きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.10.9 八方池




2008.11.23(日)


  その3




高岡力氏詩集『新型』
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2008.11.11 東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊 1800円+税

<目次>
昼時 6         デンキ 10        キュウジョ 12
接点 14         部屋 18         動物屋 22
ある。 28        厚ぼったい夜の空を 32  ねーさん、と 36
夏の耳 42        肉 46          密告団地 48
グーグーさん 54     ブンブン君とブンブンさん 58
惰性 62         容易い地図 66      家計簿 72
紙馬鹿 78        理論 80         ビニール 84
泡 88          新型 88         も 92
今日子 100
.       ボールペン 104
あとがき 108




 
新型

君なにをしているのかねと警官にきかれる。立ち小便をしているの
ですよと答える。止まらないんですよと答える。もう30分もこの
ままなんですよと答える。体中の水分が無くなっていく気がして恐
ろしいのですよと答える。兎に角それを仕舞い給えと警官がいう。
仕舞いたいのですが小便がまだ出ている状態なので仕舞いたくても
仕舞えないのですと答える。もう君に尋問してから5分は経ってい
る。ですからもう35分小便をし続けている訳ですよと答える。君
は病気かねと警官がいう。脳から来ているのかも知れませんと答え
る。なんでも脳のせいにすれば助かると思ったら大間違いだぜと警
官がいう。だって尿意と言うのは脳内の電気信号によって腎臓から
膀胱へと下る指令であって随意では如何ともしがたい生理ですから
と答える。警官がトランシーバーで応援を呼んでいる。お前は脳の
病気なんだねという。もう10分は経ってるぜと警官はいう。です
からもう40分小便をし続けている訳ですよと答える。おかしいよ
と警官はいう。おまえは可笑しすぎるから怪しいよと警官はいう。
身分証明を出してもらおうと警官はいう。ズボンの尻ポケットに運
転免許証が入っていますからお巡りさんがとって下さいと答える。
てめー刃物とか持ってねーだろーなーと警官はいう。いいから両手
を上げろよと警官はいう。でも両手を上げれば小便が飛び散って大
変な事になりますと答える。いいから両手を上げろっていってんだ
ろーと警官はいう。案の定 小便が飛び散って警官のスラックスが
ビショビショになる。馬鹿野郎ー!と警官がいい警棒で脳天を叩く
よけい小便が飛び散って警官のジャケッツがビショビショになる。
コノ野郎ー!と警官がいい警棒で脳天を叩く。チンポ支えてもいい
ですか。と、いうや否や応援の警官が自転車で「どうした!」と駆
けつけて来る。どうもこうもないぜこいつ絶対クスリやってるぜこ
いつと警官は興奮している。まだ小便し続けてるよこいつ。ってこ
とは異常でしょう。よって異常者でしょう。こいつさっき自白した
もん「私は脳がおかしいですって」と警官が警官にいっている。陥
没してんじゃんよー脳と警官が警官にいっている。これって正当防
衛だよね。それとも緊急避難かなと警官が警官にいっている。「そ
うだとも」と警官が警官にいっている。こいつは小便し続けながら
もうすぐ死んでいくんだぜと警官が警官にいっている。俺黙ってる
からと警官が警官にいっている。サンキューと警官が警官にいって
いる。なんとかなるよと警官が警官にいっている。最近この辺物騒
だしと警官が警官にいっている。つまりー通り魔の犯行って事で?
と警官が警官にいっている。うんそれでいいんじゃない?と警官が
警官にいっている。だよねーと警官が警官にいっている。あっ死ん
じゃったと警官が警官にいっている。でもこいつまだ小便してるぜ
ーと警官と警官が笑っている。風船みたいに萎んでくーと警官と警
官がおののいている。これって病気かな?と警官が警官にいってい
る。うつるかな?と警官が警官にいっている。おまえ小便でビショ
ビショじゃん!と警官が警官にいっている。うつるって!ウイルス
だって!と警官が警官にいっている。新型だー!と警官が自転車で
逃げていく。血だらけの警棒を手に新型かーと呟いている警官が小
便を垂れ流している。

 1964年生れという著者の第1詩集です。ご出版おめでとうございます。ここではタイトルポエムを紹介してみましたが、一言で、おもしろい! こんな詩は初めて読みました。読んでいるうちに〈警官が警官にいっている〉のがどちらがどちらか分からなくなりました。分からなくなっても一向に困らないことに気づいて、それが〈警官〉の本質かなと思いました。タイトルの「新型」も何が新型なのか分からず、最後で判明。この手法もおもしろいです。新しい詩人の登場にエールを送ります。今後のご活躍を期待しています。




武田健氏詩集『漂着』
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2007.6.1 東京都新宿区
文芸社ビジュアルアート刊 1400円+税

<目次>
一、夕方には帰る
夕方には帰る 10    変調 12        冬が過ぎて 14
四月八日 16      証言 18        耳掃除 20
チョコレート坂 22   森のある窓 24     動物実験 26
入舟町 28       春の庭 30       
Paper stone 32
二、ちょっと行ってくる
ちょっと行ってくる 36 からす 38       これでいいんだ 40
聖ワイフ 42      盆踊り 44       八月の馬 46
アブセント 48     カービン銃を下さい 50
三、いのちの溶けかた
いのちの溶けかた 54  漂着 56        いま寝ているから 58
きりぎりす 60     ぼくの石は? 62    海が見える 64
潮騒 66        猫族 68        痙攣 70
四、けもの道
けもの道 74      耳鳴り 76       とおさん 78
インド洋と水仙の花 80 いかめし 82      俺は冬だ 84
逆転 86        拒否 88        舟歌 90
救けてください 92   窓を閉じよう 94    二月の沈丁花 96
銃声 98
あとがき 100




文芸アート誌『狼』16号
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2008.11.7 神奈川県座間市
光富郁也氏発行 600円

<目次>
巻頭・海外写真 コントラ・4
写真随筆 コントラ・6
夏を塗れ、コントラ・10           サーカス 伊藤浩子・14
短歌 木下奏・18              短歌 沢木理桜・22
短歌 
Sorrow 蛍・24
午羽 木立悟・26              ノート(冬からの手紙) 木立悟・29
わたしへふりつむもの 蛍・32        薄荷時間 A道化・36
Works 佳運・38              街〜しゃがむ人人〜 落合朱美・40
ひとつひとり 石畑由紀子・46        新宿金魚 深田鞠・54
火 光冨いくや・58
広田修 詩であり論であるということ・62
メール・インタビュー(聞き手‥光冨いくや)
 詩人・伊藤浩子さんに詩についてお聴きします・66
 ポエトリーライター・木下奏さんに詩についてお聴きします・75
プロフィール・82
「狼」の評抜粋・86
編集後記・87



   
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