きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.9.4 筑波山・ガマ石




2009.10.20(火)


 ほとんど4日、家を空けていましたので本がドッサリ届いていました。ありがとうございます。今日は終日いただいた本を拝読して、HPアップを繰り返していました。




美和澪氏詩集『化身』
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2009.10.1 岐阜県多治見市 なずき書房刊 非売品

<目次>
地上の星 8      家鳴り 12       六月の雨 16
水の膜 20       化身 24        咳する犬 28
鼓の一擲 32      山門説話 38      おのころ島 42
かくれん坊 46     つづれ刺せこおろぎ 50 おかあさん 54
牧水の旅 58      石の顔 62       野良猫のモノローグ 66
猫談義 70       石を抱く 74      光る蜘蛛 78
赤まんま異聞 82    嫉妬 86        密漁 90
爪を噛む男 94     鯉にまつわる色話 98  枇杷の種 102

跋・堪えている詩精神の瑞々しさ 冨長覚梁 106
あとがき 112




 


庭の古木の根っこを
幾重にも抱いている
蛇の抜け殻に出逅う
息をつめながら
そろり そろりと
引いてみると
サリ、サリ、サリ
乾いた擦過音と共に
長さ一メートル余
幅五センチほど
頭の先から尾っぽまで
一ミリの欠損もない
模写が私の前に
長々とうねる
怖くないと言えば
ウソになる
總毛起ちながら
化身という秘儀によって
産まれた冷たく
光沢のある
蛇の成体への営みが
私を感動させ
探索させる

先ず口を割り
身ぐるみ
脱がねばならぬ
頭を喰い破り
目玉をはずし
幹を抱く体位で
鱗を逆立てながら
お前は悶絶し
恍惚するのか
そのとき
唐突に吹き抜ける
つむじ風が手の中の
お前を攫
(さら)
脂肪性の腥さで
私の鼻腔を刺しながら

 11年ぶりの第3詩集です。ここではタイトルポエムを紹介してみました。〈長さ一メートル余/幅五センチほど〉の〈一ミリの欠損もない〉〈蛇の抜け殻〉を、〈化身という秘儀によって/産まれた〉ものと捉え、〈蛇の成体〉を〈冷たく/光沢のある〉ものと観察したところが見事だと思いました。その〈成体への営み〉を最終連で想像しているわけですけど、〈唐突に吹き抜ける/つむじ風〉によって〈お前〉は〈攫〉われてしまいます。夢か現か…。このシーンそのものも〈化身〉かと思いました。




詩誌『コウホネ』25号
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2009.10.15 栃木県宇都宮市
コウホネの会・高田太郎氏発行 非売品

<目次>
作品
覇者       三田  洋…2        夏の川      石岡 チイ…4
ねむりのあとさき 星野由美子…6        土と塩水     相馬 梅子…16
春の日に     片股 喜陽…18        あこがれ     岡田喜代子…22
雷魚       高田 太郎…24
エッセイ
旅の想い出    相馬 梅子…8        故郷・野の花   石岡 チイ…9
水に想う     星野由美子…10        旅立ち      小林 信子…11
私の詩的体験(5) 高田 太郎…13
連載 私の一冊一誌 阿久津哲明詩集『海を見に』.         高田 太郎…20
話の屑籠 執筆者住所 後記




 
覇者/三田 洋

惑星の傾斜がうみだす暑い夏が
白球のグランドを蔽うと
スタンドは興奮の円形劇場となる
若い血は沸騰し風は舞い
始まりはいつもこのように美しい

日を追うごとに
四つ二つと数は消されていき
それでもにぎわいは持続していくが
何かが募っていくのがわかる

勝敗は何かに沿うように進行し
やがて傷だらけの数値が二つ
残されることの意味をしらないまま
その気配は濃くなっていくが
まだ気づくものは少ない

やがて引き算は駆使されて
寂しく屹立する一つの数値
抹消された汗や血をのせて
重い旗がグランドを一周すると
その気配はいっきに充満し
すき間なく充たしてしまうが
最期の感傷を知りえたものが
もっともそれを味わうだろう

そして幾日がたち
だれもいなくなって
白線の消えた地上に長い雨がふると
ところどころ水溜りがうまれ
そこには小さな天空が
ふるえながら映っているばかりなのだ

 タイトルがよく効いている作品だと思います。それは〈募っていく〉〈何か〉と〈その気配〉に懸かって行きますが、私は最終連との関連が最も強いと感じました。天下の〈覇者〉の舞台も〈長い雨がふると/ところどころ水溜りがうまれ/そこには小さな天空が/ふるえながら映っているばかりなの〉です。“兵どもが夢の跡”と言ってもよいかもしれません。




詩誌『花筏』18号
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2009.10.20 東京都練馬区
花筏の会・伊藤桂一氏発行 700円

<目次>
<現代詩の可能性> 私の文藝的体験(一)
*文体の変幻について………伊藤 桂一 44    *花筏通信………………………………… 58
<エッセイ>
一寸先は………………………谷本 州子 51    アフロディーテちゃん………唐澤 瑞穂 52
代理……………………………小原 久子 53    マナン君がやってきた………小町よしこ 糾
「死」から生まれた「詩」……竹内美智代 56
(詩)
(扉詩)漂う…………………伊藤 桂一 1    汲む人…………………………彦坂 まり 2
白百合…………………………門田 照子 4    ひるがお………………………宮田 澄子 6
春近く・<大工の聖ヨゼフ>…小町よしこ 8    小糸の桜………………………秋山千恵子 10
タリナム………………………藤本 敦子 12    こひ……………………………月村  香 14
雨………………………………竹内美智代 16    柿の木…………………………山名  才 18
分水嶺…………………………上田万紀子 20    残るもの………………………唐沢 瑞穂 22
梅雨の晴れ間…………………中野百合子 24    大社の藤………………………小西たか子 26
長持……………………………谷本 州子 28    てがみ…………………………帆足みゆき 30
老犬はいま……………………山田由紀乃 32    青もみじ・大沢の池…………小原 久子 34
銀水荘の思い出………………中原緋佐子 36    犬………………………………在間 洋子 38
糠床……………………………田代 光枝 40    えのころぐさ…………………住吉千代美 42
*〔連詩〕月たちが唄った歌…………… 58    捌き(伊藤 桂一)
同人既刊詩集……………………………… 64
あとがき…………………………表紙の三      住所録……………………………表紙の四
<表紙・扉絵>…………………帆足まおり      <カット>…………………………谷本州子




 
雨/竹内美智代

 晴れたら会いに行くよ
男は約束した
女は胸ふくらませながらてるてる坊主をつくり
祈りをこめて部屋に吊るす
 裏切ったら首をちょん切るからね

梅雨どき
くる日も くる日も雨ばかり

雨降りのたびに
首を切られたてるてる坊主がうまれ
女の部屋は乱雑に散らばった頭や胴体であふれていく

作っては切り
つくっては切り
切り刻んで

まだ
雨は
止まない
止みそうもない

 〈女の部屋は乱雑に散らばった頭や胴体であふれていく〉。なんともおぞましい光景が想像できますけど、“罪と罰”について考えさせられます。〈男〉は〈晴れたら会いに行くよ〉という〈約束〉ですから、罪もなければ罰せられもしません。〈女〉は〈裏切ったら首をちょん切るからね〉と言ってありますから、これも罪なし罰則なし。犠牲になるのは〈てるてる坊主〉です。しかし、てるてる坊主は何も約束していません。本来なら罪も罰も受ける筋合いではないのです。が、他人が決めたことによって、その罪と罰を一身に負う…。なにやら社会の構造に似ていると云ったら言い過ぎでしょうか。いかように解釈できる傑作だと思いました。






   
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