きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2009.9.4 筑波山・ガマ石 |
2009.10.25(日)
板橋区立文化会館で開催された「2009年区民文化祭・詩のつどい」に参加してきました。お前にも朗読の機会を与えるから来い、と呼ばれたものです。1昨年も呼ばれていますから、今回が2回目。1昨年にも増して良い会でした。プログラムは公募詩の授賞や日本詩人クラブ・日本現代詩人会有志による詩の朗読、高島第二中学による創作詩の群読、地元コーラスグループによるコーラス、菊田守さんによる講演など盛り沢山。その上、主催者の板橋区長が大幅に遅れて到着するなど、司会者はスケジュールのやりくりで大変な様子でした。でも、大きな混乱もなく、聴衆の一人としてはたっぷりと愉しませていただきました。200人ほどが集まったようです。
写真は高島第二中学校2年生による構成詩「そして 今 ヒロシマ」の群読です。若い声は迫力があり、原爆の悲惨さを自分たちの言葉で伝えていこうという取り組みには感心しました。
詩の朗読は8名が行い、私は先日、西さがみ文芸愛好会でも披露させていただいた「一斗二升五合」を読みました。菊田守さんの講演は「生活の中の詩」と題して、吉野弘「祝婚歌」、村野四郎「鹿」をはじめ10人の先輩詩人の20編ほどを最初に朗読するという大胆な試み。先輩の詩の世界に30分ほどどっぷりと浸かったあとで演者の話を聞くというのは初めてでしたが、なかなか良かったです。私も何かのときにはこの手法を参考にさせてもらおうと思いました。
会場を移しての懇親会も大盛況。板橋在住の詩人をはじめ、多くの詩人とお話しすることができました。幹事の皆さん、お疲れさまでした。そして、ありがとうございました!
ぜんぜん別件ですけど、帰宅したら拙HPのアクセスカウンターが16万件を超えていました。15万件を超えたのは5月21日ですから、5ヵ月で1万件増えたことになります。1ヵ月で2000件、毎日平均67件ほど、1時間に3件弱のアクセスがあるんですね。励みになります。おいでいただいた皆さま、御礼申し上げます。
○板橋区民詩集『樹林』24集 |
2009.10.25 東京都板橋区発行 非売品 |
<目次>
竹下義雄 後ろ姿…4 北野明治 温暖化する地球について…5
一ノ瀬美智子 ゆうすげ…6 月谷小夜子 雨の音もなく…6
小林正夫 山脈…7 鳥山守貞 花…8
谷 琴柱 小さな声…9 中瀬三雄 男は歩く…10
鈴切幸子 こどもの時間…11 森中美里 懐かしくて会いたくて…12
今成 敞 生きている…13 北村愛子 南天の木よ…14
上田光由 家…14 山川久三 ゴキブリ…15
田邉敏彦 帳影(ちょうけい)の落日…16 立会川二郎 或る日のインド洋…17
はらだひろし 厄介もの…18 綾部道代 寒い日…19
内藤健治 伊勢町冬の月…20 大澤玲子 にらめっこ…21
池上泰子 女子誕生…22 小野正和 昨日と明日の間…23
日野亜耶 黄泉路への旅立ち…24 長谷節子 雨は小雨だけれど…25
吉田義昭 海の手紙 長崎半島から…26 内山マリ 願望…27
佐藤詠子 柿ノ木の下で…28 佐藤文男 追憶…29
岡村 梢 残照…30 大野ちよ子 布遊び…31
外山美智子 未練…31 きたまこと 扇の明暗に…32
太田久代 こころ…33 内田武司 遺失物…34
上村節子 嗅覚…35 新井一雄 大往生…35
山ア武久 百日紅の咲く頃…36 川田裕子 幸福の定義…37
新井君子 約束…38 ゆあさ京子 本…38
野々下郁子 ばらの涙…39 河野昌子 うねり…40
日原ゆきゑ 友の昇天…41 転石 光 競い合いの海を越えて…42
川ア夜詩子 無題…42 小野幸子 蝉時雨…43
桐里こむぎ さようならなんて言えない…44 小倉寿男 スランプ…45
福井美穂 温かい心にふれて…46 森 智子 称賛 命を生きる父…47
清水久枝 ホームレス…48 平田陽子 詩集…49
みやざきりえ 桔梗の花…50 内山美津子 谷川岳・天神平(てんじんだいら)…51
真壁秀樹 海原…52 藤間かづゑ 舞踊六十年人生 其の二…52
田辺直美 なんじゃもんじゃの花…53 まるこるま 羊の船…54
中原道夫 石…55 指吸虫吉 急ぐことはない…56
小中学生の部
東 るな 村田りな 友だち…57 羽鳥奈々子 えがおの花…57
岡田桃乃 稲…58 小川大輔 水そうメダカ…59
中村蒼志郎 人権の花…59 岩城弥乃 緑のカーテン…60
五十嵐大地 えだ豆…60 新垣勇介 稲…61
山口 祐 みどりのカーテン…61 矢島恵美 北海道のじょうけい…・62
今井祐之介 稲…62 宮崎 葵 私の胸のおく…63
千葉龍太 稲…64 中條稜万 メダカ…64
清家雄大 グッピー…65 塚本安陽 稲達よ…65
中川颯太 めだか…66 大西洋輝 たくましいいね…66
伊丹彪翔 稲作り…67 井上桃花 海…67
小澤明日香 教室…68 宝田貴裕 田んぼ稲…68
四釜歩美 小さいグッピーの未来…69 宮ア由加 めだか…69
熊谷星成 一生けんめいのプール(うみ)…70 松井詩男 稲…70
生形 健 空と雲と宇宙…71 安達美雪 グッピー…71
大野茉莉衣 緑のカーテン…72 佐藤眞世 かんたんドーナッツ…72
種村真人 水そうの中のおにごっこ…73 中川未羽 日光の散歩道…73
戸倉紀乃 ドーナツ…74 新井静奈 日光…74
浜野文寧 夏−祖父母の家…75 橋理紗 一秒の重さ…76
大野李沙 命の足跡 Smile…77. 磯崎光希 にじ 自分らしさ…78
高島第二中学校 第二学年
構成詩「そして 今 ヒロシマ」…79 あとがき…80
夏−祖父母の家/浜野文寧
新幹線
小さな窓から
景色のリレー
ビルが森にバトンを渡せば
もうすぐ着くよ
祖父母の家
駅から一歩ふみだせば
太陽の光のつぶがこぼれだして
暑い暑いと木々の汗は
少し湿った緑の香り
この道の先が祖父母の家だよ
なんて
妹に何度言ったのだろう
でもあの林が見えたから
今度はきっとそのはず
庭の花々がほほえみかける
きっとドアの向こうには
もう一つのほほえみが待っている
ただいま
上述の「詩のつどい」で配布されたものです。イベントの合間を縫って読んでみましたが、「小中学生の部」の中では紹介した詩が一番良いなと思いました。第1連の〈小さな窓から/景色のリレー/ビルが森にバトンを渡せば〉というフレーズから新鮮ですし、第2連の〈太陽の光のつぶがこぼれだして/暑い暑いと木々の汗は/少し湿った緑の香り〉という視点も鮮やかです。そして何より最終連にたった1行置かれた〈ただいま〉が佳いですね。〈祖父母の家〉に行くのですから、本来は“こんにちわ”なんでしょうが、〈ただいま〉というこの一言で祖父母との関係を言い切ってしまいました。中学2年生とは思えない、見事な作品です。
そう思っていましたら、授賞式で小中学生の部で1席にあたる教育委員会長賞を受賞しました。講評も私と同じような意見でした。おめでとうございます。
○川田裕子氏詩集『玄海かもめ』 |
2001.11.30 東京都板橋区 揺籃詩社刊 1500円 |
<目次>
おかあさん 手紙 6 双六 7 毛糸のパンツ 8 巣立ち 9
待つ 10 箱の話 14 虎 18
東京 22 神田川 26 わかってください 28
取り立て 30 詩人 32 流亡 36
かもめ 40 また、会えるね 44 娘の私 48
ありがとうを言える子供たちに 52 笑って、ねぇ笑って 56 子どものままで帰っておいで 60
駄々っ子 64 挨拶 68 林檎 70
雨 72 うさぎ 76 恋 80
花 82 化粧 84 森 86
煙 88 ピエロ 88 暇つぶしの 91
営み 92 夜の薔薇 94 仏 98
添える言葉 わたうちちふみ 102
かもめ
働き盛りの男の足を
滝の渦は呑み込んでゆく
巻きながら 廻りながら
最期は黒い塊だけが
幼い娘の眼に残った
商売一筋の男が
ひとり娘のためにつくった休日に
火を吹く車の炎を鎮めるために
自分の躰を水に投げた
※
海で死んだひとはみんな かもめになって飛ぶのです
ある詩人が詠んでいる海は
玄海の水の渦ではないのに
でも 男はかもめになった
娘は男が自らかもめになったことを
三十二年間 誰にも言わなかった
朝刊の小さな記事は
娘の一言で作られた
「足を滑らせた」
かもめのための最期の親孝行だった
かもめは空を飛んでいる
海の上を飛んでいる
※寺山修司詩集「時には母のない子のように」新書館より
2001年に刊行された、著者の第1詩集です。この詩集にタイトルポエムはありません。おそらく紹介した作品から採ったものと思います。詩作品ですから実話と採る必要はありませんが、跋文にあたる「添える言葉」を読むと、ほとんどが事実のようです。〈幼い娘〉が体験した、父親である〈男〉の〈最期〉。この詩人もまた詩人たるべく成長してきたのだなと思います。寺山修司の〈海で死んだひとはみんな かもめになって飛ぶのです〉という言葉に仮託した〈娘〉の〈最期の親孝行〉が胸を突く作品です。
○小樅のりこ氏詩集『思い出積木』 |
2009.10.20
東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 1500円+税 |
<目次>
I
内緒の話
ミス単純…8 夢の感触…12 貝…16
野の果てに…19 誓い…23 バラ…26
子猫…30 カモメ…32 食卓…35
さびしんぼ…37 はこやなぎ…41
U
命 輝かせて
父の涙…44 父…46 父の病…48
いじめ…51 母…55 お正月…59
女良寛…61 遠い記憶…63 おばの死…66
太鼓…70 君へ(孫のS君へ)…74 幸福列車…79
ラナ…83
V
夕暮色のタペストリー
タペストリー…88 写真…91 人に…94
別れ…97 痛み…99 可愛い人へ…100
幸せの朝(あした)…104. シーソー…107. 愛のうた…110
思い出積木…113. 再会…117. 天使の鎖…119
音楽会で…122. 男と女…126. めぐりくる 季節の中で…130
約束…132
添え書き…135. 後書き…140
遠い記憶
六歳の夏休み
祖父の引く
山羊の背にいた
――まったく
のりこは……
カラカラ 笑う声
日に焼けた顔
人なつっこい眼
どこまでも続いていた
光る 畔道
ぽっかり 浮かんだ
白い雲
父の晩酌の時
いつも
膝の中にいた
石けんの匂い
口についた
ビールの泡
――今日は
のりこ どうしてた?
母に問う
父の声を聞きながら
安心して
眠りについた
第1詩集のようです。ご出版おめでとうございます。紹介した作品は〈六歳の夏休み〉を主とした詩ですが、〈――まったく/のりこは……〉と言う〈祖父〉、〈――今日は/のりこ どうしてた?〉と〈母に問う/父の声〉に、この家族の有り様がよく出ているように思います。そればかりではなく〈祖父〉と〈父〉の日頃の行いや性格まで表出させているように感じます。さらにそこから〈のりこ〉の性格までがあぶり出されてきて、佳い詩だなと思いました。今後のご活躍を祈念しています。