きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2009.9.4 筑波山・ガマ石




2009.10.27(火)


 朝から台風一過の爽やかな秋晴れ。こんな日は外に出て遊ぶのが一番なんでしょうが、残念ながら仕事がありました。日本詩人クラブ名簿の校正を頼まれていたのです。900人を超える名簿の校正は意外に大変でした。1時間もあれば終わるだろうと思っていたのですが、9時から始めて終了が12時。3時間も掛かってしまいました。特にEメールアドレスとURLを、と言われていましたので、過去に私と交信したことがある人は交信記録を、URLは実際にネットに存在するかどうかを調べましたので、それで時間が掛かったという次第。

 そんな努力をしても完璧は難しいかなと思っています。名簿更新の前には会員・会友の皆さまにお知らせしていますが、見過ごしている人があるかもしれません。何年も経ってから違うよと言われることがありますからね。新しい名簿が届いた時点でご自分の項目をチェックしてみてください。間違いがあったらすぐにお知らせくだされば、担当者はその段階で次回に反映させるようにしています。どうぞよろしくお願いいたします。




詩誌『ガーネット』59号
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2009.11.1 神戸市北区
空とぶキリン社・高階杞一氏発行 500円

<目次>

嵯峨恵子 待つ/ガラスの薔薇/違いのわからない男 4 大橋政人 空/直線ニツイテ 10
廿楽順治 岸果/憑意/砂傾 14            高階杞一 午後/晩年 20
池田順子 耳から/いたい 28             神尾和寿 人海戦術/東尋坊/バクダッド/ピンポン 32
やまもとあつこ 公園 36               阿瀧 康 秋 38
1編の詩から(30) 武田隆子 嵯峨恵子 24
シリーズ〈今、わたしの関心事〉NO.59 26       田口三舩/池下和彦/杉谷昭人/新保 啓
詩集から NO.57 高階杞一 42
.           ●詩片●受贈図書一覧
ガーネット・タイム 52
わびしい話/高階杞一                 死に方、そして、うんこ/神尾和寿
タナカ対スズキ/廿楽順治               夏から秋へ/阿瀧 康
中国は上海・紹興・杭州への旅/池田順子        高尾山登山/嵯峨恵子
篠原憲二さんが詩集を出した/大橋政人         チョコチップクッキー/やまもとあつこ
同人著書リスト 63
あとがき 64




 
違いのわからない男/嵯峨恵子

好き嫌いがない男である
出されたものは残さずに食べる
酒はそんなに飲まない
甘いものも嫌いではない
ただ 味の良し悪しはわからない
スーパーで買った温泉饅頭でも
有名店の饅頭でも
男には同じ餡子入り饅頭である
すべてがそんな按配なので
安いもので充分
という認識を女子社員には持たれている
が ありがとうくらいは一応いうので
男にもおすそ分けがまわってこないことはない
家では盗賊顔したメスのまめ柴犬を飼っている
まめちゃん二歳の誕生日のお祝いに
犬用ケーキを与えたところ
ぱくりで終わり
味わうとか楽しむとか
などという余韻のない食べ方は
飼い主も同様である
男は三時にレインボー色の缶コーヒーを飲むのが習慣である
缶コーヒーは選んで飲む
どうだか
さっきあげたのは日本酒ケーキだったんだけど
何かやわらかかった
お土産サブレには何が入ってたでしょう
あれ みかんじゃないの
桃です
と答える時にはすでに原型は跡形もない
違いのわからない男はそれでも
おやつを楽しみにしているらしく
今日は何かないの?
いつでも待ってるよ
などとすました顔で
いうのである

 たしかに〈違いのわからない男〉という者はいるもので、私もその一人です(^^; 特に〈饅頭〉なんか分かりませんね。あまり〈好き嫌いがない〉んですが、〈味わうとか楽しむとか〉いうことは考えていません。
 まあ、自分のことはそのくらいにしておいて、この作品は〈違いのわからない男〉というキャラクターをきちんと描いていると思います。〈ありがとうくらいは一応いう〉し、〈缶コーヒーは選んで飲む〉というこだわりもあるようです。特に〈いつでも待ってるよ/などとすました顔で/いう〉ところにこの男の素直さを感じます。詩の使命のひとつに、人間を描くこと、というものがあると思っていますが、この作品はそれが出来ていると思いました。




詩誌『へにあすま』37号
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2009.9.10 茨城県つくば市   300円
高山利三郎氏方・へにあすまの会発行

<目次>
詩 アレ −高原にて−/大羽 節 2
  夏の碑
(いしぶみ)/小林 稔 4
  静かな一日/柏木勇一 6
砂漠をさすらう旅の果てに掴んだ詩と真実 −小林稔詩集「砂の襞」を読む/朝倉宏哉 8
新しい驚愕の世界 高山利三郎詩集「馬」に寄せて/冨長覚梁 10
詩 キッチン/青木ミドリ 12
  河 −ベナレスにて−/高山利三郎 14
あとがき




 
静かな一日/柏木勇一

行間に敵意を潜めて
わたくしは詩を書く
そこに確かな意思の栞をはさんでノートをたたむ
言葉だけではお前たちを抹殺できない
だから

父を失ったあの戦争が終わった時
わたくしは子どもだった やがて少年
分別のある勤め人の時代もあった しかし
確かな意思だけは老いることはなかった
この無為さえも言葉に明示することができない

真夏の落葉
落ちたのではなく捨てられたのだ
そこからはもうなにも芽吹かない
無音の森
その意味が問われることもなく憎しみは続いている

けさも視線だけのあいさつを交わした
すでに日差しはまぶしく
少しだけ頭を下げて
あいさつは太陽から目をそらす仕草でいい
確かな意思を見破られてはいけないから

きょうの最初の一行のために
きのうの終わりの一行を切る
次の一行へと進んで確かな意思を振り返る
行間に埋めようとしているものの気配を確認する
静かに一日は過ぎていく

 第1連の〈行間に敵意を潜めて/わたくしは詩を書く〉というフレーズから凄い詩だなと思いました。その〈敵意〉の源流が第2連の〈父を失ったあの戦争が終わった時/わたくしは子どもだった〉というフレーズにある、と読み取りました。さらに追い討ちをかけるように第3連で〈真夏の落葉〉は〈落ちたのではなく捨てられたのだ〉と続きます。現在までもその〈憎しみは続いている〉わけで、それが〈静かな一日〉だと言うところにこの詩の怖さを感じます。〈きょうの最初の一行のために/きのうの終わりの一行を切る〉、そんな〈確かな意思〉をお前は持っているのか、と問い詰められていると感じた作品です。






   
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