きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.9.4 筑波山・ガマ石




2009.10.23(金)


  その1

 メタボ対策で静岡県裾野市にある越前岳という山に登ってきました。案内書には、駐車場からの標高差は627mで、1507mの山頂まで登り2時間・下り1時間10分とありましたから、そう大した山ではないと高をくくっていましたけど、どうしてどうして、大変な山でした。途中で何度かタバコ休憩は入れたものの、登りで2時間20分、下りで1時間30分も掛かってしまいました。登山道としては整備が悪い方なんでしょう、まるで階段のような樹木の根を踏んで跨いで、岩場を攀じ登って、ちょっとしたアドベンチャー気分。山好きの人には笑われてしまいそうですけど、本当に山頂まで行けるのかいな?と思ったほどです。

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 写真は途中の展望台で。正面の富士山は残念ながら雲に隠れていますが、左手には沼津の街並み、そして駿河湾がかすかに見えて、絶景です。ここまでは標高差16mで15分ほど。これは楽チンと思いましたけど、これから先がキツかったです。でも、まあ、天気にも恵まれて、久しぶりに良い汗をいっぱいかきました。問題はお腹だなあ。怖くて、まだ体重計には乗っていません(^^;




'09アンソロジー『ポエム横浜』通巻16号
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2009.10.3 横浜市神奈川区 横浜詩誌交流会・馬場晴世氏発行
1200円+税

<目次>
苫屋の烟/浅野章子(青い階段)…6       虫むし虫/新井知次(獣)…8
目は浄土に/荒波 剛(横浜詩人会議)…10    明けない夜/石原妙子(地下水)…12
典型/石川 敦(掌)…14            ガード下から汽車道へ/いわたとしこ(象)…16
夢想家と現実/植木肖太郎(詩のパンフ)…18   最終楽章/うめだけんさく(伏流水)…20
向日葵/小沢千恵(青い階段)…22        浮浪者からもらったもの/加瀬 昭(象)…24
夏の朝/方喰あい子(地下水)…26        記憶/加藤弘子(よこはま野火)…28
青い球体に乗せられて/木村 和(紙碑)…30   鶴見川異聞/木村雅美(地下水)…32
叔父の死/坂多瑩子(青い階段)…34       −ミニ詩劇− ブルーライトヨコハマ/坂本くにを(地下水)…36
遠ざかる日々/佐藤 裕(象)…38        桜/志崎 純(掌)…40
谷戸坂/篠原あや(象)…42           潮/島峰信子(横浜詩人会議)…44
大日如来座像/菅野眞砂(よこはま野火)…46   生きる/田村くみこ(じゅ・げ・む)…48
夕暮れを見つめて/蔦 恒二(横浜詩人会議)…50 詩 四編/林 柚維(地下水)…52
草原に/馬場時世(よこはま野火)…54      知己・知音の仲 −畏友児玉達雄雅兄へ−/半澤 昇(掌)…56
じゃがいもの花/疋田 澄(よこはま野火)…58  アレン・ネルソンの死/比嘉名進(横浜詩人会議)…60
人生二百年説/府川 清(横浜詩人会議)…62   バスケットゴール/福井すみ代(青い階段)…64
シャロットタウンで太極拳/古久保和美(横浜詩人会議)…66 青蛙/保高一夫(地下水)…68
無くなる/堀井 勉(掌)…70          瞑想/松岡孝治(よこはま野火)…72
猫の老獪さ/向田若子(地下水)…74       ひとつの空席/森口祥子(青い階段)…76
贈り物/森下久枝(よこはま野火)…78
      紅葉坂物語/林(リン)文博(ウエンボー)(じゅ・げ・む)…80
▽加盟誌プロフィール              ▽横浜詩誌交流会二年間の歩み
▽執筆者一覧                  ∇ミニアルバム
▽ポエム横浜バックナンバー           ▽横浜詩誌交流会講演一覧
▽横浜市詩誌交流会役員一覧           ▽あとがき
(表紙デザイン)今井喜久麿           (表紙絵)津島亜喜




 
浮浪者からもらったもの/加瀬 昭

酒に酔ってふらふらと歩いているときです
ふと 目にしたのです すごい札束を数える
浮浪者がいました 違和感がありましたね
どうしてあんな大金をと思いました ぼろぼ
ろの毛布に包まっているのに なぜと思いま
したね 浮浪者ですよ 駅前の階段で寝泊り
している その彼が札束を数えていたんです
 相当ありましたね かなりの厚さの札束で
す 頭陀袋に入れる瞬間を見たんです その
ときその男と目があいました 男が笑ったよ
うに見えました そんな気がしたんです 表
情が崩れたようでした 目で聞いてきました
ね 欲しいか うなずくと 袋のなかから一
枚の紙幣を取り出して くれたのです 恥ず
かしげもなく 手を出して その紙幣をもら
ったのです さもしい根性です われながら
情けないと思います

これでもう一杯飲めると 赤のれんをくぐっ
たのです いい気持ちになって 支払いのと
きポケットから あの男からもらった紙幣を
出したのです はい勘定と お客さんご冗談
でしょう 葉っぱですよ えっ あいつだま
しやがったな 頭にきましたね 先ほどの階
段にはあの男の姿はありませんでした

彼がくれたもの あれを金と思い込んでいま
した 紙幣に見えました そう思い込んだの
は私です いま思い返して彼は本当に札束を
数えていたんだろうか 不思議です それに
しても さもしい心根が情けない

 横浜市内の詩誌12誌ほどが集まっているという、全国的にも珍しい詩誌交流会です。目次の( )が詩誌名です。1979年以来、隔年で発行し続けて30年。通巻16号になりました。紹介した作品はどういう展開になるのかと固唾を呑んで拝読しましたが、まるで狐に化かされたようです。やっぱり私でも〈恥ず/かしげもなく 手を出して その紙幣をもら/った〉でしょう。そんな、人間の〈さもしい根性〉を寓話として見せてくれた佳品だと思います。




○詩誌BLACKPAN96号
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2009.4.1 奈良県大和高田市 日高てる氏発行
1000円

<目次>
■詩
色彩音楽と匂わない風/加藤千香子 2      郵便の歴史/森山和雄 4
夜の更けた春の日に/竹島浩一 6        三分間の永遠/吉田 緑 8
縁側/加納由将 10               心象/嶺月耀平 12
二月の青/寺西貞子 14             フォンタンカ運河/斎藤勝康 16
水蜜桃/北原千代 18              木と鳥の世界が/谷部良一 20
惑星にて/岩谷まり 22             あ くび/武内健二郎 24
まめ/みねぎを順子 26             限りなき/小池栄子 28
空/西きくこ 30                黒い花火/亀井真知子 32
祖父/信定和美 34               新
.夢十一夜(その二)/日高てる 36
■特別寄稿 山下 泉
epiphany 夢 39
■行動する仲間 北原千代 44
あとがき




 
空/西 きくこ

ポプラの木の下で
背もたれが丸くなった
木の椅子に腰掛けて
仰向けに空を見る

くるっと空
くるっと空

大きなポプラの葉の下を
急ぎ足に通り過ぎる
わたがしのような雲
ひつじ雲
いわし雲
光背を放つ黒い雲
そこに隠れた人をつつんで
古い日記をめくるように
西に向かってながれてゆく
葉が流れる
目が回る

どぼんと
空に落ちそうになった

 拙HPでは初めて紹介する詩誌です。高名な詩誌を頂戴して嬉しいです。紹介した作品は〈仰向けに空を見〉たら〈目が回〉った、というだけの詩ですが、最終連が佳いですね。失礼ながら思わず笑ってしまいました。こういう愉しい詩はなかなか書けるものではないと思います。この、視点の転換は散文では難しいかもしれません。詩の領域を広げた作品だとも思いました。




○詩誌BLACKPAN97号
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2009.9.15 奈良県大和高田市 日高てる氏発行
1000円

<目次>
■詩
石はそこに在るだけ/谷部良一 2        地図/岩谷まり 4
底/北原千代 6                夏草 うたげ/西きくこ 8
未来窓/嶺月耀平 10              階梯/亀井眞知子 12
自分に/加納由将 14              夏の卵/遠木順子 16
イスラム・ガンダーラ遺跡の記/寺西貞子 18   十人目の乙女達/森山和雄 20
三年殺しの屠殺場で/竹島浩一 22        花館/信定和美 24
つまさき/武内健二郎 26            夏の匂い/小池栄子 28
ネイルの先 吉田 緑 30            新
.夢十一夜 その三/日高てる 32
epiphany 樹 34
■行動する仲間 竹島浩一 38
あとがき




 
底/北原千代

畑のスイカ玉を乗せ 吊り籠は水底へ沈んでいった
鎖を手繰る祖父の筋肉は 貌をもつ生きもののよう
――離れとき  こどもは近づくことならん――

井戸をまもる小屋根の下は際立って暗く
太陽は庭とわたしとをじりじり焼いた

井戸小屋の闇からきびしく睨む祖父は太い柱であった
けれどわたしはその夏の
祖父の居た最後の夏のはじまりから
もう十回も知っていた

 遠くにゆがんで光っている黒い円形の水たまり
 わっ
 小さく尖った声を落とす
 ボウフラやネズミや蚊とんぼや人の眠りの声が
 わっわっわっと応えてくる
 底の暗闇の内奥にある冥い水のしおからい声のあまさ
 むず痒い両膝をこすり合わせる

昼下がり 祖父が手繰り寄せた吊り籠には
あおざめたスイカが乗っていた
ただならぬ眠りの うわ澄みを吸った水ぶくれのスイカ
祖父が包丁を握りまっぷたつに割る
わっ
にんげんのような声を三日月に切り刻んだ

わたしは五つのこどもらしく庭にしゃがんだ
日照りの夏草に種をとばしながら
井戸のスイカはね
あまくてしおからいね

食べ終わると祖父はゆがんだ貌のような
ふるえる腕でわたしを引きずり懲らしめの土蔵へ入れた

 〈五つのこども〉の頃の思い出でしょう。〈井戸〉に〈こどもは近づくことならん〉と〈祖父〉に言われていたのに、実は〈わたし〉は〈もう十回も〉覗いて〈知っていた〉のです。井戸の〈底の暗闇の内奥にある冥い水のしおからい声のあまさ〉を知った感覚を〈むず痒い両膝をこすり合わせる〉というフレーズで表出されていると思いますが、同時にこのフレーズは言いつけを守らなかったことへの後ろめたさの感情なのかなとも思います。最終連の〈懲らしめの土蔵へ入れた〉シーンも佳いですね。〈祖父〉は〈食べ終わる〉のを待ってから懲らしめているのです。〈わたし〉を取り巻く環境の暖かさも感じた作品です。






   
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