きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.5.16 新潟・大棟山美術博物館(坂口安吾記念館)




2009.6.7(日)


 昨日の午後2時から寝込んで、ようやく起きたのが今日の午後6時。延々28時間も眠ってしまいました。何だったんでしょうね。1年に一度ぐらいはそういう日がありますので、たまった疲れを脳が防御しているのかもしれません。いまはすっかり元気を取り戻しました。




大澤榮氏詩集『漁川茫々』
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2009.5.20北海道恵庭市     1500円
北海道文教大学大澤栄研究室編集・蓮の花ぶんか舎刊

<目次>
表紙 厳冬の茂漁川(写真)
厳冬の恵庭開拓記念碑(写真)…3
碑背撰文「全文」…4
奥秩父春景色(霊場の桜) 矢口晶子…6
初夏の茂漁川(写真)…10
解説 大澤榮 人と文学 神谷忠孝…12
詩束「漁川にて」厳冬の漁川橋から恵庭市街遠景(写真)…15
  漁川にて/漁川茫々/漁川の友
(とも)さんとの会話/友さんからの返信/友さんに遇えてよかった/説明責任は果たされたのか/貫かれた杭の行方/スーパーマーケットで/アイヌ問題をめぐって
詩束「ホロコーストを忘れないために」…49
  トレブリンカ絶滅収容所跡(写真)/ヤヌシュ・コルチャックの遺霊/氷柱の上の子どもたちとともに/爪の隙間から/大衆操縦の樹液/迫体験の夜/千歳線の汽笛/厳冬の千歳線快速エアポート(写真)/暗礁の先の埋葬
詩束「雪明りのパウル・ツェラン」…83
  撓んだ弓と投げ縄大会/また雪が降り始めた
詩束「べてるにもらった言魂
(ことだま)集」…93
  浦河べてるの家(写真)/いつでも待っているよ/壁は始めから無かった/釣り糸をたらす/食べて吐くあなたへ
詩束「白鳥省吾の白道を尋ねて」…113
  白鳥省吾生家・東京にて・授賞式(写真)/一筋の白い道で/無花果
嘆息 舞い戻らない詩人…123
   在りし日の叔父 大澤由男 伊勢神宮前(写真)/嘆息 舞い戻らない詩人
解説 大澤榮詩集『漁川茫々』に寄せて 石川逸子…132
北海道に赴任して 著者…137
『ビルケナウの烏』支援へのお礼…139
プロフィール 著者…140
写真撮影 著者
白鳥省吾関連写真提供 白鳥省吾記念館
挿絵 矢口晶子(埼玉県秩父郡皆野町在住)




 
漁川にて

川岸の湿地でニョキニョキと
体毛のように自生する
蕗を夕餉の膳に乗せるとして
ナイフで切り取っている老女に出逢った

漁川はアイヌの住んでいた故郷で
そこに山口県などから多くの入植者を
受け入れた
佇む恵庭開拓記念碑(山口県人)には
明治十九年四月入植六十五戸の
衣食住全てを欠いた茫々たる生業が
血液の色で刻まれていた

桜も柳も白蓮の花も
北海道の毛根から噴き出た魂は
イザリガワ(石狩川の支流として)を流れて
豊かな乳房を蓄えるように

ソフトボールに興ずる歓声の間隙を縫って
老女に穏やかな夕餉を用意させ
川藻が棚引くような
穏やかな春の風物の風に乗って
そこにアイヌの人影も
開拓のひもじさと病魔の中で
逝ったであろう人びとの陰さえ映さず
犬の散歩に付き添う人びと
煙草の煙をゆったりとくねらせる人びと
それらをパイ皮で包み込んだように
国道を自家用車が行き交っている
ひっきりなしに行き交う
その光景には
何も知らない他人の顔が感じられ
史実から乖離した世の中でも
時系列で生かされている命の
真価や価値を思わずにはいられなかった

見渡す限りの雪原の原野で
開拓団の人びとはそしてアイヌ民族はと
想像してもしきれない鉛の荷車を
押しているような感覚に襲われて
思わずわたしは漁川橋から後ろを振り返っていた
背後から魂に突かれた者の強迫にも似て

                        二〇〇八年六月七日

 キャプションでも分かりますように、著者は北海道文教大学の教授です。ご専門は精神看護学。ここでは巻頭詩であり、第10回白鳥省吾賞を受賞した「漁川にて」を紹介してみました。〈漁川〉は〈
イザリガワ〉と読むようです。恵庭のキャンパスに赴任して1年余とのことで、〈見渡す限りの雪原の原野〉に感動しながらも〈開拓団の人びとはそしてアイヌ民族はと/想像してもしきれない〉精神が見える佳品だと思いました。




平野敏氏詩集『茶畑叙景』
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2009.6.15 埼玉県入間市 梗興社刊 700円

<目次>
新茶 1        新茶清談 3      牧歌 7
熱い視線 11      耀く茶圃 13      天国 17
冬の散歩 21      冬の満月 23      点睛 27
茶と茶色 29      反骨 31
初出一覧 34      あとがき 35




 (帯文より)

 緑豊かな入間の茶畑詩集
 在住詩人・平野敏の抒情の世界ひろがる

 詩業50余年を経た円熟期の詩心で謳う 狭山茶の主産地入間の美しい茶畑
「ここに来て戻るわけにもいかず/居心地の大層よさそうな/茶園の天国に住みたくなる」(詩「天国」より)




個人詩誌『魚信旗』60号
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2009.6.15 埼玉県入間市 平野敏氏発行 非売品

<目次>
生と死の黙
(もだ) 1   病室の朝 4      無情 6
雨のちあした 8    後書きエッセー 10






   
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