きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.10.9 八方池




2008.11.5(水)


 新潟まで行ってきました。90歳を過ぎた義母が元気なうちに、親戚付き合いをしている家へ行きたいと言っていましたから、実行しました。その家を訪れるのはこれで2度目です。新潟地震で壁が壊れたという情報は得ていて、その後再建されたとも聞いていましたが、どんな状態かちょっと不安もあったのですけど、以前にも増した立派な家になっていて安心しました。山古志村から直線距離で5kmほどですから、相当な被害だったはずですが、古い農家造りの豪雪に耐える構造が幸いしたようです。

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 前に行ったときは真冬で、3〜4日その家に泊めてもらって八海山の呑み放題をやったのですが、今回は近くのホテルに泊まりました。写真はそのホテルからの眺めです。川は信濃川上流の魚野川で、右手の下流1kmほどで信濃川に合流します。魚沼産こしひかりの地元だけあって、広々とした田んぼが眼にやさしく飛び込んできました。

 クルマで行ったルートは、静岡県小山町須走から東富士五湖道路→中央自動車道→八王子JCTから圏央道→鶴ヶ島JCTから関越自動車道→越後川口ICです。所要時間は休憩込みで5時間。ずいぶん近くなったものだなと思います。以前のように都内を通らなくて済むことが大きな要因ですね。この上は、早く圏央道が東名厚木と繋がってほしいものですけれど、環境破壊も進むかと思うと、ちょっと複雑な心境です。




詩とエッセイ『掌』137号
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2008.11.1 横浜市青葉区
志崎純氏編集・掌詩人グループ発行 非売品

<目次>
エッセイ
醜い…………………………………石川 敦…10  栗−お彼岸にて…………………薄田久子…10
漢字表記について…………………掘井 勉…11

紙細工の部屋の中の凸点たちに…福原恒雄…2  病室にて…………………………薄田久子…4
社会見学……………………………石川 敦…6  思い出……………………………国広 剛…8
悪酔いする酒量に非ずこの無様…半澤 昇…12  無くなる…………………………堀井 勉…14
仲秋の名月に………………………志崎 純…16  老虎灘(ろうこたん)…………中村雅勇…19
編集後記                           表紙題字 長谷川幸子




 紙細工の部屋の中の凸点たちに/福原恒雄

指の先で
思う
点のようなもの
集まっては
すぐに散って
追いかける指から逃げていくもの
約束の文字でもあるような運動が
指をせきたてる
文字のようではない文様の正体が
かすかに
脳髄を妄想するあたりで
音たてる
点は驚きをくっつけて文字になる
線のような時間を気にしなければ
きのうのエネルギーも思い起こして
ここが紙の舞台であっても
お芝居さえ始められる きっと
跳ねもせず踊りもせず明かりも灯さず
ただ見つめられる目に
向き合いたくて
そこに
暮らしている
正体は 呼吸ほどに鮮明である
時間を見聞するより気もちが
いいのである
休憩する点字もゆっくりと寄ってきて

 この作品はそのまま〈点字〉の詩と採ってよいと思います。私も点字は駅や公共施設でよく見る≠フですが、ほとんど触ったことがないことに改めて気づかされました。しかし、想像によって〈点のようなもの/集まっては/すぐに散って/追いかける指から逃げていくもの〉であることは理解できます。〈点は驚きをくっつけて文字になる〉というのは、作者が盲学校の先生だから出てくる言葉なのかもしれません。おそらく〈線のような時間を気にしなければ〉〈お芝居さえ始められる〉のでしょう。点字の〈正体は 呼吸ほどに鮮明である/時間を見聞するより気もちが/いいのである〉のかとも思います。〈休憩する点字〉も、休符号のように存在しているのでしょうね。点字に対する愛着が感じられ、たぶん、初めて書かれた点字の詩だと思いました。




会報『新しい風』12号
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2008.11.1 川崎市川崎区
金子秀夫氏代表・川崎詩人会発行 非売品

<目次>
作品
眼をさませ/田川紀久雄 1         親の顔/福田美鈴 2
珍客の春/金子秀夫 2           僕という個性がある/地 隆 3
心に灯が点る/地 隆 3
エッセイ
川崎・砂子=文芸酔漢横丁/丸山あつし 4
私的川崎雑記(3)
 鶴見川/長谷川忍 5   『一日だけのマーガレット』から中田紀子を垣間見る(2)/西村啓子 6
オフィーリア/あつし・丸 7        横浜市長への手紙/金子秀夫 8
堀田善衛展/丸山あつし 9         生き物のにぎわい/坂井のぶこ 10
編集後記にかえて/丸山あつし 12




 眼をさませ/田川紀久雄

私はうたいたい
愛するものたちが
いつまでも幸せであるようにと
そして
生まれてくるものたちが
共に生きられる世の中が来ることを
そう祈らずにはいられない

地球は滅びようとしている
環境の急激な変化によって
人々は見苦しい争いを起こすだろう
飢えと渇きが
この地球上の生き物にふりかかる
昨日まで豊かであった生活が
蜃気楼のように消え去っていく

故郷の村も大雪で
家が雪の重さで潰れそう
村は老人ばかりで身動きがとれないという
遠く離れたアジアの一画では旱魃のため稲も麦も育たぬと聞く
そうかと思うと山崩れで村が全滅したとか
これらは自然災害ではなく
すべて個人の欲望からうまれたもの
資本主義社会も
共産主義社会も
欲望を剥き出しに
ひたすら物質の豊かさだけを追い求め続ける
そのあげくの果て
貧しい人々が
都会のゴミのように吐き出されている
高級車に乗り遅れまいと
マネーゲームに取りつかれる

裏町の横丁からは
靴底に穴があき
衣服はぼろぼろ
今にも壊れそうな荷車に空缶をビニール袋に詰め込んで
足を引きずりながら歩く老人が出てくる
生まれたときは
誰からも祝福されてきたはずなのに
どこから人の道が別れていったのか
貧しい人々に愛の手を差し伸べたいと思っても
こちらも明日の生活に事欠くありさま

詩では何の腹の足しにもならない
そんなことなど百も承知だが
せめて荷車の横に坐って
詩でも聞いてくれ

私はうたいたい
愛するものたちが
いつまでも幸せであるように

小鳥たちのように
明日のことを悩まず
生きていられることの
歓びを

 〈せめて荷車の横に坐って/詩でも聞いてくれ〉というフレーズに全てが言い尽くされているように感じます。詩を語る者、それを聞く者の間に漂い始めるのが本当の詩なのかもしれません。そこには〈明日のことを悩まず/生きていられることの/歓び〉も表出してくるのでしょう。そのことに思いを馳せて〈眼をさませ〉と言われているように思いました。〈愛するものたちが/いつまでも幸せであるように〉〈私はうたいたい〉と書く作者に、本質的な詩人の魂を見た思いです。




詩と評論『操車場』18号
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2008.12.1 川崎市川崎区 田川紀久雄氏発行 500円

<目次>
詩作品
渇きと眠り ――9 坂井信夫 1
白夜 長谷川 忍 2
今夜も眠れない・他三編 田川紀久雄 3
俳句
母追慕の句 井原 修 8
エッセイ
新・裏町文庫閑話 井原 修 9
二つのベルクソン論、読書案内風に――つれづれベルクソン草(8)―― 高橋 馨 10
削り屋は見た 野間明子 12
田川紀久雄『生命の尊厳』出版記念朗読会を聞く 鈴木東海子 14
詩人の聲 田川紀久雄 16
浜川崎のぎゃあていず 坂井のぶこ 21
末期癌日記・十月 田川紀久雄 22
■後記・住所録 34




 白夜/長谷川 忍

 知人から便りが届いた。長野に来ていますと書かれたカードの裏
に、ある日本画家の風景画が印刷されている。市内に画家の美術館
があり、そこから便りをくれたらしい。青々とした木立をぬって流
れ落ちる滝を描いたその絵から、水の響きが、聴こえてくるような
気がした。
 その年の夏は、猛暑が続いた。だからよけいカードが印象に残っ
たのかもしれない。さっぱりした文面のせいもある。
 画家のことを思い出したのは、年が明けて間もなくのことだ。あ
らためて眺めてみると、不思議な静けさが、絵から漂ってくる。ふ
と、知人と同じ場所に立ってみたくなった。
 善光寺の裏側にある城山公園の一角に、その美術館はあった。朝
が早いせいか、館内にはまだ誰もいない。冷え冷えした空気に溶け
込むかのように、画家の作品が展示されている。カードに印刷され
ていた滝を描いた絵に行き当たった。それから、緑の向こうへ真っ
すぐ続く道。深い木立の奥に佇む白馬。
 一枚の絵に目がとまった。白夜の湖と森が抑えたタッチで描かれ
ている。まるで水墨画を彷彿させるような藍の色づかいが、ゆっく
り沁みてくる。感動というのではない。次第に心が落ち着いてくる、
そんな藍だ。引き込まれるように絵の中の湖を見つめた。
 ロビーのソファーに腰を下ろし、湖を描いたカードを使って知人
に便りを書いた。書きながら、まだ実際に逢ったことのない彼女の
姿を、脳裡に浮かべてみた。
 根雪があちこち白い肌をあらわにしている。この冬初めて目にす
る雪だ。昨年の夏を思った。したためたばかりの知人宛てのカード
を取り出し、もう一度美術館のほうを振り返る。
 いつの間にか、細かい雪が降り出していた。

 〈善光寺の裏側にある城山公園の一角に、その美術館はあった〉とありますから、長野県信濃美術館・東山魁夷館のことだろうと思います。私も一度訪れて、〈青々とした木立をぬって流れ落ちる滝〉や〈深い木立の奥に佇む白馬〉、〈白夜の湖と森〉を観ています。こう書き写すだけで絵を思い出すのですから、やはり優れた絵なのでしょう。
 作品はそれらの絵にも匹敵するほど〈感動というのではない。次第に心が落ち着いてくる〉ように感じました。〈まだ実際に逢ったことのない彼女の姿〉を私も〈脳裡に浮かべて〉しまうほどの詩です。タイトルといい、〈いつの間にか、細かい雪が降り出していた。〉という締めといい、〈ゆっくり沁みてくる〉作品だと思いました。



   
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