きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2008.10.9 八方池 |
2008.11.23(日)
その2
○鈴木文子氏詩集『電車道』 |
2008.11.23
東京都板橋区 コールサック社刊 2000円+税 |
<目次>
第T章 再訪
再訪 10 ハルピンから南へ二〇キロ――旧満州国の旅 14
枕木を踏んで 18 タニシ 22 野草を摘む 26
夏 欅のホール前にて 30 サイパン島の旅――鉄カブト 34
美味しいもの 38 結び目 41 食堂のおばちゃん 45
へいわをつくろう 49 碑前祭にて 53 あさがおの種が 57
浦じまい 60 川津漁港にて 64 憲法の 68
第U章 十三夜さま
十三夜さま 72 一人芝居 75 草津にて 79
カラス 83 柿と妹 87 家族 90
おまえ 93 母 97 おにぎり 101
座布団 105. ゆめ 109. 樽職人 113
骨と 116. 宿替え 120. 転居 123
第V章 電車道
一本の花を 130. らしさの定義 133. 倉庫から 136
ふるさと 139. 失業 142. 彼の場合 146
あの日 以来 150. 凍花(しみばな) 154. 終演 158
電車道 161
あとがき 167. 略歴 172
電車道
鉄道職場で働くあなただから
一直線のレールを描くべきだ
なまめかしい鉄のカーブを
疾(と)うの昔 逝ってしまった詩人の言葉が
記憶の底から溶け出し まとわりついている
電車の最前列で外を見ていると
雨上がりの朝はレールがまぶしい
コンクリートの枕木も
バラスと呼ばれる砕石も
鉄路に働く男たちの汗と同じに光っている
ブザーよし。出発進行。発車。
運転席から声が漏れ
一〇両連結の車両がすべりだした
景色を飛ばし
もがり笛をひびかせ
蒼い空を映した直線レールは
わたしの体内をいっきに突き抜ける
前方にS字カーブが見える
あれは川面を泳ぐ一匹のへびだ
レールは背骨
コンクリート枕木は肋骨
無数の砕石は ひんやりしたウロコ
くねくねとした骨格で線路は生きている
そう思った瞬間
車両が蛇行しながらすれ違って行った
鉄路を設計した男たちは
横たわる若い女の腰をイメージしながら
製図にカーブを描いたのだろうか
レールを敷いた男たちも
鉄との闘いだからこそ
胸の膨らみを労わるように
優しくボルトを締めたに違いない
疾(と)うの昔に逝ってしまった詩人の言葉は
間接的な愛の告白だったのだと
本卦還(ほんけがえ)りの今ごろになって理解した
夜の電車道に立ち
せめて女らしく両手で大きな輪を作り
星空にサインを送ろう
拙HPでは初めての紹介になりますが第6詩集です。1991年の第3詩集『女にさよなら』で第20回壺井繁治賞を受賞している実力派詩人です。ここでは詩集の最後に置かれたタイトルポエムを紹介してみました。〈鉄道職場で働く〉〈男たち〉と、〈疾うの昔に逝ってしまった詩人〉、そして〈わたし〉、それぞれに人間像が浮き上がってくる作品だと思いました。
本詩集中の「樽職人」は、初出の「遺産」を改稿した作品のようです。初出は拙HPですでに紹介しています。ハイパーリンクを張っておきましたので、合わせて鈴木文子詩の世界をご鑑賞ください。
○山本聖子氏詩集『宇宙の舌』 |
2008.11.23
東京都板橋区 コールサック社刊 2000円+税 |
<目次>
第T章 手宙の舌
充溢 10 牙 13
友引 16 できもの 18
女たちの午後 21 中落ち 24
『盲導犬』*からのシンメトリー 27. スネーク・ハウス 30
脚力 33 過去未来 37
The tongue 40 Gift 43
つめたい舌 46 楽園 49
ウインタースポーツ 52 足を蹴る 55
二十世紀ケ丘戸山町一五〇番地 58
第U章 カフカの棲む場所
家族deサーカス 64 アイス・アリーナ 67
とげの子 70 空の子ども 72
a stone 74 ほぼ 滝のように 77
カフカの棲む場所 80 足もと 83
わたしの病み方 87 五月晴 90
犬をまたぐ 93 雨期 96
隣人A 99 隣人D 102
まき餌 105. なくしたもの 108
住処 111. Reversible 114
ハイ・ジャンパーの夜 117. 夜の犬 120
あとがき 124. 略歴 126
○石原滝子氏短編小説集『朱い花群れ』 |
2008.11.10 川崎市麻生区 てらいんく刊 1400円+税 |
<目次>
スキャンダルを追え! 3 からくり時計 33
生木(なまぎ)を裂(さ)く音 55. 木漏(こも)れ陽(び)の径(みち) 115
朱(あか)い花群(はなむ)れ 157
挿絵 小阪謙造 人形制作 中桐育代
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