きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.10.9 八方池 |
2008.11.7(金)
特に予定のない日。いただいた本を拝読していました。
○館報『詩歌の森』54号 |
2008.11.7 岩手県北上市 日本現代詩歌文学館発行 非売品 |
<目次>
『奥の細道』はやっぱりいいな/海部宣男
文学館活動時評20 象牙のケースならぬ文学館/Eric Selland
詩との出会い21 もう一人の自分/白濱一羊
シリーズ 詩歌の舞台裏2 一冊の詩集から/中原 豊
連載 現代川柳時評V 川柳結社の半世紀一世紀/今川乱魚
資料情報 2008.6〜9
詩歌関係の文学賞 2008.6〜9発表分
こどもの詩のワークショップ開催
日本現代詩歌文学館 評議員動向 2008.6〜9
日録 2008.6〜9
後記
米国では、アメリカ詩のアーカイブとして大きいものは、一九五四年以後の代表的な米国詩人の朗読をビデオ・オーディオで備えたサンフランシスコ州立大学ポエトリーセンターのThe American Poetry Archive、そして、一九四五年以後のブラックマウンテン詩人(オルソン、ダンカン、クリーリー)などのNew Amercan Poetryを主に揃えたカリフォルニア大学サンディエゴ校のThe Archive of New Aerican Poetryがある。しかし「何でも揃う」場所はない上、公開されているのは、大学関係者のみで一般人ではない。また、一般が参加できるプログラムもない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
紹介したのは詩人・翻訳家というEric Selland氏の「文学館活動時評20 象牙のケースならぬ文学館」の後半部分です。日本現代詩歌文学館の〈「何でも揃う」場所〉としての素晴らしさを讃えたあとで、では米国では、と披露したものです。〈公開されているのは、大学関係者のみ〉で、〈一般が参加できるプログラムもない〉ということですが、それでも複数の大学が〈アメリカ詩のアーカイブ〉を持っているということに敬服します。翻って、日本の大学はどうなんだろうと考えてしまいますね。日本では日本現代詩歌文学館、米国では大学。いずれの形をとるにせよ、人類共通の詩をどこの国も大事にしていってほしいなと思います。
○詩とエッセイ『』37号 |
2008.12.1 石川県金沢市 中村なづな氏方・祷の会発行 500円 |
<目次>
詩
浦賀水道にて/ある夕景 霧山 深 2 間柄/でんしんばしら 中村なづな 6
面影/アフガンの花ムコ 江田恵美子 9 縄文の遺跡/夫婦銀杏(めおといてふ) 宮内洋子 18
らふらんす/土偶 池田瑛子 22
エッセー 俳句は短く 木原 公 12 詩 俳句フレーズによる形而花学 4
小文
るり子さんの梨 中村なづな 26 木の名 鳥の名 霧山 深 26
桜島の余震 宮内洋子 26 コウメ 江田恵美子 27
老いた梅の木 池田瑛子 27
あとがき 28
らふらんす/池田瑛子
幼い頃
町に二台あった 赤い自動車
〈らふらんす〉と教えられた
小学生の頃もずっと
消防車を〈らふらんす〉と思いこんでいた
まあるく やわらかい響きが好きだった
おとなになり
そんなことも忘れてしまっていたけれど
何十年も経って
香りのいい西洋梨
ラ・フランスが街に出まわるようになった
「ねぇ、消防車を昔〈らふらんす〉って言わなかった?」
夫に訊くと
「知らんなぁ、らふらんす?」
おたがいの生家が四キロほどしか離れていないのに
「消防車は消防車だよ」とそっけない
あれはわたしの錯覚だったのかしら
フランスと関係があるのかも‥‥
謎は謎のままになったことも忘れて
何年も過ぎ
そして今日
何気なく読んでいた新聞
とやま弁大会の記事にあった!
大正時代に富山市に初めて導入された消防車は
外国のラフランス社製だった
ラフランスは富山弁で消防車を指すと
やっぱり〈らふらんす〉と呼んでいたのだ
ら
ふら
ん す
迷子だったやさしい言葉が
昔の町へ帰っていった
赤い消防車になって
言葉の成り立ちというのは面白いものだなと思います。チャイナが陶磁器を表すように〈ラフランスは富山弁で消防車を指す〉としてもおかしくはありません。〈幼い頃〉に感じた〈まあるく やわらかい響きが好きだった〉という感性にも共感を覚えますし、〈迷子だったやさしい言葉〉という詩語にも魅了されます。〈何十年も経って〉、さらに〈何年も過ぎ〉、それでも言葉に執着していたのは、詩人の素質そのものと思った作品です。
○詩とエッセイ『海嶺』31号 |
2008.11.15 さいたま市南区 杜みち子氏代表・海嶺の会発行 非売品 |
<目次>
扉詩
杜みち子 秋 1
詩
河村靖子 明日 4/猫の効用 6/撒かれた糧 7
植村秋江 九月のはなみずき 8/はじめてのお裁縫 10
桜井さざえ 鳥越の丘 12/西蓮寺 14
杜みち子 ディス イズ イッツ 16/きいちのぬり絵 21
散歩道《動物》
河村靖子 モネとハナのこと 24
桜井さざえ 動物図鑑 25
植村秋江 ペットの名前 27
杜みち子 野良猫奮戦記 28
雑記帳 30
編集後記 32
表紙絵・カット 杜みち子
秋/杜みち子
菜園の傍らに
色とりどりの
ポンポンダリアが整列している
改装されたキッチンでは
トーストをキツネ色に
玉子は半熟
ミルクティーもこっくりと…
砂時計の砂の落下が止まらない
朝は隅っこから欠けはじめた
今号の扉詩です。〈秋〉の〈朝〉の情景と採ってよいでしょう。最終連の〈砂時計の砂の落下が止まらない〉というフレーズは、これから始まる一日を暗示しているように思いますし、この詩の中で一番魅了された〈朝は隅っこから欠けはじめた〉は、隅っこから食べ始めた朝食の〈トースト〉にも繋がっていると思いました。隅っこから欠けて、どんどん陽が射してくるイメージが浮かぶ佳品ですね。
← 前の頁 次の頁 →
(11月の部屋へ戻る)