きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.10.9 八方池 |
2008.11.4(火)
自治会の組内の仕事でJAに行っただけで、あとは終日いただいた本を読んでいました。
○大倉元氏作詞集『五十年前のラブレター』 |
2008.9.13 奈良県奈良市 ウーマンライフ新聞社刊 非売品 |
<目次>
望郷
親父 8 親父のキセル 9
親父とは 10 望郷 12
親父の結婚 13 炭焼き小屋 14
おっ母さん 15 せがれ星 16
東京十年 17
天下取る気で
江州商人 20 堀江さんの太平洋一人旅 コラサ コラコラヤッコラと 21
人生航路の船出だぜ 22 天下取る気で 23
ト金が笑う 24 討ち入り 25
竜馬は駆ける 26 女優山田五十鈴の 芝居人生 27
金婚式 28 戻り鳥 29
哀愁の街物語 30 流れ星 31
お父はどこに 32 俺はひつじ追い 33
僕が大人だったら 34 さすらいの石工 丹波の佐吉 35
俺の人生悔いがあり 36 大仏連の 阿波踊り 37
五十年前のラブレター
恋のキューピット 40 風が運んだ愛 41
山彦乙女 42 言えないの 43
五十年前のラブレター 44 初(うぶ)な女 46
台湾物語 47 広州の女(ひと) 48
一人じゃないんだ 49 理由(わけ)あり女 50
捨てっこ酒場 51 俺の心のどこかには 52
大歩危の恋 53
ゆたんぽくん
Welcome My Baby 56. Excuse Me 58
君と僕 60 なんの なんの そんなこと 61
しゃもじ 62 丘の上学園 63
おまわりさんありがとう 64 木の葉のお舟 65
ゆたんぽくん 66
愛しの島よ
キラキラびわこ 68 娘船頭茶髪でキリリ 70
娘と山の神 71 神戸の夢 72
京都へ来とおくれやす 73 願かけ舞妓 74
梅の里の娘さん 75 愛しの島よ 76
矢田の郷 よいよい音頭 77 我が町 泉原 78
越中富山の薬屋さん 79 やまとこおりやま かるた読み札 80
発行に寄せて 82 装丁 河本敏江
あとがき 84 装画 大倉崇晴 板画(1976年)
五十年前のラブレター
桜がやっと咲きました
片付け物をしていると
あなたに宛てた私の手紙
古びた色で出てきました
タンスの中の奥からなんて
切手を貼ってもいいですか
私の五十年前のラブレター
読んだら捨てて下さい
読まずに捨ててもかまいません
私の五十年前のラブレター
目が優しく笑ってた
あなたに何も言えぬまま
その時書いてたこの手紙です
渡せぬままに時が過ぎ
少女文字が頬を染めます
切手を貼ってもいいですか
私の五十年前のラブレター
読んだら捨てて下さい
読まずに捨ててもかまいません
私の五十年前のラブレター
明日病院へ行くんです
多分帰ってこれぬでしょう
それでも私は幸せでした
優しい人に出会えたし
温(ぬく)もりのある家族もいます
切手を貼ってもいいですか
私の五十年前のラブレター
読んだら捨てて下さい
読まずに捨ててもかまいません
私の五十年前のラブレター
*滋賀県芸術文化祭(作詞)特選受賞(2006)
詞を書き始めて50年が過ぎたという著者の作詞集です。巻末には楽譜も載せられていましたが割愛します。ここではタイトル詞を紹介してみましたが、フォークソング調と採ってよいかもしれません。〈私の五十年前のラブレター〉に、改めて〈切手を貼ってもいいですか〉と問いかけたところが新鮮です。この作品には曲が付いていないようですけど、作曲されたらまた違った味わいも出てくるように思いました。
○詩と評論『櫻尺』33號 |
2008.11.1 埼玉県川越市 鈴木東海子氏発行 500円 |
<目次>
詩
広瀬 大志 ラストソング 2
鈴木東海子 ゆりの雨 6
評論
國峰 照子 白石かずこの詩は踊る −そのソウルとスピリットに 8
北岡 淳子 ひと・戦争・未来 −石川逸子の初期の作品を中心に 20
田中眞由美 しま・ようこ −心の辺境として北の方位をめざすひと 31
岡野絵里子 新川和江論3 −見よ、旅人よ 43
櫻発
鈴木東海子 同人誌について 52
後記 52 表紙・鈴木英明
ゆりの雨/鈴木東海子
雨がひだをつたわるながれの青いくきのひだのながれに
のびるながれがつながっていく青さである。雨の手がひ
ろげる青の先は夏の位置でとどまらない。しずくの。指
のようで。からめてゆく手のひらをひらくようにつかむ
ようにのびて咲きたいのだった。
さするようにからむ雨の手が湿っているのだがさらにの
びてからみたいくきはみずを吸いつくすいきおいでのび
つくすのであった。
からみたい木はすぐ前にあり丈さえのばせばとどくよう
にあるのだったがかするまえに先がふくらみひらいてい
くのだ。白い筒はのびる香りでささやく香りで白い口を
すぼめるかたちでつきだすものだから木は香りにつつま
れて懐しい気持ちになるのであった。甘やかな息にさす
られたのがはじまりであったかと記憶をたどる野のあた
りに立っているのである。
冷たくなってゆく手のひらにあたたかいふれあうかよい
あう言葉のようなときがあった。そうして手のようにひ
えていくあの日のどこまでも冷たくなっているのをなが
めていなければならなかったわたしはわたしではなくそ
こにいるだけであった。わたしであったならどのように
してもそこにとどまるはずであったのだが。はなれゆく。
はなされてゆくあの手ざわりがありそこから気持がはな
れたがらないのであった。
ささえられていないのびは重みでまえのめりになり木に
よりそうようにのびてゆくのであった。雨のおもみはふ
りしきる長さで押しつぶされて背をさする手が流されて
しまいそうだ。
〈ゆり〉は百合でよいと思います。〈ゆり〉と〈雨〉と〈わたし〉が織り成す世界は、幽玄の美を感じさせます。詩語としても〈雨の手がひろげる青の先は夏の位置でとどまらない。〉、〈木は香りにつつまれて懐しい気持ちになるのであった。〉、〈雨のおもみはふりしきる長さで押しつぶされて〉などに魅了されます。まさに詩でしか描けない世界と言えるでしょう。声に出して読んでみましたが、リズムも心地良い作品です。
○一人誌『粋青』55号 |
2008.11 大阪府岸和田市 後山光行氏発行 非売品 |
<目次>
詩
○ 夢−木の手(9) ○ 花ヤツデ(10)
○ 金盞花(11) ○ フリージア(12)
○ 桃の花(13) ○漂流する朝・12(14)
スケッチ(8)(17)
エッセイ
●中.正敏詩論 孤高に自由を編み込む詩人(3)(4)
●絵筆の洗い水【31】 (16)
●ある経験 少々 (18)
●舞台になった石見【45】 伊良子清白と浜田(20)
あとがき
表紙絵:97年3月 香港にて
夢 ― 木の手
いつも木は
蒼くて深い空をつかみたいと思っている
葉を散らせた寒い晴天の日がいい
じゃまをする身内の葉を散らせて
枝をいっぱいに伸ばしても
雲が空をおおってしまう
すこし大きく枝をひろげてみても
うえを飛ぶ鳥さえもつかめない
今年も
枝にちいさな葉の
芽をふくらませるのが精一杯なのだけれど
いつからか木は
蒼くて深い空をつかみたいと思っている
〈木〉が〈蒼くて深い空をつかみたいと思っている〉という〈夢〉を描いた作品ですが、これはそのまま私たちの夢なのではないかと思います。〈枝をいっぱいに伸ばしても/雲が空をおおってしまう〉現実、〈すこし大きく枝をひろげてみても/うえを飛ぶ鳥さえもつかめな〉かった人生。だからこそ〈夢〉なのだと言えるかもしれません。そうやって終わりの日が近づいてくるわけなのですが、最期まで〈蒼くて深い空をつかみたいと思〉い続けることが必要なのでしょう。短い作品ですが、考えさせられることは多い詩だと思いました。
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