きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.2.22 世田谷区・静嘉堂文庫美術館




2009.4.2(木)


 特に予定のない日。いただいた本を拝読していました。




飯田保文氏詩集『人間インフレ』
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20093.20 東京都新宿区 思潮社刊 2000円+税

<目次>
血の砂 8       アフリカ 14      言葉なき歌 20
パンゲア 26      いま 36        あなたの名を知った 42
世界 46        脳 58         誕生 62
内臓バカンス 72    インフレーション 78
装幀=思潮社装幀室




 (帯文より)

世界があったか馬鹿野郎 (「世界」より)

飯田保文の詩はやがて、彼だけではないわれわれすべての宿命の器として、
砕かれた言葉としての姿を現わすにちがいない。  瀬尾育生




詩誌『炎樹』58号
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2009.3 千葉県我孫子市 鈴木文子氏発行 500円

<目次>
作品
父の戦争……………一宝  実 4      十日間の拘束………宮崎  清 6
羅臼にて……………仲  玲央 8      すずかけの朝………赤木比佐江 10
みちづれ……………恋坂 通夫 12      凍裂…………………坂田トヨ子 14
春……………………中山 公平 15      ガザ…………………西山正一郎 18
赤べこ………………光田 年雄 20      もう一度……………瀬野 とし 22
防寒帽………………猪野  睦 26      大島紬………………茂山 忠茂 28
クリームパン………堀内みちこ 30      仲良しな孤独………堀内みちこ 31
目を覚ます喜び……白永 一平 32      からゆきさん………萱野 笛子 35
私の意思に…………高橋 英男 38      墓……………………鈴木 文子 41
摩文仁の丘…………三浦 健治 44      僕の嫌いなもの……本多 照幸 48
さらば 恋人よ…大久保せつ子 50      マイキーの死………佐藤 文夫 51
エッセイ
書評 茂山忠茂・秋元有子著『奄美の人と文学』=西山正一郎…ほか同人 54
「生きて活動しているもの」へ向かう感性 鈴木文子詩集『電車道』…瀬野とし 56
『電車道』読後感…同人 60
連載・反戦詩を読む(11)「たまがおれを殺しにきても 詩
(うた)をやめはしない」――竹内浩三の詩…瀬野とし 70
プロムナード…光田年雄・萱野笛子・仲玲央 24
*巻頭詩 白永一平1 *編集後記74 *同人名簿75 *表紙絵 宮崎若菜 *カット 堀内みちこ




 
墓/鈴木文子

農作業の手を休め
老夫婦が案内してくれた
其処は
セイタカアワダチソウ アレチノギク
ヒメムカシヨモギ キクイモ ササダケ
足元はエノコログサ ナズナ
枯草の間から顔を出す大小の墓石
雑草をかき分けて踏み込めば
途撤もない穴に引き込まれそうな気配だ

千葉県山武郡芝山町大里 加茂地区
此処は 関東軍満州七三一部隊
部隊長だった 石井四郎の故郷
墓屋敷ともいえる一族の仏塔に
・・・・・。
戦死した長男
捕虜をマルタと呼んだ 七三一部隊
特設監獄の責任者だった 次男
部隊で動物舎の管理をしていた 三男
四男 細菌部隊長四郎の墓は見当たらない
・・・・・。
どの墓標にも
青カビのような苔が無数に付着している
一族は四郎のペスト菌で
二度死んだのかも知れない
供養者の絶えた無縁仏たちが
水と団子を欲しがっている
これこれ操さん この人が中将の奥さんだよ。
土地っ子だという老人が摩るその石だけ
何故か 碧くさっぱりしていた

老人はいうのだ
中将さんは村を豊にしてくれたと
満州から帰った村の者は必ず新築したと
戦後 帰郷した中将さんは
牛車に乗ってくれといっても
牛が可哀そうだと歩いたもんだ と
その話 何度も聞いた!
手拭いかぶりのばあちゃんが笑う

戦後の中将は逃走して行方知れず
細菌戦データーを提供する代わり
戦争犯罪を免じろと
アメリカから一筆取ったのは 自宅だったとか
中将の墓は何処へ逃げたのか?
八十歳の夫婦には聞かないでおこう

山あいの空気は温かい

     *資料 森村誠一『悪魔の飽食』ノート

 拙HPでは初めての紹介になる詩誌です。ここでは発行者の作品を転載させていただきました。〈森村誠一〉の『悪魔の飽食』は読んでいますが、『悪魔の飽食』ノートは読んでいませんでした。〈関東軍満州七三一部隊/部隊長だった 石井四郎の故郷〉は〈千葉県山武郡芝山町大里 加茂地区〉だったのですね。〈牛が可哀そうだと歩いたもんだ〉という人間性と、〈捕虜をマルタと呼ん〉で生体解剖した残虐さの対比に驚きます。それとは別に、作者の〈八十歳の夫婦には聞かないでおこう〉という姿勢には打たれます。歴史の真実を解き明かすことと〈土地っ子だという老人〉たちへの対応は違うのだと教わりました。




詩誌『すてむ』43号
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2009.3.25 東京都大田区
甲田氏方・すてむの会発行 500円

<目次>
【詩】   冬ごもり■水島 英己 2           蠢動■松岡 政則 5
        遭難■川島  洋 8     不測の事態/浮気■井口幻太郎 10
 せっせと/見ている■閤田真太郎 14          秋晴れ■赤地ヒロ子 18
      どくだみ■長嶋 南子 20           家族■青山かつ子 22
    脱色した痛み■坂本つや子 25    点景/あれは向うへ■田中 郁子 34
        送信■甲田 四郎 38        親父の記憶■松尾 茂夫 40
【エッセイ】縄文の水◆閤田真太郎 42
    ケータイ依存◆川島  洋 44
すてむ・らんだむ 47
同人名簿 56                表紙画:GONGON






   
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