きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.10.9 八方池




2008.11.24(月)


 小田原市の東泉院というお寺で開催された第12回「夕顔忌」に初めて参加しました。案内状から拾ってみますと、
<晩年、終の住処として小田原を愛し、貴重な蒐集品の数々を小田原市に寄贈された中河与一氏を偲び、(中略)ジャン・コクトーから賞賛の手紙を寄せられた名作「天の夕顔」をはじめ、ディッフェが挿絵を描いた珠玉の短編など数多くの作品を遺されて逝かれた氏を偲ぶ会>
 ということになります。
 中河さんのお墓に参拝し、その後は地元の文芸誌『扣之帳』の編集をなさっている東先生の講演を拝聴しました。先生は冒頭、中河さんと小林多喜二は同時代人であったことから、多喜二についてのエピソードを話されました。話題の『蟹工船』は1930年代にすでに15カ国で翻訳されていたこと、多喜二の虐殺に対してロマン・ロランや魯迅から抗議があったことなど、私には初めて聞くことで興味深かったです。続いて中河さんの「天の夕顔」を解説され、単なる恋愛小説だけではなく、深部に達している狂熱の不条理を描いているとのことでした。私は30〜40年前に文学全集で読んだ記憶があるのですが、まったく覚えていなくて、講演後に感想を求められたときはヒヤヒヤものだったことを白状しておきます(^^;

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 で、突然、お寺の門の写真。会場となった東泉院の門です。実はこのお寺にも興味があって、来てみたかったのです。ご住職は、私も加わっている西さがみ文芸愛好会の会員で、いつも明快なお話をしてくれる方ですから、どんなお寺のご住職なのか気になっていたのです。今回、良い機会だと思って訪れたのですが、思った以上に佳いお寺でした。敷地はそれほど広いわけではありませんけれど、禅寺(曹洞宗)らしく、どこを見ても毅然としたものを感じました。

 第12回「夕顔忌」には大雨の中を25名ほどの人が参加し、中河さんの娘さん、お孫さんも加わり、地元の新聞社も取材に来るなど、なかなか佳い会でした。もう12年も続いていることを知りませんでしたが、できればまた来年も参加させてもらいたいものです。それまでに、ちゃんと「天の夕顔」を読んでおかなくてはいけませんね(^^;




岡田ユアン氏詩集『善良な沈殿物』
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2008.11.11 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊
1800円+税

<目次>
問答 6       シシュウ 8     マンダラ 12
となりの芝生 16   善良な沈澱物 18   蝶々 22
夜の入り口 24    ネオンボード 28   条件反射 32
夢 34        夢2 36       既知感覚 40
天使の梯子 42    道 46        原子の記憶 50
招待状 54      同伴者 56      眠りたい 60
夜の嘲り 62     交差点 64      谷に吹く風 68
尾根の間 72     深呼吸 76      五月の光 80
きみのおかげでもある 82          必ず手に入るもの 86
明日の伝言 90    卒業のうた 94




 
善良な沈澱物

虫ピンで固定された言葉が
助けを希う
文字は仮の姿であることを公言したら
嘘つきだと 石を投げられたという
沈み込んだものに
説明を与えて救い出そうとした者を
人々は
磔にしたがるものなのか

次元と次元の間を泳いだ音も
今では交通整理のために
不自由をしている

何を形づくろうと躍起になっているのか

握りしめず 開放するのだ
占拠せず  開放するのだ

体系にこだわらないものたちは
宇宙の機微を察知し
大通りに飛散した沈澱物を
全身の皮膚で吸い上げる
頭頂から漏れだす澱みが
善良な沈澱物となるまで
沈黙は続くのか

 第1詩集だと思います。ご出版おめでとうございます。ここではタイトルポエムを紹介してみました。〈虫ピンで固定された言葉〉、〈文字は仮の姿〉、〈次元と次元の間を泳いだ音〉などの詩語が魅力ですね。〈大通りに飛散した沈澱物を/全身の皮膚で吸い上げる〉ものが詩であり、詩人なのかもしれないとも感じました。詩集全体を通して、斬新な感覚が貫いていると思います。新しい詩人の登場です。今後のご活躍を祈念しています。




詩誌『方』138号
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2008.11.15 仙台市若林区
今入惇氏編集・「方」の会発行 500円

<目次>
時評 青春の彷徨……………………笹子善美江…表紙裏

雲……………………………………………高木  肇…2  花占………………………………………笹子喜美江…4
門……………………………………………柏木 勇一…6  オニギリ…………………………………北松 淳子…8
予定について………………………………澤 喜一…10  何を考える………………………………大手礼二郎…12
金魚
.跳ねる/空に向かって錨をおろせ…佐々木洋一…14  栗駒山……………………………………木村 圭子…16
二〇〇八年の夏……………………………砂東英美子…18  湖上茶会…………………………………大沼安希子…20
嘘の日々……………………………………日野  修…22  海賊になった夢を見た…………………神尾 敏之…24
夜更け鴉が啼いた/歌碑…………………今入  惇…26
エッセー
記憶のまぼろし……………………………高木  肇…28  斎藤茂吉と家蚋…………………………木村 圭子…29
映画の思い出など…………………………今入  惇…30  ピアノ……………………………………大沼安希子…31
あとがき……………………………………………………32  住所録………………………………………………裏表紙




個人誌『緑』21号
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2008.11.25 岡山県新見市
田中郁子氏発行 300円

<目次>
【詩】
娘に   2 中桐あや     彼岸花  4
杭    6 田中俊輔     ベクトル 8
火事2  10
夕映え  12 渡辺政雄     駅裏通り 14
声    16 田中郁子     球根   18
【エッセイ】
秋茄子  20 田中郁子
【後記】 21
題字・表紙切り絵 福江茂栄



   
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