きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.9.4 筑波山・ガマ石




2009.10.1(木)


  その1

 10月の初日は、午後から日本ペンクラブ事務所での作業です。偽電子文藝館を警視庁に告訴するにあたり、電子文藝館委員宛の告訴状署名依頼を行いました。理事宛にはすでに大原委員長と事務局がやっていますから、私は委員宛が担当です。そういう面ではすでに実績がありますので、作業は非常に楽でした。事務局員と二人でやって2時間ほどと踏んでいたんですけど、50分で終わりました。往復4時間の方が圧倒的に長いです(^^;
 来週には数十人の告訴状をとりまとめて中央署に出すことになると思います。受理されるかどうかは分かりませんが、無法状態のネット社会に一喝入れられれば良いなと思っています。




青木幹枝氏詩集『かめという女の記憶』
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2009.9.24 神奈川県鎌倉市 港の人刊 2000円+税

<目次>
かめという女の記憶 8 斎場
(にわ) 14.     鬼遣らい 18
八手の間 20      竹矢来 24       跛行
(はこう) 30
三尸虫
(さんしちゅう) 36.  嚏(くしやみ) 40.     獣道 44
かめ女 T 48     下墅國都賀郡大川嶋村
(しもつけのくにつがぐんおおかわしまむら) 52
かめ女 U 62     植物に関する思考1 68 植物に関する思考2 72
植物に関する思考3 76 ササミキ  80     足尾にて  84
鎮魂祭  88




 かめという女の記憶

   かめはその堰の決潰を防ぐために人身御供にされた村娘(小山の伝説より)

家の話をしよう 家はどんな物語も聞かせてくれた 私にとって物語
は 家の光や陰 草叢の中 木の技 井戸の底や家畜の声だったから
世界の昔話も風呂場の底にいた時聞いたと思ったし 屋根で寝ころん
でいた時 怒られて蔵の中で泣きながら聞いた話も きっとあの話に
ちがいないと思った そこここで誰もが一度に話しかけてきたので聞
きとれなかったけれど 今になってみると 私の後に一列になって付
いてくるながいながい影のようで 終わらは見えないものの はっき
りとひとりずつ順番に 物語を聞かせてくれているらしい
私がこうして夢の一部として自分のすべての陰翳の中に引き受けてい
る話をしよう ここに池があった話 ゆっくりゆっくり歩いて 庭の
柚の実をもぎり甘い甘いといっては喰い尽くしてしまった祖母に 話
を語らせてやって下さい 〈そんなに怒らずに話を聞いてやって下さ
いな〉と言っている大銀杏は今年はずいぶん枝を下ろされていた き
っと口うるさいので夏の間に誰かに止められたのです 遠い昔誰が植
えたか知らない松の木がただ真っ直ぐに伸びすぎたというだけで 何
十年もの歳月をあっさり切り倒された 〈いやそれはちがう あれは
松喰虫の仕業〉という声は誰ですか 慌てて土の下をうろうろしない
で下さい 何度も耳を澄ませている私がいるのに 私はいつも一緒に
隠れていたではありませんか 人々は私の傍らを気付かずに通らすぎ
私は口の中まで甲虫を満たし舌の上で玉虫やだんご虫をころがして
枯草に擬態した翅の下で春までぬくもっていた 時は静かに蛇の進む
速さで音もなく過ぎていったのです ただ見てはいけないものを見て
しまったことや言ってはいけないと言われたことも私の中には燻って
いて それを守らないとどうなるのか 森の奥の洞穴に吐き出せばい
いのか 罰を受ける話は何も聞かされていない 結末は未だ 物語は
始まったばからです

夢ではなかった 夢の中での私も 過去という現実も区別がつかなく
なったと誰もがいうけれど 土の中に皆んな埋めて 夢だ夢だといい
聞かされてきた 土の中はすべてを浄化し 目に見えないということ
に敬意をもって暮した しかし土の中は鬩ぎ合っていた 根が話して
くれたのです 根は思いがけなくたくさんの未来を予測していた 地
上のでき事より深く静かに譲歩してきました 土を大事にすることで
根はこれから多くのことを語ってくれるはずです 根について伝説を
知りませんか ある植物を根こそぎ引っこ抜いた時 ぎゃあという悲
鳴がしたので根を見てみれば 人の形をしていたとか つい最近では
長芋の形がまるで人の左手首そのものであった 掘り出されたのは当
然根の記憶そのものです

椿の根は畏るに足るすべての記憶を話してくれました 死んだ姉さん
のことも話してくれました

<とても哀しすぎる埋葬だった>
  姉さんはとても哀しい記憶をもって生まれてきたと

<いやそうじゃない あの子は輝くように生まれてきた 神様は右手
の親指の頭を二つもつけてくれた 大事なメッセージを託して>
  確かに私の親指も右と左の形が違う

<それなのにその眩しすぎる姉さんの明るさに母親たちが目を開けて
いられなかった>
  姉さんは一〇〇日と地上にいなかった

<もちろん土の中ではそれはそれで歓迎して 近くの根はかなら手を
伸ばしていた あなたが庭の紅い椿 つまり俺を手向けてくれた そ
の時の記憶はありありと語れる まるまると太ってうまかった そし
て俺は一日にして屍を包み込んだ だってまるで俺のために横たわっ
ていた 根っ子というのは記憶で花を咲かせられる いつまでも真紅
の花を おまえの姉さんは確かカヨって名だった 俺今でも地下では
カヨで通ってるから 欲をいえば俺をもうひと折でも別の所に挿して
くれたら でもまあこうやって語れるからいいかな 地下といえば竹
の地下茎 これには辟易するね 昔は竹藪の周りには堀があったし池
もあった それが竹藪の塀みたいなものだった 堀が埋まって水が池
にばからあるようになると 皆んな水飲みに足を伸ばすようになって
近くの墓場は疾うに土葬じゃないし 庭の築山の方に竹が芽を出すよ
うになったから 母屋や離れの縁の下も訳ないことだって 結局根絶
やしにされて いい風入れてたのに あんまり分かってもらえない
昔の人は樹と話ができたね>

庭には庭園としての役割があった時代が過ぎ 庭は畑になら 歌を詠
んでいた翁は麦藁帽子をかぶり 土を耕し 汗を流し 苗を植え 藁
を敷いた 春には明るい日ざしに真紅の光輝く豊満な苺の実が 藁の
上で寝ころんでいた 記憶はちぐはぐだった 大きな岩が猿石や亀石
のようにころがり 溶岩の入り組んだ石の陰に 万年青の緑と赤い実
がぽつねんとあった

 10年ぶりの第3詩集のようです。この詩人の詩集は、拙HPでは初めての紹介となります。ここでは巻頭作品でもあるタイトルポエムを紹介してみましたが、〈かめという女〉を中心に据えた物語詩と謂ってよいかもしれません。目次でもお分かりいただけると思いますが、生地を血として見つめた詩群と云えましょう。
 なお、第7連の2つの〈カヨ〉には傍点が振ってありますが、きれいに表現できないので割愛しました。ご了承ください。




詩誌『驅動』58号
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2009.9.30 東京都大田区
驅動社・飯島幸子氏発行 450円

<目次>
現代詩と「笑い」(十三)   周田 幹雄 19
不発弾          ささおかみねお 1   黒い捨て犬          長島 三芳 2
時間のプリズム        長島 三芳 4   須走通信           忍城 春宣 6
イタリアントマト       飯島 幸子 8   拾いあつめる         内藤喜美子 10
虫の声            金井 光子 12   豆腐について         周田 幹雄 14
洗濯考            周田 幹雄 16   夜空のひまわり        池端 一江 26
年寄             小山田弘子 28   六角牛山そして笛吹峠     飯坂 慶一 30
バンコク通信 卒業式     石川 文絵 34   バンコク通信
.M君の中間テスト.石川 文絵 36
わたしの死をどう考えるか   中込 英次 38
同人氏名・住所 40
寄贈詩集・詩誌 40      編集後記      表紙絵 伊藤邦英




会報『「詩人の輪」通信』27号
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2009.9.25 東京都豊島区
九条の会・詩人の輪事務局発行 非売品

<目次>
巻頭詩 密約/中 正敏
エッセイ 何が隠されてしまうのか/葵生川玲

光の織物/澤田康男               他人どんぶり/榎本愛子
(たぐい)まれなはな/渡辺光乃          やきいん/小長谷源治
平和の子/むらかみみの里            骨の思想/磐城葦彦
おかあさんの唄/宍戸ひろゆき          蜘蛛の張り込み/川原よしひさ
君のやりかたが/ゆきなかすみお         祝辞/佐藤富士子
どれだけの言葉を使っても、伝えきれないあなたへの愛/筒井邦世
狂った時代/南野たれ子             亡骸/宮本勝夫

詩人の輪通信26への感想
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