きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.9.4 筑波山・ガマ石




2009.10.16(金)


 NPO法人日本子守唄協会と相模支部主催の第1回シンポジュウム&コンサート「子守唄は契りうた 〜親学を考える〜」が午後4時開場・4時30分開演で厚木市文化会館小ホールで開催されました。後援は厚木市・厚木市教育委員会、伊勢原市・伊勢原市教育委員会で、厚木市長、伊勢原市長の挨拶に続いて実行委員長の後藤祐一民主党衆議院議員の開会挨拶がありました。

 第1部は日本子守唄協会理事長・西舘好子さんと明星大学・橋史朗教授、そして曹洞宗宝泉寺・都真道住職の鼎談「親学を考えるシンポジュウム」。子どもを躾ける前に親を躾けしなくちゃいけないね、という事例がいっぱい出て、会場は爆笑しながらも己を振り返って、ちょっとシュンとなりました。それにしてもモンスター・ペアレントって、大変な勢いのようです。

 第2部はお待ちかねの「子守唄コンサート」。記録としてプログラムを載せておきます(敬称略)。
○奥田憲弘(口笛) 藤木玲子(ピアノ)
 眠りの精 作曲:ブラームス/里の秋 作詞:斎藤信夫 作曲:海沼実/見上げてごらん夜の星を 作曲:いずみたく
○生沼美香(ソプラノ) 宮崎 滋(ピアノ)
 竹田の子守唄:京都地方/中国地方の子守唄:岡山地方/モーツァルトの子守歌 訳詞:堀内敬三 作曲:B.フリース
○ハーモニカ・カルテット「ザ・フーフー」(石井裕香・岡本吉生・小沼美枝子・前川紀子)
 ゆりかごのうた 作詞:北原白秋 作曲:草川信/七つの子 作詞:野口雨情 作曲:本居長世/浜辺の歌 作詞:林古渓 作曲:成田爲三
○稲村なおこ(歌手) 久保祐子(ピアノ)
 沼津の子守唄:沼津地方/ねむの木の子守歌 作詞:皇后陛下 作曲:山本正美/夕方のお母さん 作詞:サトウハチロー 作曲:中田喜直
○斎藤寿孝(全日本ハーモニカ連盟理事長)
 シューベルトの子守歌 作曲:シューベルト/荒城の月 作詞:土井晩翠 作曲:滝廉太郎/吾亦紅 作詞:ちあき哲也 作曲:杉本真人/竹久夢二の子守唄 作詞:竹久夢二 作曲:藤井市水/江戸の子守唄:東京地方
○会場の皆様といっしょに
 故郷(ふるさと) 作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一

 写真の右端が西舘好子理事長。最後の〈会場の皆様といっしょに〉の場面です。私は写真班でしたので内容に集中できませんでしたが、それでも楽しませていただきました。口笛の本格演奏を初めて聴きましたし、長さが1mはあろうかというハーモニカを初めて見ました。伴奏用のハーモニカらしいのですが、なかなか良い音を出していました。

 舞台がハネたあとの懇親会では、来年・再来年までの開催場所と担当者が決まってしまうという勢いで、西さがみ地方ではこれから毎年続くかもしれません。来場者は250人ほど。金曜日の午後4時半から7時という難しい時間帯にも関わらず、おいでくださった皆さまに感謝します。来年開催されたら、またおいでください!




渡辺陽子氏詩集『十字を切る花』
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2009.10.3 神奈川県鎌倉市 かまくら春秋社刊 1800円+税

<目次>
T 母の毛糸玉 7
小春日和 8      母からの手紙 10
紙の花 12       母いちご 14      
Sundayは布団を干しましょう 16
雨あがり 18      花のとなり 20     毛糸玉 22
繕う 24        つくし 26
U 生きて行く 29
ひぐらしの道 30    背中 32        あいさつ 34
ひと休み 36      鳩がなく 38      高野槇(葉ずれの唄) 40
寒椿 33        街路樹 46       八月六日 ひろしま 48
食べる 50       手相を見た帰り道 54  雲とハンカチ 56
花ならベ 58      陽だまり 60      おとぎ話 62
紗羅の樹 64      桜の樹の下で 66    西洋朝顔(ヘヴンリーブルー) 68
空へ 70        五月晴れ 72      ひとひら 74
名前 76
V 那須野の風 79
冬景色 80       風ん中 82       初恋 86
那須野が原 88     ふるさと 92      エゴの実流し 96

『十字を切る花』に寄せて 新川和江 100
『十字を切る花』の誕生 104
装幀 山内宏一郎(サイワイデザイン)      装画・挿画 磯貝裕美




 
ひとひら

知っていますか
どくだみが
最初は五弁の
花びらだったことを

いさか
諍って
ひとと別れてしまった
一番 毒の強い
ひとひらを捨て
あれから ずっと
十字を切って
いることを

 著者は筆名・水無月ようことして書いてきた詩人で、過去に手作りの詩集を発行しています。今回は本名に戻しての第1詩集です。ご出版おめでとうございます。
 この詩集にはタイトルポエムはありません。紹介した詩から採っています。しかも解説の新川和江さんが命名したそうですから、なんと幸運なことかと思います。〈どくだみ〉が〈一番 毒の強い/ひとひらを捨て/あれから ずっと/十字を切って/いる〉という視線も渡辺陽子詩の真骨頂と云えましょう。今後のご活躍を祈念しています。

 なお、本詩集中の
「花のとなり」「初恋」はすでに拙HPで紹介しています。水無月ようこ名ですがハイパーリンクを張っておきました。合わせて渡辺陽子詩の世界をどうぞご鑑賞ください。




下村和子氏朗読詩集『自画像』
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2001 シンプティスタジオ録音制作 2500円

<プログラム>
1.生む       詩集『縄文の森へ』より(2分13秒)
2.縄文の森へ    詩集『縄文の森へ』より(5分40秒)
3.Stillness (ENGLISH version by N.Koriyama)
  寂        詩集『縄文の森へ』より(3分37秒)
4.白い雲      詩集『隠国青風』より (1分38秒)
5.ギター ソロ演奏            (3分08秒)
6.淡海の月     詩集『泳ぐ月』より  (2分47秒)
7.ファド      詩集『泳ぐ月』より  (1分58秒)
8.万世如意     詩集『鄙道』より   (2分01秒)
9.貝紫       詩集『泳ぐ月』より  (2分20秒)
10.針        詩集『鄙道』より   (4分19秒)
11.自画像      詩集『耳石』より   (1分49秒)
12.鈴        詩集『隠国青風』より (3分24秒)
13.私の熊野     詩集『隠国青風』より (9分08秒)
  ギター演奏 中村ヨシミツ




 日本ペンクラブ「国際ペン東京大会2010」の参考として下村和子さんから頂戴しました。下村さんは詩部門の第2回会合にも大阪から出席してくださいました。来年の詩朗読会ではCDに収められたような美声を聴かせていただけると思います。




隔月刊会報『新・原詩人』26号
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2009.10 東京都多摩市 江原氏方事務所 200円

<目次>
《この詩 24》金子光晴の詩・2篇 紹介:江原茂雄 1
読者の声 2       佐相憲一「進化論」11より 3
短歌 大田敦子 3    廃歌 あらいともこ 3
狂歌 蚊宮聞々 3    「令状の会ニュース」111号より 3

名前/神信子 3     燃える郷愁/上田令人 4
ナルシスの優先席 4   アフガン・ブラックよ、いずこ?/山田塊也 4
魂/まつうらまさお 4
エッセイ
落第人生/小林忠明 4  詩人と科学者/島村英紀 5
雨の「津賀ダム平和祈念碑」建立と慰霊の式典/下司孝之 6
冗句・風刺の種/乱鬼龍 6
事務局より 6




 
詩人と科学者/島村英紀(科学者・日本文藝家協会会員)

 私の職業である科学者は、日本人の場合、三〇〇人に一人ほどいる職業だといわれている。サラリーマンや商業従事者に比べれば圧倒的に少ない人数の職業である。
 詩人について職業統計があるかどうかは寡聞にして知らない。しかし、それで生計が立てられるほど実入りがあるかどうかは別にして、詩を書いて認められている人、認められてはいなくても、それは自分のせいではなく評価できない世間の鑑賞眼がないと思っている人、世の中が自分のことを分かるわけがそもそもないと思っている人、認められても認められなくても魂の叫びを書いて訴えたい人をあわせれば科学者よりは多いのではないか。しかし、はるかに多いことはあるまい。所詮、科学者も詩人も、世間では少数派なのである。

 ところで科学者と詩人はまったく似ていない職業のように思われているが、そんなことはない。じつは、いろいろな共通点がある。
 まず、世の中にわずらわされずに自分だけが思うように振る舞える世界に閉じこもれることだ。そこで過ごす時間は密度が濃くて長い。このため、しばしば、世間知らずという評価を受ける。しかし卑下することはない、これは、雑事に煩わされずにいままでにない新しいものを創造するための必要な要件なのである。

 そのほかの共通点としては、仕事の結果を理解してくれる人がごく限られていることもある。万人に理解されて愛される程度のものはそもそも存在価値がない。しかしあいにくと、理解できる数少ない人たちは、安心して評価を委ねられる味方ではなくて、ときとしてライバルだったり敵だったりする。
 さらに、仕事の結果に自分でも満足できないことも共通点だ。もっといいものができるのではないか、もっと新しいものが創造できるのではないか、この程度で世に出していいのだろうかと、最後まで悩み続けるのである。
 そのほか、自分がやっていることが世界にどのくらい役に立つかが分からないまま仕事をしている、ということも共通点だろう。

 そもそも、詩がなんの役に立つかわからないという一般人も多いかも知れない。しかし詩は人々の心を和ませたりするほか、ときには生きる力を与えたり、現実を忘れさせて虚空に飛翔させたり、詩によっては時代を変革する勇気を鼓舞したりもするのである。二九歳で獄死した鶴彬は、詩ではないが川柳を武器にして体制と闘った。

 しかし、ほとんどの場合、詩人は、こんな役に立ちたいと思って詩を作るのではなかろう。一方、科学者のほうでも、政府や財界の意を受けた御用学者は別にして、一般の科学者は、自分のやっていることが何の役に立つか、まったくわからないまま研究を続けているのである。
 クラゲがなぜ緑色に光るかという、なんの役に立ちそうもない研究をしてから何十年もたってから、突然、ノーベル賞の脚光を浴びて当人が戸惑うというのは、科学者にとってはそれほど珍しい例ではない。

 他方、大それた目的もなく研究していたことが、後日、大量殺傷兵器に使われることもじつは多い。ノーベルが発明したダイナマイトも、核兵器も、生物化学兵器も、その例は数えきれない。
 また、農薬や化学肥料のように、よかれと思って研究したはずのものが、あとの時代に非難の礫を浴びることもある。宮沢賢治が描いたグスコーブドリは、身を挺して火山を噴火させて二酸化炭素を増やしたり、新しい肥料を工夫して冷害や飢饉を救った。科学が世界を無条件に救える、まだ幸せな時代の農学者、科学者の時代であった。

 しかし時代は変わった。科学者の成果は為政者によって都合のいいようにつまみ食いされ、利用されている。たとえば二酸化炭素だけを悪者にすることによって、見せかけのエコと原子力発電が国策として推進されている。

 ところで、科学者も詩人も、創造の最前線に立って闘っているときには誰も助けてはくれない。自分の前に道はなく、自分のあとには自らつけた足跡だけが残る。
 しかし行く先の遠さが分からないまま、いつ行き倒れてしまって、足跡も、そして自分も降りしきる雪に埋もれて、すべてが消えてしまうかも知れないのである。
 そう、最後の共通点は、詩人も科学者も、ともに「孤独な戦士」だということなのだ。

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 我が意を得たり!というエッセイです。私は化学工学の技術者を40年近くやってきただけで、決して学者としての〈科学者〉ではありませんが、詩と科学に〈じつは、いろいろな共通点がある〉ことに気づいていました。それを今までも断片的に書いてきましたが、ここまでコンパクトにまとめられた文章に出会うと唸ってしまいます。しかも〈科学が世界を無条件に救える、まだ幸せな時代の農学者、科学者の時代であった〉という冷静な視線、〈二酸化炭素だけを悪者にすることによって、見せかけのエコと原子力発電が国策として推進されている〉という深い洞察に敬服します。そして〈詩人も科学者も、ともに「孤独な戦士」だ〉という結びは見事としか言いようがありません。

 今号は江原茂雄氏紹介の「金子光晴の詩・2篇」も詩と時代背景を考えさせられましたし、乱鬼龍氏の「冗句・風刺の種」も政権交代をネタにした鋭い切り口でした。いつも以上に充実した紙面だったと思います。






   
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