きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.9.4 筑波山・ガマ石




2009.10.17(土)


 今日、明日と山梨県・清里のギャラリー譚詩舎で「秋の文学サロン」が開催されます。スタッフとして参加してきました。
 第1日目の今日は、対談「賢治・中也・道造の詩的世界観を巡って −ポスト修辞法現在を考える」と題して、吉田文憲・野村喜和夫のお二人が出演しました。これは昨年の文学サロンからの続きだそうで、3詩人の詩的世界を概観しながら現代詩の修辞的な現在を探るという内容でした。この対談はいずれ冊子になるのではないかと思います。

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吉田文憲氏 野村喜和夫氏


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会場風景

 30人ほどが集まって、ギャラリーの規模から言うと適切な人数だったかなと思います。講演の合間には長めのティー・タイムも設定されて、皆さん、親交を深めていたようです。夕食は近くのレストラン、懇親会はギャラリーのオーナーが借りている別荘で、さらに2次会はメインの宿泊施設であるペンションでと、深夜1時半まで呑んでいました。私はなぜか同年齢というペンションのオーナーと気が合って、大いに盛り上がりました。
 皆さま、お疲れさまでした!




香月ゆかし氏詩集『二月生まれ』
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2008.4.1 東京都調布市 ふらんす堂刊 2000円+税

<目次>
カーテン 6      二月生まれ 8     桜花よ 10
万華鏡
−誕生日に− 12  神戸港 16       眉 20
道行 24        衛星 28        爪 32
溶け込む 34      アンバランス 36    南口仲通り 38
ふたり未満 40     諍
(いさか)い 44     途中 48
月下生活 50      ニュートラル 54    サンダルばきで 58
涙について 60     生ける 64       名づける 68
たそがれて 72     化粧 76        春 78
あとがき




 
二月生まれ

二月を両手で持ち上げ
置き直す
街はやわらかく身ぶるいして
少し高めに定着する
空を映す川の水
どっと足もとに流れ込む

ひんやりと甘い梅の香り
ゆるみはじめた桜の枝先
うぐいすは新しい夢を見ている
木々が芽吹けば
隠されてしまう街
たてよこの線
太い線細やかな線はつながり

もっと高く持ち上げてごらん

くるぶしが水に濡れただけで
泳ぎ出す
二月生まれ

 上述の「秋の文学サロン」で頂戴しました。7年ぶりの第2詩集ですが、第1詩集は手作りだったそうで、出版社刊行の本格的な本としては第1詩集とも言えそうです。ここではタイトルポエムを紹介してみました。〈二月を両手で持ち上げ/置き直す〉というような独特の感性にこの詩人の特徴があるように思いました。




香月ゆかし氏詩集『月のみちかけ』
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2008.10.10 東京都杉並区 私家版 非売品

<目次>
しろつめくさ 4
鏡 8         おててつないで 10   春のある日に 12
いちごの花 16     この都会で 18     家族 20
息子へ 24       卒業式 26       フォーエバー アゲイン 30
わたしの中の 34    コスモス 38      望郷 42
ガレージセール 46   あなたへ 50      とらわれ 54
糸結び 58       マイ タイム 62    風よ 66
病室にて 70      鏡よ 74        帰宅 78
喪失 82        長女 86        清算 88
詩の時間 92
あとがき 96




 
詩の時間

朝の山手線
大勢の人が
明るい車窓に向いて
木立のように揺れている
こんな時だ
後ろの方で
書かれない詩が
わたしの背中を見つめるのは
わたしは振り向かないまま
「ゴメンナサイ」と謝って
言い訳を考える
昨日白い水差しに挿したバラ
今朝時間をかけて結んだスカーフ
それらだって
毎日の詩なのよなんて

すると
書かれたい詩が
吊り革を握る手の中や
ヒールのつま先で
むずむずと生まれて
行き先をほしがりはじめる
わたしはすかさずそれらを
車窓の外へ
細かにちぎって
飛ばす

いつか
ふい討ちのように
紙の上に降り立ち
熱く脈打つ遠景へ
ひらひらと
飛ばす

 こちらは2001年に刊行された手作りの第1詩集、約60篇の中から25篇ほどを選んだダイジェストです。最後に置かれた「詩の時間」を紹介してみました。〈書かれない詩〉と〈書かれたい詩〉の具体化が新鮮です。〈それらだって/毎日の詩なのよ〉という視点は著者のものでもありますが、私たちに突きつけられた言葉でもあると云えましょう。それにしても詩よ!〈いつか/ふい討ちのように/紙の上に降り立〉ってくれないものかなと思います。




詩歌誌『ゆりかもめ』13号
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2009.10.26 埼玉県坂戸市
夏の会・山岸哲夫氏発行 400円

<目次>
「腹腔鏡下胆嚢摘出術」やらなにやら。/辻元よしふみ 2
わたしはみどり/山吹明日香 4          非凡について/山本聖子 6
立ちつくす犀の午後/山本聖子 8         ふたいろ/小林久美子 10
それはひとつの喩えと言えば/酒向明美 11     スリリング/酒向明美 13
かえる/高橋和彦 16               時は春/関 中子 18
透明の向こう/関 中子 20            狗も喰わぬ/山岸哲夫 21
山奥に十三本のクレーンが/山岸哲夫 22
あとがき




 
立ちつくす犀の午後/山本聖子

菜食主義者で
草原の草や木の葉をうつむいて食べる
それでいてなんという頑健 充実
鋼の鎧 愛みたいに掲げた角
けれど自在な鼻も 愛嫡ある大きな口もなくて
そういえばなんとなく寡黙 虚ろ
いつも過去に向いているような
 記憶の鏡を見ているような

シロサイは シロというほど白くはない
ワイドをホワイトと聴き間違えられてついた名で
クロサイも クロというほど黒くない
シロがいるならクロもいていいとつけられた名だから
シロでなく クロでもないあたりを考える
 わたしにつけられた ふたつの名を考える

角には古くから催淫効果があると信じられ
まさしくヒトの 欲望のために危惧される明日
全力疾走すれば時速60キロは出せるという彼女が
 ひたすらその衝動に独り耐えている昼下がり
画面の前のわたしにはもう
悲しむことさえわずかな瞬発力も持続力もなくて
リビングで地団駄 踏みたくなる午後
 虚ろな犀に見限られたうつむくヒトの孤食

 〈犀〉を〈いつも過去に向いているような〉と捉えた第1連からおもしろい作品だと思いました。第2連の〈わたしにつけられた ふたつの名を考える〉というフレーズは、あくまでも作品上のことと考えてよいでしょうが、最終連の〈虚ろな犀に見限られたうつむくヒトの孤食〉と呼応して、見事な深化を形成していると思います。〈画面の前〉でありながら見ている世界の広さを感じた作品です。






   
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