きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.10.9 八方池




2008.11.17(月)


 特に予定のない日。終日いただいた本を拝読していました。



今井直美男氏詩集『僕は昭和一ケタ』
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2008.11.16 大阪市北区 編集工房ノア刊 2000円+税

<目次>
T ボクの椅子
私とは? 8      忘れていたもの 10   節
(せつ)という字 12
エンピツ 14      ボクの椅子 16     僕は昭和一ケタ 18
鍬 20         かまど 22       表 裏 表 25
総括十年 28
U 母とカラオケ
ご馳走 34       母とカラオケ 36    青年将校 38
神の国日本 41     僕の反戦歌 44     東京だよおっ母さん 46
英雄
(おとこ)たち 48
V 二人のぜいたく鍋
負け惜しみの減らず口52 ペンキ塗り 54     歓喜の夕ベ 57
二人のぜいたく鍋 60  二個 にこ にこ 62  かわいいね 64
ダラメ 66       今日の天気 68     アジ 70
へび 72        みみずと土 74     馬糞とり 76
ねぎの一生 78     光をもらって 80    光子
(みつこ) 82
新植物アトム 85
W ロンドンの友達
揚州の一日 90     南京の思い出 93    背のび 96
タイのゾウ 98     ダチョウ園 101
.    この国で 104
撮す 106
.       笑顔 109.       ロンドンの友達 112
 *
昭和一ケタ世代の貴重な自分史 島田陽子 116
あとがき 124
装幀 森本良成




 
エンピツ

ボールペンは滑りすぎる
エンピツの芯のひっかかりぐあいが
私にはちょうどよい
おまけに消しゴム使用可
間違えた文字を消すだけでなく
長すぎた一画を短くしたりもする
私のボールペンの字は硬くなっているが
エンピツでは気楽に書けるので
字が楽そうにしている

あの失恋の顛末も
エンピツで書いていたら
消しゴムできれいに消して
新しい筋書きに書きかえるのだが

 大学で化学を40年教えてきたという著者が、定年退職を期に詩作を始めて12年、初の詩集出版です。おめでとうございます。
 紹介した詩は誰にでも書けそうですが、実はそうでもありません。〈ボールペンの字は硬くなっているが〉〈エンピツでは〉〈字が楽そうにしている〉というのは、科学者らしい視線であり、文学者の素養も感じられるフレーズだと思います。最終連は言うまでもありません。〈新しい筋書き〉が見事に決まった佳品と云えましょう。今後のご活躍を祈念しています。




詩マガジンPO131号
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2008.11.20 大阪市北区 竹林館発行 840円

<目次>
特集 中南米
細野 豊  メキシコの女性帰化詩人アンバル・パストと「大気の目眩」に集う若い詩人たち…9
上野清士  ラテンアメリカの女たちは耐え、歌い叫び、そして詩魂を滾らせる…16
水口良樹  ラテンアメリカ、即興詩の伝統…20
すみくらまりこ 流星の女
(ひと)−ウルグアイの女流詩人スザナ・ソッカー…27
藤原節子  ブラジル移民の文学…30
三方 克  ラテン・アメリカの詩の部屋…36
詩作品
柴田三吉  しゃぼん玉…38         村山精二  ことわざ…40
橋爪さち子 家じゅうのシーツを洗う…42   木村孝夫  ノウゼンカズラ…44
安田風人  荷物…46            尾崎まこと 秘境…48
丸山 榮  ラグビー/雨…54        青島江里  太陽の祭り…58
梶谷忠大  ことばの流れのほとり…60    佐藤勝太  笑いの和…64
前野 碧  風のりんご…65         川中實人  非朽…70
佐古祐二  蝋燭…71            中野忠和  闖入者/ぬるま湯/雨/蝉…72
宇宿一成  ロケット…80          根本昌幸  思い出…82
加納由将  夜の旅…88           関 中子  優しい夜…89
藤谷恵一郎 都市難民-二〇〇八年
.夏/希望…90.清沢桂太郎 岩山の松の木/人生劇場に/夏に…92
牛島富美二 筆胼胝
(ペンだこ)−モノものがたり(3)−…110
与那嶺千枝子 壕
(ガマ)…112         蔭山辰子  消えたささ舟…114
神田好能  夢か…116
.           左子真由美 ランナー…118
松田理治  夕食前の楽しみ…120
.      おれんじゆう 部類…126
野信也  ヒミツ/慢心…128
.       瑞木よう  蓼科…132
日野友子  記憶/小さい男の子の…133

扉詩 勇者 安田風人…1
ピロティ 螢
(ほたる) 伏谷勝博…7
舞台・演劇・シアター ライブと映像 河内厚郎…50
ギャラリー探訪 モディリアーニのスフィンクスの前で 尾崎まこと…52
一冊の詩集 大岡信『春 少女に』 宇宿一成…66
一編の小説 シャルル・プリニエ『醜女の日記』 芦川えみ…68
ビデオ・映像・ぶっちぎり 「ナルニア国物語第2章 カスピアン王子の角笛」 水口洋治…84
エッセイ 俳人正岡子規の新体詩 梶谷忠大…85
韓国現代詩の今 金鍾鐵・許恵貞・李慧美/韓成禮 訳…100
この詩大好き 色づく街 晴 静…122
エッセイ 変容変身そして統合 川中實人…124
エッセイ 笑い 神田好能…138
詩誌寸感 地域から発する詩心の礫 佐藤勝太…142
◎受領誌一覧…144 ◎執筆者住所一覧…145 ◎編集後記…146
◎お知らせ
 会員・誌友・定期購読者募集/投稿案内/ホームページ/「PO」例会/広告掲載案内/「PO」育成基金…147
 詩を朗読する詩人の会「風」例会…148
編集長 佐古祐二
編集部 左子真由美・寺沢京子・中野忠和・藤谷恵一郎・藤原節子・水口洋治




 
ロケット/宇宿一成

打ち上げを待つ
空を指す一本の指

眠るときに痒くなる
指の
内側から皮膚を持ち上げる
微細なものたちの騒ぎ

億年の波 打つような
雪原を風が渡り
無人を震わせ
生命は始原に向かって
様相を変えてゆく

打ちあがるロケットの映像は
空の襞に包み込まれる
心細いペニスみたいだ

宇宙へと増殖してゆく
生命の
むず痒い意志

しもやけの指が
雪原でふるえている

 〈指〉と〈ロケット〉の組み合わせがおもしろい作品です。特に〈打ちあがるロケットの映像は/空の襞に包み込まれる/心細いペニスみたいだ〉という第4連が秀逸で、そうすると〈宇宙〉は巨大な膣の〈襞〉なのかもしれませんね。それが第5連へと繋がっているように思いました。〈指〉が〈しもやけ〉だったという最終連のオチ≠烽アの作品の意図がよく表れていると云えるでしょう。

 今号では拙作「ことわざ」を載せていただきました。お礼申し上げます。




詩とエッセイ『ガーネット』56号
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2008.11.15 神戸市北区
高階杞一氏方・空とぶキリン社発行 500円

<目次>

やまもとあつこ 雪の手 4         阿瀧 康 暑い! 6
大橋政人 蔵出しナンセンス詩集 10     嵯峨恵子 待たれていた男/あびる/明日がある 20
廿楽順治 三魂/ずどん/へこたれる 32   神尾和寿 水仙/挑戦/夜間飛行/むずかしい顔 38
池田順子 帰宅/なぞなぞ 42        高階杞一 鏡の人/ゆきづまりの人 46

1編の詩から(27) 安西 均 嵯峨恵子 27
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.56    斉藤恵美子/倉田良成/村野美優/小川三郎 30
詩集から NO.54 高階杞一 50
●詩片●受贈図書一覧
ガーネット・タイム 58
「び−ぐる」あたふた記 高階杞一
.      松ノ木小唄 神尾和寿
なに〜 やまもとあつこ           収穫の秋 池田順子
夏から秋へ 阿瀧 康            世界のいじめ 廿楽順治
まどさん九十八歳の新詩集 大橋政人     アレルギー歴 嵯峨恵子

INFORMATION 66            同人著書リスト 67
あとがき 68                表紙絵 中井雄介




 
蔵出しナンセンス詩集/大橋政人

  本を読むのに疲れたりすると、気晴らしに訳の分からない、詩のようなものを
  書くことがある。書き溜めてある中に、そんなのが何篇も出てきたので…。

 


子どもたちは
危ないから
波打ち際で
海から
海面を
ペリペリペリと
引きはがしたりして
遊んでいる
引きはがしながら
下を
のぞきこんでいる子もいる

大人たちは
舟で沖に出て
長い棒の先に
水平線を引っかけて
いま大きく
浜まで引っぱってくるところ

太古の海は
とても広いな
大きいな

 「蔵出しナンセンス詩集」という総題のもとに8編の短詩が載せられていました。そのうちの「海」を紹介してみましたが、〈海面を/ペリペリペリと/引きはがしたりして/遊んでいる〉、〈長い棒の先に/水平線を引っかけて〉〈浜まで引っぱってくる〉という発想に驚きます。特に海面を引き剥がすというのは、〈子どもたち〉が両手で海水をすくっている様子が浮かんで、これは巧い見方だなと思いました。それらの情景が〈太古の海〉のことなのだという最終連も納得です。これは太古から続く海というようにも採れますが、おそらく情景が太古だと思って間違いないでしょう。海面を引き剥がしたり、水平線を引っ張ってくる太古の世界に想いを馳せました。



   
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