きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2009.9.4 筑波山・ガマ石 |
2009.10.9(金)
その1
午前中は実家の売却に関連して不動産屋さんに行ってきました。必要な書類のコピーを渡しました。それをもとに新聞折込やHPで宣伝してくれます。宣伝してもらう契約書を近々作ることになりました。いよいよ実家を手放すことになりますけど、うまく買い手が見つかるかどうか…。まあ、やるだけやってみるしかないなと思っています。
夕方からはヨシズを撤去しました。拙宅にはエアコンがなく、夏は南面のテラスに12mほどの幅でヨシズを設置し、それと室内天井からの大型扇風機で凌いでいます。この夏もそれで済みました。以前は9月下旬に撤去していたのですが、最近は10月になってからやるようにしています。10月になってからでも暑い日がありますからね。それも地球温暖化の証拠かもしれません。これで名実ともに私の夏は終りました。
○堀川豐平氏詩集『そして藍』 エリア・ポエジア叢書1 |
2009.9.30
東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 1800円+税 |
<目次>
T 日記詩
じい 8 叔母 10
まだ 12 佐古大裏町(おうらんちょう)のつぼやき 14
複葉機ページェント 16
U そして藍
そして藍 20 すりばちの底 24
六十一年日の“ほなけんど” 28 霧 34
白いこうしん 40 風雪 44
メトロポリス 48 台湾抄 50
虚の結晶 52 丸ごとの人間 56
よみがえる芽生え 60 包まれるものと包むものの間 64
V マクロとミクロ
マクロとミクロあわせてひとつ 68 ゆめ・うつつ 72
幻燈 76 活動写真の詩 78
銀の燭台 80 鮮かな一言 82
ゴキブリの名は 84 陥没 86
冬 88 ものいう花 90
黄金伝説 92 明日がみえた 94
あとがき 96
ゆめ・うつつ
焼けビルの黒いスス壁の部屋で、
日本人は「我」の発達がない、
おくれていると西洋哲学氏が説き。
バブル全盛期に教育評論家は叫ぶ、
東大合格のためには、個室を与えよ。
また「自己実現はすばらしい」という声。
もう忘れたんで、我欲ばっかり。
砂煙と。
血。
ドクロ。
はてしない自己実現の泥沼行進。
芸術家と技術屋と科学者が。
現実のなかに。
フィクションをもちこむ。
仮想現実とか、バーチャルリアリティとか、
ゆめとうつつが野合して。
殺人ゲームの「ブラザー」映画が、
現実市街のなかで殺人鬼の登場・活躍・勝負。
CMだって。
金魚すくいが誇大虚像の過激刺戟。
神経を叩き、斬り、キザム。
狂想が寺山修司の 「市街劇」を生み。
いまは日常が劇場国家。大臣役者。
ブラウン管を横にひきのばし、
人の顔横長でダイエットが流行語、
地図も歪み、図面も歪み、映像も歪み、
天女も極楽も天国も消えた。
正確に現実さえとらえない「阿呆箱」、
アメリカの「テレビ作法」本はそう呼んだ。
日本は「阿呆箱」を「社会の窓」と思ってきたから、青少年の悲劇がある。自滅。
ゆめ・うつつの混同。読経。いのちよ。
17年ぶりの第4詩集のようです。叢書の“エリア・ポエジア”とは“地域から発信する”という意味のようで、本詩集は徳島弁が多く使われていました。紹介した詩は〈日本は「阿呆箱」を「社会の窓」と思ってきたから、青少年の悲劇がある〉というフレーズに惹かれています。確かにテレビは〈社会の窓〉と言われていた時代がありましたね。それを〈阿呆箱〉と看破したのは見事だと思いました。
○詩誌『環』134号 |
2009.10.5 名古屋市守山区 若山紀子氏方・「環」の会発行 500円 |
<目次>
東山かつこ 松籟 2 さとうますみ 四十雀 4
鈴木 哲雄 まろやか運転 6 神谷 鮎美 おす 8
加藤 栄子 ほね 10 若山 紀子 はさみ(鋏) 12
安井さとし 連続立ち聞き魔 14 高梨由利江 わたしじゃなくて わたしの手が 18
<かふえてらす> 20
安井さとし さとうますみ 東山かつこ 神谷鮎美 加藤栄子
<あとがき> 若山紀子 24
表紙絵 上杉孝行
まろやか運転/鈴木哲雄
蝉の森を抜けて家へ帰ると
居間でも蝉の声が聞こえた
壁に取り付けたクーラー
そのクリーム色の箱の中で
シャーシャーと鳴いている
〈おっ わが家も蝉時雨と
は風流だ〉
わざとおどけた私の言葉に
妻は洗濯物をたたみながら
十年も使ってくれて有難う
蝉の声を借りてクーラーが
シャーシャー(謝々)って
礼を言っているんですよと
笑った
〈お前もよく働いたな〉
私はリモコン送信機を取り
クーラーに話しかけながら
電源を切ろうとし 思い返
してそっと「まろやか運転」
のボタンを押してみた
すると不思議にも蝉の声は
消え その日からわが家で
はすべて何事も「まろやか
運転」でいこうとの合意が
妻との間に成立した
〈クーラー〉を目一杯働かせないで〈まろやか運転〉にしたら〈蝉の声は/消え〉たというのは、よく理解できます。そこから〈わが家で/はすべて何事も「まろやか/運転」でいこうとの合意が/妻との間に成立した〉としたのが愉快ですね。〈妻〉の〈十年も使ってくれて有難う/蝉の声を借りてクーラーが/シャーシャー(謝々)って/礼を言っているんですよ〉という言葉とともに、あたたかい家庭の様子が伝わってきました。
○詩誌『よこはま野火』57号 |
2009.10.1 横浜市緑区 真島氏方・よこはま野火の会発行 500円 |
<目次>
紋白蝶/阪井弘子 4 房總へ/進藤いつ子 6
池のほとりで/馬場晴世 8 風の中を −菊地貞三先生を偲んで/宮内すま子 10
何故 急に/松岡孝治 12 ゆる ゆる/森下久枝 14
枝の間から/真島泰子 16 月夜/加藤弘子 18
野菜籠(3)/疋田 澄 20 相乗り/浜田昌子 22
ハンカチと握手/唐澤瑞穂 24 シベリア/菅野眞砂 26
ある日記より/はんだゆきこ 28
* *
追悼 菊地貞三先生 30 よこはま野火の会近況 編集後記 30
表紙画 若山 憲
月夜/加藤弘子
月が欠けるときに
音を立てる という
新聞記事に目が止まった
何年もそのときを待っている
人がいるそうだ
その音を
一度聞いてみたい
夜空を見上げる
冴えざえと秋の夜
わずかばかりの
風の気配とともに
冷めたい空気が寄せてくる
どこかで猫のなき声がした
時間の隙間の
月明かりにも
人は満たされる
のら猫が水たまりに写っている
月を飲んでいる
〈月が欠けるときに/音を立てる という〉のはおもしろいですね。そこから〈時間の隙間の/月明かりにも/人は満たされる〉という第4連への運びも見事です。〈月明かり〉は〈時間の隙間〉であるという発想の豊かさにも感じ入りました。最終連がまた素晴らしい。情景がありありと浮かんできました。