きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.9.27 栃木・和紙の里




2008.10.20(月)


 紅葉狩りに山梨県北杜市にある「みずがきの森」に行ってみました。途中にはみずがき湖や増富ラジウム温泉があって、行き当たりばったりに初めて行った処ですが、なかなか佳い所でした。2001年には全国植樹祭も行われたらしく、山の中に突然出現した公園は、異様なほどに整備されていました。

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 写真は公園から臨む瑞牆山(2230m)です。ご覧のようにむき出しの岩石がおもしろい山でした。紅葉にはちょっと早かったのですが、強引に赤い葉を前景にして、努力しました(^^; 携帯ですのでシャープではなくごめんなさい。
 途中の増富ラジウム温泉まではバスがあるらしく、山梨の人たちにはお馴染みの場所なのかもしれません。清里、昇仙峡にはない、鄙びた温泉宿があって、一度泊まってみたい誘惑に駆られました。




市川紀久子氏詩集『緋色の猫』
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2008.10.19 大阪府富田林市 私家版 2000円

<目次>
 T
緋色の猫 8      ゴッホの片耳 12    三号室十六番の抽象画 14
五月に やってくる猫18 額縁のない絵 20    小鳥の湧きでる樹 24
部屋 28        秋の野辺には 30    子どもが消えてゆく 34
鋭く きらめいて 38  宇宙の壁をさがして 40 とくべつの悲しみ 44
タンポポ 48      窓のむこうで 50    彗星の雫 54
あの黄色い花を取って56 金木犀のかおり 60   見えない針と糸で 64
ひまわり 66      千両の実と小鳥と 70  花びら 74
U
余呉湖 78       そこに立つ恐ろしさ 82 六月の迷路 84
薔薇の花びらケーキ 86 ノクターン二十番 90  千年の詩−プラハ 96
あとがき 114      装丁 市川紀久子




 緋色の猫

八月の空に吊された
あの猫の鳴き声は
どこへ行ったのだろう

  終戦が近づいていた
  幼いわたしと
  祖母と猫とで聞いた
  真夜を裂くサイレンの音が
  いつもと違っていた

  庭を突き刺す飛行機の閃光
  這いつくばって
  防空壕に入る 二人と一匹
  家にせまる炎と煙
  目をおおう痛さ
  恐ろしさ

  走る 祖母と走る
  人 人 人のうねりが走る
  白い障子と人影が
  赤い炎に呑まれている
  町が 炎を吐いた夜

  走り疲れた翌朝
  帰ったわが家は
  黒い熱をもつ瓦礫の山
  そのとき 庭の防空壕から
  白い猫が走ってきた

  猫を抱きながら
  棒で焼け跡をなぞっていた
  ここが 遊んだ所
  ここが 寝ていた所
  ここが 台所
  〈あっ わたしの〉
  手に 吸いついた熱い茶碗

  祖母と親類に身をよせ
  ふり払われ 残された猫は
  焼け跡に帰ると 走ってきたが

蝉の群れが
焼けたわたしの身体を掘る
薄い皮膚をつきぬけ
肉をえぐり骨にあたり
穴は 少しずつ大きくなる

そこへ
八月の空にいた
緋色の猫を入れる

 第1詩集です。ご出版おめでとうございます。ここではタイトルポエムでもある巻頭作品を紹介してみました。第1連の〈八月の空に吊された/あの猫の鳴き声〉というフレーズからおもしろく感じましたが、内容は重いものです。特に〈猫を抱きながら/棒で焼け跡をなぞっていた〉というフレーズが印象的です。〈緋色の猫〉の意味について「あとがき」では表題の緋色は燃える思いの語意とし、猫は猫であり、私でもあります≠ニ書かれていました。文字通り燃える体験から生み出された佳品と云えましょう。今後のご活躍を祈念しています。




月刊詩誌『柵』263号
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2008.10.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 日本詩人クラブ詩界賞の設立意義 鈴木比佐雄氏公開書簡への返信…中村不二夫 74
沖縄文学ノート(12) ソフト・コロニアリズム…森 徳治 78
流動する今日の世界の中で日本の詩とは(46) アイヌのユーカラ朗唱と港敦子さんの受賞…水埼野里子 82
風見鶏 秋谷 豊 我妻 洋 佐藤 孝 儚田侑子 西村啓子 86
現代情況論ノート(30) 『夜明けの吸血鬼』−アメリカの性…石原 武 88
詩作品
中原 道夫 自動小銃 4          織田美沙子 うす闇の中で 6
小城江壮智 初冠雪 8           小沢 千恵 伊勢佐木町ブルース 10
柳原 省三 風化 12            肌勢とみ子 登山 14
佐藤 勝太 無言の語部 16         名古きよえ 刻々に映る 18
山崎  森 聖者の行進 20         平野 秀哉 コウキコウレイシャ 22
黒田 えみ 四十六億年の星へ 24      小野  肇 ある人の老後 26
北村 愛子 束の間のしあわせ 28      北野 明治 滅びゆくもの 30
松田 悦子 深海魚 32           進  一男 少女裸像 34
野老比左子 月の慟哭 37          南  邦和 江華島綺談 40
安森ソノ子 公演後のギター 二 43     宇井  一 交通整理 46
西森美智子 言い訳 48           八幡 堅造 仮想受賞記念挨拶 50
江良亜来子 月光浴 52           三木 英治 永遠の古代 54
水崎野里子 ヒロシマ連句 三行詩 56    門林 岩雄 とどかない歌 58
月谷小夜子 祈り鶴 60           鈴木 一成 寄せ集め 62
秋本カズ子 手伝い 64           前田 孝一 道 66
今泉 協子 川祭り 68           若狭 雅裕 泊芙藍 70
徐 柄 鎮 石南寺の晩鐘 72

世界文学の詩的悦楽−ディレッタント的随想(29) 南アフリカ共和国の詩…小川聖子 90
世界の裏窓から−カリブ編(14) 西インド詩の広がり、そして東インド…谷口ちかえ 94
「コクトオ覚書」まとめ 21世紀のオルフェ 1… 三木英治 98
『戦後詩誌の系譜』落穂拾い(4) その時代を生きた詩人…志賀英夫 100
心に残った五冊の詩集…中原道夫 102
 なんばみちこ『不変の月』 中正敏『いのちの籠』 壺阪輝代『探り箸』
 くにさだきみ『ブッシュさんのコップ』 永井ますみ『弥生の昔の物語』
愛と慰謝の詩人 鄭浩承詩選集「ソウルのイエス」…南 邦和 109
新しい詩への道標 水崎野里子『多元文化の実践詩考』…杉谷昭人 112
受贈図書 116  受贈詩誌 117  柵通信 114  身辺雑記 118
表紙絵 中島由夫/屏絵 申錫弼/カット 野口晋・申錫弼・中島由夫




 交通整理/宇井 一

自動車 自動車 自動車
自動車 自動車 自動車 自動車

歩行者 歩行者 歩行者 自転車

自動車 自動車 自動車 二輪車 自動車
自動車 大型車両 自動車 自動車 自動車

自転車 歩行者 歩行者 歩行者 歩行者 歩行者
自動車 自動車 自動車 自動車 自動車 自動車 自動車
自動車 自動車 自動車 自動車 自動車 自動車 自動車

児童 児童 児童 児童 児童 児童 児童 児童

大型車両 大型車両 自動車 自動車
二輪車 自動車 自動車 自動車

歩行者 歩行者 歩行者

自動車 自動車 自動車
自動車 自動車

 ふーやれやれ
 今日も一日、よく働いた‥‥。

 とても面白い詩です。登場人物は〈交通整理〉を仕事としている人なのでしょう。最終連に、事故が起きないようにと心配りして疲れきった様子がよく出ています。眼でも愉しめ、声に出して読んでも楽しめる詩と云えましょう。こういう詩が出てくると、詩か非詩かと議論になりますが、私はよく考えられた詩だと思っています。文字の配置や圧倒的な出現率の〈自動車〉に対して、〈自転車〉や〈児童〉が少ないことに、現在の道路事情への批判さえ読み取れます。そして何より最終連。この2行が詩として成り立たせていると思いました。




詩誌『金木犀』4号
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2008.10.20 さいたま市浦和区
広瀬千秋氏方・「金木犀」の会発行 400円

<目次>
赤い風船・ゆずり葉・南部風鈴…佐々木道代 2  朝・割れる…………………………………三田 正子 4
花街・九月のうた・光る海………広瀬 千秋 6  初夏・しぐれ………………………………森川 柳子 8
おばあちゃま・峠…………………大津 京子 9  手・伝言・剪定……………………………中村 友子 10
母・紅い花しべ……………………設楽 敏子 12  真珠・そよ風………………………………川上 美智 15
追悼・俯せ…………………………小笠原 勇 14  油虫のうた・或る淑女の帰郷………ホソダデンゾウ 16
夕闇の声・黄浦江・若者…………伊藤 一郎 18  竹輪の輪・落武者・茗荷の天ぷらを食べて…菊田 守 20
咳払い………………………………坂東 寿子 22
「金木犀」住所録…………………………………23  表紙…………………………………………伊藤 一郎




 落武者/菊田 守

夏の日
庭の草むしりをして
落ちていた枯れ枝を拾おうと
手を伸ばすと枯れ枝が動いた
枯れ葉色した蟷螂だ
三角の怖い顔 自慢の斧も
すっかり錆びている落武者の姿だ
よくぞこれまで生きのびたものよ!
彼は刈りとられた地面でじっとしていたが
やがて思い直したように
残った草むらの中に
よろよろと歩いて消えた

 『金木犀』は読売文化センター浦和の「詩鑑賞と実作」講座メンバーの詩誌で、年2回の発行のようです。今号では講師の菊田守さんの作品を紹介してみました。〈枯れ葉色した蟷螂〉を〈すっかり錆びている落武者の姿だ〉としたところが絶妙で、〈三角の怖い顔 自慢の斧〉がよく効いていると思いました。〈よくぞこれまで生きのびたものよ!〉というフレーズは、小動物を書いたら当代随一と言われる講師の、面目躍如と言ったところと云えましょう。



   
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