きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.10.9 八方池 |
2008.11.19(水)
その1
足を骨折して動けない知人に代わって、犬と散歩してきました。今回で2回目ですから、犬の方も覚えているらしく、さかんに尻尾を振って迎えてくれました。前回はしつけがなっていない犬と書きましたけど、犬自身はあんがい利口なのかもしれません。
でもね、田舎道を犬と一緒にトボトボ歩くと、なんだか裏びれた感じになりました。あんたも老犬、私も老人の部類…。そればかりではなく、風の冷たい夕方が良くなかったのかなあ。次は暖かい日を選ぼうと思いました。
○季刊詩誌『タルタ』7号 |
2008.11.20 埼玉県坂戸市 タルタの会・千木貢氏発行 非売品 |
<目次>
峰岸了子 ふたりのきみ 2 米川 征 庭の生物 4
柳生じゅん子 帰郷(4) 6 伊藤眞理子 第二会場 9
千木 貢 某日 12 田中裕子 家 14
現代詩のいま
柳生じゅん子 ことばの蟻たち は 17 米川 征 言葉/構造 20
*
田中裕子 鈴 22 伊藤眞理子 メモリアルディ 24
柳生じゅん子 秘密は 26 峰岸了子 空を歩く心地で 28
詩論
千木 貢 曖昧性の詩学 31
ふたりのきみ/峰岸了子
なんだ きみか
いやみな きみか
みがってな きみか
おためがおの きみか
あいたくもない きみか
しんらつきわまる きみか
しらしらわらう きみか
みえっぱりな きみか
ひねこびた きみか
こまった きみか
そうだ きみだ
あのひの きみだ
しんせつな きみだ
はにかみやの きみだ
わすれもしない きみだ
なまえをしらない きみだ
からからわらう きみだ
あいたかった きみだ
なつかしい きみだ
やさしい きみだ
「ふたりのきみ」は別人と採ってもいいでしょうが、一人と採ることも可能だと思います。すなわち、受け手側の心理状態によって相手が変化するとも採れますし、相手の二面性とも考えることができるでしょう。ここでは前者ではないかと思いますが…。そういう意味では「ふたりのきみ」ならぬふたりのわたし≠ナもあると云えるでしょうか。〈○○○ きみか〉という同じパターン、整然とした二つの山は、普通はあまり好まれない形なのですが、ここではそれも「ふたりのきみ」というタイトル故に成功していると思いました。
○詩誌『潮流詩派』216号 |
2009.1.1 東京都中野区 潮流詩派の会・村田正夫氏発行 500円+税 |
<目次> 写真→麻生直子
特集 橋
勝嶋 啓太 橋/橋向こうの思い出 7 村田 正夫 橋 8
清水 洋一 湖周の旅 8 島田万里子 橋を渡る 9
竹野 京子 橋を渡ると 9 加賀谷春雄 一瞬の橋 10
福島 純子 橋のなまえ 10 原ア 惠三 逝くものはかくの如きかな昼夜をおかず 11
麻生 直子 跳び石橋にて候ふ 11 宮城 松隆 木橋 12
鈴木 茂夫 橋・こどもの目の高さ 12 夏目 ゆき 少しだけずらして 13
鶴岡美直子 渡れない橋 14 千葉みつ子 橋渡しの年 15
丸山由美子 吊り橋 16 土屋 衛 はし 16
山崎 夏代 橋の真ん中で 18 藤江 正人 橋の向こう 18
状況詩篇
水崎野里子 ソウル・江華島・雨 20 津森美代子 北京 20
山下 佳恵 雷雨 21 山本 聖子 隊と族 22
藍川外内美 ところてんの夏 23 熊谷 直樹 明日にかける橋 24
藤江 正人 はしもとや 24 尾崎 義久 舌打ち名人 25
平野 利雄 コラージュ〈和庖丁〉 26 大島ミトリ 風が吹く 27
詩篇
新井 豊吉 はじめまして 28
田島 美加 33番から34番へ 28 桐野かおる 黄泉比良坂 29
戸台 耕二 生きる 30 麻生 直子 広島から帰ると 30
林 洋子 走る根 31 藁谷 久三 カピュシヌ大通り/小舟のアトリエ 32
皆川 秀紀 ボロ船にぶどう酒を載せて 33 井口 道生 動物の気持ち 34
若杉 真木 平凡な君 35 時本 和夫 初秋の風に乗って 36
飯田 信介 解き放たれて(二) 36 平井 達也 口笛 37
神谷 毅 幻影の点描 38 舘野菜々子 終電車 38
まちえひらお 呟く 39 比暮 蓼 夢蛍 40
中村 恵子 ライラックの耀ひ 42 夏目 ゆき あなた達の大事な末娘 43
津森美代子 夏 44 伊藤 美住 ライブを抜け出して 44
舘野菜々子 エンドレス 45
●世界の詩人たち(22) 水崎野里子 現代日本アイヌ系詩人 チカップ美恵子 52
村田正夫拾遺詩篇抄 回想の詩と時代(12) 村田正夫 54
生命への追慕『ベデストリアン・デッキの朝』から 麻生直子論(6) 丸山由美子 66
コネチカットも海の向こう 福島純子 70
ゆるぎない感動までの時間 井口道生詩集『妖精が通る』評 鈴木茂夫 72
作者の息遣い 井口道生詩集『妖精が通る』評 山崎夏代 74
ブックス 鈴木茂夫 大橋政人詩集『歯をみがく人たち』 花田英三詩集『坊主』・他 76
マガジン 山崎夏代 ヒロシマ・ナガサキを考える92号 ル・ファール創刊号・他 78
前号展望 山本聖子 北京競技場内外事情 80
ベスト5/リスト/入会ガイド 82〜86
編集後記(村田正夫) 87
跳び石橋にて候ふ/麻生直子
京都二条のホテルでは
鴨川の流れが耳を浸した
朧月の川面のゆらめき
よあけには 四条河原を見なければと
めまいのようなねむりを眠って
早朝の下京の河原を歩いた
二条河原の亀石と千鳥と舟形の跳び石橋を
尻込みしている散歩犬をよこめに
タイトスカートとヒールにて渡り候ふ
えい やあ と と と とっ
歩幅いっぱい 跳ね 跳ね 跳ね 跳ぶ
三条大橋 四条大橋 橋の下はいつも哀しい
めざした四条河原は堤防に遮られている
怨念の血染めの石は早瀬に埋没
明るい雑草に覆われた岸辺の砕石をカメラにおさめ
ひといきに五条大橋へと歩く
柳そよぐ木陰にモニュメントの欄干葱坊主を撫でてみる
ラッシュの車と自転車とバスの行き交う喧噪
牛若も弁慶も母の絵草紙の子守歌だった
ちいさく口をあけた地下駅に消えていく人の波
〈絶えたる跡を継ぎ給ふ〉
来歴の橋を 跳び 跳び 独り眺めの対岸に
「特集 橋」の中の1編です。表紙の写真も作者とありましたから、紹介した詩と関連があるのでしょう。〈跳び石橋〉で〈尻込みしている散歩犬〉が見てとれます。作品は〈めまいのようなねむりを眠って〉、〈橋の下はいつも哀しい〉、〈ちいさく口をあけた地下駅に消えていく人の波〉などのフレーズに魅了されました。〈候ふ〉という文語も〈京都〉が舞台ですから似合っていると思いました。
○アンソロジー『etude』10号 |
2008.11.10
東京都新宿区 麻生直子氏編集 NHK学園新宿オープンスクール発行 非売品 |
<目次>
杉谷 晴彦 B型と言われて/あの日の鍋/コロスケホーホー/いいたくはないけど 2
中田 紀子 白粉花/整形外科311号室/ニセアカシア 10
工藤富貴子 晩秋に/ふぐ屋の女将/どういう経緯で/少し貰ってもらえまいか 18
林 洋子 とねりこ/数馬のあら樫/こならの木 26
田中 万代 雪/鎌倉の春/靴 32
前川 整洋 仏像/大日如来 40
浦山 武彦 フィリー ホーリー/蛍前線/ある部族の肖像/大鼓まつり 44
夏目 ゆき いっしょだった いつも 54
若林 晶子 波乗り 58
山本 聖子 二百二十日/崩落 60
福島 純子 洗濯ピンチライフ 64
麻生 直子 珠洲から禄剛崎に/広島から帰ると/裂く 66
編集後記
白粉花/中田紀子
触るとプンと横を向く花だった
何故なのか考えてみたことがあった
ちいさな花弁を思いきりひらこうと
努力しているさなかだったからだろうかと
わたしの身長くらいまで不揃いの花をつけていたから
夕暮れの気まぐれに
ただ触ってその変化を楽しんでいたのだが
あとになって
夕方に咲き翌朝はもう萎んでしまう白粉花と知って
お邪魔をしたようで申し訳ない気持になったりした
家にも触れるとプンと横を向く娘がいた
学校で何かあったのか
部屋にこもり力いっぱいふんばっていたのだろう
触れると横を向く者が他にもいる
微妙に視線をずらして怒ったように呑む
なにも白粉花の真似をしなくても
夕暮れに白粉をはたいてみたいのはわたしの方だ
誰かに触られたら真っ直ぐ前を向いて赤くなってやる
萎んでしまわないうちに
〈触るとプンと横を向く花〉と〈娘〉、〈者〉を並列に置いたおもしろい作品だと思いました。それらに対して最終連で〈夕暮れに白粉をはたいてみたいのはわたしの方だ〉と締めたところも巧いと思います。〈白粉花〉に託した家族の肖像は、どこの家庭にもあることなので共感できるのでしょう。技術的にも、日常を詩化する芸術性でも、詩の持つ力を発揮した佳品と云えましょう。
← 前の頁 次の頁 →
(11月の部屋へ戻る)