きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2008.11.21 静岡県裾野市・五竜の滝




2008.12.19(金)


 特に予定のない日。いただいた本を読んで過ごしました。




井手ひとみ氏詩集『午後の睡り』
21世紀詩人叢書・第U期36
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2008.12.22 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊
2000円+税

<目次>
 T
告白 8       午後の睡り 10    踵 12
雪 14        穿つ 16       沈黙 18
六月 20       夜の舟 22      鳥 26
蝶 30        岐路 34
 U
犬 38        狐 40        夏の香り 42
動物園 44      微笑 48       夜歩く 50
鹿 52        祭り 56       国境 60
果実 64
 V
満月 68       スープ 72      四月十日 74
仔馬 76       鞄 80        声 82
停電 84       アース 88      家庭の哲学 92
あとがき 94




 
停電

さっきから雷が鳴っています
こんな夕方は
洞窟であなたの帰りを
待っていたころを思いだします
岩肌を伝う水滴が濁流になって
暗い空を見上げる素足のわたしの
足下を流れてゆきました
今日のような日に
獲物などねだるのではなかったと
空腹をなだめていると不安がおしよせてきます

稲妻が光っています
幼い子が汗に濡れた肌を押しつけてきます
いちにち日なたで遊んだ
髪の匂いが息苦しいほどです
あなたはどこまで狩りにいったのでしょう
大きな鹿の角が
今にもあなたの固いおなかに
突き刺さるのではないかと

雷がどんどん近くなりました
あたりはまっくらです
窓を激しく水滴が伝います

槍を携えて荒れ野を走り回る
男たちを乗せた
電車が
駅で止まったままです

 5年ぶりの第2詩集です。著者の詩はそれほど多く読んでいませんでしたから、今回初めて詩集という形でまとまって拝読しました。堅実な思考が感じられる作品が多い中で、紹介した詩はちょっと異質です。原始人の頃の人類を想起させますから、何が〈停電〉なのか疑問に思って読み進めます。そして最終連では〈電車が/駅で止まったまま〉であることが分かって、アッ!と思いました。見事な構成と云えましょう。そして、よく読むと、ちゃんと伏線が張られていることにも気づかされます。現在形で〈洞窟であなたの帰りを/待って〉るのではありません。〈待っていたころを思いだします〉と、過去形にしてあります。何万年という時空を一気に縮めてしまいました。タイトルといい、着想といい、構成力もある佳品で、詩を読む楽しさを味わいました。




詩誌SPACE83号
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2009.1.1 高知県高知市
大家氏方・
SPACEの会発行 非売品

<目次>

日々/内田紀久子 34            ミロミロ/中口秀樹 37
浅瀬/かわじまさよ 40           花いちもんめ/中原繁博 42
怒号の界隈/利岡正人 44          運動会/ヤマモトリツコ 46
坂道のある風景/近澤有孝 47        八百年/萱野笛子 48
夜半に/山下千恵子 50           馬になりたい 他/葛原りょう 51
回り燈籠の絵のように/澤田智恵 56
  §
左足の薬指への詫び状/中上哲夫 71     待ちながら/山川久三 72
不徳要領/さかいたもつ 74         『種痘伝来』/南原充士 76
砂浜(六)/指田 一 80           梢の空/日原正彦 82
忍者の虫たち/豊原清明 85         さかい/弘井 正 88
今 むかし 他/秋田律子 90
詩記 山崎詩織 25
短歌 大石聡美 30
俳句 秋田律子 32
エッセイ 誰もいない部屋/山沖素子 64
小説 『ワイルド・ラブズ』豊原清明 66   行列 その三/大家正志103
評論 連載XY『<固我意識と詩>の様相』〜第一部のまとめ〜内田収省 2
編集後記・大家110




個人詩通信『あん』33号
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2008.12.18 北九州市八幡西区
鷹取美保子氏発行 非売品

<目次>
詩 億年の耳
  不死の番人が言うことには
  骨考 −序
エッセイ



   
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