きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2009.9.4 筑波山・ガマ石 |
2009.10.21(水)
午前中はクルマで2時間かけて、足柄山の山裾を走り回っていました。コンビニに行ってメール便を出して、スタンドで給油して、銀行に行ってお金を下ろして、家電量販店で新しいマウスを買って…。とどめは修理工場でした。半年ほど前に擦ってしまった箇所があったのですが、お金がなくて直せない状態が続いていました。まあ、実用上問題ない(^^;
ということで放ってあったのですが、ようやく修理の日程を決めて、来週の2日間を予約しました。
こうやって山裾(一般には足柄平野と称しています)の北西を走ってみると、意外と広いんだなと思います。足柄平野には小田原市、南足柄市、山北町、松田町、開成町、大井町、中井町が含まれます。2市5町を呑み込んだ平野ですから、それなりの面積があるわけです。ここで、昔の私なら技術屋らしく、面積は何平方Kmと書いたところでしょうが、今はその気がありません。大雑把なところをイメージしてもらえばいいんじゃないかなと思っています。それを退化と云うのか進歩と云うのか分かりませんけど、サラリーマン生活を辞めて3年半ほど、かなり意識は変わってきたなと感じたドライブでした。
○『ANTHOLOGY』2009年版 |
2009.8.15 栃木県芳賀郡茂木町 栃木県詩人協会編・森羅一氏発行 1200円 |
<目次>
「ら」/神山暁美…4 學校の街の足利から発信する時を求めて/石井 仁…6
秋桜の花の上の月/石井 仁…7 天使と悪魔/金敷善由…8
異形の午後/遠藤秋津…10 春を待つ/笹沼享子…12
ふたつの影/白沢英子…14 シバの憂鬱/綾部健二…16
ある気象/野澤俊雄…18 人生のアップリケ/風祭智秋…20
父の出戦務/森 羅一…22 瞑想の庭/螺良君枝…24
小さなすずめ/菊元敏江…26 風の吹いてくる場所/和田正子…28
四人の乗客/岡田泰代…30 闇の中の風景/松本ミチ子…32
ねぶたまつりT まつりU/福田あつこ…34 石の道/深津朝雄…36
遠近感/野澤正憲…38 寛容/菊地礼子…40
沈黙/大木てるよ…42 花ならべ ひと休み/渡辺陽子…44
出会い/斎藤さち子…46 白い靴/戸井みちお…48
星の村/本郷武夫…50
あとがき 森 羅一…52 アンソロジー2009参加者名簿 53
※装幀など/益子文庫社
シバの憂鬱/綾部健二
光が通り抜けているような一枚の写真を観た 一九三八年六月 中
国江西省 メモ書きには「眠る兵士と軍用犬」とある 朴訥な若い
兵士が引き綱を手に仮眠している 昼下がりの休息 その傍らに一
頭のジャーマンシェパードが眼を閉じて横たわっている 「伏すも
走るも命のまま 獣か人か霊妙の 汝が能力はあらわれて 武勲燦
なり金鵄章 勇武の戦士軍用犬」 セピア色の紙背から洩れてくる
かつての軍用犬行進歌の一節
その起源は古代ギリシャ・ローマ時代に遡る 命令文書の配達 伝
令の代行 軽量物品の輸送 嗅覚を活かした味方負傷兵の捜索など
以来 二十世紀以降の近代戦に到っては 地雷探知や対戦車への
直接攻撃にまでそのミッションが拡大した 旧日本軍では一般的な
軍用犬の上位に「軍犬」という位置付けがあり 軍人と同様に二等
兵の階級を授与 まれには一等兵に進級した犬も実在したという
光が遮られているような一枚の写真を観た 日付も場所も不明だが
現在の軍用犬の写真である とはいっても第二次大戦後に制定さ
れた憲法上 我国に軍隊は存在しないことになっている したがっ
て軍用犬という呼称があってはならない 今日では警備犬あるいは
歩哨犬と呼ぶ にもかかわらず写真の主の姿はまさに兵士そのもの
愛嬌あふれる顔立ちの柴犬が 対戦車用のロケットランチャーを
背負っているのだ 僕は単純明快に彼を「シバ」と名づけた
一昨年の夏 我家では黒柴犬の「アロン」が 驟雨の中で十六歳五
ケ月の天寿を全うした 限られた生活空間での一生だったが 小柄
な体に近代兵器を背負い 誤爆や自爆のリスクを伴う発射訓練を繰
り返す 「シバ」のような日々は送らずに済んだ いっさいの理屈
がなくても良い程に うっとりする夕焼けの中 今も僕の胸には明
るく小さな焔がともっている だがその一方では「シバ」から発信
された憂鬱の羽音が 突然の発作のように両耳の間を行き交いはじ
めているのだ――
珍しい〈軍用犬〉や〈軍犬〉についての作品ですが、〈我家〉の〈黒柴犬の「アロン」〉と結びつけたところが成功していると思います。〈「シバ」のような日々は送らずに済んだ〉〈アロン〉を想像しながら、〈地雷探知や対戦車への/直接攻撃〉をした犬たち、〈対戦車用のロケットランチャーを/背負っている〉犬たちへ思いを馳せます。その思いが〈「シバ」から発信/された憂鬱の羽音〉となって表出しているのでしょう。戦争は人間だけでなく犬たちも狩り出すという怖ろしさを示した作品だと思いました。
○隔月刊詩誌『東国』140号 |
2009.8.1
群馬県伊勢崎市 小山和郎氏発行 600円 |
<目次>
●詩 末吉/井戸を掘る 2 金井裕美子 えでん 6 青木幹枝
餓鬼 9 小林茂 初夏の通勤自転車 12 伊藤信一
水が 14 松浦宥吉 わが結界 18 新延拳
花火 20 愛敬浩一 冬の解答/蛍光清流 22 中澤睦士
手編みのマフラー 28 三本木昇 小路/大根 30 奥重機
途上 34 福田誠 ジャガイモ戦記 36 綾部健二
声は樹々のざわめき 41 佐伯圭 八つの前奏曲−ひび割れた地図 44 関根正史
あめほほき 55 江尻潔 並木町一五三番地 80 田口三舩
幻のキャンドル/ラストスパート 82 若宮ひとみ 影絵 87 柳沢幸雄
引っ越し 90 大橋政人 隣町 94 野口直紀
うた/なみだ 96 渡辺久仁子 澄みわたる秋.100 遠藤一夫
銀杏.104 小保方清 秋色の中.106 堀江泰壽
煮だす.109 清水由実 赤い花.112 高田芙美
モッタイナイ/不足の法則.114 山形照実 蟹食う.120 本郷武夫
約束の地.122 川島完
●エッセイ ●外接円
誤解される清水房之丞 56 愛敬浩一 同人誌で育ったものとして 58 江口節
●ことばの花束
井上英明詩集『一粒の麦は』 63 飯田光子 新延拳詩集『永遠の蛇口』 66 高貝弘也
遠藤一夫詩集『ガンダラ橋』 68 中西弘貴 奥重機句集『青鷺』 72 雨宮抱星
●針の穴 清水博司詩集 清水茂詩集『水底の寂かさ』 75 川島完
『ことばは透明な雫となって』 74 愛敬浩一 菊地貞三詩集『けれど・だなんて』 77 小山和郎
松林尚志句集『冬日の藁』 79
●あとがき.124
●題字 山本聿水
●装画 森川e一
冬の解答/中澤睦士
冬の雨には
珈琲を淹れる時の匂いがよく似合う
薬缶のお湯を注げば
ゆっくりと問題を解くように
その雨音に同調して
かなしみでさえも整いへと向かう
右と左から同じものをひいて
右と左に同じものを掛けて
少しずつ少しずつ
煩雑なことを簡単にしてゆける
簡単なことはいい
わかりやすいことは本当にいい
わかり方や
わかり得る尺度はそれぞれにしても
同じ事象なら やさしい方がいい
白いフィルターの中へ注がれた湯に
ゆったり膨らんでゆく褐色が
妥協も 安堵も 諦観も
包含するように受け入れて往く
弱気なため息ついてもいいよな
冬の雨なら許してくれるよな
幾多の周波数を
いろいろな方向に反射しながら
雨は雨なりの乱雑へと向かう
咲いたばかりの沈丁花は
すっかり濡れてひかり
乱雑と 簡単が
また その雨音に同調してため息になり
今日の解答が ようやく僕らにも降り注ぐ
一読して抒情詩らしい佳い詩だなと思います。まず、タイトルが佳いし、続く導入部の第1連に痺れました。そして第2連の〈ゆっくりと問題を解くように〉というフレーズから展開するのですが、第3連の4行も見事です。常に私たちの目の前にある〈妥協も 安堵も 諦観も〉、そして様々な問題も〈雨は雨なりの乱雑へと向かう〉ことを見て、私たちは自答しているのかもしれません。それを改めて知らせてくれる作品だと思いました。
○月刊詩誌『柵』275号 |
2009.10.20 大阪府箕面市 詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税 |
<目次>
現代詩展望 日本人的解決方法への疑義 臨時理事会の決議をめぐって…中村不二夫 76
戦後史の言語空間(12) 頂点(権威と権力)…森 徳治 80
流動する今日の世界の中で日本の詩とは(57) やさしい心と自然の詩と マケドニア詩祭「ストルーガ詩の夕べ」…水崎野里子 84
風見鶏 藤富保男 新田泰久 大河原巌 矢野敏行 森原直子 88
現代情況論ノート(44) 女性が危ない…石原 武 90
小沢 千恵 珊瑚樹の実が紅くなる頃 4 進 一男 リルケ恋い 6
水木 萌子 ホームを駆けて 8 中原 道夫 山梨の桃 10
肌勢とみ子 美食会 12 佐藤 勝太 村の一本松 14
月谷小夜子 八月六日 16 柳原 省三 精神病のうた 18
西森美智子 夏の空 20 山崎 森 変ワラヌ構図 22
長谷川昭子 手を振る 24 小野 肇 地下道 26
松田 悦子 時間 28 南 邦和 〈恐竜展〉にて 30
黒田 えみ 芝生問答 32 小城江壮智 秋 夕暮れ 34
織田美沙子 素朴だった頃の名前 37 三木 英治 シカゴからの手紙 40
北村 愛子 どうせ生きるなら 43 秋本カズ子 南瓜の蔓が 46
八幡 堅造 タバコをやめたら 48 川端 律子 さるすべり 50
門林 岩雄 詩 川岸 52 米元久美子 ヒヤシンス 54
北野 明治 秋の公園のベンチにて 56 江良亜来子 鮭 58
鈴木 一成 日記帳の片隅より 60 安森ソノ子 水平線を身体に 62
若狭 雅裕 秋桜 64 今泉 協子 十八歳の時 66
前田 孝一 旅立ち 68 名古きよえ 畑 70
野老比左子 薄の胎動 72 徐 柄 鎮 紫煙 74
世界文学の詩的悦楽 −ディレッタント的随想(41) 伊東静雄小論(3)−無垢なるものへの調べ…小川聖子 92
現代アメリカ韓国系詩人の詩(8) クム・スーク・ムーン…水崎野里子 96
随想 介護にかかわり思うこと 家族介護教室にて発表…北村愛子 98
「柵」の本棚 三冊の詩集評…中原道夫 104
石川逸子詩集『ロンゲラップの海』104 石井藤雄詩集『梨作りの名人』105 左子真由美詩集『あんびじぶる』107
受贈図書 受贈詩誌 109 柵通信 110 身辺雑記 112
表紙絵 中島由夫/扉絵 申錫弼/カット 野口晋・申錫弼・中島由夫
タバコをやめたら/八幡堅造
嬉しいことに 時間のムダが無くなった
気分が爽快になった
食べ物 酒が旨くなった
小遣いが増えた
困ったことに 時間に区切りが無くなった
食べる量 飲む量が増えた
二年で四キロも肥えた
血圧が二〇以上あがった
医者は 自分の忠告を聞き入れて
私がタバコをやめたので 褒めてくれる
だが 肥えて血圧が上がったことについて
何も言わない
昔 父がよく言っていたことを思い出す
「世の中に 二つエエことは オマヘン!」
私も煙草を吸いだして40年ほど。まだ止めようとは思っていませんが、止めたら〈時間のムダが無くな〉り、〈食べ物 酒が旨くな〉るだろうなとは思います。しかし、この作品を読むと〈時間に区切りが無くな〉り、〈食べる量 飲む量が増え〉るようですね。だから止めない! とまでは言いませんけど、〈世の中に 二つエエことは オマヘン!〉というのは真実でしょうね。〈父〉上の言葉がよく効いている作品だと思いました。