仁田昭子
研究会作品 120
お伽の絨緞 松木定雄/頭足手 万亀住子/病める島 太田美智代/ホーホー笛 清水弘子/投影 司由衣/仲秋に 高橋玖未子/面接 葛原りょう/冬の片隅 松本ミチ子/在るがままで どうぞ 池上耶素子/げっ歯類の来歴 宮尾壽里子/冬の夜 弘津亨/ささくれ 佐藤史子/揺れる光りを 宇宿一成/遠ざかる 吉永正/限界集落3 鮮一孝/或る河のほとりにて 白石晴子/風待ち 橘しのぶ/待ちながら 吹野幸子/塔に背を向けて 山田篤朗/時間の重さ 尾崎淑久
選・評 丸地 守・山田隆昭
全国同人詩誌評 評 こたきこなみ 144
書誌青樹社の本書評 小長谷源治詩集『探している』/長谷川紘子詩集『キヨ子』 評 こたきこなみ 148
子犬/原子 修
いつから ぼくは
寡黙な大自然を
侮(あなど)り 見下すようになったのか
ひとにぎりの雪のように坐って
じっとぼくを見上げる子犬に
ベンチの玉座に居すわるぼくが
憐れみの目差しを向けるとき
ひょっとして ぼくは
思いちがいの罠に
自らを引きずりこんでしまったのだろうか
言葉の偽りから身をひいていく
子犬の知を
ぼくが蔑(さげす)み笑うとき
あるいは ぼくは
子大の目から吹きこぼれる
大海原のかなしみを
見失ってしまったのだろうか
水平線がつむぐ光で
瞳のを織りあげようとする子犬から
ふと ぼくが 目を逸らすとき
おそらく ぼくは
大空を支えもつ風の背丈を
見分けられなくなったのではないのか
宇宙を統べる法則のつましい果実として
地べたにしゃがむ子犬を
騎りの位置からぼくが睥睨するとき
登場するのは〈子犬〉と〈ぼく〉だけですが、うたわれている世界は広く深いと思います。その発端が第1連冒頭の〈いつから ぼくは/寡黙な大自然を/侮り 見下すようになったのか〉というフレーズにあるのでしょう。〈子犬の知〉や〈子大の目から吹きこぼれる/大海原のかなしみ〉を〈蔑み笑う〉ようになり、〈目を逸らす〉ようになったときに、私たちは〈大空を支えもつ風の背丈を/見分けられなくなっ〉てしまうと教えてくれています。〈宇宙を統べる法則のつましい果実として/地べたにしゃがむ子犬〉がいることを知るべきなのでしょうね。生きる姿勢を勉強させていただいた作品です。
○詩と批評の一枚誌『てん』49号 |
2008.10.18
山形県鶴岡市 万里小路譲氏発行 非売品 |
<目次>
黄鶺鴒(きせきれい)/井上達也
日々 ほか ――サリー・ブラウン/万里小路譲
ふゆり ふゆり/房内はるみ(解説・万里小路譲)
宿題/万里小路譲
何をなすべきかなんて
わかりはしないさ
最善と想定されている事柄が
自らに課されているだけ
「宿題終わったかい?」
「いいえ 新しい哲学を編みだしたの
すべてを最後の瞬間まで延ばし
人生の真実をいっきに学ぶの」
すべての意味がいつか
苦難の果てに顕われてくるのなら
思い煩うことなく
いまあるときを愉しく生きよ
解けたかい?
人生の宿題
なんのために生き
なんのために死ぬかの
第2連はCharles
M.Schulz PEANUTSより。私訳。
〈新しい哲学〉というのが良いですね。ここには〈最善〉を尽くしているつもりでも、結果的には〈すべてを最後の瞬間まで延ばし〉ているに過ぎないという意味も含まれているように感じられます。特に私のように人生をナメている者には(^^;
最終連は人生最大の謎で、人生は遺伝子を運ぶ旅の途中下車に過ぎないと私は思っているのですが、ではなぜ遺伝子を運ぶのかと考えると、さらに謎は深まります。永遠の〈宿題〉なのかもしれません。
○隔月刊誌『新・原詩人』20号 |
2008.10
東京都多摩市 江原茂雄氏方事務所 200円 |
<目次>
《この詩18》坂上清集(抄) 作:坂上 清 紹介:江原茂雄 1
病院 風葬 少年 夏の間だけ エスキス 早春 わかれ
読者の声 3
詩 道に/まつうらまさお 3 08(兵成6年)/09/11/山本日出夫 3
舞鶴港/柳生じゅん子 4 警察国家の大麻捜査網/山田塊也 4
介護日誌より(4)/黛.元男 4 生きろ/小林忠明 5
タレー3/相川祐一 5 葡萄と柿――井之川さんを偲んで/江 素瑛 5
たったひとつの命です/さはしやよい.5. 柿の花/羽生槙子 5
歩行/江原茂雄 6
エッセイ 希望/丸山裕子 6
事務局より 6
病院/坂上 清
いつからのことなのか この国では
もう自分自身の死を死ねなくなってしまった
人は皆同じ死を強いられる
ビルのなかの快適な温度
鉄製パイプの寝台
ガラス瓶と点滴の針
白いシーツ
白い壁
白い衣服にかこまれて
皆んな同じやり方であの世へ旅立たされる
もう助からないとわかっていながら
メスを入れられるのだ
切りとるものの何もないのに
最後のとどめを刺されるのだ
《この詩18》坂上清集(抄)の中の1編です。たしかに〈人は皆同じ死を強いられる〉ようになりましたね。さすがに最近では〈もう助からないとわかっていながら/メスを入れられる〉ことは少なくなったでしょうが、〈皆んな同じやり方であの世へ旅立たされる〉ことには変わりはありません。ひとつには自宅での死去は警察の介入があるため、〈病院〉での死を選ぶということが選択されるのかもしれません。いずれにしろ、ヒトの死が管理されることは、それ以前の生も管理されるのではないかと思います。作品の表面にそんなことは書かれていませんけど、この詩を何度か拝読すると、そんなことを感じさせられました。
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